無断駐車のトラブルの対応方法・対策を徹底解説

駐車場やマンションの経営をしていると無断駐車のトラブルがよく発生します。利用者や居住者からのクレームがあって対応に困ることもあるでしょう。この記事では無断駐車の正しい対応方法をまとめました。無断駐車が起こらないようにする対策もご紹介します。

無断駐車のトラブルの対応方法・対策を徹底解説のイメージ

目次

  1. 1無断駐車とは
  2. 2駐車場経営で無断駐車の対応が重要な背景
  3. 3無断駐車の対応でやってはならない自力救済
  4. 4無断駐車の正しい対応方法
  5. 5無断駐車の効果的な対策
  6. 6無断駐車トラブルを避ける方法
  7. 7無断駐車への対応の注意点
  8. 8駐車場経営は無断駐車の対策・対応を前提に検討しよう
  9. 9まとめ

無断駐車とは

無断駐車とは土地の所有者や駐車場の経営者から許可を得ることなく駐車することです。例えば、以下のような行為は無断駐車に該当します。
 

  • 月極駐車場に無断で駐車した
  • コインパーキングの車室以外の場所に駐車した
  • 他人の敷地に許可を得ずに車を停めた

無断駐車は迷惑駐車ともよく言われています。月極駐車場やコインパーキングだけでなく、マンションの駐車場やショッピングセンターの駐車場、空き地などでも起きているトラブルです。
 

無断駐車と違法駐車の違い

無断駐車は違法駐車とは厳密には異なります。違法駐車とは法的に認められていない駐車をする行為です。違法駐車をした場合には、警察による取り締まりを受けて反則切符を切られ、罰金などのペナルティを負います。道路交通法の第44条(停車及び駐車を禁止する場所)と第45条(駐車を禁止する場所)に該当する駐車をしたときには違法駐車です。例えば、以下のような駐車をすると違法になってペナルティを受けます。
 

  • 駐車禁止の表示がある場所に駐車した
  • 交差点から5メートル以内の場所に駐車した
  • 横断歩道の上に駐車した

無断駐車は道路交通法などの法律によって違法行為が具体的に定められているわけではなく、駐車する権利がない場所に駐車する行為です。

参照:道路交通法 | e-Gov 法令検索

無断駐車は原則として不法行為

駐車場や私有地での無断駐車は不法行為になります。刑事ではなく民事の対象になるトラブルで、迷惑行為として民事訴訟を起こすことが可能です。無断駐車によって不利益を被ったことを示して損害賠償を請求することもできます。無断駐車をした人は刑罰を受けるわけではありません。民事訴訟を通して法廷で争い、被害の程度に応じた賠償金を支払うなどのペナルティを受けます。
 

無断駐車が違法になるケース

無断駐車は違法になって刑罰を受ける場合もあります。例えば、私有地に無断で車で侵入して駐車した場合には刑法130条の住居侵入罪に該当し、退去の要求をしたのに出ていかなかったときには3年以下の懲役または10万円以下の罰金が科されます。損害を被ったときには民事訴訟も起こすことが可能です。

また、無断駐車が原因で車が出庫できなかったために仕事を妨げられたようなケースでは、刑法234条の威力業務妨害罪に該当し、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。

参照:刑法 | e-Gov 法令検索

 

駐車場経営で無断駐車の対応が重要な背景

駐車場経営では無断駐車の対応をして、利用者が快適に使える環境を整えることが重要です。駐車場内や駐車場の出入口に無断駐車をしている車があると、通行できない、出入りできないといったトラブルが発生します。出入口の場合には近隣の住民の通行を妨げることもあるので、近隣トラブルにもなり得るので対応が必要です。

国土交通省による「令和5年度マンション総合調査」では、マンションのトラブル発生状況についての調査結果があります。5年ごとの調査の結果で常に1位になっているのは「居住者間の行為、マナーをめぐるもの」です。令和5年度の調査では60.5%が不満を感じています。その内訳で「生活音(43.6%)」に次いで多いのが「違法駐車(18.2%)」です。

