2025年01月30日公開
2025年01月30日更新
定期借地権の種類と特徴を解説!土地活用でのメリット・デメリットは?
定期借地権は土地活用のときに注目されています。定期借地権付きの物件を販売して運用しているケースもあるので、土地活用では詳細を理解して使うべきかどうかを判断することが重要です。この記事では土地活用で定期借地権を活用するメリット・デメリットを解説します。定期借地権の種類や借地権を設定するときに重要なポイントも説明します。
目次
定期借地権とは
定期借地権とは、土地を定期契約で利用する権利です。1992年(平成4年)の借地借家法によって定められました。借地借家法の第22条、第23条、第24条に定められている権利です。土地の所有者は定期借地権を他者に認めることで、契約に基づく一定期間について他者に土地を活用する権利を認める代わりに地代を申し受けることができます。
参照:建設産業・不動産業:定期借地権の解説 - 国土交通省
普通借地権との違い
普通借地権を設定して土地を他者に賃貸し、地代を受け取ることも可能です。普通借地権と定期借地権では法律上、土地を貸す側と借りる側の義務や権利が違います。普通借地権では基本的に借主の権利が優先される仕組みになっていて、契約の期日が来たら借主が希望したときには契約を更新して継続する必要があります。しかし、定期借地権では期間が満了した時点で借主が貸主に土地を返還するのが原則です。
普通借地権の場合にも権利の存続期間は契約で定められていますが、借主が希望した場合には原則として貸主が受け入れなければなりません。契約の更新が権利として認められているのが普通借地権の特徴です。定期借地権にすると期間が満了した時点で貸主の意向によって契約をなくし、貸主が運用できる土地にできます。普通借地権にすると借主の意向が優先されるため、「50年後には別の目的で土地を使いたい」といった土地活用が難しくなります。
定期借地権の意図
定期借地権が法的に認められたのは土地の地主(貸主)を保護することが目的です。土地などの不動産関係では基本的に借主が不当な立場にならないように法律が整えられています。
しかし、土地の所有者が土地を貸すと不利な状況になるという認識があると、遊休地でも運用せず、国土が無駄になってしまいます。定期借地権を借地借家法によって定めたのは、土地を貸しやすい状況を作ることが主な意図です。地主の土地活用の選択肢が、定期借地権の登場によって広がったと言えます。
定期借地権の種類
定期借地権を設定して土地を貸すときにはどのような権利を定めるかを選べます。定期借地権には以下の3種類があります。
- 一般定期借地権
- 事業用借地権
- 建物譲渡契約付借地権
土地に定期借地権を設定するときには権利の詳細を理解して契約することが重要です。ここでは3種類の定期借地権の特徴と違いを説明します。
参照:建設産業・不動産業:定期借地権の解説 - 国土交通省
一般定期借地権
一般定期借地権とは、期間を定めて土地を貸す契約するときに汎用性がある借地権です。一般定期借地権では借主は用途の制限を受けることなく、借りた土地を自由に運用できます。ただし、借主は管理の存続期間の延長や更新は要求できません。一般定期借地権を取得して手に入れた土地にマンションやアパートなどを建築した場合には、借主は期日が来た時点で更地にして返却する必要があります。
一般定期借地権を設定すると貸主としては更地を運用し、返却時点で更地に戻せるのがメリットです。ただし、借地借家法では契約の存続期間を50年以上と定めているため、10年や20年といった期間での契約は原則としてできません。ただ、借主は更地にして返却する必要があるので、借主がどのような運用をしたとしても契約満了時には元通りの更地を手に入れられます。
事業用定期借地権
事業用定期借地権とは、事業目的で利用する土地を定期契約で賃貸するときに設定する権利です。借主は自分が住む家を建てる目的では利用できません。マンションを建てて賃貸経営をしたり、店舗を設けて小売店や飲食店などを経営したり、駐車場や駐輪場などのサービスを提供したりする目的で使用する必要があります。
