2020年12月10日公開
2024年03月27日更新
駐車場収入で年金対策!個人の確定申告の必要性・マンション経営などとの違い
副収入や安定的な収入源として魅力のある駐車場経営。年金生活に備えるためや、年金生活が始まってからの余裕資金を作るための土地活用にもなります。本記事では、年金生活に備えるための駐車場経営のメリットや注意点、年金受給額減少の有無や確定申告の要否について解説します。
目次
年金生活に備えられる土地活用一覧
一時期、金融庁が発表した老後の年金に関する報告書から、日本中で「老後2,000万円問題」が話題になりました。そのことから老後の年金生活について、「資金不足になるのではないか」という不安を抱えている方が多いかもしれません。もしくは、よりゆとりある生活を送るために、今のうちに資金準備をしておきたいという方もいるでしょう。
そのような悩みや思いを解決する方法は無数にあります。ここでは、その中で年金生活に備えられるオススメの土地活用法を紹介します。土地活用法を紹介するのは、土地活用は手間や時間をかけずに、安定した収益を期待できるからです。紹介するのは、次の5つです。
- 駐車場経営
- アパート/マンション経営
- 賃貸併用住宅の運用
- 戸建賃貸住宅の運用
- 太陽光発電
それぞれ解説していきます。
①駐車場経営
駐車場経営とは、まったく利用されていない土地(遊休地)を整備して、駐車場として貸し出すことで賃料収入を得るために土地を活用するビジネスです。駐車場経営では建物を所有する必要はありません。またどんなに狭くて小さな土地でも駐車場として機能しうるなら、駐車場経営に活用できます。
駐車場には、月極駐車場とコインパーキングの2種類があります。月極駐車場は、特定の顧客に駐車スペースを毎月定額で貸し出します。毎月決まった賃料収入を得られるので、安定した収益を確保できるのが魅力です。
コインパーキングは、道路沿いや街中に設置されている駐車スペースで、駐車時間に応じて賃料を得ます。コインパーキングは、自分で管理すると土地の整備や精算機の設置など、ある程度の初期費用がかかるでしょう。また利用者が固定されているわけではなく、時期によって収益が増減します。
ただコインパーキングとして土地を駐車場運営会社に貸し出すことで、駐車場の整備や管理などのマネジメントを任せながら、運営会社から毎月一定の賃料を受け取れる方法もあります。
②アパート/マンション経営
アパート/マンション経営とは、所有しているアパートやマンションの一室、もしくは建物を貸し出すことで賃貸収入を得る土地活用法です。安定収入を得るための土地活用法として、最も人気があります。賃貸収入は、物件や周辺地域の魅力に左右されますが、需要が見込めれば安定的な収入を得ることができます。
アパート/マンション経営の魅力は安定収入以外に、節税効果が期待できることでしょう。アパートやマンションのように土地に建物がある場合は、固定資産税や都市計画税を減らせるのです。さらにアパートやマンションの所有者が亡くなったとしても、その資産を現金で相続するより建物で相続した方が評価額が小さく、相続税の課税額が少ない傾向にあります。
③賃貸併用住宅の運用
賃貸併用住宅とは、自宅の一部分を賃貸住宅として貸し出す住宅のことです。もともと所有している住宅を活用するため、管理がしやすいという特徴があります。とはいえ居住空間が近いため、お互いの家庭のプライバシーや利便性を侵害しないために、生活動線を明確に分けるなどの工夫が必要でしょう。
賃貸併用住宅は、貸し出していた部分を自分のために使うこともできるので柔軟性があります。また賃貸部分は相続税評価額が減額される傾向にあるので節税効果も期待できるのです。
④戸建賃貸住宅の運用
戸建賃貸住宅とは、賃貸として貸し出す一戸建て住宅のことです。一戸建ての賃貸住宅は、ファミリー層からの需要が多いものの、まだまだ供給量が少なく収益を得やすい土地活用法として認知度があがっています。
戸建住宅は、アパートやマンションよりも建設料金が少ないケースがあり、最終的に中古物件として売り出すこともできるので、利便性が高いです。戸建住宅は、学校周辺の子どもの教育環境が整っている地域や郊外などに向いているでしょう。
⑤太陽光発電
太陽光発電の土地活用とは、日当たりのいい土地の地面や建物にソーラーパネルを並べて発電した電気を、電力会社に売却することで収益を得る方法のことです。太陽光発電を行うメリットは、次のようになります。
