店舗兼住宅とは?活用方法・間取りのポイント・注意点を紹介

店舗兼住宅とは、店舗と住居の両方に使える間取り設計をしている建物です。店舗兼住宅は自営業をしたい人には店舗と住宅の行き来が簡単で、ビジネスもプライベートも充実させられるメリットがあります。店舗や住宅だけを利用したい人にも活用できる物件種別です。この記事では店舗兼住宅の活用方法や、収益化のために重要な間取りのポイント、経営のときの注意点を解説します。

店舗兼住宅とは?活用方法・間取りのポイント・注意点を紹介のイメージ

目次

  1. 1店舗兼住宅とは
  2. 2店舗兼住宅の活用方法
  3. 3店舗兼住宅のメリット
  4. 4固定資産税の特例を受ける設計ができる
  5. 5店舗兼住宅の間取りのポイント
  6. 6店舗兼住宅にするときの注意点
  7. 7店舗兼住宅にかかる税金
  8. 8店舗兼住宅と併せて検討したい駐車場経営
  9. 9まとめ

店舗兼住宅とは

店舗兼住宅とは、店舗にするスペースと居住目的のスペースを兼ね備えている建物です。1階を店舗にして2階を住宅にしたり、平屋で1階に店舗と住宅のスペースを作ったりするなど、さまざまな間取りで店舗兼住宅を設計できます。

店舗兼住宅は小売店、飲食店、美容院、クリニックなどの経営をしたいときに、自宅を兼ねる建物としてよく検討されています。また、店舗兼住宅は土地活用にも応用可能で、広い土地を有効活用して収益化したい人や不動産投資を始めたい人からも注目されている物件です。
 

店舗兼住宅の活用方法



店舗兼住宅はさまざまな形で活用できます。以下の4つの方法が収益化を目的とした活用方法として一般的です。
 

  • 店舗兼住宅をそのまま賃貸する
  • 自宅にして店舗経営をする
  • 自宅にして貸店舗にする
  • 店舗経営をして住宅を賃貸する

店舗兼住宅は店舗と住宅を兼ね備えていて、どちらも貸すことも自分で利用することもできます。店舗兼住宅を手に入れる目的に合わせて収益化の方法を決めましょう。

店舗兼住宅のメリット

店舗兼住宅は独立店舗や住宅と比べると特別なニーズに応えられる物件です。ここでは店舗兼住宅を活用するメリットを紹介します。
 

住宅と店舗の距離が実質ゼロになる

店舗兼住宅は住宅と店舗が同じ建物内にあるので、住宅から店舗に通勤するときの距離が実質ゼロになります。自営業をする人にとって通勤時間がかからないのがメリットです。

経営によって収益源にできる

店舗兼住宅は店舗と住宅のどちらも賃貸経営に使えます。賃貸経営をすれば収入源になるのがメリットです。今は自営業をしているけれどしばらくしたら引退したいという場合にも、店じまいをした時点で店舗部分は賃貸経営で収入源にできます。

住宅ローンを組める可能性がある

店舗兼住宅は店舗とは違って住宅ローンを組める場合があるので、費用を工面しやすいのがメリットです。ローンの種類によって違いはありますが、例えば、フラット35を利用する場合には少なくとも以下の条件を満たすように店舗兼住宅を設計することが必要です。
 

  • 床面積の2分の1以上が居住用になっている
  • 床面積が一戸建てや連続建てなどでは70㎡以上、共同建てでは30㎡以上ある
  • 住宅金融支援機構が定めた技術基準に適合している

要件さえ満たせば低金利の住宅ローンで店舗兼住宅を建てられるので、利回りを上げやすいのがメリットです。

参照:【フラット35】ご利用条件:長期固定金利住宅ローン
参照:【フラット35】の対象となる住宅・技術基準:長期固定金利住宅ローン 
 

住宅ローン控除の適用される建物にできる

店舗兼住宅は設計によっては住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)も適用可能なので、税金を抑えて利益を増やしやすいのがメリットです。認定住宅かZEH水準省エネ住宅または省エネ基準適合住宅か買取再販住宅などに該当するかによって住宅ローン控除の適用条件は異なります。店舗兼住宅で住宅ローン控除を適用するには、設計上、少なくとも以下の条件を満たすことが必要です。
 

  • 床面積の2分の1以上が居住用になっている
  • 家屋の床面積が50㎡以上ある
  • 住宅取得後6ヶ月以内に入居して居住している

条件を満たす店舗兼住宅にすれば税金の控除があるので収益効率が向上します。

参照:マイホームを持ったとき|国税庁


 

