2021年09月01日公開
2024年03月27日更新
自走式とは?|駐車場用語集
自走式とはどんな意味か、また自走式立体駐車場とは何かを解説します。自走式立体駐車場の種類やメリット、また機械式立体駐車場との違いをメリットを用いて紹介します。また、自走式立体駐車場の建設には、駐車場法や建築基準法など法律や政令等の規制も関係しています。
自走式とは
自走式とは、自動車を運転して場内を移動して駐車する方式の立体駐車場です。自走式では機械式とは異なり、自動車の運転手が車を操作して空きスペースを見つけて駐車します。機械に車を入れる必要がなく、自然な形で運転をして駐車できる仕組みになっています。
入出庫のときに運転手は自分で運転しなければなりませんが、機械の出入りによる待ち時間がなくてスムーズに利用できるのが自走式駐車場の特徴です。
自走式駐車場はショッピングモールや分譲マンションの駐車場、大規模な公営駐車場などでよく用いられている仕組みです。コインパーキングとして運営されている場合もあります。機械式とは違って自走式は機械の導入が不要なので駐車場経営を始めやすい選択肢です。
自走とは
まず自走の意味とは、他の動力に頼らず自身の動力で走ることをいいます。つまり、自走式立体駐車場とは、駐車場専用の建物を建設し、車が自走しながら上層階の駐車スペースにも移動できる形態のことをいいます。
自走式立体駐車場は、一般的に月極で貸し出す場合下層階程、入出庫に掛かる時間が短いので料金が高く設定されます。コインパーキングの場合、階数による料金の違いはありません。また、自走式立体駐車場には人が上下に移動できるように階段が設置され、多層になるものであればエレベーターが設置されます。
他に、収容台数が多いため出庫時の精算で車が渋滞しないように、事前精算機を設置しているケースもあります。また、ショッピングモールなど商業施設の場合は、鉄筋コンクリート造りのものが多く、コインパーキングの場合は鉄骨造りのものが多く採用されています。
更に、自走式立体駐車場は構造物であるため、火災発生時の消火施設や避難経路の確保など、消防法も適用となります。
機械式立体駐車場との違い
機械式立体駐車場との違いを、下記に挙げていきます。
- 入庫しやすい
- 車両の制限が少ない
- 出庫時に待ち時間はない
- 荷物の出し入れが駐車後にできる
まずは、駐車自体は平置きと変わりがないので入庫がしやすいです。機械式のように狭い駐車パレットに停めることや、駐車前後の機械操作などはありません。
次に、機械式と違い車両の重量制限やサイズ・幅などが制限されているケースは少なく、多くの車種が駐車できることです。但し、車高に関しては高さ制限があることや、重量に関しては車両総重量の制限があることもあります。海外製の大型車両等は要注意となります。
また、出庫時に待ち時間はありません。こちらも平置きと同様に出庫ができます。但し、駐車場所が上層階等の場合、車に自らが辿り着くのに時間が掛かることもあります。
最後に、荷物の出し入れは駐車後にできます。機械式のように、駐車前に荷物の出し入れを一旦行う面倒な動作はありません。尚、機械式と違い車はいつでも第3者が触れられるところにあるので、車上荒らしや悪戯に遭うリスクや、多くの車が行き交うので接触事故などのトラブルに遭うリスクはあります。
自走式立体駐車場の種類
ここでは、数多くある自走式立体駐車場の種類について、その特徴などを解説していきます。
タイプによる種別
まずは、タイプによる種別になります。大きく「フラットタイプ」「スキップタイプ」「連続傾床タイプ」に分けることができます。
フラットタイプ
フラットタイプは、自走式立体駐車場の中ではスタンダードな形態です。各駐車場階がスロープで繋がっており、車はスロープを走ることで階層の移動ができます。フラットタイプは、平坦であるのでショッピングカートやベビーカーなどを安全に動かすことができます。