- 太陽光発電で得られた電気を、自宅のために使っても良い
- 政府による「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」がある
太陽光発電で得られた電気は、自宅で利用してもかまいません。そうすれば電気代の節約にもなりますよね。また太陽光発電で生まれた電気は、政府によって運営されている「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」で、一定の収益を確保できます。
「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」とは、発電された電気を電気会社が一定期間定額で購入することを国が保証する制度のことです。定期購入してくれる期間は、発電できるワット数によって異なりますがおおよそ10〜20年です。太陽光発電には整備投資資金がかかりますが、「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」によって、そのコストの回収の見通しも立つ可能性があります。
「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」はもともと、再生可能エネルギーによる発電を促進するために作られた制度です。そのため再生可能エネルギー発電の普及が進めば、買取価格の下落や制度の終了などが考えられるため、太陽光発電に興味のある方はなるべく早く取り組んでみてください。
年金生活を見据えて駐車場経営するメリット
建物がなく、土地だけを有効活用したい場合は、駐車場経営がいいでしょう。というのも、土地に建物を建てたり、太陽光発電のようにソーラーパネルを設置したりする必要がないからです。
そして駐車場経営には、大きく次の3つのメリットがあります。
- 老後の生活に余裕が生まれる
- 節税効果が期待できる
- 次世代のために資産を残せる
それぞれのメリットを、確認していきましょう。
①老後の生活に余裕が生まれる
駐車場経営で収益を得られれば、老後の最低限の生活に備えられるだけではなく、余裕のある生活も営めるでしょう。
2018年の総務省がまとめた「家計調査年報(家計収支編)」によると、夫65歳以上、妻60歳以上の高齢者夫婦2人暮らしにかかる平均月間支出は約26万円となっています。一方の社会保障給付を含めた夫婦2人の平均月収は約22万円です。家計は毎月4万円の赤字になってしまう計算になります。
さらに趣味やレジャー、旅行などを楽しむゆとりが欲しい場合は、35万円程度の生活費がかかるようです。つまり社会保障給付以外にも、収入を確保しておく必要があるのです。
駐車場経営なら、老後の生活にゆとりを持てるような収入を確保できます。早く若いうちに始めれば、老後資金を蓄えられるだけでなく、老後を迎えてからの安定した収入源になりうるのです。
②節税効果が期待できる
一般的に駐車場経営では、節税効果が期待できないとされています。というのも、駐車場経営には建物がないため、固定資産税や都市計画税が軽減されないからです。
しかし次の4つの方法で、駐車場経営でも節税効果が期待できるようになります。
- 建物と駐車場で土地を一体利用する
- 駐車場にアスファルト舗装を施す
- 一括償却資産を利用する
- 青色申告の特別控除を利用する
土地に建物がないために、節税効果を期待できないのであれば、土地の一部に建物を建設すれば固定資産税や都市計画税の軽減につながります。またアスファルト舗装をすると、固定資産税の軽減になります。
一括償却資産とは、取得金額10万円以上20万円未満の資産について、減価償却を行わず設置した年から3年間、一括償却資産に計上した資産の取得金額の合計に対して1/3を必要経費として計上していく手法のことで、固定資産税の軽減効果が期待できるのです。
さらに確定申告時に青色申告を利用すると、駐車場経営の所得から特別控除が受けられるので節税になります。より詳しく駐車場経営の節税効果について知りたい方は、下記の記事を確認してみてください。
③次世代のために資産を残せる
駐車場経営で、毎月収入を得られるようになると、子どもや孫の世代に残せる資産になります。現在はバブル期のように、土地の値段が上がっていくような時代ではありません。そのため、特に利用していない土地を相続しても、子どもや孫の世代の生活は、たいして変わらないでしょう。
