2020年12月21日公開
2021年01月08日更新
駐車場経営の管理方法を解説!業務内容/よくあるトラブルと解決策も
駐車場経営の管理方法について解説します。自己経営、管理委託に関する業務内容や、自己経営でよくあるトラブル事例を元に、解決策も紹介します。また、駐車場経営を始める際に、管理方法を選ぶ時の注意点も紹介するので、どの形態が自らの考えに合致する管理方法かわかります。
目次
駐車場経営の管理方法を知るための基礎知識
駐車場経営の管理は、3種類あります。自己経営、管理委託、一括借り上げです。では、この3種類の管理方法には、どんな違いがあるのでしょうか?また、管理方法の違いでオーナー側の労力負担や、費用負担はどのように変わってくるのでしょうか?今回は、駐車場経営の管理方法について解説します。
まず、駐車場経営の基礎知識(駐車場経営の種類やメリットデメリット)を紹介します。
駐車場経営の種類
駐車場経営には、月極駐車場とコインパーキング駐車場があります。月極駐車場とは、駐車スペースを個人や法人に貸し出すことです。駐車場のオーナーは、賃借人から月単位で得る賃料を収入に、経営しています。月極駐車場には、砂利敷き青空駐車場・アスファルト敷き青空駐車場・機械式駐車場・タワーパーキングなどさまざまな形態があります。
個人の駐車場経営は、砂利敷きかアスファルト敷きの青空駐車場が一般的です。尚、月極駐車場はマンションやアパートなどの不動産投資に比べて、駅近立地に関係なく需要が見込めるのが特徴です。
コインパーキング駐車場とは、不特定多数の利用者に、時間制で駐車スペースを貸すことです。賃料は分単位でカウントされるのが一般的です。コインパーキング駐車場は、駅近立地や大型の商業施設がある立地など、一時的な駐車需要が見込めるエリアに設置されます。
駐車場経営のメリット/デメリット
ここでは、駐車場経営のメリットデメリットを解説していきます。まずは、駐車場経営のメリットになります。
- 初期投資が安価で済む
- 投資リスクが低い
- 土地活用の柔軟性
駐車場経営の初期投資は、安価に済みます。仮に土地なければ、土地購入費用は掛かります。しかし、青空駐車場にすれば建物はないので、費用は掛かりません。次に、投資リスクは低く失敗しても負債は少なく済みます。青空駐車場のように建物がなければ、天災地変の影響も受けにくく、メンテナンス費用も掛かりません。
更に、駐車場用地は利便性のよい立地である必要はありません。駅から離れた場所でも経営しやすく、用地取得も難しくありません。最後に、土地活用の柔軟性が高くなります。一時的に駐車場として収益を上げ、将来はアパート建設、戸建て分譲地として売却したりと、選択肢を持ちながら経営できます。
次に、駐車場経営のデメリットは下記3つとなります。
- トラブルが起きる可能性がある
- 節税のメリットは殆どない
- 収益性は高くない
車上荒らしや無断駐車の問題など、トラブルが起きる可能性があります。そのようなトラブルに、都度対処することがデメリットです。次に、節税のメリットは殆どありません。駐車場は、宅地ではなく更地評価となる為、固定資産税の軽減はありません。
最後に、収益性は決して高くはありません。土地利用効率の低さが原因です。平面駐車場の場合に、1フロア分しか土地利用が出来ないため、アパートに比べると土地の利用効率は低く、収益性は落ちます。駐車場の収益性を上げるには、駐車場の稼働率を高い水準で維持し続ける必要があります。
駐車場経営の現状と展望
日本全国の自動車保有台数は、約8,184万台です。近年は、自動車離れの傾向もありますが、それは都市部に限ったことで、全国的には毎年保有台数は微増しています。特に、電車などの公共交通が便利ではない地域は、自動車は一人一台保有が必須です。自動車の保有台数が大幅に減少しない限り、将来性があるのが駐車場経営です。
駐車場経営の管理方法を比較
ここからは、3つの管理方法について比較していきます。メリットや管理の違いを理解しつつ、自身の駐車場経営にマッチした、管理方法を選択していきましょう。
①自己経営
自己経営は、駐車場の募集・契約・賃料の徴収・解約等、全ての業務をオーナーが行います。この場合、管理会社への委託料を払うことなく、賃料を100%受け取ることができるので、収益性は上がります。しかし、駐車場の募集を個人で行うので集客力が落ちます。
