障害者用駐車スペースとは?パーキング・パーミット制度も紹介

障害者用駐車スペースについての用語解説記事になります。障害者用駐車スペースは、スーパーや商業施設などに設置され、主に車いすドライバーなどの乗降用です。なぜ、障害者用の専用区画があるのか?一般車が駐車するとどんな弊害があるのか?また罰則について解説します。

障害者用駐車スペースとは?パーキング・パーミット制度も紹介のイメージ

目次

  1. 1障害者用駐車スペースとは
  2. 2障害者用駐車スペースの必要性
  3. 3障害者用駐車スペースに関連するマークの意味
  4. 4パーキング・パーミット制度とは
  5. 5まとめ

障害者用駐車スペースとは

スーパー、コンビニ・大型商業施設、サービスエリアなど、多くの集客が見込める施設には、車いすのマークが車室に書いてある障害者用駐車スペースがあります。障害者用駐車スペースとは、車いすを使っている人や身体が不自由な人、高齢者やケガをされている人が乗降する際に使用されます

障害者用駐車スペースは、平成18年に制定された「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー新法)」をもとに、上記施設には設置の義務付けがされています。更に、設置台数も決められており、収容台数が50台以下は1台、100台以下は2台、150台以下は3台、200台以下は4台となっています。また、200台を超える場合は、収容台数に1/100を乗じた数に「2」を加えた数、以上の設置となります。

更に、車いすの乗降などでは、車両脇にスペースが必要なため、障害者用の駐車スペースでは車室幅が3.5m以上が確保されており、一般車室より広くなっています。尚、障害者用駐車スペースは施設に一番近い所など、利便性が良い所に設置されています。

この障害者用駐車スペースに一般車が駐車すると、違反や罰則はあるのでしょうか?

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障害者用駐車場スペースの利用実態

身体障害者用車両限定の運転免許保有者数は、年々増加しており近年では20万人を超えています。よって、障害者用駐車スペースのニーズも年々増加しています。そんな多くのドライバーが障害者用駐車スペースを使う時に一番困ることは、「一般車に駐車される」です。

商業施設やサービスエリアなどでは、障害者用駐車スペースが施設入り口の一番近い所に設置してあるため、車いすを使うドライバーではない一般車の駐車で困ったことが多々あるようです。鉄道の駅でも、本来は車いすの人用のエレベーターに、普通の健常者が一目散に乗っているのをよく見かけます。

我々、健常者はその施設が何のために設置してあるのか、考え直さないといけません。

一般車が駐車したときの違反・罰則

日本の法律で、障害者用駐車スペースに一般車が駐車しても、違反や罰則の規定はありません。よって、一般車が障害者用駐車スペースに停めても違反・罰則はなく、個々のドライバーのモラルに頼っているのが現状です。

尚、バリアフリー先進国のアメリカでは、障害者用駐車スペースに一般車が駐車すると、違反・罰金となります。州により異なりますが、ハワイ州では最高5万円の罰金です。世界的には罰金制度を導入している国が多い中、日本でもこのように罰則を設ければ、一般車の利用は減少するでしょう。

障害者用駐車スペースの必要性

車いすを使うドライバーが、車から乗降するには少なくともドアを全開にする必要があります。ドアを全開にしなけらば、車いすを車内から出したり収納したりすることができないのです。一般車の車室の幅は概ね2.5mであるので、車のドアを全開にすると隣の車に接触してしまいます。

よって、ドアを全開にしても接触しない幅3.5m以上の車室が必要になるのです。


○車いすのドライバーが乗車するときの手順
 

  1. ドアを全開にする
  2. 車いすから車の座席に移動する
  3. 車いすを車内に収納する

○車いすのドライバーが降車するときの手順
 
  1. ドアを全開にする
  2. 車いすを車外に設置する
  3. 車の座席から車いすに移動する
 

 

障害者用駐車スペースに関連するマークの意味

ここでは知識として、障害者用駐車スペースに関連するマークの意味について紹介します。

車いすマークの意味

青地に車いすの人が座っているマークを、障害者用駐車スペースではよく見かけます。このマークは、正式名称は「国際シンボルマーク」と言われ、障害者が利用できる設備や建物・場所を表しており、世界共通のマークなのです。

このシンボルマークは福祉車両についているのをよく見かけるので、この車両に障害者がいることを示すマークと思っている人も多いようですが、その理解は正しくありません。

チョウチョ・四つ葉マークの意味

車によく貼ってあるものと言えば、黄色と緑の初心者マークやクローバーの形をした高齢者運転者マークが思い浮かびます。では、チョウチョや四つ葉マークの意味とは何でしょうか?