マンションの駐車場での駐車に関するトラブルについての回答なので、無断駐車を含む内容でしょう。同調査は個人に対するアンケート調査なので、駐車に関する違反行為という意味合いでわかりやすい「違法駐車」を使用している可能性もあります。駐車トラブルは絶えない状況が続いているので、駐車場経営では適切な対応が必要です。


参照
令和5年度マンション総合調査結果からみたマンションの居住と管理の現状|国土交通省(p.19)
令和5年度マンション総合調査結果 |国土交通省(p.28~29)

 

無断駐車の対応でやってはならない自力救済

無断駐車の対応では自力救済は厳禁です。自力救済とは無断駐車のトラブルを解決するために、駐車場のオーナーなどが自分の手で行動を起こして権利を回復する行為を指します。司法手続きをせずに個人の判断で強制的な対応をすると違法行為になる可能性があります。以下のような自力救済は違法になるリスクがあるので決してやってはならない行為です。

参照:自救行為と刑法における財産権の保護|J-STAGE

 

強制的なレッカー移動

無断駐車に対する自力救済で典型的なのはレッカー移動です。ずっと放置されていて迷惑になっている無断駐車の車両を動かしたいと思うのはもっともなことです。しかし、自費でレッカー移動をしたとしても、車両の所有者から訴えられる可能性があります。

出入口の封鎖やタイヤのロック

無断駐車をした車を動けなくする行為も自力救済に該当します。車を動かせないから駐車場のオーナーに連絡するという流れを考えて、出入口を封鎖したり、タイヤをロックしたりする行為は訴えられるリスクがあります。

いやがらせ行為

無断駐車をしている車の窓ガラスを割ったり、車体に傷を付けたり、タイヤをパンクさせたりするいやがらせ行為は器物損壊罪に相当します。刑法261条で定められている違法行為なので、たとえ無断駐車をしているときでも決してやってはならない行為です。
 

無断駐車の正しい対応方法

無断駐車をしている迷惑な車があるときには正しく対応をして、自分が違法にならないことが重要です。ここでは正しく無断駐車に対応する方法を紹介します。
 

無断駐車かどうかを再確認する

まずは本当に無断駐車なのかどうかを確認することが重要です。コインパーキングの車室以外のところに駐車している場合には無断駐車なのは明らかですが、月極駐車場で契約車以外が車室に駐車しているときには注意が必要です。

月極駐車場の場合には契約者が車を買い替えて連絡をしていない場合があります。また、契約して間もない場合には契約者が車室番号を間違えている可能性もあります。車室番号がかすれて読めなくなっているために、新しい契約者が誤解することもあり得るので現場と契約書の確認が重要です。管理会社に駐車場の管理を委託しているときには、事情を説明して対応を求めましょう。
 

車に張り紙をして警告する

張り紙をして車両の所有者に警告すると移動を促せます。「契約者以外は駐車禁止です。速やかにご移動ください」といった警告文を用意して車に張り付けましょう。ただ、テープで貼り付けたり、ステッカーを付けたりすると痕が残ったり、塗装が剥がれたりしてしまう可能性があります。器物損壊罪に該当する可能性があるので、傷や痕を残さないようにワイパーに挟むのがおすすめです。

警察に相談する

警察は民事不介入なので、迷惑な無断駐車をしているだけでは動いてくれないのが一般的です。ただ、刑事に相当する行為が含まれている場合には対応を受けられます。無断駐車の行為が悪質な場合には、車のナンバーから所有者を特定して連絡してくれる可能性もゼロではありません。断られても仕方ないという気持ちで、警察に通報して対応を求めてみましょう。

地方運輸局で手続きをして内容証明郵便を送る

張り紙で効果がないときや、無断駐車の損害賠償を請求したいときには、内容証明郵便を送ります。ずっと無断駐車されているような場合には、地方運輸局に所有者情報の開示請求をすれば情報開示を受けられます。無断駐車の証拠写真を撮影して持参し、手続きをすれば住所や氏名などの情報を入手可能です。内容証明郵便で警告文や請求書を送付して対応を求めると解決につながる可能性があります。

弁護士に相談して損害賠償請求をする

内容証明郵便を送っても音沙汰がない場合や、訴訟を起こして損害賠償請求をする場合には、弁護士事務所に相談します。無断駐車の写真があり、内容証明郵便を送ってあれば根拠として認められて訴訟を起こせます。示談で済ませる結果になる場合もありますが、悪質な無断駐車で損害を被り、対応をきちんとしたいときには弁護士に相談するのが賢明な判断です。