また、駐車場内で起こった事故などのトラブル、また賃借人との賃料未払いなど、トラブルがあった場合に全て対応しなければなりません。また、駐車場内の草取りやゴミ拾いなど、日々のメンテナンスも全て、オーナー自ら行います。収益が大きい分、オーナーの負担が大きいので、経営する駐車場や台数が少ない場合にお勧めです。
②一括借り上げ
一括借り上げは、自己で所有する駐車場の経営全てを、不動産会社に任せます。賃料収入は、稼働率に関係なく、一定の土地賃料を受け取ります。自己経営や管理委託と比べると、収益が落ちることがデメリットになります。
しかし、駐車場の稼働率に関係なく、オーナーに一切の負担がない中で、毎月安定した賃料収入を得られるのがメリットです。主に、管理が大変な大規模な駐車場で採用されています。
③管理委託
管理委託は、駐車場経営を管理会社に委託することです。オーナーは賃借人を対応する必要がなく、賃借人の募集・契約・賃料回収・解約などを管理会社に委託できます。この場合、管理会社に管理委託料の名目で、賃料の5~10%程度を支払います。
管理委託は、自己経営に比べて収益は落ちますが、オーナー自身の負担はなくなるので、複数の駐車場を所有する場合はお勧めです。
駐車場の管理方法「自己経営・管理委託」の業務内容
ここからは、「自己経営・管理委託」の、業務内容を解説していきます。双方を比較しながら解説を進めていきます。
①経営開始前の準備
自己経営 | 管理委託 | |
土地を準備する | オーナーが用意する | オーナーが用意する |
土地を整地する | オーナーが手配する | オーナーが手配する |
駐車場設備の設置工事をする | オーナーが手配する | オーナーが手配する |
月額の賃料を決める | オーナーが決める | オーナーが決める |
利用者を募集する | オーナーが募集する | 管理会社が募集する |
利用者と契約する | オーナーが手続きを行う | 管理会社が契約手続きをする |
駐車場経営開始前の準備ですが、土地の整備や賃料決めまでは双方一緒です。しかし、利用者の募集と契約に関しては、自己経営は自ら行い、管理委託は管理会社が行います。募集に関して、管理会社はインターネット等を駆使して、駐車場の情報を広く告知できます。よって、駐車場利用者がより早く集まる可能性があります。
しかし、自己経営の場合オーナーが行えるのは、当該駐車場の敷地に募集看板を建てるか、近隣にチラシを配る程度です。よって、駐車場利用者の募集に、時間が掛かる可能性があります。また、不動産会社に委託する方法もありますが、その場合駐車場契約毎に手数料が掛かります。
②駐車料金の回収
自己経営 | 管理委託 | |
駐車料金の回収 | オーナー自らが直接徴収する | 管理会社が代理で徴収する |
月毎の駐車料金の回収に関しては、自己経営はオーナー自らが利用者から直接徴収します。管理委託の場合、管理会社が代理で徴収し、その後オーナーに渡すことになります。
③トラブル/問い合わせへの対応
自己経営 | 管理委託 | |
トラブル・問い合わせの対応 | オーナー自らが全て対応する | 24時間の窓口で対応する |
自己経営の場合は、トラブルや問い合わせの対応は、オーナー自らが行います。駐車場は24時間いつでも利用できるので、トラブルはいつ起きるかわかりません。また、駐車場に関する問い合わせにも全て対応します。
管理委託の場合は、管理会社に24時間対応できる窓口があるので、トラブルや問い合わせは全てお任せです。トラブル等は、管理会社が解決に導いてくれるので安心ですし、オーナーには全く負担がありません。
④掃除/設備のメンテナンス
自己経営 | 管理委託 | |
掃除・設備のメンテナンス | オーナー自らが掃除・メンテナンスを行う | 管理会社が定期巡回をする中で、掃除やメンテナンスを行う |
自己経営の場合は、オーナー自らが駐車場を巡回し、掃除やメンテナンスを行います。管理委託の場合は、管理会社の担当者が、定期巡回する中で掃除やメンテナンスを行います。駐車場を綺麗に保てば、利用者も気持ちよく使えますし、利用者離れも防ぐことができます。
定期的に、草取りや吸殻などのゴミ拾いをすることで、使いやすい駐車場となり、ゆくゆくは駐車場経営の安定に繋がっていくのです。
⑤空室発生時の募集
