2024年12月05日公開
2024年12月05日更新
コインパーキング経営の消費税は課税?非課税?免除の条件も解説
コインパーキング経営は、消費者や企業に対してサービスを提供するビジネスであり、基本的に売上に対して消費税がかかります。しかし、特定の条件下では売上に消費税がかからない場合や免税になる場合もあります。近年ではインボイス制度が導入され、消費税の対応に不安を感じるケースも増えています。この記事では、コインパーキング経営における消費税のノウハウについて解説します。
目次
コインパーキング経営の売上は消費税の課税対象
コインパーキング経営で利用者から徴収した売上金は消費税の課税対象です。国税庁では駐車するスペースの整備をしたり、区画を設けたりして駐車場を経営している場合には、利用料が消費税の対象になると定めています。
消費税は商品の販売やサービスの提供などの取引に課される税金で、消費者が負担して事業者が納税します。土地の譲渡や貸付、有価証券の譲渡、保険料や行政手数料などの非課税取引もありますが、一般的に対価を得るビジネスの取引は消費税の課税対象です。コインパーキング経営でも非課税対象になっていない場合には、原則として消費者から消費税を申し受けて確定申告の際に納付する必要があります。
ただし、条件を満たしていれば納税義務を免除される場合があります。コインパーキング経営に限らず、一般的に次に紹介する条件を満たしていれば消費税を納税する必要がありません。
参照:No.6213 駐車場の使用料など|国税庁
参照:消費税のしくみ|国税庁
基準期間の課税売上高が1,000万円以下なら納税義務免除
日本では、基準期間における課税売上高が1,000万円以下の場合、免税事業者として認められ、課税資産の譲渡や特定課税仕入れについて消費税の納税義務が免除されます。基準期間は前々年、法人の場合は前々事業年度です。
例えば、個人事業でコインパーキングを経営している際に、2023年の1年間の課税売上高が800万円だった場合、2025年は免税事業者となり、消費税を納税する必要がありません。
ただし、免税事業者であっても、課税事業者になる選択をすることができます。これは、輸出業者のように消費税が還付対象になる事業者や、インボイス制度で適格請求書発行事業者になるメリットが大きい事業者にとって有利な方法です。
参照:No.6501 納税義務の免除|国税庁
1期目と2期目は納税義務免除
基準期間に売上が存在しない1期目と2期目は、個人事業主も法人も課税売上高が1,000万円以下と見なされ、免税事業者となります。コインパーキングを始めたタイミングや年度の設定によりますが、大きな売上があったとしても、最長で2年間の売上について消費税を免除することができます。ただし、個人事業主の場合、前年の1月1日~6月30日の特定期間に売上が1,000万円を超えると課税事業者となり、消費税の納付が必要です。
参照:No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例|国税庁
参照:消費税のしくみ|国税庁
コインパーキングの経営方法による消費税の課税・非課税の違い
コインパーキングは経営方法によって消費税が非課税になる場合があります。コインパーキングの経営方法として一般的なのは以下の3種類です。
- 自主経営
- 管理委託
- 一括借り上げ
消費税の課税・非課税は、土地を貸すか、土地以外も貸すかによって異なります。土地だけを貸す場合は非課税ですが、土地以外も貸す場合は課税されるのが基本です。以下に、コインパーキングの利用料に関する課税・非課税の違いを解説します。
自主経営は課税
土地を舗装してコインパーキングの設備を整え、オーナーが自ら運営する自主経営の場合、コインパーキングの利用料は消費税の課税対象となります。これは、駐車スペースの提供や利用中の車両管理サービスを提供するためです。一方で、まったく整備されていない青空駐車場として土地を貸す場合には、消費税は非課税となります。
ただし、コインパーキングでは短時間の利用が多く、青空駐車場では料金の徴収が難しい場合があります。コインパーキングに常駐して個々の車両の利用時間を把握し、支払いを求める経営方法もありますが、現実的には自動精算機などを設置する必要があります。そのため、自主経営では消費税の課税対象となると考えるのが妥当です。
管理委託は課税
管理委託をしてコインパーキング経営を行う場合、基本的に消費税の課税対象となります。これは、オーナーが土地の舗装や必要な設備を整え、本来オーナーが行うべき業務を専門の管理会社に委託するためです。コインパーキングの利用料は、設備も含めたサービスへの対価となるため、消費税の課税対象となります。管理委託をしたか自主管理をしたかは、消費税の課税・非課税に影響しません。
土地の一括借り上げは非課税
土地を更地のままコインパーキング業者に一括借り上げてもらう場合、業者から受け取る賃料には消費税がかかりません。これは、国税庁が土地の貸付を消費税の非課税対象としているためです。一括借り上げの場合、コインパーキングの設備導入やサービス提供、利用料金の徴収は業者が行います。したがって、コインパーキング業者が消費税を納める義務を負い、土地のオーナーは消費税を納める必要がありません。