固定資産税の特例を受ける設計ができる

店舗兼住宅を建てると住宅用地の特例を受けられる場合があります。固定資産税を減らせるのがメリットです。住宅用地の特例では200㎡までの部分は1/6、200㎡を超える部分は1/3に土地の固定資産税を減らせる措置を受けられます。店舗兼住宅の場合には店舗部分と居住部分の割合と建物の種類によって以下のように減額率の低減が定められています。

 

建物 居住部分の割合 減額率の低減
5階建て以上の耐火建築物 1/4以上1/2未満 1/2
1/2以上3/4未満 3/4
3/4以上 1
上記以外 1/4以上1/2未満 1/2
1/2以上 1


専ら居住用に使用する形で店舗兼住宅を設計すれば通常の住宅と同じ減額率で固定資産税を減らせます。都市計画税も減税対象になるので、節税目的で店舗兼住宅にするのは賢い方法です。

参照:固定資産税・都市計画税(土地・家屋) | 税金の種類 | 東京都主税局


 

店舗兼住宅の間取りのポイント

店舗兼住宅を建てて経営するときには間取りに注意が必要です。間取り設計を誤ると店舗も住宅も快適でなくなってしまいます。ここでは店舗兼住宅の間取り設計をするときに重要なポイントを解説します。
 

店舗を優先して配置する

店舗兼住宅では1階に店舗を設けることが原則です。2階以上になると顧客が入りにくくなるので集客力が低下します。1階でも大通りに面しているなど、視認性が良いところに店舗を配置することが重要です。ただし、クリニックのようにプライバシーが重視される店舗の場合には2階以上の方が良い場合もあります。店舗兼住宅では店舗の種類に合わせて間取りを設計することが大切です。

店舗と住宅の動線を分ける

店舗と住宅の動線は分けるのが基本です。店舗兼住宅では店舗の出入口と住宅の玄関を別にします。住宅区画と店舗区画は明確に区分して、接続される部分は最小限にすることが大切です。店舗兼住宅の店舗も住宅をまとめて賃貸する場合には、店舗と住宅の行き来がしやすい設計も取り入れることが重要です。しかし、店舗のみ、住宅のみの賃貸をする場合には間にロック付きのドアを設けるなどのセキュリティ対策が必要です。
 

店舗の天井を高めに設計する

店舗兼住宅では店舗と住宅の天井の高さに注意が必要です。店舗では広いという印象をもってもらえるように天井を高めに設計すると、顧客から好まれる仕上がりになります。商品販売をする店舗の場合には大きな商品も設置しやすく、棚も高くして多くの商品を置けるようになるメリットがあります。住宅よりも店舗の方が空間の広さに対する要求が大きいので気を付けましょう。
 

セキュリティ対策を設計に盛り込む

店舗兼住宅では店舗のセキュリティ対策を設計に盛り込むことが大切です。店舗の入口に防犯カメラを設置するなどの基本設計をしておくと安心です。

店舗を賃貸する場合にはセキュリティ設備の導入を借主に任せることもできます。しかし、セキュリティ対策が十分でなかったために強盗などのトラブルが起こると住宅側にも負担がかかります。借主によってセキュリティに対する意識の高さは違うので、オーナー側で最低限の用意をしておくのがおすすめです。
 

倉庫や休憩室を用意する

店舗兼住宅はバックヤードを考慮して間取り設計をしないと賃貸経営に活用するのは困難です。経営に必要なスペースや従業員が利用する部屋がバックヤードです。商品在庫や原材料などを格納する倉庫や、従業員の休憩室などが店舗経営で必要になります。更衣室や備品の収納庫なども求められる場合があるので、店舗に合わせた設計をすることが重要です。
 

トイレの設置方法を検討する

バックヤードに関連して重要なのがトイレの設置です。住宅用と店舗用で別にトイレを設置するのが基本ですが、店舗側にはトイレが複数必要な場合があります。従業員用と顧客用を分けた方が従業員も顧客も快適に利用できるからです。兼用トイレにすることも可能ですが、顧客満足度が低くなる原因になるため、店舗部分を賃貸するときには借主が見つかりにくくなる原因になります。
 

バリアフリーに対応する

現代はバリアフリー化が常識的になってきています。新たに店舗兼住宅を設計するときには、賃貸する部分はバリアフリーにしましょう。特に店舗はさまざまな人が利用するので、車いすやベビーカーなどでも利用しやすく、段差が少ない設計にすることが大切です。バリアフリーにすると補助金を受けられる場合もあるので、国や地域の支援状況を確認してみましょう。