事業用定期借地権を設定した場合にも一般定期借地権と同様に契約の更新がなく、存続期間の延長もありません。契約期間が満了したときには更地にして返却してもらうのが原則です。事業用の目的であれば借主は自社のオフィスを建てても、アパートを建てて賃貸経営をしても構いません。
事業用定期借地権は法律では10年以上50年未満の存続期間が認められています。契約先が納得すれば10年の比較的短い期間での契約も可能です。
建物譲渡特約付借地権
建物譲渡特約付借地権とは、借主が土地に建物を建築した場合に、契約が満了したら貸主が建物に売却できる権利を有する定期借地権です。建物譲渡特約付借地権は30年以上の契約期間にで、貸主が借主の建てた建物を買い取れる権利を持ちます。30年以上経過した時点で借主が貸主に買取を求めた場合には、借主は受け入れなければなりません。
建物譲渡特約は一般定期借地権とも事業用定期借地権とも併用可能です。貸主は権利を行使せず、一般定期借地権や事業用定期借地権の契約が満了した時点で更地にした土地の返却を受けることもできます。
定期借地権で土地活用をするメリット
定期借地権で土地活用をする方法は、アパート経営などの他の選択肢と比較するとメリットがあります。ここでは定期借地権による土地活用のメリットを紹介します。
初期費用を抑えられる
定期借地権を利用して土地活用を行うと、初期費用を大幅に抑えることができます。アパートやマンションなどを建築して賃貸経営を行う場合、通常は数千万円以上の建築費用が必要です。しかし、定期借地権を設定して土地を貸す方法を選択すれば、借主がアパートを経営する際の建築費用は借主が負担します。これにより、土地所有者は大きな初期投資を必要とせずに、土地を収益化することが可能です。
更地の土地を有効活用する際に、定期借地権を活用することで、初期費用をかけずに収益を得ることができるため、経済的なメリットが大きいです。
地代による収入を得られる
定期借地権を設定して契約することで、地代による収入を得ることができます。土地をそのまま所有しているだけでは、固定資産税や都市計画税の負担に加え、土地の管理費用もかかります。しかし、定期借地権で土地を活用することで、地代を得ることができ、これらの税金や管理費の負担を補うことができます。
また、地価の高い地域であれば、地代だけでも大きな収益源となる可能性があります。このように、定期借地権は土地所有者にとって、安定した収入を得る手段となり、経済的なメリットが大きいです。
長期契約ができる
定期借地権は、事業用の場合は10年以上、一般用の場合は50年以上の契約が可能です。このため、長期的に土地を活用することができるのが大きなメリットです。借主の都合で契約が解除されることもありますが、基本的には長期利用を前提とした契約が可能です。
定期借地権を利用することで、頻繁に取引先を探したり、契約交渉を繰り返したりする手間が省けます。一度の契約で長期的に土地を活用できるため、安定した収益を得ることが期待できます。
契約が満了したら別の土地活用ができる
定期借地権を設定すると、契約が満了した時点で次の土地活用に迅速に切り替えられます。一般定期借地権や事業用定期借地権の基本的な契約では、借主は更地にして返却する義務があるためです。そのため、契約満了後には新たな借主を探すこともできますし、別の土地活用を始めることも、自宅を建築することも自由です。さらに、建物譲渡特約付定期借地権を設定した場合には、購入した建物を経営する選択肢もあります。この柔軟性により、土地所有者は多様な土地活用方法を選択できるため、契約満了後も有効に土地を活用できます。
目的に応じた契約を選べる
定期借地権は土地活用の目的に合わせて契約できるのがメリットです。3種類の契約方法を使い分けることで、今後のプランに応じた最適な契約を選んで交渉できます。