整備済みのコインパーキングの一括借り上げは課税
一括借り上げでコインパーキング業者と契約する際、オーナーが自分でコインパーキングの整備を行う場合には、課税対象となります。具体的には、土地にアスファルトを敷き、ラインを引いて車室を区分し、精算機などの設備を設置するのをオーナーが担当した場合、消費税の納付が必要です。
しかし、整備済みのコインパーキングを一括借り上げする場合には、利用料金に対する消費税は借り上げ先の業者が負担します。賃料やサービス料として請求された金額に対して消費税がかかります。これは、設備を貸与するサービスに消費税がかかるという解釈であり、コインパーキングの売上とは独立して、契約書に基づく賃料に消費税がかかる仕組みです。
コインパーキングにおけるインボイス制度対応
コインパーキング経営の消費税について押さえておきたいのがインボイス対応です。消費税の納付が必要な取引をする場合には、インボイス制度への対応を検討する必要があります。
インボイス制度とは
インボイス制度とは、2023年10月1日から開始された仕入税額控除に関する制度です。事業者が正確に消費税を納付する仕組みを整えるために施行されました。売り手が税率や税額が明確にわかるフォーマットのインボイス(請求書)を発行し、買い手に正しく消費税を支払わせるのが基本的な考え方です。買い手はインボイス制度に合致した適格請求書の発行を受けられれば仕入税額控除を受けられます。
インボイス制度では適格請求書を発行するために登録が必要です。また、適格請求書にはフォーマットはありませんが、以下の記載事項が定められています。
- 買い手の氏名または名称
- 売り手の氏名または名称と登録番号
- 取引年月日
- 取引内容
- 適用税率と消費税額
インボイス制度では、すべての事項が記載された適格請求書を発行するのが登録業者の義務です。利用者が仕入税額控除による税制的な優遇を受けられるようにするには、適格請求書発行事業者になり、支払いを受ける際には適格請求書を発行する必要があります。
参照:インボイス制度について|国税庁
参照:インボイス制度とは|国税庁
参照:日々の業務|国税庁
コインパーキングは適格請求書の交付義務の免除対象外
インボイス制度では、サービスの性質上、適格請求書の交付義務を免除するケースが定められています。例えば、自動販売機での購入については、3万円未満の販売であれば適格請求書の交付は必要ありません。
コインパーキングは無人でサービスを提供する仕組みが一般的ですが、適格請求書の交付義務が免除されると誤解されがちです。しかし、コインパーキングは免除対象外です。駐車券の発行や代金の支払いは機械で自動的に行われますが、駐車スペースという資産の譲渡が別途行われるため、適格請求書の交付が義務となります。そのため、適格請求書発行事業者になった場合には、適格請求書を発行する対応が必要です。
参照:交付義務の免除|国税庁
コインパーキングは適格簡易請求書の交付が可能
コインパーキングでは不特定かつ多数の利用者にサービスを提供する事業に相当するため、駐車場業の一つとして適格簡易請求書の交付が可能です。通常の適格請求書とは違い、以下のように買い手の情報の記載が省略可能で、適用税率と消費税額は一方のみの記載で問題ありません。
情報 | 記載について |
---|---|
買い手の氏名または名称 | 省略可 |
売り手の氏名または名称と登録番号 | 必要 |
取引年月日 | 必要 |
取引内容 | 必要 |
適用税率または消費税額 | 一方のみで良い |
コインパーキングでは自動精算機での支払いの際に適格簡易請求書の要件を満たすレシートが発行されれば問題ありません。
コインパーキングでインボイスを発行するメリット
コインパーキングでは適格請求書発行事業者になってインボイスを発行すると、事業者の利用を促進できるのがメリットです。適格請求書の発行を受けられなければ、コインパーキングを利用した事業者は仕入税額控除ができません。適格請求書発行事業者になり、適格簡易請求書に対応する請求書を自動精算機で発行できるようにすると、事業者からの利用が促進されます。
コインパーキングでインボイスを発行するデメリット
インボイスを発行するには、適格請求書発行事業者になる必要があるため、これがデメリットとなります。コインパーキング経営の課税売上高が1,000万円に満たない場合、免税事業者として消費税の納税義務が免除されますが、適格請求書発行事業者になると課税事業者となります。そのため、免税事業者であった場合には消費税の負担が発生し、実質的に収益が減少します。
また、適格請求書を発行できる設備の準備も必要です。自動精算機で適格請求書を発行できるようにし、利便性の高いサービスを提供することが重要です。顧客に選ばれるコインパーキングを目指して、適格請求書の発行体制を整えましょう。
コインパーキング経営で売上以外に消費税がかかる項目
