2025年10月08日公開
2025年10月08日更新
アパート経営で失敗しない!利回りの種類・計算式・注意点などを解説
アパート経営を始める際に注目されるのが「利回り」です。利回りはアパート経営の収益性を判断する重要な指標であり、物件選びや投資判断に欠かせません。しかし、利回りには複数の種類があり、計算方法や見方を誤ると、想定より利益が出ない結果につながりかねません。 そこで今回は、アパート経営における利回りの意味や種類、計算式などを解説します。さらに、新築・中古別の利回り相場や利回りを高める工夫、投資判断で注意すべきポイントもお伝えします。

目次
アパート経営の利回りとは?
アパート経営の利回りは、投資金額に対してどれだけの収益を得られるかを示す指標です。不動産投資の収益性を測る基本であり、株式投資における配当利回りと同じような位置づけといえます。そのため、利回りはただ単に計算して終わりではなく、投資判断や資金計画の精度を高めるために欠かせないチェックポイントとなります。
まずは、利回りの意味と重要性に加え、利回りを確認すべき理由から見ていきましょう。
アパート経営における利回りの意味と重要性
アパート経営における利回りは、投資資金に対する収益性を示す指標です。金融商品でいう「利率」のような位置づけで、不動産投資の収益性を判断するための基準となります。
例えば、同じ金額で購入したアパートであっても、家賃収入や維持費用によって利回りは大きく変わります。利回りを正しく把握することで投資の採算性を客観的に比較でき、将来の収益シミュレーションも立てやすくなるでしょう。
総じて、アパート経営における利回りとは、どれだけ効率的に資金を運用できているかを示す重要な指標といえます。
アパート経営で利回りを確認すべき理由
アパート経営では、購入時の物件価格や融資条件だけでなく、運用後の家賃収入や経費によって収益性が変わります。そのため、利回りを確認することは長期的に安定した収益を確保するためには不可欠といえるでしょう。
利回りを確認すべき具体的な理由は、次の3つです。
1つ目は「投資判断の基準になる」ことです。複数の物件を比較する際に利回りを把握しておけば、どの物件が効率的に利益を生み出せるかを判断できます。
次は「資金計画を立てやすくなる」ことです。返済額や修繕費を考慮し、実質的な利回りを計算することで収支の見通しを具体的に立てられます。
最後は「リスク管理につながる」ことです。利回りが低い場合はキャッシュフローが不足しやすく、突発的な修繕や空室リスクに対応できなくなる恐れがあるため、注意しましょう。
以上から、利回りを定期的に確認することは、アパート経営を成功に導くための第一歩といえます。
アパート経営の利回りの種類
アパート経営における利回りにはいくつかの種類があり、それぞれ計算方法や意味合いが異なります。物件の収益性を正しく判断するためには、これらの違いの理解は不可欠です。
ここでは代表的な「表面利回り」や「実質利回り」、そして補助的に使われる「その他の利回り」について解説します。
表面利回り
表面利回りとは、年間の家賃収入を物件購入価格で割って算出する指標で、「グロス利回り」とも呼ばれます。計算がシンプルなため、投資用不動産の広告や資料にはほとんどの場合、この表面利回りが掲載されています。
例えば、2,000万円で購入したアパートから年間200万円の家賃収入を得られる場合は、表面利回りは10%となります。ただし、この数値には管理費、修繕費、固定資産税、空室リスクなどが反映されていません。そのため、実際の手残り額とは差があることを理解しておく必要があります。
表面利回りは、あくまで物件選びの目安として利用し、その後の詳細なシミュレーションを行うことが大切です。
実質利回り
実質利回りとは、家賃収入から必要経費を差し引いた上で算出する、より現実的な収益性を示す指標です。管理費、修繕費、固定資産税、火災保険料、仲介手数料などを考慮するため、キャッシュフローに近い実態を把握できます。
例えば、表面利回りが10%の物件でも、年間50万円の経費がかかる場合の実質利回りは、7.5%程度に下がります。つまり、同じ物件でも「表面上は高利回りに見えるが、実際は収益性が低い」というケースも多々あるため、注意しましょう。
投資判断の際には、表面利回りだけでなく実質利回りを必ず確認し、シミュレーションを行うことが失敗を防ぐポイントといえます。
その他の利回り
表面利回り・実質利回り以外にも、投資判断を補助する利回りの指標があります。
例えば「想定利回り」は、満室を前提に計算する利回りで空室リスクを考慮しない分、理想値としての意味合いが強いです。実際には、常に満室とは限らないため、あくまでも比較材料として考えるべきです。
