2021年07月16日公開
2024年09月30日更新
駐車場経営は儲からないのは本当?失敗を回避する方法を解説!
駐車場経営は初期投資額を抑えて始められるため人気があります。しかし、駐車場経営が儲からないという話を聞いてためらう人もいるでしょう。確かに、駐車場経営は失敗すると利益を上げることが難しいですが、失敗を回避し、一定の利益を上げることは可能です。この記事では、駐車場経営の収益モデルを通じてどのくらい儲けられるのかを紹介します。また、失敗例を通して、儲かる駐車場経営のコツも解説します。
駐車場経営は儲からないのか?
「駐車場経営は儲からない」とよく言われていますが、本当に儲からないのでしょうか?駐車場経営は、全ての土地活用の中でも、日常生活に身近で、比較的ローリスクであり、誰でも参入しやすいという特徴があります。そのため、駐車場を土地活用として行う事例は多くあり、多くの成功と失敗があるのは事実です。
では、駐車場経営で儲けるためには、どのようなノウハウや注意点があるのでしょうか?また、駐車場経営の失敗には必ず原因があります。駐車場経営にありがちな失敗や、トラブルの原因やその対処法についても言及し、過去の失敗を教訓に成功へ導く術も紹介します。
まずは、駐車場経営の基礎として、今後の将来性から解説していきます。
駐車場経営の将来性
ここでは、駐車場経営の将来性について解説します。今後の駐車場の需要と供給、それに伴う車の保有台数の推移、駐車場利用者数の推移についてです。
駐車場の需要と供給
(一社)自動車検査登録情報協会のホームページによると、令和3年2月末現在、日本全国の自動車登録台数は、82,523,814台となっています。自動車の保有台数は、統計が始まった昭和41年以降依然として右肩あがりで、近年では自家用車の保有台数が伸び続けています。実際、自家用車の登録台数は、令和2年現在6180万台となっており、自動車登録台数全体の約75%を占めています。
つまり、自動車の4台に3台は自家用車で、その自家用車の保有台数が以前伸び続けているというのが統計上の結果になります。都心部では、若者の車離れなど言われていますが、実は都市部郊外や地方都市では依然自動車依存度が高いのです。
したがって、今後も車の保有台数が増える以上、駐車場需要は大いに見込めるということになるのです。
駐車場の利用者数の推移
2006年の道路交通法改正により、駐車場利用者数は増加しています。これまで、主に警察官が行っていた公道上の駐車違反の取り締まりが、民間企業へ委託できるようになったためです。これにより、取り締まりが厳しくなり、路上駐車で済ませていた人が、取り締まりを恐れて民間駐車場を利用するようになりました。
また、日本全体での高齢化も、駐車場利用数増加の一因と考えられています。年配者は年を取るごとに足腰が悪くなり、体力が減るに伴い、ちょっとした移動でも、車に頼ることが多くなるのです。
更に、地方都市では公共交通機関の廃止により、日常生活での買い物や病院への通院等で、自動車の利用が欠かせない地域も増えています。このように自動車の利用が増えれば、おのずと駐車場の利用も増えていきます。
今後、違法駐車に対しての法律が緩和されることはないでしょうし、高齢化は続くため、自動車がなくなる社会は考えにくいのです。したがって、駐車場の利用者数は今後も増える見込みであり、駐車場の需要は落ちそうにありません。
駐車場経営の収入モデル
ここでは、駐車場経営の収入モデルについて紹介します。都市部、地方部各々に車室10台のコインパーキングを設置した場合についてです。尚、料金相場は立地により変わります。したがって、どの立地にコインパーキングを設置するかで、収入は大きく変わってくるのです。実際のコインパーキング利用時の、1時間当たりの料金相場は下記になります。
立地 | 料金相場(1時間あたり) |
東京都内 | 700円 |
大阪市内 | 500円 |
福岡市内 | 300円 |
都市部の収入モデル