コインパーキング経営では、取引の際に消費税が発生するケースがあります。収入ではなく支出に対して消費税がかかるため、消費者側として消費税を支払い、取引先に消費税の納付を任せるのが基本です。ここでは、売上以外に消費税がかかる取引の例を紹介します。
土地の整備や駐車場管理の委託費用
コインパーキングの土地購入は非課税取引であるため、消費税はかかりません。しかし、土地の整地やアスファルト舗装などの整備を委託する場合には、消費税がかかります。また、コインパーキングの管理を他社に委託する場合にも、委託費用には消費税がかかります。
駐車場設備の購入・設置費用
コインパーキングの設備購入や設置にかかる費用は、消費税の対象です。フェンスの設置、自動精算機やゲートなどの設備導入にかかる費用、およびその設置工事費用にも消費税が課税されます。また、コインパーキングの設備の点検やメンテナンスを依頼する際の費用にも消費税がかかります。
駐車場経営にかかる消耗品や備品の費用
コインパーキングの経営における消耗品や備品の購入費用にも、一般的に消費税がかかります。例えば、経営管理のためにノートやボールペンを購入する際には、消費税を負担します。さらに、ノートパソコンを購入したり、オフィスソフトを契約したりする場合にも、購入費用や契約費用に対して消費税がかかります。
コインパーキングで注意が必要な消費税以外の税金
コインパーキング経営では消費税以外にも税金がかかります。税額が明示される場合もありますが、売上や経費に応じて正しい税額を計算して納税しなければならない場合もあります。ここではコインパーキングで注意が必要な税金について解説します。
固定資産税・都市計画税
コインパーキング経営では、固定資産税と都市計画税の納税が必要です。コインパーキングに使用している土地には固定資産税や都市計画税がかかります。固定資産税は固定資産税評価額に対して1.4%の税率で課され、都市計画税は0.3%を上限として各地域の自治体が税率を定めています。償却資産に該当する設備がある場合には、設備にも固定資産税の納税が必要です。
固定資産税や都市計画税には特例を適用して節税できる場合があります。例えば、住宅用地の一部をコインパーキングにしている場合、住宅用地の特例によって最大で1/6まで土地の固定資産税を減らすことが可能です。
参照:固定資産税・都市計画税(土地・家屋)|不動産と税金|東京都主税局
所得税・住民税
所得税は個人の所得にかかる税金で、コインパーキング経営による所得も課税対象です。コインパーキング経営の所得は一般的に不動産所得または事業所得に分類され、総合所得に含まれます。総合所得は、給与所得など他の所得と合算された金額に基づいて税率や控除額が決まります。確定申告の際には、他の所得も含めて計算し、適切に納税することが必要です。住民税は課税所得に応じて算定され、毎年5月から6月頃に通知があります。
個人事業税・法人税
個人事業税は個人、法人税は法人に対して事業による所得汚に対して発生する税金です。個人事業税は都道府県によって課税される地方税です。法人税には国税の法人所得税と、地方税の法人事業税と法人住民税があります。税額の計算方法は所得や業種、資本金や法人の週別などによって変わります。事業としてコインパーキング経営をする場合には、個人事業主か法人かによって税制が異なるので、収益を上げやすい方法を選ぶことが大切です。
消費税の取り扱いを考慮してコインパーキング経営を始めよう
コインパーキング経営は消費税の取り扱いが重要なポイントです。経営を始める前に、どのように消費税を取り扱うかをしっかりと考えることが大切です。例えば、土地の一括借り上げを選択すれば、消費税を考慮する必要がなくなり、利益を出して所得を確定申告する際にもシンプルになります。
一方で、起業後の2年間は免税事業者として消費税の納税義務が免除されるため、この期間を活用して経営を安定させることも可能です。ただし、インボイス制度に対応すると課税事業者となるため、消費税の負担が発生します。この点には注意が必要です。
コインパーキング経営を始める際には、消費税の取り扱いと市場の状況をしっかりと確認し、適切な経営方法を選びましょう。
まとめ
コインパーキング経営では方法や売上状況などによって消費税の取り扱い方が違います。コインパーキング経営を始めるときには、税務負担を軽減するために、わかりやすい一括借り上げで土地を貸すのも賢い方法です。自主経営や管理委託で確定申告のときに消費税を納税する経営方法も可能です。コインパーキング経営で利益を得たら確定申告や納税は必要なので、消費税もその一環として手続きをすれば問題ありません。
コインパーキング経営ではインボイス制度への対応も検討する必要があります。競合のコインパーキングの状況や地域での需要の高さなどを加味して、制度対応も検討することが大切です。
※本記事は可能な限り正確な情報を元に制作しておりますが、その内容の正確性や安全性を保証するものではありません。引用元・参照元によっては削除される可能性があることを予めご了承ください。また、実際の土地活用についてや、税金・相続等に関しては専門家にご相談されることをおすすめいたします。