駐車場の耐用年数とは?国税庁の法定耐用年数と減価償却
駐車場にある機器設備、立体駐車場の建物には耐用年数があります。これらは減価償却ができ、不動産所得から差し引くことが可能です。この記事では、駐車場設備の法定耐用年数と減価償却の基礎知識、今後のメンテナンス・更新工事について解説します。

駐車場の耐用年数に関する基礎知識
土地活用において、駐車場経営は一番生活に身近なものです。駐車場には、屋根もなく雨ざらしの青空(平面)駐車場、時間制にて貸し出しするコインパーキング駐車場、空間を有効的に使える自走式の立体駐車場、繁華街など土地が限られた立地ではタワーパーキング駐車場があります。
また、駐車場を設置するには土地の整地も必要です。砂利敷き・アスファルト舗装・コンクリート舗装などが施されています。他にもフェンスや敷地内の照明、防犯カメラなどの設備があります。ここで気になるのがこれらの機器等の耐用年数です。仮に耐用年数が短ければ、交換サイクルが早くなりその分費用が掛かります。
しかし、駐車場に設置済みの機器等は減価償却ができます。各機器等に予め設定された法定耐用年数に応じて減価償却ができ、毎年の確定申告時に経費にて不動産所得から差し引くことが可能です。この記事では、駐車場の耐用年数と、経営に役立つ減価償却の知識を紹介していきます。まずは、減価償却について詳しく見ていきましょう。
減価償却とは
減価償却とは、減価償却資産を法定上定められた金額で算出し、その耐用年数にわたり必要経費として計上することです。減価償却できる資産は、建物・建物付属施設・構築物・機械装置などになり、土地自体は減価償却の対象にはなりません。
つまり駐車場内の車止めや舗装・照明・防犯カメラ・フェンスなど、各々に法定耐用年数が設定されており、その期間内において減価償却が可能です。なお、法定耐用年数は国税庁のホームページにて公開されています。
青空(平面)駐車場は、機器が少ないので減価償却できるものは少ないのですが、コインパーキングや立体駐車場などは建物や機器が多くあるので、減価償却できる資産が多くあります。なお、減価償却の計算には定率法と定額法がありますが、一般的には定額法を用いるケースがほとんどです。
定率法と定額法の相違点
定率法とは、減価償却費が毎年一定の割合で減少するように計算する方法です。定率法での減価償却費を求める式は、下記になります。なお、定率法を用いて計算する場合には、税務署への事前の届出が必要です。
- 定率法の減価償却費=取得価額×定率法の償却率
定額法とは、毎年の減価償却費が同額になるように計算する方法です。定額法での計算式は下記になります。
- 定額法の減価償却費=取得価額×定額法の償却率
償却率は、建物の構造、設備機器の種類により耐用年数が決められており、予め設定されている値を用います(数値に関しては国税庁のホームページ等で確認できます)。定額法や定率法によって算出した減価償却費を経費計上することで、賃料収入からなる不動産所得を抑え、税金の支払い額の削減が可能です。
減価償却のメリット・デメリット
減価償却のメリットは設備や建物などの購入費用を一度に計上せず、耐用年数にわたって分割して経費にできる点です。これにより、一度に多額の支出が発生しても毎年の経費計上にて税負担を軽減できます。
また、定期的に減価償却費を計上することで、安定した収支管理が可能です。高額な設備投資を一度に経費化するのではなく、分割計上することで年間の費用を均等化できます。
デメリットは、資産管理の煩雑さが挙げられます。耐用年数や取得額を把握し、資産を適切に減価償却する必要があり、複数の設備を抱える場合は管理の手間が増えかねません。
さらに、資金繰りに影響する場合もあります。減価償却中に設備の寿命が尽きたり、交換が必要になったりした場合には残存簿価の処理も必要です。こうした点を理解し、長期的な収支計画を立てておきましょう。
償却資産(固定資産税)の申告について
償却資産の申告は、その年の1月1日現在で償却資産を所有している場合に、申告が必要です。申告書等の提出先は、償却資産が所属する自治体となり、東京都の場合には都税事務所になります。なお、申告の対象となる資産とはその年の1月1日現在に於いて、事業の用に供することができる資産です。
また、耐用年数が経過したものでも申告が必要です。減価償却済みの資産でも、事業のために所有している限り、毎年償却資産を申告します。資産の異動(増減)がない場合もです。なお、少額の償却資産の場合には申告が免除されることもあります。
- 取得価額20万円未満の資産のうち3年間で一括償却したもの