東京都内で、コインパーキングを設置した場合の収入モデルです。稼働率は30%とします。
700(円)×10(台)×24(時間)×365(日)=61,320,000円
稼働率30%を乗じると、6,132万円×30%=18,396,000円
この場合、少なく見積もってもおよそ1,839万円の収入が見込めます。また、ここから管理委託費用(収入に対して5%~10%)と固定資産税などの固定費などを差し引いても、半分以上は収益になる計算になります。
地方部の収入モデル
次に福岡市内で、コインパーキングを設置した場合の収入モデルです。稼働率は同様に30%とします。
300(円)×10(台)×24(時間)×365(日)=26,280,000円
稼働率30%を乗じると、2,628万円×30%=7,884,000円
稼働率を同様に設定すると、おおよそ788万円の収入が見込めます。この場合、収入自体は都市部の半分以下になってしまいますが、固定資産税などは都市部よりは安価となり、価格競争も少ないので、稼働率を確保できれば手堅い経営ができます。
駐車場経営が不向きなケース
駐車場経営は、ローリスクではありますがローリターンでもあります。つまり、土地活用で一気に収益を上げて儲けたいと思う人には不向きです。また、駐車場経営の中でも比較的儲かるのが、コインパーキングの管理委託方式です。多少、リスクはありますが駐車場経営で、少しでも儲けを出したい場合にはおすすめでです。
駐車場経営が向いているケース
駐車場経営が向いているケースは、主に下記になります。
- 土地活用で初期費用を掛けたくない
- 土地の暫定利用
- 副業で考えている
まずは、土地活用でとにかく初期費用を掛けたくない場合に、おすすめです。特に、コインパーキング経営で、土地一括借り上げ式にすると初期費用は0円になります。次に、土地の暫定利用の場合です。将来的にはアパートを建設したいが、資金繰り等もあり今はできない。しかし土地の維持費は掛かるので、それを補う意味での駐車場経営というケースです。
最後に、サラリーマンの副業にも適しています。駐車場経営自体は、あまり手間が掛かるものではないからです。土地一括借り上げ式にすると、経営には全く関わらず地代収入のみ安定的に入ります。近年、年収がなかなか上がらないサラリーマンにとっては、手を出しやすい分野です。
駐車場経営のメリット
駐車場経営の将来性や収益モデルを考えると、今後も利益を期待できるでしょう。ただし、不動産投資を検討する際には、マンションやアパートなどの経営方法もあり、より高い収益を期待できるのではないかと考える人も多いでしょう。ここでは、駐車場経営を選ぶメリットを紹介します。
土地があれば初期投資額が低い
駐車場経営は初期投資額が低いので、自己資金が少なくても始めやすいのがメリットです。特に土地を所有している場合には、土地の整備や設備の設置だけで始められます。マンションなどの建物を建てるには数千万円の費用がかかり、ローンを組まなければ経営を始められないでしょう。駐車場経営なら初期投資額を抑えられるため、全額自己資金で始めることも可能です。
また、駐車場経営では一括借り上げにすると駐車場の整備にかかる初期投資額を管理会社に負担してもらえます。更地の土地があれば初期投資額をほぼゼロにできるので、自主管理をするよりもさらに始めやすくなります。
ランニングコストを抑えやすい
駐車場経営はランニングコストが他の不動産投資よりも安くて済みます。例えば、マンションを建築して経営する場合には、定期的に外壁塗装や屋根塗装などの大規模修繕工事をしなければならず、規模によっては数百万円の費用がかかります。エレベーターの定期点検なども必要で、ランニングコストが高くなりがちです。
駐車場経営の場合にも場内の清掃や精算機の点検・管理などのランニングコストがかかります。しかし、マンションなどの大きな建物の経営をするよりも管理しなければならないものが少ないのでコストを抑えられます。
短期間で経営を始められる