チョウチョのマークは、聴覚障害者が運転していることを示します。法令で決められた条件を満たすことが必要ですが、マークを車体の目立つところに貼ることで、普通自動車を運転できます。尚、車両にはワイドミラーの装着が義務となります。

四つ葉のマークは、身体障害者が運転していることを示すマークです。肢体不自由ですが、一定の運転技術はあることから、マークを貼ることで普通自動車の運転ができます。

パーキング・パーミット制度とは

パーキング・パーミット制度とは障害者用駐車スペースの正しい利用を促進するために始められた制度です。道路交通法などの法律で定められているわけではなく、地方自治体の取り組みとして全国的に進められています。佐賀県において平成18年に導入されてから全国に広まり、令和5年12月の時点では42の府県でパーキング・パーミット制度が導入されています。


参照:国の行政機関におけるパーキング・パーミット制度への登録に関する情報収集結果 令和5年12月|総務省東北管区行政評価局

 

パーキング・パーミット制度の仕組み

パーキング・パーミット制度では障害者用駐車スペースを正しく利用するための取り組みです。障害者用駐車スペースの適正利用を促すために、利用証の発行を受けた人だけが駐車できるようにする仕組みが一般的に取り入れられています。自治体によってパーキング・パーミット制度の名称は異なりますが、基本的な仕組みは共通しています。
 

パーキング・パーミット制度の利用方法

パーキング・パーミット制度を利用するには自治体に申請をして利用証を発行してもらうことが必要です。自治体の福祉課や福祉事務所に申請書を提出することで該当者であれば利用証の発行を受けることが可能です。

利用証は障害者だけでなく難病患者や妊産婦、高齢者なども発行の対象になる場合があります。車いすを使用している障害者が運転する場合と、他の障害がある人や高齢者などを区別して利用証を発行している自治体が多くなっています。

例えば、千葉県では「ちば障害者等用駐車区画利用証制度」という名前のパーキング・パーミット制度を整えて、2種類の利用証を発行しています。障害者、高齢者、難病患者を対象とする無期限の利用証と、妊産婦やけが人などを対象とする結城玄の利用証があります。利用証はルームミラーにかけてわかりやすく提示することが可能で、公共施設や商業施設などの「車いす使用者有線駐車区画」および「おもいやり駐車区画」で利用できます。


参照:パーキング・パーミット制度の開始について |千葉県健康福祉部

 

パーキング・パーミット制度の課題

パーキング・パーミット制度の導入によって障害者用駐車スペースの適正利用が進められているのは確かです。しかし、パーキング・パーミット制度にはまだ課題があります。ここでは現状を踏まえて、パーキング・パーミット制度の課題を解説します。
 

全国で導入されているわけではない

パーキング・パーミット制度は国によって整えられた制度ではなく、地方公共団体によって自主的に整備されている制度です。全国47の都道府県で導入されているわけではありません。東京都、愛知県、北海道などの一部の地域ではパーキング・パーミット制度を導入していません。障害者が利用しやすい駐車場の確保はどの地域でも必要性があります。障害者用駐車場を利用しづらい地域があるのが課題です。

利用証の申請手続きをしなければならない

障害者保健福祉手帳などを持っていれば、障害者用駐車スペースを利用できるというわけではありません。役所で申請書類の様式に記入し、必要書類と合わせて提出する手続きをしなければなりません。郵送や窓口での申請手続きをしなければ利用できないため、手間がかかるので発行を先延ばしにしてしまうケースもあります。

利用証交付までにかかる日数は窓口であれば即日交付できる自治体が多くなっています。全体の48.6%が即日交付になっていますが、申請状況によっては2週間程度かかっている場合もあるのが現状です。


参照:パーキング・パーミット制度事例集|国土交通省

 

利用証が統一されていない

パーキング・パーミット制度は全国統一で整備されているわけではないため、利用証が統一されていません。各地方自治体が地域事情を加味して利用証を作成して発行しています。利用証のデザインは各都道府県で類似しているので判別はしやすくなっています。ただ、利用証が統一されていないため、どこでも使えるとは限らないのが現状です。発行者の自治体の管轄内では使用できるのが一般的ですが、他の自治体の管轄地域では使用できない場合もあります。