- 取得価額20万円未満のリース資産
申告方法は、書類(償却資産申告書・種類別明細書)による郵送か、電子申告による申告データ等での提出となります。
家屋と償却資産の区分に関する注意点
建物本体や電気設備、衛生設備、空調設備等の附帯設備の中で、家屋に取り付けられ構造上家屋と一体となり、家屋自体の効用を高めるものについては家屋として評価します。したがって、この場合は償却資産には含まれません。それ以外のもので、構造的に家屋から簡単に取り外しできるものについては、償却資産に含まれます。
駐車場の耐用年数とは
ここでは、駐車場自体の耐用年数について解説します。
耐用年数の種類
耐用年数には、経済的耐用年数、社会的耐用年数、物理的耐用年数の3種類があります。これらについて、以下にて解説していきます。
経済的 耐用年数 |
経済的耐用年数とは、維持管理にかかる費用など、経済的な価値 がある期間のことです。駐車場施設のメンテナンスを行ったとし ても、機器の劣化は進んで行くため、ゆくゆくは機器の交換とな ります。この交換時期までの期間を、経済的耐用年数(寿命)とい います。 |
社会的 耐用年数 |
社会的耐用年数は、内的要因と外的要因に分けることができます。 内的要因とは、社会の変化により取り残され陳腐化した設備機器 などを、まだ使用できる状態なのに最新設備の機能を知れば、 買い換えたり、更新したりしたいと思うこともあります。また、外的 要因とは社会構造の変化や法改正や制度改正等により買い換えや、更新したいと思うことです。 物理的にはまだ利用できるのに、所有者自身が社会通念上型落ち品で あると思い買い換えること。また機器の修理期間を超えたものについ て、機器の更新をする最大の期間が社会的耐用年数(寿命)となります。 |
物理的 耐用年数 |
物理的耐用年数とは、機器や設備そのものが耐えられる年数のことです。 フェンスや照明などは、日々雨風や紫外線に晒され機器の劣化が進行します。 そしてその機能が失われると役割を果たせたくなるため、撤去して新しい機器 を設置します。この場合物理的耐用年数は、機器や設備が取り除かれるまでの 期間を物理的耐用年数(寿命)となります。 |
駐車場に関する資産と法定耐用年数の一覧
駐車場に関する資産と法定耐用年数を表に纏めています。
資産 | 法定耐用年数 |
アスファルト舗装 | 10年 |
コンクリート舗装 | 15年 |
金属製のフェンス | 10年 |
屋外照明 | 10年 |
コンクリートブロック塀 | 15年 |
側溝 | 15年 |
コインパーキングの駐車機器 | 5年 |
上記は、法定耐用年数であるため、法定耐用年数到来で即交換ということではありません。実際、コンクリート舗装は頑丈なため、15年で全て交換にはならないでしょう。しかし、ひび割れや等が発生した場合には補修工事も必要になります。
駐車場の種類別に法定耐用年数を比較
ここでは、駐車場の種類別に法定耐用年数を比較していきます。
駐車場種類 | 法定耐用年数 |
一般的な立体自走式駐車場 | 15年 |
鉄骨造りの立体自走式駐車場 | 31年 |
鉄筋造りの立体自走式駐車場 | 38年 |
他、一般的な機械式駐車場の法定耐用年数は15年となります。また、一般的な青空(平面)駐車場は建物や構造物ではなく土地です。土地には耐用年数はないので、青空(平面)駐車場に耐用年数はありません。なお、法定耐用年数は税金の計算の為に国税庁が定めたもので、実際の耐用年数とは異なります。
法定耐用年数を超えても、適切なメンテナンスを行っていれば20年、30年使用することは十分可能です。
駐車場の耐用年数と更新・リニューアル
ここでは、駐車場の耐用年数と更新・リニューアル方法について解説していきます。まずは青空(平面)駐車場についてです。
月極の青空(平面)駐車場には、構築物はほぼありません。耐用年数で気にかけるとすれば舗装部分です。アスファルトの法定耐用年数は10年ですが、10年で必ず寿命がくるわけではありません。しかし、舗装部分は車が常に通過したり、時間の経過や気候の影響で劣化したりします。
例えば、アスファルトのひび割れや、穴が開いてしまった場合に補修する必要があります。軽微なものであれば、ホームセンター等で補修材を購入し、オーナー自ら手直しすることは可能です。補修箇所の範囲が広い場合には、専門業者に依頼し重機等を入れて行う必要があります。
砂利敷きの駐車場の場合には、穴や段差の解消に砂利を敷き詰める補修が必要になりますが、これはオーナー自らでも行えそうな作業です。