駐車場経営は準備期間が短いのがメリットです。青空駐車場なら更地の土地を持っていればすぐに始められます。アスファルトで舗装して車室のラインを引くのにも数週間あれば十分です。立体駐車場にすると建築に時間がかかりますが、平面駐車場なら短期間で経営を始められます。
土地の固定資産税が気になっていて、活用して収入源にしたいというときには一日でも早く経営を始めたいでしょう。マンション経営では数ヶ月の準備期間がかかるのに対して、駐車場経営は数日~数週間で経営を開始できるので人気があります。
狭小地や変形地も収益化できる
土地の広さや形状に関係なく活用できるのは、駐車場経営の大きなメリットです。狭小地に家を建てても借り手が見つからずに儲からない場合や、変形地で土地の広さに見合った大きな建物を建てられない場合でも、駐車場なら柔軟に設計して収益化できます。車一台分のスペースが確保できれば、駐車場経営は可能です。
複数の車室を用意する場合には、十分な幅員のある通路も必要です。駐車場の出入りのしやすさを考慮して設計することも、利用者を増やすためには欠かせません。狭小地や変形地では駐車場設計が難しくなることもありますが、他の不動産投資が困難な場合でも、駐車場経営なら可能性があります。
自然災害によるリスクが低い
不動産投資には、自然災害による被害で大損するリスクが伴います。これは駐車場経営に限らず、不動産投資が儲からないと言われる理由の一つです。例えば、マンションを建築して経営を始めた直後に大地震が起きて倒壊した場合、経営は困難になります。地震保険に加入して補償を受ければ再建は可能ですが、建築や地元のインフラの回復には時間がかかります。
駐車場経営でも、立体駐車場のように建物を建てると自然災害による被害が大きくなるリスクがあります。しかし、平面駐車場でほとんど造作がない設計にすれば、地震や台風などによる被害額が少なくて済み、再建も迅速に行えます。自然災害の多い日本では、駐車場経営はローリスクで行える不動産投資です。
儲からないときに撤退しやすい
駐車場経営が儲からないと感じたときでも、撤退しやすいのがメリットです。駐車場の利用が少なく、利益が出ないこともありますが、駐車場は更地に戻して別の方法で土地を活用するのが簡単です。平面駐車場なら、アスファルトやタイヤ止めなどを撤去するだけで更地に戻せるため、撤退費用が少なくて済みます。
一方、マンションなどの大きな建物を建てると解体費用がかさみ、儲からないときに撤退するのをためらう原因となります。しかし、赤字経営が続くと資産を減らすだけになってしまいます。駐車場経営は、うまくいかなかったときに撤退してやり直しやすいため、初心者にもおすすめです。
駐車場経営が儲からない理由と失敗事例
ここでは、駐車場経営が儲からない理由と失敗事例について解説します。計画段階での失敗事例6つと、運営段階での失敗事例3つを取り上げます。まずは、これまで起きた失敗事例を学び、成功への道筋を作っていきます。
計画段階での失敗事例
まずは、駐車場経営を計画している段階での失敗事例です。
①土地なしの状態から開始してしまった
まずは、土地なしの状態から開始してしまった場合です。駐車場経営を行いたいと思っても、土地がなければ始めることはできません。この場合、土地を購入せざる得ないのですが購入時の資金繰りに問題があるのです。
駐車場経営は、収益性が高くなく元々掛かる固定資産税などの固定費等を差し引くと、毎月の利益が大きく出る土地活用ではありません。このような状況であるにも関わらず、土地購入でローンを組んでしまうと毎月の利息負担が発生し、利益がほぼ出ないか赤字になる可能性が高いのです。
したがって、駐車場経営を土地購入から始める場合は、全額現金で購入できる範囲で土地を取得するのがおすすめです。尚、コインパーキングの管理委託方式であれば、収益性は高いのですが、立地は好立地に限られ土地の取得費は高額になります。