自己経営 | 管理委託 | |
空室発生時の募集 | オーナー自らが募集する | 管理会社が募集する |
空室発生時の募集について、自己経営はオーナー自らが募集活動をします。管理委託の場合は、管理会社が募集します。契約者がいなければ収入は0となってしまうので、駐車場経営としては、一刻も早く利用者をみつけたいところです。自己経営の場合は、オーナー自ら利用者募集の看板を設置したり、周辺のお店や住居にチラシ配布等行います。
管理委託の場合は、インターネットを使って幅広く募集が出来ます。尚、利用者と新たに契約する場合、賃料1か月相当の手数料が発生します。
⑥確定申告
確定申告は、双方どちらも一緒です。確定申告の時期に、税務所やインターネットで申告を行います。確定申告時は、まず所得を算出します。所得とは、収入から必要経費を差し引いたものです。駐車場経営の確定申告で、経費計上できるのは主に以下のものになります。
- 初期費用
- 固定資産税や都市計画税などの固定費
- 光熱費
- 管理費
- 減価償却費
- 損害保険費
- 消耗品や事務用品費
確定申告の所得額は、必要経費と控除額を差し引いて計算(所得額=収入−必要経費−控除額)します。尚、控除額とは青色申告若しくは白色申告した場合の控除額になります。
駐車場の管理方法「自己経営」でよくあるトラブルと解決策
ここからは、駐車場の管理方法「自己経営」で、よくあるトラブルと解決策をご紹介します。下記4つの事例に関して、トラブルの詳細と解決策を記載し、駐車場経営にて自己経営を選択する場合の参考としてください。
①無断駐車
無断駐車は、駐車場経営ではよくあるトラブルです。自身が契約した駐車スペースに、勝手に別の車が停まっているというトラブルで、利用者は自分の車が停められずに困って連絡を入れてきます。日中の時間であれば対応しやすいのですが、深夜帯の時間帯だとオーナー的にも厄介です。
一番よくあるのは、他の利用者が駐車スペースを間違って、停めているというケースです。この場合はまず、間違って停まっているナンバープレートを照合します。これで間違った車が判明すれば、オーナーは停まっている車の所有者に、連絡を入れて解決できます。
しかし、駐車場利用者以外の車が停まっている場合は、先述の方法での解決は不可能です。この場合は、駐車場がある管轄の警察に協力を得て、車の特定をしていきます。警察に協力を得る場合に伝えることは、車のナンバー・車種・色・停められていた場所です。その後、管轄の警察署から最寄りの交番に連絡が入り、警察官が現地確認します。
警察官の確認で、無断駐車だと判断された場合、警察が所有者を特定し注意を促します。オーナーには、所有者の情報は原則教えてもらえませんが、無断駐車をした所有者と連絡が取れたか等は教えてもらえます。
②放置駐車
放置駐車とは、無断駐車の状態が長期間続き、所有者が現れず車両が実質的に放置されているケースです。この場合、公道であれば警察官がレッカー移動したりできるのですが、私有地の場合は取り締まることができません。このような場合の対処方法は下記のとおりです。
- 状況を記録に残す
- 所有者を特定し、通知する
- 簡易裁判所に提訴し、強制執行を行う
- 車両を強制的に撤去する
まずは、放置駐車の状況を記録に残します。時期はいつからどのような状況で放置されているのか、車体全体やナンバープレートの番号等を撮影し、証拠として残します。次に、所有者を特定し、車を移動するよう通知します。特定は先述の通りに、警察に協力を求め、通知は内容証明郵便で明け渡しを求めます。
以上までで解決していればよいのですが、所有者が求めに応じない場合は、駐車場がある管轄の簡易裁判所に出向き、明け渡し請求を行います。明け渡し請求が認められると、執行官立会いのもと、放置自動車が無価値物であると宣言され、車の処分はオーナーに委ねられます。
③車上荒らし
駐車場内で車上荒らしが起きてしまった場合、車の所有者が警察へ通報します。このときオーナーは、車上荒らしの捜査に協力する以外に、手段はありません。また、今後は駐車場内で車上荒らしが起きないような対策をする必要があります。LED照明や防犯カメラの設置、利用者への注意喚起などです。
特に利用者には、駐車中の車内に貴重品などを置き去りにしないように、注意することが大事です。
④空室が埋まらず収入が不安定