50年以上使用する計画がない場合には、一般定期借地権を利用して広く契約相手を探すことができます。10年や20年の期間で自宅を建てたいという場合は、事業用定期借地権を設定して契約する方法も選択肢の一つです。また、30年後にマンションを所有したい場合は、建物譲渡特約付定期借地権を設定することも可能です。長期的な視野で土地活用を考えると、より良い契約を結ぶことができます。
建物譲渡特約を設けて契約すれば、契約期間終了時に建物の所有権が貸主に譲渡されます。これにより、土地所有者は建物の収益も得ることができるため、一石二鳥です。このように、定期借地権は土地活用の目的に応じて柔軟に契約を選べるため、効率的かつ効果的な土地活用が実現できます
定期借地権で土地活用をするデメリット
定期借地権による土地活用はデメリットもあります。ここでは定期借地権による土地活用で起こり得るデメリットを解説します。
長期契約を余儀なくされる
定期借地権は普通借地権と異なり、更新なしでの契約が可能です。しかし、一般定期借地権では50年以上の長期契約が必要であり、この点がデメリットとなります。また、事業用定期借地権でも最低10年以上の契約が求められるため、数年後に別の目的で土地を活用したいと考えても、容易には転用できないのが現状です。このように、定期借地権は長期的な契約を余儀なくされるため、将来的な柔軟性に欠ける部分があります。
契約更新ができるとは限らない
定期借地権による土地活用では、契約が満了した時点で契約解除になります。契約を更新しないのが原則なので、契約が満了した後の土地活用をまた考えなければなりません。借主が了承すれば新たに契約を締結できる場合もありますが、借主が希望しないときには新しい契約先を探すか、別の土地活用を始めることになります。定期借地権は長期運用ができる方法ですが、契約満了後の土地活用について検討することが必要です。
古い物件を買って困る場合がある
建物譲渡特約付定期借地権を設定することで、借主が建てたマンションやアパートなどを買い取れるメリットがあります。しかし、この契約にはリスクも伴います。買い取った古い物件の運用が難しく、失敗する可能性があるのです。例えば、買い取った当初は満員御礼で利益を得られたとしても、数年後には需要が減少し、空室が増えるかもしれません。また、建物が老朽化し、大規模修繕工事が必要になる場合もあります。これらの問題を考慮し、慎重に判断することが重要です。
需要が高くはない
定期借地権を設定した土地には、不動産投資としていくつかのデメリットがあるため、通常の土地と比較して需要が高いわけではありません。土地を購入せずに地代を支払うことで土地を活用できる点では、定期借地権を取得するメリットがあります。しかし、地代が継続的にかかるため、投資利益が少なくなるデメリットも存在します。
初期費用を抑えて土地を自由に活用したい人にとっては定期借地権を手に入れるメリットがありますが、土地の売買と比較して必ずしも有利ではないため、契約先を見つけるのに苦労するリスクも伴います。この点に注意しながら、投資計画を立てることが重要です。
固定資産税はかかる
定期借地権を与えても、土地の所有者は変わりません。土地の所有者として負担する必要がある固定資産税や都市計画税は毎年納めなければなりません。定期借地権による土地活用で継続的にかかる費用なので、収益性を検討するときには税金を考慮する必要があります。地価が高騰して負担が大きくなったときには地代の見直しをして、収益が大きく下がらないように対処することも重要です。
定期借地権付物件とは
不動産投資において、定期借地権付物件を購入して運用する方法があります。定期借地権のある物件を購入し、賃貸経営による利益を得るのが一般的な方法です。戸建て住宅やアパートなどの建物が建っている土地は、定期借地権付物件として契約先を探すことができます。
典型的な例としては、定期借地権付マンションが挙げられます。定期借地権付マンションは、区分所有マンションに似た仕組みです。マンションを建築し、所有する権利と土地を一定期間借りる権利を複数人で共有します。例えば、50戸のマンションを建てて50人が分割して所有することが可能です。定期借地権付物件として運用することを借主に提案することもできます。