また、収益は稼働率に左右されます。そもそも好立地であれば、貸しビルやマンションの方が高収益が見込めるので、駐車場での土地活用は現実的ではないのです。
駐車場経営は、一般的には土地を所有している人の土地活用、若しくは土地を購入するのであれば現金で購入できる範囲で取得するのが、失敗しないポイントです。
②固定資産税の上昇を把握していなかった
二つ目は、固定資産税の上昇を把握していなかった失敗事例です。これは、実家を相続したが住む予定なく、空き家になっている場合によくある落とし穴です。実家を取り壊し駐車場経営を始めた場合に、住宅用地の軽減措置で減免されていた固定資産税等が、駐車場になることで減免措置がなくなり、固定資産税はおよそ6倍、都市計画税は3倍になるのです。
よって、宅地評価のままの固定資産税で固定費を想定していると、駐車場経営開始後に固定費がアップし赤字になることがあるのです。固定資産税など、駐車場経営に関わる税金関係はしっかりと理解したうえで、経営を始めないと失敗することがあります。
③需要のない立地で開始してしまった
3つ目は、駐車場需要がない立地で開始してしまった事例です。駐車場経営は、立地周辺に利用者がいなければ成り立ちません。したがって、駐車場を計画している立地周辺に需要があるかを、事前に調査する必要があります。
まず月極駐車場は、マイカーや社用車など固定客の利用や、会社の事務所や個人商店や診療所・病院等が多い立地であれば、社用車用の駐車需要や、病院や店舗を利用する顧客向けの提携駐車場としての需要が見込めます。
コインパーキングであれば、主要駅、大型商業施設、総合病院、イベント会場、商店街などが傍にあれば、買い物・通院などの一時的な駐車需要を見込めます。駐車場経営を開始する前には、先述のような条件が整っているか、また周辺の駐車場の稼働率の高さなど、失敗しないためにはしっかりとした事前調査が必要です。
④経営方式選びに失敗してしまった
4つ目は、経営方式選びに失敗してしまった事例です。駐車場経営は比較的敷居の低い土地活用ではありますが、それなりに知識や経験がなければ経営を軌道に乗せるのは難しいのです。したがって、駐車場経営を始める際の経営方式選びは重要です。
月極駐車場経営が初めてであれば、自己経営方式ではなく管理委託方式がおすすめです。自己経営は、集客・契約・維持管理・賃料徴収など全てを行う必要があり、ノウハウと知識と経験がなければ経営はうまくいきません。よって、初めての経営の場合は管理委託方式がおすすめです。
コインパーキングであれば、土地一括借り上げ方式がおすすめです。コインパーキングの大手運営会社は、この方式が多く、初めてであれば無難な選択です。土地を丸ごと貸す形になるので、経営等は行わず地代を受け取るのみになりますが、確実に黒字になります。儲けは少額になる可能性はありますが、まずは土地活用で損しないことが重要です。
⑤運営会社選びに失敗してしまった
5つ目は、運営会社選びに失敗してしまった事例です。先述の通りに、リスクを取らずに一括借り上げ方式を選択したとしても、運営会社次第では駐車場経営に失敗してしまうこともあります。駐車場運営会社には、三井のリパークやタイムズやアップルパーキングなど、大手運営会社が多くあります。
しかし、近年では駐車場業界へ参入する会社も多く、業歴の浅い会社もあります。それらの会社は実績を増やしたいがために、最初だけ高い賃料を提示してきます。しかし、実際に運営を開始してみると、運営ノウハウが乏しいことからトラブル時等の対応がお粗末であったり、契約後に即賃料減額の要求があったりします。結局、他の大手よりも賃料が下がり、土地オーナー自体の心労も多くなってしまうこともあるのです。
駐車場運営会社の選択時は、大手を選べば間違いないのですが、知名度が低い運営会社であれば、過去の実績やトラブルが無いかなど、しっかりと確認することが必要です。
⑥稼働率の収支計画が甘かった