フラットタイプは、駐車場全体の見通しが良いので車を探しやすかったり、柱などが少ないので比較的駐車しやすいなどのメリットがあります。また、鉄骨造りの自走式立体駐車場はフラットタイプが殆どで、比較的安価に建設できるのもメリットです。
スキップタイプ
スキップタイプは、駐車場階を半階ずつずらした形式の自走式立体駐車場です。スキップタイプのメリットは、スロープを半階ずつ上るのでスロープ自体を短くできることから、敷地が狭い所でも駐車場を設置できます。
また、駐車場内を一定方向に巡回しながら走ることができるので、駐車スペースを探しやすいこともあります。更に、フラットタイプと同様に平坦であることから、ショッピングカートやベビーカーなどを安全に動かすことができます。
スキップタイプは、限られた狭い土地・傾斜地・段差があるようなところに向いています。
連続傾床タイプ
連続傾床タイプは、車路がらせん状に形成され、その緩やかな車路に駐車スペースが設置されている形式です。階層間を結ぶスロープはなく、ゆるやかな車路を車が自走することで階層を上がることができます。
連続傾床タイプのメリットは、階層間を結ぶスロープがないため、駐車効率がよく他の形式よりも収容できる車の台数が多いことです。また、車路動線が一定方向で急カーブがないため、駐車場内の死角が少なく安全性にも優れています。
尚、連続傾床タイプは駐車場内に緩やかな傾斜があるため、ショッピングカート等利用時は注意が必要です。
階層による種別
自走式立体駐車場の階層で認定されているものは、1層2段型・2層3段型・3層4段型・4層5段型・5層6段型・6層7段型があります。限られた土地に、より多くの収容台数を確保するには、多層タイプが効果的です。それぞれの階層パターンの特徴について解説します。
1層2段型
1層2段型は、自走式立体駐車場のスタンダードで1階と屋上で形成されています。フラット式が殆どで、工期は60日程度、最大延床面積は4000㎡程度になります。主に、コインパーキングや分譲マンションの駐車場で採用されています。
2層3段型
2層3段型は、1階2階部分と屋上で形成されています。フラット式、スキップ式、連続傾床式のいずれの方式で施工可能です。工期は概ね80日程度で、最大延べ床面積は8000㎡程度になります。分譲マンションの駐車場や病院・公共施設の駐車場で採用されています。
3層4段型
3層4段型は、1階~3階部分と屋上で形成されています。フラット式、スキップ式、連続傾床式のいずれの方法で施工可能です。工期は概ね100日程度で、最大延べ床面積は12,000㎡程度になります。4階建てとなり建物規模も大きくなることから、管理人室・トイレの設置や、利用者の移動にエレベーターが設置されるケースが殆どです。
4層5段型
4層5段型は、1階~4階部分と屋上で形成されています。フラット式、スキップ式、連続傾床式のいずれの方法で施工可能です。工期は概ね120日程度で、最大延べ床面積は16,000㎡程度になります。5階建てとなり建物規模感が更に大きくなるので、収容台数は800台程度になるケースもあります。
アミューズメント施設、ショッピングモールなど集客能力がある施設の駐車場に採用されています。
5層6段型
5層6段型は、1階~5階部分と屋上で形成されています。フラット式、スキップ式、連続傾床式のいずれかの方法で施工可能です。工期は概ね150日程度で、最大延べ床面積は20,000㎡程度になります。建物は6階建てとなり、収容台数は1,000台程度になるケースもあります。
限られた土地に多くの車を収容できるので、土地を効率よく利用できます。また、階層はその土地に設定されている建蔽率と容積率に応じて設定ができます。
6層7段型
6層7段型は、1階~6階部分と屋上で形成されています。フラット式、スキップ式、連続傾床式のいずれかの方法で施工可能です。工期は概ね180日程度で、最大延べ床面積は24,000㎡程度になります。6階建てとなり建物規模感が更に大きくなるので、収容台数は1200台程度になるケースもあります。