参照:バリアフリー:バリアフリー関連補助金 - 国土交通省
参照:小規模事業者店舗改修助成事業 横浜市
 

駐車場スペースを確保する

店舗兼住宅は駐車場スペースを確保すると顧客が利用しやすくなります。顧客専用の駐車場があると利用者を増やせます。また、大量の仕入れをする店舗の場合には取引先から荷物を搬入するための駐車場スペースも必要です。店舗の種類によって駐車場スペースの必要性は違いますが、汎用性のある店舗兼住宅を作るなら設けておいた方が良いでしょう。

店舗兼住宅にするときの注意点

店舗兼住宅を経営するときにはあらかじめ押さえておきたいポイントがあります。ここでは店舗兼住宅の経営を始めて失敗しないために知っておきたい注意点は以下の通りです。

・店舗に向かない立地の場合がある
・同じ土地面積では店舗も住宅も狭くなる
・設計が複雑になるので初期費用が高くなりやすい
・ニーズが限られているので物件自体の売却は難しい
・用途地域によっては建てられない


特に気を付けておきたいのが用途地域です。用途地域とは都市計画法によって定められた都市の開発や市街地形成などのために決められている土地の用途です。店舗兼住宅を建てるときには以下のように床面積、用途地域、店舗の業種、建物の階数によって可否が決まります。住宅街に店舗兼住宅を建てたいときや、規模の大きな店舗兼住宅を考えているとき、遊休地の活用をするときには用途地域の確認が重要です。
 

床面積 150㎡以下 150㎡超500㎡以下 500㎡超1,500㎡以下 1,500㎡超3,000㎡以下 3,000㎡超10,000㎡以下 10,000㎡超
第一種低層住居専用地域 不可
第二種低層住居専用地域 日用品販売、喫茶店、理髪店、建具屋等のサービス業用で2階建て以下の店舗は可 不可
第一種中高層住居専用地域 日用品販売、喫茶店、理髪店、建具屋、物品販売、飲食店、損保代理店・銀行の支店・宅地建物取引業者等のサービス業用で2階建て以下の店舗は可 不可
第二種中高層住居専用地域 2階建て以下の店舗は可 不可
第一種住居地域 不可
第二種住居地域 不可
準住居地域 不可
田園住居地域 日用品販売、喫茶店、理髪店、建具屋等のサービス業用で2階建て以下の店舗は可 農産物直売所、農家レストラン等で2階建て以下の店舗は可 不可
近隣商業地域
商業地域
準工業地域
工業地域 不可
工業専用地域 物品販売及び飲食店を除いて可 不可

参照:用途地域 
参照:用途地域による建築物の用途制限の概要
 

店舗兼住宅にかかる税金

店舗兼住宅には店舗や住宅のように税金がかかります。ただ、店舗兼住宅の活用方法によってかかる税金に違いがあるので注意が必要です。ここでは店舗兼住宅の税金をわかりやすく解説します。
 

土地の固定資産税・都市計画税

店舗兼住宅を建てた土地には固定資産税がかかります。店舗兼住宅の設計によっては住宅用地の特例の対象になって減額を受けられます。土地の固定資産税評価額に対して特例を適用した課税標準額に、標準税率をかけた固定資産税の納税が必要です。
 

土地の固定資産税=土地の課税標準額×標準税率(1.4%)

また、都市計画事業や土地区画整理事業などの対象になっている地域では都市計画税の納税も求められます。都市計画税は固定資産税の課税標準額に基づいて、市区町村が0.3%を上限として税率を定めています。
 
土地の都市計画税=土地の課税標準額×税率(0.3%以下)

参照:総務省|地方税制度|固定資産税
参照:総務省|地方税制度|都市計画税

 

建物の固定資産税・都市計画税

店舗兼住宅の建物自体にも固定資産税・都市計画税がかかります。建物には住宅用地の特例は適用できませんが、建物が古くなると価値が下がるという観点から3年に1回は評価額が見直されます。評価時点での再建築価格に経年減点補正率など加えて得られた評価額に基づいて以下のように税額が計算される仕組みです。
 

建物の固定資産税=建物の固定資産税標準額×標準税率(1.4%)
建物の都市計画税=建物の固定資産税標準額×税率(0.3%以下)

償却資産税(償却資産の固定資産税)