最後に、駐車場の稼働率を高めに見据え、収支計画自体が甘かった失敗事例です。駐車場が満車で稼働することは殆どなく、月極駐車場であれば稼働率80%、コインパーキングであれば稼働率50%いけば御の字です。また、経営開始後は周辺にも駐車場自体の存在が認知されていないため、稼働率は更に低くなるでしょう。
したがって、駐車場の稼働率は低めで見積もることがポイントです。低めで見積もった場合でも、周辺での需要が見込め、固定費を差し引いても黒字が確保できそうな場合に、経営を行うのがよいのです。駐車場経営は、賃料収入の見込み、稼働率の見込み、周辺需要の見込み、この3点を見極めるのが重要で、これを裏付けるための調査が一番大事になるのです。
運営開始後の失敗事例
これまでは、計画段階での失敗事例を紹介しました。今度は、運営開始後の失敗事例です。駐車場経営は運営開始後にも、失敗につながる事例が多くあるのです。事前に調査したから万全ではなく、実は本当の勝負は運営開始後になります。
①料金設定が不適切であった
まずは、料金設定が不適切であったという事例です。利用者が駐車場を決める大きなきっかけは、駐車料金です。同じような立地であれば駐車料金が安い方を選びます。これは、月極駐車場・コインパーキング双方で言えます。
駐車場経営は、周辺の競合や環境に大きく左右されます。コインパーキングを経営していて、近くに料金が安いコインパーキングができれば、確実に稼働率は落ちます。また、近くにあった総合病院が移転してしまった、お店がなくなってしまったなど、コインパーキングの利用者が多かった施設がなくなることで、稼働率は変わります。
そのため、駐車場経営では周辺の状況を常に把握し、需要が見込めそうなときは料金設定を相場並みか少々高めに、需要が見込めそうにない時は料金の値下げを行い、稼働率を確保します。つまり、料金設定は一度決めたらそのままではなく、時代の変化や周辺環境の変化に合わせて、柔軟に設定を変えていくことが大事なのです。
また、周辺駐車場との差別化の工夫をすることもできます。月極駐車場であれば屋根付きにして付加価値を付ける、コインパーキングであれば最大料金や夜間料金を設定するなどの方法があります。
②近隣エリアに競合の駐車場が誕生した
2つ目は、近隣エリアに競合の駐車場ができた事例です。駐車場は、土地利用を転用しやすい土地活用であるので、駅周辺で商業ビルが取り壊された場合に、一時的にコインパーキングになることはよくあります。よって、駐車場はどこにでも作ることが出来るのです。
競合も多い事業ではあるので、近隣エリアに新しい駐車場ができるといった情報は、常に把握しておくことが重要です。先述のように、立地条件や料金設定で負けていれば、稼働率が落ちてしまうことが容易に想像がつくので、事前に対策を講じることが重要です。つまり、常に周辺調査を実施することで、失敗を防ぎます。
③工事需要の影響を受けた
最後は、近隣での工事需要を受けたことによる失敗事例です。コインパーキングは、周辺に大きな工事現場があると、稼働率が上がり一時的に儲かることがあります。このような工事期間中は、現場の職人が毎日コインパーキングを利用するためです。
しかし、当然工事が終わってしまうと職人による需要が無くなるため、稼働率が大幅に下がります。大型工事現場は、工事中は売上に大きな貢献を与えるものの、終了した途端に大きなマイナスの影響を与えることをよく理解しましょう。
駐車場経営で儲からない事態につながるトラブル
ここからは、できれば避けたい、儲からない事態につながる各種トラブルについて解説します。これらは、土地一括借り上げ方式であれば、稼働率に関係なく地代収入が入るので影響は少ないのですが、自己経営や管理委託であれば経営自体に影響します。
事前に想定されるトラブルを知ることで、実際に起こった時に迅速に解決できます。
①自動車の長時間にわたる放置
まずは、自動車の長時間にわたる放置です。仮に、コインパーキングを管理委託方式で経営している場合に、駐車区画が10台しかないなかで1台でも放置車両があれば、稼働率はそれだけで10%落ちてしまいます。1時間300円のコインパーキングで、1週間放置されれば(300円×24時間×7日)で、50,400円の損害と考えることもできるのです。