そこで活用されていなかった土地を、駐車場として活用して収益を生めるようになれば、次世代にとって価値ある資産になるのです。
年金生活を見据えて駐車場経営する際の注意点
「年金生活を見据えて駐車場経営するメリット」の項目で確認したように、駐車場経営には3つのメリットがありました。とはいえ、駐車場経営はメリットばかりではありません。駐車場経営をするにあたって、注意すべきポイントがあるのです。そのポイントとは、次の4つです。
- 相続税対策の必要性を確認しておく
- 駐車場経営について家族と十分に話し合う
- 手間のかからない運用タイプを選ぶ
- リスクの対策を講じる
駐車場経営を前向きに検討されている方は、自分が経営することをイメージしながら読んでみてください。
①相続税対策の必要性を確認しておく
相続税の税率は、10〜55%と高いことで知られています。そのため、駐車場経営をしている土地の所有者が亡くなって、相続されるときのために相続税対策の必要性を確認しておきましょう。
相続税は、相続される資産額のすべてに課税されるわけではありません。基礎控除を超えた価格に課税されるのです。基礎控除額は、次のような計算式で求められます。
基礎控除額=3,000万円+600万円×相続人の数
たとえば、ある家族の夫が亡くなり、妻と2人の子どもが相続人になったとしましょう。その場合の基礎控除額は、次のようになります。
3,000万円+600万円×3人=4,800万円
駐車場の資産価額が、4,800万円以下であるならば、相続税を納める必要はありません。もし駐車場の資産価額が基礎控除額よりも大きいのであれば相続税対策をしなければならなくなります。
②駐車場経営について家族と十分に話し合う
駐車場経営について、家族と十分に話し合う必要があります。土地をどのように活用したいかは、家族一人一人で異なるからです。
たとえば、子どもが将来使わないと思い込んでいた土地を勝手に駐車場にしてしまい、子どもがその土地に住みたいという意向があることがわかると、また更地に戻さなければなりません。
逆に子どもが土地を使うものだと思い込んで駐車場経営を諦めていたら、数年経って子どもが土地を使うつもりがないことがわかると、その間の収益を得られません。
他にも駐車場経営では、トラブル回避のための設備投資などで急に出費が必要になることもあります。そのため、家族との十分に話し合って土地の有効活用をしてください。
③手間のかからない運用タイプを選ぶ
駐車場経営をすべて自分で行おうとすると、手間と時間がかかります。時間にゆとりがあって、自分でやりたいという方はいいですが、基本的には手間のかからない運用を心がけるのがベストです。そうすれば、収入を確保しながら、自由な時間を増やせるからです。駐車場経営には、大きく分けて次の3つの運用方式があります。
- 自主管理・・・駐車場経営のすべてを自分で行う
- 管理委託・・・駐車場経営の管理・マネジメントについて委託業者を活用する
- 一括借り上げ・・・定期的に一定金額を受け取りながら、駐車場経営のほぼすべてのことを専門業者に任せる
このなかで、最も手間や時間がかからないのが、一括借り上げです。経営のすべてを任せるので、収益は自分でコントロールできませんが、手間と時間をかけずに収益を確保できます。
④リスクの対策を講じる
駐車場経営には、次のようなリスクがあります。
- 不正利用と滞納
- 駐車場内の事故
- 駐車場内のトラブル(盗難や車上荒らしなど)
- 競合との競争
- 近隣住民からのクレーム(騒音や排気ガスのニオイなど)
- 環境整備(機械の故障や雑草、ブロック塀の破損など)
- 稼働率
- 税金や経費
- 台風や地震などの災害
なかなかすべてのリスクをなくすことはできません。とはいえ、次のような対策をとることで、リスクを最小限に抑えることならできるでしょう。
- 賃料の回収手段や不正利用の相談先を知っておく
- 駐車場内のブランクスペースをなくす
- 防犯カメラや夜間の灯りを設置する
- ライバル競合の価格や相場をよく調査する
- 現状の稼働率をふまえて税金や経費の計画を立てる
- 防音対策や風通しをよくする
- 経営している駐車場を実際に見て回る
- 駐車場経営では他駐車場のレイアウトも参考にする
駐車場経営で年金受給額は減少する?