駐車場が埋まらずに収入が不安定な場合は、周辺調査を行い賃料の見直し、駐車場内の設備の見直し、駐車場スペースの見直し、などを行ってみましょう。それでも改善が見られない場合は、管理委託に切り替えるのも打開する方法です。
管理会社から、経営的に悪い部分を具体的に指摘してもらいます。その後、管理会社がこれまで培ったノウハウや、周辺相場の調査やこれまでのデータを基に、今後の市場動向を予測します。その予測結果を基に、空室対策や経営立て直しなどの対策を講じていくのです。
仮に、オーナー自身に駐車場に関する専門知識や、経験があるのであれば、管理会社を入れることに疑問を感じる人もいるかもしれません。しかし、オーナー自身が気づいていないところや、プロ独自の鋭い目で指摘できるのが、管理会社をいれる大きなメリットです。
駐車場の管理方法を選ぶ際の注意点
ここからは、管理方法を選ぶ際の注意点を解説していきます。契約内容をよく確認し、数社見積もりを出し、現実に近い収益予測をたててくれる、会社を選ぶようにしましょう。
①管理会社との契約内容は事前にしっかり確認する
管理会社との契約内容は、事前にしっかりと確認します。管理業務はどの範囲まで行ってくれるのか、トラブルやクレーム時も解決まで対応してもらえるか、オーナー側に不利な項目はないか、などです。また、管理委託料や土地の賃料設定も重要なところです。契約時前に、不明な点は担当者に聞くようにします。
②複数社から管理プランを取り寄せて吟味する
複数社から管理プランを取り寄せて、比較していきましょう。管理会社毎に、善し悪しが見えてくるので、拘りたい点、妥協できる点も見えてきます。管理委託の場合、管理委託料はできれば安い方がよいのですが、金額優先だと管理が粗雑な業者を選んでしまう可能性があるので注意です。
また一括借り上げの場合、土地の賃料が高い方がお得になりますが、土地を貸す会社はどんな会社であるのか、評判や会社の体制をよく確認しましょう。管理方法は、駐車場経営の根幹部分であるので、慎重に選んでいきます。
③立地や需要を見て管理方法を決める
管理方法は、立地や需要を見て決めていきます。例えば、住宅街であれば月極駐車場になるケースが多くなります。10台程度の月極駐車場であれば、自己経営でも十分管理はできます。また、駅に近い繁華街の大規模な月極駐車場であれば、需要や利用者が多くなり、個人での管理は現実的に難しくなるので、管理委託や一括借り上げがお勧めです。
④収入予測はリスクを想定して行う
駐車場経営の収入予測は、常に50%~80%程度の稼働率を想定しておきます。つまり、常に100%の稼働率ということはないので、リスクを考慮し収入予測をたてます。駐車場経営で掛かる固定資産税などの固定費や、管理委託の場合の管理委託料を差し引いても、十分な利益が出るかを予測します。
⑤収益予測は現実に近い実質利回りで計算する
利回りは、表面利回りと実質利回りがありますが、収益予測は、より現実に近い実質利回りで計算します。実質利回りは、収益から固定費を差し引いて計算します。幾ら収益が上がっていても、固定費を差し引いて、仮にマイナスであれば、駐車場経営は成り立ちません。収益予測は、実質利回りにて計算するのがお勧めです。
⑥周辺の相場チェックはこまめに行う
周辺の駐車場の料金は、こまめにチェックをしておきましょう。月極駐車場の利用検討者は、同じような立地や条件であれば、月額料金が安い方を選びます。仮に500円しか料金差がないのに、他の駐車場に利用者を取られていたら、経営的には痛手です。現状に奢ることなく、常に危機感を持ちながら経営を続けていくことが大事です。
まとめ
駐車場経営に於ける管理方法の業務内容や、よくあるトラブルや解決策、管理方法を選ぶ際の注意点を解説してきました。自己管理は、駐車場経営の台数が小規模な場合、若しくは数か所程度であればお勧めできます。
しかし、駐車場経営の台数や経営個所が多い場合は、管理委託がお勧めです。また、自己経営は利用者の募集・契約・トラブル処理など全てを行う必要があるため、収益は多いのですがその分リスクもあります。
自己経営の場合、専門的な知識やトラブル解決のノウハウ、そしてその根幹を成す経験が不可欠です。よって、初めて駐車場経営する場合は、管理委託が無難です。管理委託で駐車場経営の経験を積み重ねてから、自己経営するのが賢明です。