したがって、所有者不明で放置されてしまえば、車両の撤去費用等は土地オーナー持ちになります。もちろん所有者が見つかれば請求することはできますが、少なくとも一時的には負担せざるを得ません。また、仮に最大料金が繰り返し使えるコインパーキングであれば、放置されていること自体に気づきにくくなります。
いずれにしても、利用者のモラル違反があると土地オーナーが負担を強いることになります。月極駐車場においても、部外者による不正駐車があると、本来停めるはずだった利用者の補填と不正車両の撤去の費用や警察への通報などが必要です。土地オーナーの心労や負担が重くのしかかり、経営自体も揺らぎかねない事態になる可能性もあるのです。
このような長時間にわたる放置を防ぐためには、駐車場内への防犯カメラの設置、照明設備の設置、定期的な巡回などを行い、素早く異常に気付く体制を整えることが重要です。
②ゴミの不法投棄
二つ目は、ゴミの駐車場敷地内への不法投棄です。駐車場の敷地内は、利用者も含め無人である場合が多いので、家庭のごみなどが不法投棄されてしまうこともあります。不法投棄があれば、その駐車区画に停めることが出来なくなることや、ゴミが不法投棄された風評被害で稼働率が落ちることもあります。
また、ゴミの処分費用は土地オーナーが負担することとなり、常態化してしまえば処分費用も掛かり負担も重くなります。したがって、ゴミの不法投棄をされないためにも、先述の通りに防犯カメラや照明、定期的な巡回を強化する必要があります。
③精算機などの設備破壊
3つ目は、精算機などの機器設備が壊されることです。コインパーキングには、精算機の他にロック板や照明、防犯カメラがあります。特にロック板は、不正駐車の車両が退出時に料金を払わずに、無理やり乗り上げて壊される被害が多いようです。
また、精算機やフェンスなどは、車が接触したり悪戯で壊されたりすることもあるようです。これら設備機器が壊されたままであると駐車場経営は成り立ちませんし、稼働率は落ちてしまいます。したがって、早期に修理や交換を行うのですがこれらの負担は土地オーナーになります。
設備機器の交換となると、機器自体の購入や設置工事などの費用が掛かります。更に、稼働率が落ちたことによる損害もあります。このような被害に遭ってしまった場合の対策として、保険に入っておいたほうがよいです。
特に、精算機は破壊されて現金を盗難される恐れもあります。このような場合に備えて、動産総合保険といった現金を補償する保険に加入しておくことがポイントとなります。
④隣地所有物の破壊
4つ目は、隣地所有物の破損です。これは、駐車場の利用者が隣地境界にあるフェンスやブロック塀に、車が接触し破損させることがあります。もちろん利用者が故意でないケースが多いのですが、このような事例があり管理委託形式の場合、隣地所有物の修理費用を補填するのは土地オーナーです。
このように、不特定多数の利用者の不備行為により、土地オーナーが多額の補償をすることは容易に想像がつきます。そのため土地オーナーは、施設賠償責任保険などの保険に加入しておきます。駐車場経営に於いて、隣地所有者と常に良好な関係を保つためにも、このようなトラブル時は迅速な対応が必要です。
⑤駐車車両での自殺
最後は、駐車場敷地での駐車車両内での自殺です。かなり稀なケースではありますが、絶対に起きないとは言えません。敷地内で自殺が発生すると、その後、その土地は事故物件となってしまい、風評被害もあることから経営的には大ダメージです。
このような事件が起きることで、暫く利用者に敬遠されてしまいます。よって、稼働率が大幅に落ちてしまい、駐車場経営自体が行き詰まってしまう可能性もあるのです。今回のように自殺の事故物件は、7年程度は告知義務があります。
