新紙幣の発行で駐車場経営で必要な対応は？対策方法と注意点を解説

新紙幣とは、現在日本銀行が発行している紙幣（日本銀行券）の様式が刷新された新しい紙幣です。日本では2024年7月3日に新紙幣が発行される告示が2019年に財務省によっておこなわれました。日本で現在流通しているのは2004年に発行が開始された一万円、五千円、千円の紙幣です。2024年の新紙幣は20年ぶりの紙幣の総入れ替えになります。

参照：
報道発表「新様式の日本銀行券の発行について」 : 財務省

新しい日本銀行券及び五百円貨幣を発行します : 財務省

お札の基本情報～現在発行されているお札～　独立行政法人 国立印刷局
 

2024年に新紙幣が発行される理由は偽造防止対策とユニバーサルデザインの導入です。紙幣は偽造をされにくいように透かしを入れるなどの工夫をしていますが、偽造の技術の向上によってリスクは高まります。よりセキュリティ性の高い新紙幣に切り替えることで偽装リスクを低くすることが可能です。2024年の新紙幣では「高精細すき入れ」と3D画像が回転する最新技術によるホログラムを導入して偽造対策をしています。

ユニバーサルデザインは識別性の向上を目的としています。ATMや駐車場の精算機で正確に紙幣を識別できれば、偽造紙幣をエラーにして除外することが可能です。ユニバーサルデザインは偽装防止対策を兼ねていますが、誰でも使いやすくすることも重視している取り組みです。指の感触で識別可能なマークの位置や形状を券種間で変えることで、目が不自由な方にもわかりやすいデザインにしています。文字も大きくして高齢化社会への対応もしています。

 

新紙幣のデザインは旧紙幣から変更されます。2024年の変更では紙幣の寸法については同じです。表裏のデザインについては以下に新旧対応表としてまとめました。

 

駐車場経営では新紙幣の発行によって対応が求められる場合があります。月極駐車場や係員が精算の対応をしている駐車場では問題が起こる可能性はあまりありません。しかし、コインパーキングなどの精算機を設置して運営している時間貸し駐車場では対応が必要です。コインパーキングで対応が必要な内容は2つあります。

新紙幣の流通が始まったら精算に対応することが必要です。既存の精算機は新紙幣を識別できません。ビルバリをアップデートするか、新しい精算機への入れ替えが必要になります。利用者に対して硬貨または旧紙幣での支払いを要求することになるため、駐車場経営では不利になるリスクがあります。トラブルやクレームの原因になるので、新紙幣の発行までに精算方法の再検討をしましょう。
 

駐車場では精算機を新紙幣が使えるように対応しておけば問題ありません。しかし、導入した精算機がトラブルを起こすリスクがあるため、クレーム対応を強化しておくことが大切です。新しい精算機が新紙幣を認識できないトラブルや、旧紙幣を使用したときに認識されない問題が起こる可能性があります。旧紙幣は今後も利用が継続されるので、当面は精算機で対応できることが必要です。

新しい精算機を導入すると、初期不良や設計ミスなどによる不具合が発生するリスクもあります。支払いのトラブルによるクレームが起こる可能性を考慮して、問い合わせに対応できるように体制を整えましょう。
 

駐車場経営では精算機を入れ替えれば新紙幣対応ができます。ただ、安直に精算機を入れ替えれば良いわけではありません。ここでは駐車場の新紙幣対応で注意した方が良いポイントを解説します。

駐車場の経営方法によって適切な対応方法が異なるので注意しましょう。完全に個人で管理をしている駐車場なら、精算機の買い替えをするか、既存の精算機のメーカーに相談してアップデートをしてもらう必要があります。クレームがある想定で対応できるように覚悟しておいた方が良いでしょう。

管理委託をしている場合にもオーナーが設備備品の対応をしなければなりません。しかし、クレーム対応を委託している場合にはオーナー自身は精算機の不具合について24時間対応をしなければならないわけではありません。まずは精算機の対応をして様子を見れば良いという判断ができます。

一括借り上げで駐車場経営をしている場合には、駐車場の運営会社が新紙幣に対応を検討するので、土地のオーナーは対応する必要はありません。クレーム対応も運営会社がおこなうため、新紙幣の発行に伴って特別な対応をしなくても問題ありません。
 

2024年7月の新紙幣の発行への直接的な対策は、駐車場の精算機の入れ替えやアップデートで済ませられます。しかし、今後も新しい紙幣が発行される可能性があるので注意が必要です。

例えば、日本では2004年に旧紙幣が発行される以前に、2000年には記念として二千円札が発行されました。二千円札の発行を受けて日本銀行でも財務省との協力をして流通を促進しました。駐車場の精算機でも対応が必要になりましたが、現在では流通が少なくなっています。

新紙幣の発行は主に偽造の対策と利便性の向上ですが、二千円札のような特殊なケースもあります。このような新紙幣発行のときにも駐車場では現金精算に対応できる対策が必要です。中長期的に見ると精算機の入れ替えはコストになるので、収益を上げるうえで検討の余地があるポイントです。


参照：
二千円日本銀行券の主な様式等について : 財務省

二千円券の流通促進に向けて  : 日本銀行 Bank of Japan


 

新紙幣の発行に対応することは駐車場経営では、利用者が精算できるかどうかにかかわるので重要です。ただ、新紙幣の発行以外にもさまざまな制度が刻々と変わっています。他の制度変更への対応も考慮することが必要です。新紙幣の発行は大きな転換点になるので、他の制度への対応も同時に検討した方が良いでしょう。

例えば、2023年10月に開始されたインボイス制度への対応は駐車場経営に大きな影響があります。インボイス制度では適格請求書発行事業者として認められた事業者が、インボイス制度によって定められた項目を記載した請求書を発行しないと、利用者が消費税の仕入税額控除を受けられません。コインパーキングを利用したときには、適格請求書として認められる請求書が発行されないと利用者の勤める事業者は税制的に不利益を被ります。

このような制度変更への対応も考慮した対策をして、長期的に駐車場を経営しやすい仕組みを整えることが大切です。
 

日本でも世界でもキャッシュレス化が進んでいます。コインパーキングの料金の支払いでは硬貨や紙幣が一般的でしたが、クレジットカードやアプリ決済などに対応していると喜ばれる時代になりました。

経済産業省の調査によると、キャッシュレス決済が浸透してきています。2023年のデータでは39.3％がキャッシュレス決済になっています。日本では国としてはキャッシュレス決済の推進の取り組みを続けているため、駐車場経営でも対応が重要な課題です。

新紙幣が発行されても、キャッシュレス決済を選びたいというニーズが高まっています。現金による支払いだけでなく多様な決済方法に対応することが駐車場経営でも重要になっています。

参照：2023年のキャッシュレス決済比率を算出しました （METI/経済産業省）

 

新紙幣の発行によって、駐車場の精算機では旧紙幣でも新紙幣でも支払いができるようにする対応が求められています。2024年7月の新紙幣発行にはすぐに対応が必要でしょう。ただ、長期的に見るとまた新紙幣が発行される可能性があります。紙幣による支払いを受け付けるには都度対応が必要です。キャッシュレス決済が進む現代の状況を加味して、キャッシュレス決済対応の駐車場にすることも考えましょう。

コインパーキングの経営では新紙幣や新硬貨への対応のために精算機の入れ替えをするとコストになります。新紙幣への対応は必要ですが、同時にキャッシュレス決済に対応すると利用者を増やせるでしょう。
 

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