店舗兼住宅では償却資産税が発生する場合があります。償却資産税とは事業者が所有する事業のように供することができる資産に対してかかる固定資産税です。構築物、機械、装置、工具、器具、備品などのうち減価償却の対象になっている固定資産が償却資産税の対象になります。償却資産税の税率は通常の固定資産税と同じです。
 

償却資産の固定資産税=償却資産の取得価額×標準税率(1.4%)

償却資産は土地や建物と違って償却資産は都市計画税の対象ではありません。ただ、店舗兼住宅では店舗で使用するパソコン、複合機、陳列棚、テーブル、精算機だけでなく、地面の舗装なども対象になります。減価償却の対象になる場合には償却資産税がかかる場合があるので注意が必要です。

参照:固定資産税(償却資産) | 税金の種類 | 東京都主税局
参照:都税:固定資産税・都市計画税(土地・家屋) | 都税Q&A | 東京都主税局
 

所得税

店舗兼住宅を経営して所得を得た場合には所得税の納税が必要です。店舗兼住宅の全体または一部を貸して賃料による所得を得た場合には不動産所得になります。自分で住んで店舗経営をした場合や、住宅部分を貸して店舗を自分で経営した場合には、店舗経営による利益が事業所得になるのが一般的です。

店舗兼住宅の経営による利益は総合所得になり、累進課税制度に従って給与所得などと併せた合計金額に対して税率と控除額が決まります。不動産所得や事業所得は損益通算が可能なので、店舗兼住宅の経営で損失が出たときには他の所得と相殺による節税が可能です。副業で店舗兼住宅の経営をする場合にも、給与所得から不動産所得や事業所得の損失を引き去って所得税を減らせます。

参照:所得税のしくみ|国税庁
参照:No.2250 損益通算|国税庁
 

消費税

消費税は店舗兼住宅での賃貸経営でも店舗経営でも発生します。消費税は商品やサービスの販売・提供によって課税される税金で、事業者が納付する義務を負う税金です。店舗で商品を販売したときには原則として10%(軽減税率対象の場合には8%)の消費税を納める義務を負います。ただし、取引内容によっては消費税の非課税取引や不課税取引になり、消費税を納める必要はありません。

土地の貸付や住宅の貸付は非課税取引です。しかし、店舗の貸付は課税対象になるため、店舗兼住宅を貸店舗として運用したときには消費税がかかります。店舗兼住宅を丸ごと賃貸した場合には、店舗部分は課税、住宅部分は非課税になるので注意が必要です。

参照:消費税のしくみ|国税庁

 

店舗兼住宅と併せて検討したい駐車場経営

店舗兼住宅で収益を得るには駐車場経営も視野に入れるのがおすすめです。土地が十分にあるなら駐車場を広く取ってコインパーキングにすることも可能です。店舗で買い物をした人には駐車料金の割引をする仕組みにすれば、店舗利用者にとっては普通の駐車場として利用できます。近くの店舗やクリニックなどを利用したい人が駐車場を利用して、駐車料金を払ってくれたり、店舗に訪れて購入してくれたりする可能性もあります。

立地によって駐車場をコインパーキングにしてどのくらいの収益を上げられるかが違います。好立地なら駐車マスを増やした方が収益性を上げられる可能性もあるので、土地を有効活用する方法として駐車場経営も合わせて検討しましょう。
 

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まとめ

店舗兼住宅は店舗と住宅を兼ね備えている建物です。飲食店やクリニックなどの店舗経営をしたい人から人気があります。店舗兼住宅は居住空間と店舗を上手く切り分けて、プライバシーを守りながら快適に生活できるようにしつつ、店舗経営も成功させられるようにする設計が必要です。自分で住んで店舗経営もすることもできますが、住居部分や店舗部分だけ、あるいは店舗兼住宅全体を貸して収益化する方法もあります。

店舗兼住宅では店舗があるので駐車場の需要があるのが一般的です。店舗兼住宅を設計するときには地域の駐車場の需要も考慮して、コインパーキング経営も並行して行うことも考えましょう。周辺に駐車場が不足している店舗がある場合や、駅周辺でコインパーキングの需要がある場合には収益性を上げられる方法なのでおすすめです。

 

※本記事は可能な限り正確な情報を元に制作しておりますが、その内容の正確性や安全性を保証するものではありません。引用元・参照元によっては削除される可能性があることを予めご了承ください。また、実際の土地活用についてや、税金・相続等に関しては専門家にご相談されることをおすすめいたします。
 

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