したがって、その間は賃料を周辺相場より下げるなどの対策をし、稼働率を確保することが重要です。また、仮に事故物件になってた土地を売却しようにも、評価が落ちているので損する可能性が高いです。よって、当面は売却せず辛抱強く所有し続けたほうがよいでしょう。
駐車場経営で儲からないリスクを回避する方法
ここからは、駐車場経営で儲からないリスクを回避する方法について解説します。5つ挙げていきますので、儲かる、失敗しない駐車場経営の参考にしていきます。
①立地にこだわる
まずは、立地にこだわることが大切です。駐車場経営は、空き地であればどこでも成功するわけではありません。月極駐車場であれば、立地の徒歩圏にマイカー・社用車・商用車・駐車場がない店舗等など、駐車需要が必須です。また、利用料金、駐車場へのアクセスのしやすさ、駐車場での停めやすさ、も重要です。
したがって、上記のような条件が揃った立地でなければ、月極駐車場での勝機はありません。一方、コインパーキングでは、とにかく好立地であることが重要です。店舗が多い駅周辺の立地、役所等公共施設の傍、総合病院の傍など一時利用が見込める立地であることや、周辺に競合が少ない、若しくはコインパーキングが不足しているなどです。
また、月極駐車場と同様にコインパーキングへのアクセスのしやすさや、駐車しやすさの他に、大通りからの駐車場自体の視認性も重要です。交差点傍の駐車場や、接面道路からバックでしか入れない駐車場は、利用を敬遠されます。
立地については、一般的には誰でも利用しやすい立地にあることが重要です。
②車室の数を確認する
2つ目は、土地に用意できる車室の数を確認することです。車室数が少ないと駐車できる車の数が少ないので儲からない可能性があります。土地の広さや形状によって車室をいくつ用意できるかは異なります。国土交通省の「駐車場設計・施工方針について」によると、普通乗用車の場合には1台あたり6.0m×2.5mの広さが必要です。車室数を確認する際に役に立つ指標です。
ただし、車室数が多ければ儲かるとは限りません。車室を無理に増やしたために狭くて利用しづらくなると使ってもらえなくなります。需要を超える車室数にしても空室率が上がったり、稼働率が下がったりするので収益性が低くなります。適正な車室数の駐車場を設計することが大切です。
参照:駐車場設計・施工指針について|国土交通省
③実質利回りを計算して検討する
3つ目は、実質利回りを計算して儲かるかどうかを検討することです。利回りとは初期費用に対して得られる利益の割合で、表面利回りと実質利回りが主に指標として用いられています。表面利回りと実質利回りの違いは、経営にかかる費用を加味しているかどうかです。表面利回りは支出を考慮せずに収入のみで利回りを評価します。実質利回りは経営にかかる管理費や税金などを加味して、初期費用に対する利益の割合を評価します。
実質利回りが高くなければ儲からないと判断可能です。駐車場経営では設備投資にお金をかけすぎたり、駐車料金の相場が安かったり、利用者が少なかったりすると実質利回りが低くなります。実質利回りを計算して低かったときには改善の可能性があるかを検討し、立地や相場の影響で改善が難しい場合には断念した方が良いでしょう。
④治安の良さを確認する
4つ目は、土地の立地から治安の良さを確認することです。駐車場経営で儲からない原因としてトラブルへの対策にコストがかかることが挙げられます。治安が悪い地域の場合には不法投棄があって処分しなければならない、設備が壊されてしまって修理しなければならないといったトラブルが起こる可能性があります。また、車上荒らしや駐車場内での事故が発生したり、近隣への迷惑行為が起きたりすることもあり得ます。
管理によってトラブルへの対策は可能ですが、治安が悪いとトラブルが起こるリスクは高くなります。コストがかかって儲からないだけでなく、近隣トラブルが続いて駐車場経営が立ち行かなくなることもあるので注意が必要です。
⑤競合の動向をこまめに確認する