次に、コインパーキングです。コインパーキングには、機器設備が多くあります。これらは定期的に保守や点検をしっかりと行えば、10年は使うことができます。なお、法定耐用年数について、機器設備類は5年、看板は3年です。
コインパーキングは、これらの機器設備が故障なく作動することで、成り立つ経営であるので、概ね10年毎に機器設備の更新工事は必要になります。特に、ロック板や精算機など、使用頻度が高いものは劣化も激しいのです。このような、機器設備の状況は常日頃からの定期清掃・巡回時に確認しておく必要があります。
次に、立体駐車場です。先述の通りに、一般的な自走式立体駐車場の法定耐用年数は15年です。しかし、定期的な保守点検を行えば15年以上使用は可能です。仮に、自走式のプレハブ駐車場の場合、車が自走するため躯体への接触による破損は少なく、自然災害による被害がない限り構造物自体へのメンテナンスはほとんどありません。
しかし、消防設備の定期点検を所轄消防署への報告や、照明設備・消火設備(消火栓・消火器など)・駐車ラインの点検や補修があります。

駐車場の耐用年数を踏まえて工事を依頼するポイント
ここでは、駐車場の耐用年数を踏まえて工事を依頼するポイントとして、以下を解説します。
- 業者の実績や評判を調べておく
- 見積もりを取って複数業者を比較する
- 解体撤去してもらえるのかを確認しておく
- こまめにメンテナンスしてもらえる業者を選ぶ
- 税制法の改正がないかを確認しておく
①業者の実績や評判を調べておく
駐車場の補修工事を行う、施工業者は沢山あります。どの施工業者がよいのかは、予めインターネットで施工業者を検索したり、近所の口コミや口コミサイトなどを活用したりして調べましょう。特に、インターネットの場合は、補修工事の施工事例や補修に掛かる費用を調べることもできます。
また、複数業者をピックアップし工事について事前に相談するのもよいでしょう。そのときの施工業者の言葉使いや態度など、対応力なども判断材料にしてもよいです。
②見積もりを取って複数業者を比較する
施工業者を絞れたら、直ぐに契約はせずに必ず見積もりを依頼します。また、このような見積もりは1社のみでなく複数社に依頼するのがおすすめです。したがって、事前に2,3社をピックアップしておきます。複数社に見積もりを依頼する意義は、見積もりの金額が適正かどうかを判断できます。
このような補修工事の相場は、素人では掴みにくいものであり、施工業者の言い値とならないようにします。なお、見積もりを見るときは詳細な内訳が記載してあるか確認します。仮に、内訳の記載がない場合には、詳細な見積り書を再度出してもらいましょう。
③解体撤去してもらえるのかを確認しておく
立体駐車場などを建て替える場合には、まずは既存の建物の解体が必要です。この場合、見積もり金額に、解体撤去費用が含まれているのかを確認します。解体撤去費用が別途の可能性もあるので、それらを含んだ見積り書を依頼します。
なお、これら解体を専門で行う業者も、インターネットで探すことは可能です。仮に、複数社に解体費用の見積もりを依頼し、建て替えを行う業者の見積もりよりも安かったら、解体のみ別業者に依頼するのもありです。
④こまめにメンテナンスしてもらえる業者を選ぶ
駐車場の施工業者は、ただものを作るだけではありません。施工後の小まめなメンテナンスも重要です。駐車場内で何か事故やトラブルが起きてからでは遅いので、機器設備の異常にいち早く気づける確かな技術力と経験・実績が必要となるのです。
定期的なメンテナンスサポート、緊急時のサポート体制、また中長期的な保守・保全の計画まで、安心のサポート体制が整った業者を選んだほうがよいです。
⑤税制法の改正がないかを確認しておく
駐車場の耐用年数や減価償却の扱いは、税制法の改正によって変わる可能性があります。
具体的には、法定耐用年数の見直しや、特別償却・税額控除などの優遇措置の追加や廃止が行われることもあるでしょう。これらの変更は、工事のタイミングや更新時期、さらには経営計画全体に影響を与えることも少なくありません。
最新の税制情報を把握せずに工事を進めてしまうと、本来得られるはずの節税メリットを逃してしまう可能性があります。設備更新や大規模修繕の前には、必ず税理士や専門家に相談し、有利な条件で計画を進めていきましょう。
駐車場の耐用年数に関するよくある質問
駐車場経営では、法定耐用年数やメンテナンスのタイミングを正しく理解しておくことが、長期的な安定運営に直結するといっても過言ではありません。
ここからは、駐車場のオーナーから寄せられる代表的な質問と回答をまとめましたので、ぜひ参考にしてみてください。
駐車場の法定耐用年数は?