駐車場経営を、年金受給が始まってからも行っている場合、年金受給額は減少するのでしょうか?ここでは年金受給額が減少する場合と、駐車場経営の収入によって年金が減額するかどうかを解説します。
在職老齢年金制度とは
在職老齢年金制度とは、60歳以上で老齢厚生年金の受給をしている人が、就労して厚生年金に加入した場合に老齢厚生年金と勤務先からの給与や賞与によって老齢厚生年金の受給額の一部が減額されたり、停止されたりする制度のことです。
年金が減額される条件
在職老齢年金制度で受給額が減額される条件は、老齢厚生年金を受給している人の年齢が「60歳台前半」か「60歳台後半」かによって異なります。
「60歳台前半」の場合、老齢厚生年金と勤め先からの給与を合わせた月収が28万円以上になると在職老齢年金制度の適用になります。
「60歳台後半」の場合は、老齢厚生年金と勤め先からの給与を合わせた月収が47万円以上で在職老齢年金制度の適用になるのです。
駐車場経営の収入は年金減額の対象外
駐車場経営の収入は、年金減額の対象になりません。なぜなら、駐車場経営をしても厚生年金の加入者にはならないからです。在職老齢年金制度は、会社に勤めている厚生年金の加入者にしか適用されないのです。
年金は減額されないが税金は課される
駐車場経営では、年金の減額はされません。しかし、税金は課税されます。駐車場経営にかかる税金は、主に次の6つになります。
- 固定資産税
- 都市計画税
- 消費税
- 所得税
- 相続税
- 贈与税
ちなみに駐車場経営から得た収益は所得税の対象となり、駐車場経営にかかる所得税は月極駐車場かコインパーキングかによって異なるのはご存知でしょうか。
月極駐車場から得た収益は不動産所得、コインパーキングから得た収益は事業所得または雑所得となるのです。支払わなければならない税金額は、個々のケースによって異なるので、あらかじめ計算しておきましょう。
駐車場経営では年金受給者でも確定申告が必要
確定申告は条件次第では、必ず行わなければなりません。一方で確定申告をしなければならない条件下でなければ、しなくても何か罰則があるわけではありません。
駐車場経営では、年金受給者も基本的に確定申告をしたほうがいいでしょう。なぜなら年金受給者の場合、確定申告をしないと所得が確定せずに社会的に不便になるからです。たとえば、国から所得証明書の発行を受けられず、医療費控除や事業資金の借入などができなくなります。
そのような不便を防ぐためにも、年金受給者でも駐車場経営から収入がある場合は、確定申告を行うようにしましょう。
駐車場経営の確定申告に関する基礎知識
確定申告とは、年間の総収入に対していくらの税金がかかるかを、国に報告する手続きのことをいいます。そのため、年間の所得額がいくらになったかを計算しなければなりません。確定申告における所得は、次の計算式で求めます。
所得額=収入−必要経費−控除額
駐車場経営の所得は、次の3種類に分類できます。
- 事業所得・・・経営者として駐車場に責任がある場合
- 不動産所得・・・土地を駐車場として貸し出している場合
- 雑所得・・・小規模の駐車場経営である場合
そして、駐車場経営の必要経費にできるのは、次のものになります。
- 初期費用
- 税金(固定資産税や都市計画税など)
- 光熱費
- 宣伝費
- 管理費
- 減価償却費
- 損害保険費
- 通信費
- 消耗品や事務用品費
控除額は確定申告の方法によって異なります。白色申告なら、特別な手続きは不要ですが控除もありません。青色申告の場合、青色申告承認申請書を提出しなければなりませんが、最大65万円の控除枠があります。
駐車場経営で確定申告が不要なケース
駐車場経営で確定申告が不要なケースを明確にするには、必要なケースを知るのが早いでしょう。駐車場経営で確定申告が必要になるケースは次の2つです。
- 副業収入として20万円以上の収入がある場合
- 専業で年間収入が38万円以上ある場合
上記以外の場合は、確定申告は必要ありません。とはいえ、確定申告をしないことによる不便もあるのでなるべくすることをオススメします。
まとめ
本記事では、年金生活に備えるための土地活用法と駐車場経営のメリットや注意点、年金受給減額の有無、確定申告の要否について解説してきました。最後に、本記事の内容を簡潔にまとめますので、参考にしてください。
- 年金生活に備えられる土地活用法には「駐車場経営」や「アパート/マンション経営」「賃貸併用住宅の運用」「戸建賃貸住宅の運用」「太陽光発電」などがある。
- 年金生活を見据えて駐車場経営を行うメリットは、「老後の生活に余裕が生まれる」「節税効果が期待できる」「次世代のために資産を残せる」ことなど。
- 年金生活を見据えて駐車場経営を行うときの注意点は、「相続税対策の必要性を確認しておく」「駐車場経営について家族と十分に話し合う」「手間のかからない運用タイプを選ぶ」「リスクの対策を講じる」ことなど。
- 在職老齢年金制度とは、60歳以上で老齢厚生年金の受給をしている人が、就労して厚生年金に加入した場合に老齢厚生年金と勤務先からの給与や賞与によって老齢厚生年金の受給額の一部が減額されたり、停止されたりする制度のこと。
- 駐車場経営の収入は、年金減額の対象にならない。
- 駐車場経営の収入は、「固定資産税」「都市計画税」「消費税」「所得税」「相続税」「贈与税」の課税対象。
- 確定申告とは、年間の総収入に対していくらの税金がかかるかを、国に報告する手続きのこと。
- 駐車場経営の収入は確定申告をしないと所得が確定せずに社会的に不便になるため、年金受給者は確定申告するのが良い。