建物の減価償却とは?計算方法や耐用年数などを詳しく解説

減価償却の仕組みはご存知でしょうか。減価償却を適切に行うことで、税務リスクを回避しながら節税につなげられます。しかし、計算方法や耐用年数の考え方などを理解するのは簡単ではありません。 本記事では、建物の減価償却の基本から計算方法、耐用年数の違いを解説します。減価償却を活用した土地活用も紹介しますので、最後までご覧ください。

建物の減価償却とは?計算方法や耐用年数などを詳しく解説のイメージ

目次

  1. 1建物の取得価格の確認方法
  2. 2建物の減価償却の計算方法|定額法・定率法の違い
  3. 3建物の減価償却の耐用年数|構造・用途ごとの違い
  4. 4建物の減価償却のよくある質問
  5. 5減価償却を活かした土地活用には「駐車場経営」がおすすめ
  6. 6まとめ

建物の減価償却とは?

建物を所有・取得・活用する際は、減価償却という会計処理が必要です。減価償却の仕組みを理解しておくことで適切な税務処理を行い、経費計上をスムーズに進められます。また、減価償却の計算方法や適用ルールを知ることで、節税対策につなげることが可能です。

まずは、減価償却の基本的な定義や必要性、減価償却累計費との違いを見ていきましょう。
 

減価償却の定義

減価償却とは、建物などの固定資産の取得費用を耐用年数にわたって分割し、毎年の経費として計上する会計処理のことです。

建物は時間の経過とともに老朽化し、価値が減少します。この減少分を適切に費用として認識することで会計上の利益を正しく計算でき、適切な税務処理を実施できます。

例えば、1,000万円で購入した建物の耐用年数が20年の場合は、毎年50万円を減価償却費として計上できます。結果として、建物の取得費用を一度に全額計上するのではなく、長期間にわたって分散できます。

減価償却は企業だけではなく、個人の不動産オーナーなどにも関係する重要な会計ルールの一つです。

なぜ建物に減価償却が必要なのか?


建物は長期間にわたって使用されるため、時間の経過とともに価値が減少します。つまり、建物の取得費用を一度に全額計上すると、特定の年度の利益が大幅に減少しかねません。そこで、建物の費用を耐用年数に応じて分割し、毎年の経費として計上できる減価償却の仕組みが役立ちます。

減価償却を適切に行うことは、税務上のメリットにもつながります。例えば、減価償却費を計上することで課税所得を圧縮でき、支払う税金の削減が可能です。さらに、不動産オーナーや企業にとって、資金繰りの安定化にも役立つでしょう。

減価償却を活用することで資産の実際の価値を正確に把握し、売却時や経営判断での適切な対応を取ることが可能です。

減価償却と減価償却累計費の違い


減価償却とは、毎年の決算で計上する減価償却費のことです。一方、減価償却累計費は、取得した資産の減価償却を開始してからの累積額を示します。

例えば、耐用年数が10年の建物を購入し、毎年100万円を減価償却費として計上した場合、3年目の減価償却累計費は300万円です。減価償却累計費は、建物の帳簿価額を計算する際に使用され、売却時や除却時の損益計算に影響します。

建物を売却する際は、取得価格から減価償却累計費を差し引いた金額が「簿価(帳簿上の価値)」となり、金額と売却価格の差額で売却益や売却損が発生します。そのため、減価償却の処理を適切に行うことが、資産管理や税務対策において重要です。

建物の取得価格の確認方法

建物の減価償却を適切に行うためには、取得価格を正しく把握する必要があります。取得価格は、建物の減価償却費を計算する基礎となるため、誤った金額を設定すると税務処理に影響を及ぼしかねません。

本章では、取得価格の定義や具体的な確認方法を解説します。

取得価格とは?

取得価格とは、建物を購入あるいは建設する際にかかった費用総額のことです。

具体的には、以下のような費用が含まれます。
 

  • 建物本体の購入価格あるいは建設費
  • 建築確認申請費用や設計費用
  • 建物の取り壊し費用
  • 登記費用(建物部分)
  • 仲介手数料(建物部分)
  • 不動産取得税(建物部分)
  • 一定の借入利子 など

ただし、建物と土地を一括で購入した場合は、取得価格を明確に区分する必要があります。なぜなら、土地は減価償却の対象外であり、減価償却計算を行う際は建物部分のみの取得価格を算出する必要があるからです。

減価償却に関係する建物の取得価格の確認方法



減価償却を正しく行うためには、建物の取得価格の把握が不可欠です。建物の取得価格を確認する方法として、以下のような手段があります。
 

  • 売買契約書を確認する
  • 固定資産税評価証明書を確認する
  • 不動産会社や税理士に相談する など

売買契約書には建物と土地の価格が個別に記載されていることが多いため、取得価格を正確に把握できます。また、固定資産税評価証明書には、建物と土地の評価額が記載されており、そこから取得価格の推測が可能です。万が一、購入時の価格内訳が不明な場合は不動産会社や税理士に相談することで、適切な割合で取得価格を設定できるでしょう。