定期借地権付物件としての運用は、大きな建物を建てて賃貸経営を行う際に有効です。多くの人に長期契約を結んでもらえる可能性があります。しかし、定期借地権付物件の場合、借主は契約満了時に更地にして土地を返還する義務があります。契約の更新は原則として認められていないため、貸主にとっては定期借地権付物件の運用には特にデメリットはありません。
定期借地権付物件の注意点
定期借地権付物件として定期借地権の契約を促すときには注意点があります。必ずしも借主にとって定期借地付物件にすることがメリットになるとは限りません。ここでは借主の視点で生じ得るデメリット・注意点を紹介します。
物件を売りにくい
定期借地権付物件は、他の人に譲渡して売ることが可能ですが、運用中は地代が継続的にかかるため、一般的な収益物件と比べて需要が低い傾向があります。借主にとっては出口戦略が難しく、契約満了まで運用を継続する前提で考える必要があるため、売却が難しいというデメリットがあります。
維持費用が高い
定期借地権付物件は、借主にとって維持費用の負担が大きくなります。地代の負担だけでなく、契約が満了した際の解体費用を想定して積み立てが必要です。通常の物件と同様に管理費や修繕積立金も必要となるため、維持費用が高くなります。
相続資産としての価値が低い
定期借地権は相続可能ですが、相続資産としての価値はあまり高くありません。期限があるため、永続的に運用できないからです。子孫に定常収入を与えたい場合には、通常の物件の方が優れています。また、老後の住まいを確保する目的で不動産投資をする場合も、50年で期限が来てしまい、更新できないことが問題になる可能性があります。
ローンを利用しにくい
定期借地権付物件はローンを組んで購入しにくい傾向があります。土地を借りる仕組みのため、物件の担保価値は建物だけです。住宅ローンやアパートローンの担保価値が低いため、融資条件が厳しくなる場合があります。また、契約期間が定められており、資産が残らないため、金融機関によってはローンを組めない場合もあります。
リフォームやリノベーションが難しい
定期借地権付物件は、借主が建物の所有者になりますが、一般的には貸主の許可を得なければリフォームやリノベーションができません。建物を建て直す場合も貸主との交渉が必要です。住居として使用する場合でも、賃貸経営を行う場合でも、長期的にはリフォームやリノベーションが必要になる可能性が高いため、自由度が低いのがデメリットです。ただし、契約時に貸主から了承を得ておけば、比較的自由に運用できます。
柔軟に土地活用するなら駐車場経営もおすすめ
定期借地権を設定して土地活用をすれば、一定の期間後には土地を必ず取り戻せます。しかし、事業用定期借地権でも最低で10年が必要なので、短期間の運用には向いていません。今後、土地活用を柔軟に進めていきたい、数年後には自宅を建てたいといった場合には、流動性の高い土地活用方法を選ぶのがおすすめです。
駐車場経営は初期費用があまりかからず、他の使い方をしたいときにもやめやすい土地活用方法です。月極駐車場やコインパーキングにして経営することも検討しましょう。駐車場ならいつでも柔軟に土地を他の方法で使えるので、これからの土地の使い方で悩んでいる人にもまず始める活用方法として適しています。まずは駐車場経営から始めて今後の土地活用を考えていきましょう。
まとめ
土地活用では定期借地権を設定して貸し、地代を受け取る方法もあります。定期借地権を設定すれば事業用なら最短10年、一般定期借地権では50年の運用が可能です。ただ、契約が続いている間は借主が自由に土地を使えるのが原則で、貸主の都合で更地にして返却してもらうことはできません。土地を今後、柔軟に使っていきたいなら流動性の高い方法を選ぶのがおすすめです。
駐車場経営は始めやすく、撤退しやすい土地活用方法です。立地に合わせて駐車場の運営スタイルを選べば収益化できます。駐車場経営は定期借地権による運用と同様に初期費用が少ないのがメリットです。駐車場なら短期的な運用もしやすい方法なので、土地活用のときには検討してみてください。