駐車場の法定耐用年数は、その構造や設備の種類によって異なります。
例えば、アスファルト舗装は10年、コンクリート舗装は15年が目安です。立体駐車場の場合は構造によってさらに幅があり、鉄骨造は31年、鉄筋造は38年と長く設定されています。
一方、コインパーキングの精算機やロック板などは、法定耐用年数が5年と短く、比較的早い時期に交換が必要になる場合もあるでしょう。耐用年数を把握しておくことで修繕や更新のタイミングを予測できるため、無駄な出費を抑えた計画につながるでしょう。
駐車場の区画ラインの耐用年数は?
駐車場の区画ラインには、法定耐用年数の規定はありません。しかし、実際は塗料の摩耗や色あせ、利用者の視認性低下によって塗り直しが必要になるため、一般的には3〜5年程度で再塗装するケースが多いでしょう。
一方で、降雪地域や交通量の多い場所では1〜2年で視認性が落ちる場合もあります。ラインが見えにくくなると駐車位置のずれやトラブルの原因にもなりかねないため、定期点検と早めの再塗装が望ましいといえます。
駐車場の精算機の耐用年数は?
コインパーキングなどに設置される精算機の法定耐用年数は、5年です。これは税務上の目安であり、実際には部品交換や定期的な保守を行えば、10年近く使える場合もあるでしょう。
ただし、雨風や直射日光にさらされる屋外設置の場合は、内部の電子部品や機構部分が早く劣化する傾向があります。故障や誤作動が増えてきてしまうと、利用者の信頼性にも関わりかねないため、早めの更新をおすすめします。
駐車場の耐用年数を過ぎるとどうなりますか?
法定耐用年数を過ぎても、設備が安全かつ正常に機能していれば、そのまま使用することは可能です。しかし、経年劣化によって修繕頻度が増し、維持管理コストが高くなる傾向があるため、注意しましょう。
また、税務上は耐用年数を過ぎると減価償却の計上が終了するため、節税効果は得られなくなります。経営面では、耐用年数を超えた設備は故障のリスクも高まるため、安全性と利用者満足度を維持する観点からも更新計画を立てておくことが重要です。
まとめ
駐車場経営では、舗装や設備、防犯機器などにそれぞれ法定耐用年数が定められており、アスファルト舗装は10年、コンクリート舗装は15年、立体駐車場は構造によって15年〜38年と幅があります。これらは税務計算の基準であり、適切なメンテナンスを行えば寿命を延ばすことも可能です。
また、減価償却を活用すれば、設備や建物の購入費用を耐用年数にわたって経費化でき、節税や収支の安定化につながります。ただし、資産管理や更新費用の準備、税制改正への対応など、計画的な運営が不可欠といえるでしょう。
駐車場経営を成功させるためには、耐用年数や税務の知識を活かしながら、定期的な点検・更新を行い、利用者が安心して使える環境を維持することが大切です。
本記事の内容を踏まえた上で、必要に応じて信頼できる業者や専門家などと連携をしながら、長期的な視点で安定収入を目指しましょう。
※本記事は可能な限り正確な情報を元に制作しておりますが、その内容の正確性や安全性を保証するものではありません。引用元・参照元によっては削除される可能性があることを予めご了承ください。また、実際の土地活用についてや、税金・相続等に関しては専門家にご相談されることをおすすめいたします。