無断駐車の効果的な対策

無断駐車のトラブル対応は大変です。できるだけ無断駐車をされないように対策をしておけばトラブルを回避しやすくなります。ここでは無断駐車の対策に効果的な方法を紹介します。

看板や張り紙をして注意喚起する

「無断駐車禁止」といった内容の看板や張り紙をして注意喚起をするのは基本的な対策です。コインパーキングや月極駐車場に駐車するのは確信犯ですが、「無断駐車禁止」と大きく表示されていると駐車をためらう気持ちが生まれるでしょう。空き地の場合には私有地ではないと思っていて気軽に駐車する人もいます。看板や張り紙ではっきりとわかるように駐車禁止と示すと、無断駐車をされる可能性が低くなります。

カラーコーンを置く

月極駐車場の経営をしているときには、空室になっている駐車マスにカラーコーンを置いておくと無断駐車の対策になります。わざわざ車から降りてカラーコーンをどかして駐車するのは手間がかかります。車室に無断駐車をされないようにする方法として低コストで簡単にできる対策です。契約者にもカラーコーンを提供して、必要に応じて使ってもらうようにすると無断駐車によるトラブルを減らせます。    

チェーンやロープを張る

チェーンやロープによって車室に入れないようにすると無断駐車を対策できます。月極駐車場やマンションの駐車場では、契約がない駐車マスは周囲をチェーンやロープで囲っておくと抑止力になります。カラーコーンよりも駐車しにくいので対策効果が大きい方法です。ただし、無断駐車をしている車両の周囲にチェーンやロープを張ると自力救済と見なされる可能性があります。あくまで対策として使用することが大切です。

バリカーを設置する

バリカーは「バリケード」と車を意味する「カー」から生まれたと言われる駐車場でよく用いられている設置物です。月極駐車場の経営をしているならバリカーを設置して車室に入れないようにすると効果的です。コインパーキングでも、車室以外に駐車されないようにスペースを制限することができます。利用者が歩く場所を確保したり、自動車の進入や衝突などの対策をしたりすることもできるので、安全確保の目的も兼ねて設置するのがおすすめです。

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デッドスペースをなくす

駐車場ではデッドスペースがあると無断駐車をされる可能性が高くなります。車室でなくても、通行の邪魔にならない場所が見つかったから駐車したというのはよくあるパターンです。デッドスペースは車室のレイアウト次第で減らせます。また、車室を用意できないくらいの狭い場所はデッドスペースになりがちですが、自動販売機を設置したり、駐輪場にしたりして塞ぐことも可能です。デッドスペースをなくす方法はたくさんあるので工夫しましょう。

監視カメラを設置する

監視カメラは無断駐車の抑止力になる有効なツールです。監視カメラをはっきりと見えるところに設置して、「監視カメラ稼働中」といった張り紙をすると無断駐車を断念するでしょう。監視カメラを常時録画しておけば、もし無断駐車をされたとしても、民事訴訟の根拠になる映像が手に入ります。監視カメラは設置にも運用にもコストがかかりますが、無断駐車のリスクを減らしつつ、トラブル対策もできるのでおすすめです。

無断駐車トラブルを避ける方法

無断駐車が起きてトラブルにならないようにするには駐車場管理が重要です。駐車場経営をする際に抑えておきたい無断駐車によるトラブルの対策方法を紹介します。

定期的に駐車場を訪れて管理する

無断駐車によるトラブルの防止には、駐車場を訪れて管理することが重要です。無断駐車している車を見つけて張り紙などによる対応を速やかにおこなうと、利用者からのクレームを減らせます。駐車場の出入口付近への無断駐車によって近隣住民の通行を妨げているようなケースにも速やかに対応可能です。

また、定期的に駐車場に行くと状況を把握できます。草木が生い茂っていて周囲から目立たないような状況になっていると、悪意が芽生えて無断駐車をしようという気持ちが生まれがちです。空き地の場合にも同様で、荒れている土地は管理されていなくて、少しなら駐車していても気付かれないと考えられる可能性があります。定期的に訪れてきれいな環境を整えると無断駐車の対策になります。
 