 

自治体や施設の間の連携が求められる

パーキング・パーミット制度の利用証が統一されていない課題を解決するためには自治体や施設での連携が必要です。他の自治体で発行された利用証を施設が受け付けて対応することで利用範囲が広がり、障害者用駐車スペースの適正利用が促進されます。

例えば、福岡県の「ふくおか・まごころ駐車場」制度では42府県による連携によって「ふくおか・まごころ駐車場利用証」を持っている人は広範囲で障害者用駐車スペースを利用できるようになっています。ただ、あらゆる施設で制度を利用できるわけではなく、連携の推進が課題になっているのが現状です。

参照:「ふくおか・まごころ駐車場」制度 - 福岡県庁ホームページ

 

施設側の対応が統一されていない

パーキング・パーミット制度の施設側の対応について明確な基準がない点も課題です。新バリアフリー法によって該当施設については障害者用駐車スペースを設置しなければなりませんが、パーキング・パーミットへの対応については統一的なガイドラインや法令がありません。

施設によっては障害者用駐車スペースにコーンを設置して、不適正な利用を防ぐ対策をしています。利用証を持っている人が来訪したときに駐車場の係員がコーンをどかして対応し、適正利用を推進している施設も増えてきました。ステッカーやコーン、塗装やシート、看板などを使用して障害者用の駐車スペースをわかりやすくしているケースもあります。

施設によってはリモコンやカードを発行して、専用ゲートで障害者用駐車スペースにアクセスできるようにしている場合もあります。どの程度の対応をするかが施設側に委ねられているため、パーキング・パーミット制度への施設側の対応品質の差が大きいのが現状です。
 

障害者以外からの理解が進んでいない

パーキング・パーミット制度は障害者からの認知度は向上してきていますが、障害者以外からの理解が進んでいないことが課題です。障害者用駐車スペースは利用証を持っている人が使用する駐車場と理解して、譲り合いの気持ちを持って駐車場を利用することが大切です。

一般の人がパーキング・パーミット制度の整備が進んでいる背景を理解し、協力的に利用することで障害者が快適に駐車場を利用できる社会になります。しかし、パーキング・パーミット制度の認知度が低く、障害者用駐車スペースの適正利用が進んでいないのが現状です。


参照:パーキング・パーミット制度事例集|国土交通省

 

利用証の不正利用の対応が求められる

障害者用駐車スペースの利用証は不正利用されるリスクがあります。利用証を提示せずに障害者用駐車スペースを利用した運転者に対して指導や警告をするなどのさまざまな取り組みが自治体によっておこなわれています。

妊産婦やけが人の利用証では有効期間が定められている場合があります。利用証の有効期限になったら返納する仕組みを整えている自治体が91.9%を占めています。返納せずに廃棄処分を求めている自治体も多く、シリアルナンバーなどによる管理をしているので不正利用のケースは見られていません。

利用証に基づくパーキング・パーミット制度の運営には自治体だけでなく施設の協力も必要です。一般の人の理解が進み、安定して運営できる状況になるまでは自治体も施設もコストをかけて不正利用への対応を求められます。自治体で制度の運営にかかる年間の経費は10万円未満が44.8%を占めていますが、100万円以上の負担をしているケースもあります。運営費の確保もパーキング・パーミット制度の課題として考えなければならないでしょう。

参照:パーキング・パーミット制度事例集|国土交通省

 

まとめ

障害者用駐車スペースは、障害のある方が主に車いすでの乗降ができるように、車室幅を広くしています。よって、一般車が駐車することは、車いすのドライバーにとっては大変迷惑なことなのです。しかし、現行の法律では一般車の駐車に関する、違反・罰則の規定がなく、個々のモラルに任されているのが問題です。

障害者用駐車スペースが、何のために設置されているかを個々が考えることができれば、自ずと一般車の駐車はなくなるはずです。


※本記事は可能な限り正確な情報を元に制作しておりますが、その内容の正確性や安全性を保証するものではありません。引用元・参照元によっては削除される可能性があることを予めご了承ください。また、実際の土地活用についてや、税金・相続等に関しては専門家にご相談されることをおすすめいたします。

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