また、金融機関の融資判断などで重視される「NOI利回り(Net Operating Income利回り)」は、運営費を差し引いた純収益を基準とする指標です。こちらは、資産の長期的な運用力を測る際に有効とされています。
こうした多様な利回りを組み合わせて理解することで、アパート経営の収益性をより立体的に捉えられるようになるでしょう。
アパート経営の利回り計算式と具体例
利回りは、アパート経営の収益性を判断するための重要な指標です。ただし「表面利回り」と「実質利回り」では計算方法が異なり、数値から読み取れる意味も変わってきます。
ここでは、それぞれの計算式とシミュレーションを紹介します。
表面利回りの計算式とシミュレーション
表面利回りは、年間の家賃収入を物件価格で割って求めるシンプルな指標です。不動産会社の広告や物件情報には、この表面利回りが記載されていることが大半でしょう。
表面利回りの計算式は、次のとおりです。
表面利回り(%)=年間家賃収入÷物件価格×100 |
例えば、2,000万円でアパートを購入し、月15万円(年間180万円)の家賃収入を得られるとしましょう。
180万円 ÷ 2,000万円 × 100 = 9% |
この場合の表面利回りは、9%となります。計算が簡単で、物件同士を比較する際に有効ですが、修繕費や管理費、固定資産税などの経費、さらには空室リスクなどを考慮していない点がデメリットです。
つまり、表面利回りは見かけの数字であるため、そのまま鵜呑みにはせず、次に紹介する実質利回りで精査することが欠かせません。
実質利回りの計算式とシミュレーション
実質利回りは、家賃収入から経費を差し引いて算出する、現実的な収益性を示す指標です。管理費や修繕費、固定資産税、保険料、仲介手数料などの支出を考慮するため、実際に手元に残るキャッシュフローをイメージできます。
実質利回りの計算式は、次のとおりです。
実質利回り(%)=(年間家賃収入−年間経費)÷物件価格×100 |
先ほどの例で、年間180万円の家賃収入があり、管理費や修繕費、固定資産税などの経費が年間40万円かかると仮定しましょう。
(180万円−40万円)÷2,000万円×100=7% |
この場合の実質利回りは、7%となります。表面利回りでは9%でも、経費を加味すると実際の手残りは大きく減少することがわかります。特に、アパート経営は突発的な修繕や空室リスクが避けられないため、実質利回りから収益性を見極めることが重要です。
実際の投資判断では「表面利回りで候補を絞り、実質利回りで収益性を検証する」という流れが一般的です。両者をセットで確認することで、より正確な投資判断につなげましょう。
アパート経営の利回り相場
アパート経営において、利回りは物件の新築・中古によって異なります。新築は安心感や人気がある一方で利回りが低くなりやすく、中古は初期費用を抑えられる分、利回りが高めになる傾向があります。
それぞれの相場を把握しておくことは投資判断の基準には不可欠なため、次項にて詳しく見ていきましょう。
新築アパート(一棟)の利回り相場
新築アパートの利回りは、一般的に5〜6%前後が相場といわれています。
建物が新しいため入居者の人気が高く、空室リスクが低いのが大きなメリットです。また、修繕やメンテナンスの必要も少なく、経営初期は安定した運営がしやすい点も魅力といえるでしょう。
一方で、物件価格が高いため、同じ家賃収入でも利回りは低く算出されやすくなります。また、将来的に築年数が経つと家賃が下がる傾向があるため、長期的に見てどの程度の収益が期待できるかの見極めが必要です。
総じて、新築は「安定性を重視した投資スタイル」に向いているといえるでしょう。
中古アパート(一棟)の利回り相場
中古アパートの利回りは地域や築年数によって差はありますが、一般的に7〜8%程度が相場といわれています。
購入価格が新築より低いため、同じ家賃収入でも利回りが高く出やすいのが特徴です。少ない自己資金で始められるため、投資効率を重視する人には魅力的な選択といえるでしょう。
ただし、中古物件は修繕費やメンテナンス費用がかかりやすく、空室リスクも新築に比べて高まる傾向があります。また、築年数が古い場合は家賃下落のスピードも速いため、購入前に修繕履歴や今後必要となる工事費用などを確認しておきましょう。
総じて、中古アパートは「高利回りを狙いたいが、管理リスクも受け入れる投資スタイル」に適しているといえます。
アパート経営で利回りを高める方法
ここからは、アパート経営で利回りを高める方法として、以下の5つを紹介します。
- 空室対策で入居率を高める
- 修繕費・管理費の見直しによるコスト削減
- 設備投資やリフォームで資産価値を上げる
- 家賃を下げない
- 保険料の見直し
①空室対策で入居率を高める
利回りを上げる効果的な方法の一つが、空室を減らすことです。どれだけ家賃設定が高くても、空室が続けば利回りは大きく下がってしまいかねません。