管理委託をしてトラブル対応を任せる

無断駐車にかかわるトラブル対応は管理委託をすれば負担が軽減されます。無断駐車があって利用者からクレームがあったときにも、管理会社が対応してくれるので苦労が少なくて済みます。定期的な巡視をして無断駐車がないかを確認したり、駐車場の環境整備をしたりすることも依頼可能です。管理委託すれば無断駐車のトラブルの対応に悩まされることが少なくなります。駐車場経営だけでなく、空き地や空き家などの管理にも利用できる方法です。

一括借り上げで駐車場経営をする

駐車場経営の場合には一括借り上げにすると無断駐車の対応に追われることはありません。一括借り上げによる駐車場経営では、契約先に土地を貸して駐車場の運営を許可する仕組みになります。無断駐車などの問題が起きたときには、契約先が対応してくれます。無断駐車による損害があったとしても、毎月一定の利益を得られる契約が可能です。無断駐車のトラブルがあって不安な人も一括借り上げなら安心して駐車場経営を始められます。

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無断駐車への対応の注意点

無断駐車に対応するときには、トラブルが大きくならないように注意した方が良いポイントがあります。ここでは無断駐車のトラブル対応で気を付けた方が良いことを解説します。

警告文や看板に書いた内容に法的拘束力はない

無断駐車の対策のために看板を立てたり、無断駐車に対して張り紙をしたりするときには「罰金1万円」といった表記をして抑止力を高める方法がよく用いられています。しかし、警告文や看板に書いた内容には法的拘束力はありません。無断駐車をした人が見つかったときに、記載内容を根拠にして請求をしても相手が了承しなければ民事訴訟で争う必要が生じます。金額の記載は抑止力にしかならないので、他の方法も併用して無断駐車を対策しましょう。
 

自力救済の前に司法手続きをする

無断駐車がいつまでも続いたり、何度も繰り返されたりするとストレスも溜まります。ついレッカー移動などの自力救済をしたいと思ってしまうでしょう。自力救済は訴えられたら訴訟で負ける可能性が高い行為です。司法手続きをして対応を検討することを優先しましょう。不当な無断駐車をされていたときには法廷で争えばきっと勝訴できます。弁護士は最初から最後まで親身になってサポートしてくれるので相談してみるのがおすすめです。

近隣住民に配慮して対応する

近隣住民に配慮して無断駐車の対応をすることも重要です。無断駐車によって近隣住民が駐車場を利用できない、道路が塞がれていて通行できないといった不満を抱くこともあります。近隣住民からのクレームが来る前に無断駐車の対応をするように心がけましょう。クレームが増えると地域での評判が悪くなり、利用者が減ってしまう可能性があります。駐車場経営をするときには近隣に住んでいる人の立場で無断駐車の対応を進めることが大切です。

駐車場経営は無断駐車の対策・対応を前提に検討しよう

駐車場経営では無断駐車によるトラブルが起こる可能性があります。コインパーキングでも月極駐車場でも、マンションなどの駐車場でも無断駐車によって利用者や近隣住民が不利益を被ることがあるので対応する方法を検討しましょう。駐車場経営は管理委託をしたり、一括借り上げで契約したりする選択肢もあります。自主管理で十分な対応をするのが難しい場合には、専門業者に任せて安心して運用できる体制を整えるのがおすすめです。

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まとめ

無断駐車のトラブルは駐車場ではつきものなので、対策をしてトラブルの発生を未然に防ぐ対応がまず重要です。もし無断駐車が起きたときにも焦って自力救済をせずに、落ち着いて対応しましょう。駐車場の管理を徹底して無断駐車の対策をすることも大切です。月極駐車場やコインパーキングの経営では無断駐車によるトラブルが起こり得ることを想定して管理方法を考えましょう。

※本記事は可能な限り正確な情報を元に制作しておりますが、その内容の正確性や安全性を保証するものではありません。引用元・参照元によっては削除される可能性があることを予めご了承ください。また、実際の土地活用についてや、税金・相続等に関しては専門家にご相談されることをおすすめいたします。

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