空港の駐車場、大規模ショッピングモール、大規模テーマパークなど、長時間の駐車需要が見込まれる施設に建設されることが多くあります。
自走式立体駐車場のメリット
ここでは、自走式立体駐車場のメリットについて解説します。まず収容台数に関して、自走式立体駐車場は階層を増やすことで、容易に収容台数も増やすことが可能です。したがって、ある程度広い土地は必要ですが、収容台数が数百台の規模の大きい駐車場には適しています。
次に、利用者の利便性については、自走式立体駐車場は周辺道路から直ぐ入ることができ、駐車スペース自体は平置きと変わらないので、入出庫しやすいのもメリットです。また、乗り降りに充分な駐車スペース幅が確保されていることや、荷物の出し入れが駐車後にもできます。
他に、天候が悪い日でも屋上以外であれば、屋根があるため乗り降りに不自由がないことや、直射日光の照射による車体へのダメージは少ないのもメリットです。
次に、自走式立体駐車場は誰でも入れるため、車上荒らしや悪戯に遭う可能性があります。しかし、大規模な駐車場であれば、管理人や防犯カメラなどでセキュリティを強化しているケースもあります。
最後に、ランニングコストについては、自走式立体駐車場には消火設備や防犯カメラなど点検が必要な設備はありますが、コスト的には限定的です。日常的に掛かるのは場内の照明施設等に使う電気代や、駐車場の規模によりますが、管理人や警備員を雇う人件費が掛かる程度です。
機械式立体駐車場のメリットと比較
機械式駐車場は、少ない土地に駐車台数を確保したいときに用いる方法で、自走式立体駐車場とは真逆です。機械式立体駐車場はその特性から、都市部や繁華街で多くの収容台数が必要な、都市型ホテル・商業ビル・オフィスビル・コインパーキング、小中規模の分譲マンションに多く採用されています。
また、機械式立体駐車場の場合、車両が盗難や車上荒らしなどに遭うことはまずありません。機械式立体駐車場内に収容されてしまえば、車に触れることが難しいからです。
自走式立体駐車場を建設する際の注意点
ここでは、自走式立体駐車場を建設する際の注意点について解説します。
駐車場法による規制
自走式立体駐車場建設に関する法律に、「駐車場法」があります。駐車場法は、都市部の円滑な交通を促進するために定められた法律で、1957年の高度経済成長期に車の保有率が増えた時期に制定されました。この法律の制定により民間の駐車場整備が進んでいます。
主な内容としては、駐車場整備地区に関すること、駐車場整備地区の路上駐車場に関すること、駐車場整備地区の路外駐車場に関することなど、になっています。一部詳細を紹介すると、駐車場整備地区若しくは商業地域内等で、延べ面積2,000㎡以上の規模の建築物を新築若しくは増築する場合、地方公共団体は駐車場の付置義務を定めることができます。
また、駐車場法には「出入り口の設置場所」「出口の視認性」「車路の幅や高さ」「換気や照明」についてなど、細かな規定があります。駐車スペースが500㎡を超える駐車場は、適用を受けることになるので規制を遵守するための工事で、コストアップになる可能性もあるのです。
建築基準法や政令による制限
自走式立体駐車場は、建築基準法や政令による制限が多くあり、これらを遵守して建築しなければなりません。例えば、各地域には用途地域が定められており、建築できる高さや延べ床面積、建設できるものも決まっています。また建蔽率や容積率もあるので、さまざまな規制を守る必要があります。
駐車場やコインパーキングのその他の用語
まとめ
自走式立体駐車場は、土地が広く収容台数を多くしたいときには最適な形態です。また利用者にとっては、駐車がしやすい、乗り降りや荷物の出し入れがしやすいことや、運営者にとっては敷地の有効活用、ランニングコストの低さが魅力です。
しかし、建築にはさまざまな法律や建築基準法の規制があります。自走式立体駐車場の運営を検討する際は、敷地についての需要調査や建設については立体駐車場メーカーなど専門家に相談し、需要や敷地に合わせた種類を選ぶようにしましょう。