具体的には、Wi-Fi無料やオートロックなどの人気設備を導入する、ターゲット層に合った間取りやデザインに改善する、管理会社と協力して入居者募集の広告を強化するなどの工夫が有効です。
入居率を高めることで安定収入が確保でき、結果として利回りアップにつながりやすいでしょう。
②修繕費・管理費の見直しによるコスト削減
利回りは収入だけではなく、支出の抑制でも改善できます。管理会社との契約内容を定期的に見直し、相場よりも高すぎないかどうかを確認しましょう。また、修繕費用についても、複数業者に見積もりを依頼してコストを適正化する方法などがあります。
必要以上に高額な経費を支払っていると、知らないうちに利回りを圧迫してしまうため、コストの見直しは利回り改善の基本といえるでしょう。
③設備投資やリフォームで資産価値を上げる
適切な設備投資やリフォームは、家賃の維持や入居率の向上につながります。例えば、老朽化した水回りをリフォームしたり、エアコンや宅配ボックスを新設したりすると、入居者からの評価が高まりやすくなるでしょう。
一時的に費用はかかりますが、資産価値が上がれば空室を防ぎ、長期的に利回りを改善できる可能性があります。「投資=コスト」ではなく「将来の収益を生むための投資」と捉えることが大切です。
④家賃を下げない
空室が続くと、家賃を下げてしまうオーナーも少なくありません。しかし、一度下げた家賃は元に戻すのが難しく、長期的に利回りを低下させる原因にもなり得ます。
そのため、安易な値下げではなく、先述の空室対策や設備改善を優先し、家賃を維持できる環境づくりを意識することが重要です。適正な家賃を保つことができれば、長期的に安定した利回りを確保できるでしょう。
⑤保険料の見直し
意外と見落とされがちなことが、火災保険や地震保険などの保険料の見直しです。契約を更新する際に補償内容を精査し、不要な特約を外す、または他社に切り替えることでコストを抑えられる場合があるでしょう。
保険は長期にわたって支払い続ける固定費のため、定期的に見直すだけでも利回り改善に効果的といえます。
アパート経営で利回りを判断する際の注意点
最後に、アパート経営で利回りを判断する際の注意点として、以下の3つを解説します。
- 利回りだけで投資判断をしない
- 立地条件や将来の市場動向も確認する
- 不動産投資ローンの金利・返済計画を立てる
①利回りだけで投資判断をしない
利回りは収益性を測る重要な指標ですが、万能ではありません。表面利回りが高くても、空室が多かったり修繕費がかさんだりすると、実際の手残りは大きく下がりかねません。
特に、初心者は「高利回り物件=お得」と考えてしまいがちですが、数字だけで判断するのは危険です。必ず、実質利回りや将来の収支シミュレーションを確認し、長期的に安定した収益が見込めるかどうかを見極めましょう。
②立地条件や将来の市場動向も確認する
不動産は立地が命といわれるほど、エリアの特性が経営に大きく影響します。利回りが高くても、人が集まりにくい地域では空室が発生しやすく、結果的に収益が下がるリスクがあるといえるでしょう。
また、将来的な人口動態や再開発の有無、交通インフラの整備計画なども考慮することが大切です。短期的な数字だけにとらわれず、将来の需要や資産価値の変動を見通すことで、より堅実な投資判断につなげることを心がけてください。
③不動産投資ローンの金利・返済計画を立てる
アパート経営では、融資を活用して購入するケースが多くあります。この場合は、利回りだけではなく、ローンの金利や返済計画も重要な判断材料です。
例えば、利回りが8%の物件であっても、ローン返済額が高ければ手元に残る利益は大きく削られてしまいます。一方で、金利の低いローンを活用すれば、実質的な収益性は改善されるでしょう。
そのため、物件を検討する際には、必ずローン返済後のキャッシュフローをシミュレーションし、無理のない返済計画を立てることが大切です。
まとめ
アパート経営の利回りは、投資効率や収益性を測る際に欠かせない指標です。表面利回りと実質利回りを正しく理解し、計算式やシミュレーションを活用することで、数字の裏にある実態を把握できます。また、新築と中古で相場が異なることや経費や空室率などによって実際の利回りが変わる点も見逃せません。
さらに、利回りを高めるためには、空室対策やコスト削減、リフォームによる資産価値の向上など、日々の工夫が求められます。一方で、利回りだけで投資を判断するのは危険であり、立地条件や将来の需要、ローン返済計画なども含めた総合的な視点が必要です。
アパート経営を長期的に成功させるためには、表面上の数字ではなく、実質的な収益と将来のリスクを見据えた判断が不可欠です。利回りを定期的に確認しながら、戦略的に物件を運用していきましょう。
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