土地と建物の金額内訳が不明な場合の取得価格の確認方法

建物と土地を一括購入すると、契約書に個別金額が記載されていない場合もあるでしょう。この場合は、建物の取得価格を算出する方法として、以下が挙げられます。
 

  • 固定資産税評価額の按分
  • 標準的な割合を参考にする
  • 税理士や会計士に相談する など

まずは、固定資産税評価証明書に記載された建物と土地の評価額の割合を使い、取得価格を按分する方法です。評価額が「建物:土地=40:60」の場合は、総取得価格の40%を建物の取得価格として計算します。

次に、地域や物件の特性で異なりますが、建物と土地の価格比率が一般的にどの程度かを調査し、按分する方法もあります。

正確な金額の把握が難しい場合は税務処理に精通した専門家に相談し、合理的な方法で按分を行いましょう。

建物の減価償却の計算方法|定額法・定率法の違い

建物の減価償却には、「定額法」と「定率法」の計算方法があります。どちらの方法を採用するかによって毎年の減価償却費が変わり、税務やキャッシュフローに影響を与えるため、適切な方法の選択が必要です。

本章では、定額法と定率法の違いや計算方法、具体的なシミュレーションを解説します。

定額法の計算方法

定額法とは、建物の取得価格から残存価額を差し引いた額に定額法の償却率を掛けることで毎年一定額を減価償却費として計上する方法です。

具体的な計算式は、以下のとおりです。
 

計算式 取得価額×定額法の償却率=各年の償却費の額
例:3,000万円の木造住宅
(耐用年数22年)の場合
3,000万円 ×(1 ÷ 22)= 約136.4万円/年


定額法では毎年の減価償却費が一定であるため、会計上の計画が立てやすいというメリットがあります。

参照:No.2106 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)|国税庁
参照:主な減価償却資産の耐用年数表|国税庁

定率法の計算方法

定率法とは、毎年の減価償却費を取得価格ではなく、帳簿価額(減価償却後の残存価額)に一定の割合を掛けて計算する方法です。

具体的な計算式は、以下のとおりです。
 

計算式 1年目の償却費の額=取得価額×定率法の償却率
例:3,000万円の木造住宅
(償却率0.046)の場合
3,000万円 × 0.046= 138万円/年

※定率法の2年目以降の償却費は、以下のいずれかにて計算
 
各年の償却費の額=期首未償却残高×定率法の償却率
 
各年の償却費の額=改定取得価額×改定償却率



定率法は初年度の減価償却費が高く、年々減少する特徴があるため、開業当初や利益が大きい時期に節税を図る際に有効です。

参照:No.2106 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)|国税庁
参照:減価償却資産の償却率等表|国税庁

建物の減価償却の具体的な計算シミュレーション

定額法と定率法を比較するために、以下の条件でシミュレーションを行います。

シミュレーション条件
 

  • 取得価格:1,000万円
  • 耐用年数:22年(木造住宅)
  • 定額法の償却率:0.045
  • 定率法の償却率:0.046

1~5年目の減価償却費は、以下のとおりです。
年度 定額法の減価償却費 定率法の減価償却費
1年目 約45万円 46万円
2年目 約45万円 約43.9万円
3年目 約45万円 約41.9万円
4年目 約45万円 約39.9万円
5年目 約45万円 約38.1万円

上記より、定額法は毎年の減価償却費が一定であるのに対し、定率法は後半に減少することがわかります。

参照:No.2106 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)|国税庁
参照:減価償却資産の償却率等表|国税庁
 

建物の減価償却の耐用年数|構造・用途ごとの違い

建物の減価償却を行う際は、正確な耐用年数の設定が不可欠です。耐用年数とは、税務上で建物が使用できる期間を指し、この期間から減価償却費を計算します。耐用年数は建物の構造や用途によって異なり、国税庁の基準によって決定されます。

本章では、耐用年数の基本的な考え方と建物の構造・用途ごとの耐用年数を解説します。

法定耐用年数とは?

法定耐用年数とは、税法上で定められた固定資産の使用可能な年数のことであり、減価償却の計算基準になります。国税庁が定める「減価償却資産の耐用年数表」によって、建物の構造や用途ごとに異なる耐用年数が適用されます。

耐用年数を決める際に影響する要素は、以下のとおりです。
 

  • 建物の構造(木造・鉄筋コンクリート造・軽量鉄骨造など)
  • 建物の用途(住宅・事務所・工場・倉庫など)
  • 改修やリフォーム有無(大規模改修があると耐用年数の変更が必要な場合がある) など

耐用年数は減価償却費の計算に大きな影響を与えるため、誤った耐用年数を適用すると税務上の問題が発生する可能性があるため、注意しましょう。

参照:主な減価償却資産の耐用年数表|国税庁

【国税庁】建物の構造・用途ごとの耐用年数一覧

国税庁が定める耐用年数表から、主な建物の耐用年数を以下にまとめます。
 

構造・用途 細目 耐用年数
木造・合成樹脂造のもの 事務所用のもの 24年
店舗用・住宅用のもの 22年
飲食店用のもの 20年
旅館用・ホテル用・病院用・車庫用のもの 17年
公衆浴場用のもの 12年
工場用・倉庫用のもの(一般用) 15年
木骨モルタル造のもの 事務所用のもの 22年
店舗用・住宅用のもの 20年
飲食店用のもの 19年
旅館用・ホテル用・病院用・車庫用のもの 15年
公衆浴場用のもの 11年
工場用・倉庫用のもの(一般用) 14年
れんが造・石造・ブロック造のもの 事務所用のもの 41年
店舗用・住宅用・飲食店用のもの 38年
旅館用・ホテル用・病院用のもの 36年
車庫用のもの 34年
公衆浴場用のもの 30年
工場用・倉庫用のもの(一般用) 34年



上記以外にも、「鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造のもの」や「金属造のもの」などで細かく耐用年数が設定されています。

さらに、建物附属設備や器具・備品などの耐用年数が設定されていますので、必要に応じて確認をしましょう。

参照:主な減価償却資産の耐用年数表|国税庁
 

建物の減価償却のよくある質問

ここでは、建物の減価償却に関するよくある質問に回答します。

減価償却が適用されないケースとは?

土地は減価しないため、減価償却の対象にはなりません。また、自宅として使用する建物も対象外ですが、一部を賃貸に出している場合は「賃貸部分のみ」減価償却ができます。

また、相続や贈与で取得した建物も取得費が発生していないため、減価償却の対象にはなりません。ただし、賃貸や事業用として使用する場合は適用されることもあります。

さらに、未使用の建物の減価償却はできませんが、事業目的で使用する場合は一定の要件を満たせば適用できるため、国税庁のホームページなどで確認をしてみましょう。

建物をリフォームした場合の減価償却は?

リフォーム費用が「資本的支出」か「修繕費」かによって、取り扱いが異なります。

増築や耐震補強など建物の価値を向上させる場合は資本的支出として資産計上し、新たな耐用年数で減価償却を行います。一方、壁紙の張り替えや設備の交換など維持管理の範囲内であれば、修繕費として一括経費計上ができます。

どちらに分類されるかは税務基準によって異なるため、リフォームを行う際は事前に確認をしましょう。

減価償却をしないとどうなる?

減価償却を行わないと取得費を経費に計上できずに所得だけが増えてしまい、結果的に税負担が大きくなります。また、売却時の帳簿価額が高くなり、譲渡所得税が増える可能性も出てくるでしょう。

さらに、法人などの場合は、減価償却を適用しないと税務調査で指摘を受けるリスクがあるため、適切に処理することが不可欠です。

減価償却を活かした土地活用には「駐車場経営」がおすすめ


土地を活用する方法の一つとして、駐車場経営があります。特に、ご自身で駐車場経営を行う場合、アスファルト舗装や駐車ライン整備、フェンスや看板の設置費用などが減価償却の対象となり、課税所得を圧縮できるため、税務上のメリットがあります。

また、駐車場経営はアパートや店舗を建てる場合よりも初期投資が抑えられ、管理の手間も少ないため、土地活用の選択肢として人気です。ただし、土地自体は減価償却の対象外であることに注意が必要です。

耐用年数については、たとえばアスファルト舗装が15年、フェンスが10年といった具体的な法定年数が定められています。詳細は以下の記事をご覧ください。

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駐車場経営を活用することで、初期投資を抑えつつ、安定した収益を得ながら経費計上で税負担を軽減できる可能性があります。

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まとめ

建物の減価償却は、税務処理や資産管理における重要な役割を担っています。取得価格や耐用年数を正しく把握し、適切な減価償却を行うことで節税対策や経営の安定化にもつながるでしょう。

また、リフォームの際は資本的支出か修繕費かを判断し、減価償却の適用方法を正しく理解しておくことが不可欠です。

減価償却を行わないと税負担が増えたり、売却時の課税額が高くなったりする可能性があるため、適切な処理を行いましょう。さらに、老朽化した建物の維持管理にかかるコストを考慮し、土地の有効活用を検討することもおすすめです。

一つの選択肢として「駐車場経営」は初期投資が比較的少なく、減価償却を活用しながら安定した収益を得られる有効な土地活用といえるでしょう。

本記事を参考に建物の減価償却の仕組みを理解し、自身にとって最適な資産運用方法を検討してみてください。

※本記事は可能な限り正確な情報を元に制作しておりますが、その内容の正確性や安全性を保証するものではありません。引用元・参照元によっては削除される可能性があることを予めご了承ください。また、実際の土地活用についてや、税金・相続等に関しては専門家にご相談されることをおすすめいたします。

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