5つ目は、競合の動向はこまめに確認します。駐車場経営は、競争が激しい土地活用です。周辺の競合駐車場の出方により、稼働率が大きく左右されます。したがって、周辺の利用料金、新規開設、閉鎖など競合の調査はこまめに行っておきます。
仮に、新規開設されたコインパーキングが、オープン記念として利用料金を相場以下に設定している、情報を掴んでいたとします。その情報を事前に掴んでいれば、一時的に料金を下げるなどし、稼働率を維持できる可能性があります。しかし、その情報を知らずに経営を続けていれば、稼働率が落ち続け一気に経営が悪化することもあるのです。
したがって、周辺の競合調査はこまめに行い、常に最新情報を掴んでおくことが、安定的に駐車場経営を続けるコツとなるのです。
⑥精算機の入庫データを調べる
6つ目は、精算機の入庫データを調べることです。つまり、データ分析を行うことにより、駐車場利用者の利用傾向を掴むことができます。仮に、買い物での利用者が多く、半数以上の利用者が30分以内の利用と分かれば、10分単位の料金設定にすることでコインパーキングを利用しやすくなります。
また、総合病院等に近く平均駐車時間が2時間を超えるようなコインパーキングでは、60分単位の料金設定にしたり、最大料金を設定することでお得感などを出すことも可能です。
このように、駐車場利用者の傾向を入庫データから掴むことで、適切な時間設定で適切な料金設定ができます。よって、利用者にとっても使いやすい駐車場となるので、結果稼働率が上がることになるのです。
⑦周辺環境の変化に対応する
7つ目は、需要の変化を受けて対策をすることです。駐車場の需要は周辺環境によって影響を受けます。例えば、人気の飲食店がある繁華街の近くにコインパーキングを設置して経営を始めると高い稼働率になるでしょう。当初は利用者が多くて儲かっていたものの、人気の飲食店が移転してしまった途端に利用者が減って儲からなくなる場合があります。
また、都市開発が進んで駐車場付きの施設や住居が増えると有料駐車場の需要が低下します。周辺環境は刻々と変化するので調査が必要です。駐車場経営を始める時点でも、人気の施設に相談して今後の経営計画を聞いたり、土地計画を役所に問い合わせて確認したりして今後の変化を予想することが可能です。駐車場経営では周辺環境の変化への柔軟な対応が必要なので、起こり得る変化を可能な限り事前に把握しておくのがおすすめです。
⑧一括借り上げ方式で経営を行う
8つ目は、一括借り上げ方式で経営を行うことです。駐車場経営失敗の原因は、素人が安易に手を出すことによる知識不足や、経営・管理ノウハウ不足が原因である場合が多いです。駐車場経営は、一般的に機器メンテナンスや修理などの維持管理、清掃、料金徴収、24時間トラブル対応などがあります。
他にも、固定資産税や所得税等駐車場経営に関する税金の知識や、長期の経営戦略の構築・収支の見込み・リスク管理などさまざまな経営ノウハウや管理ノウハウが必要です。したがって、管理委託方式は一定の駐車場経営の経験や知識が必要になるのです。
上記のように駐車場経営について、知識や経験が乏しいなどの場合、一括借り上げ方式が無難なのです。これは基本的に、駐車場の経営リスクは駐車場運営会社が負います。よって、土地所有者は特に経験やノウハウがなくても、安心して駐車場経営ができるのです。はじめての駐車場経営で不安な人は、一括借り上げ方式がおすすめです。
⑨適切な運営会社に依頼する
最後に、適切な運営会社に依頼することです。駐車場の運営会社も、大手から中小までさまざまです。中小の中には、経営・管理ノウハウに乏しい会社が参入しているケースがあり、後々経営に影響する場合があります。駐車場経営が初めてであれば、大手の運営会社を選択するべきです。
コインパーキングであれば、タイムズや三井のリパークなどは、大手運営会社で経営期間も長く、管理・運営ノウハウに長けています。特に、トラブル時の対応などは迅速であるので安心です。適切な運営会社に依頼することで、安定的な経営環境を作っていきます。
まとめ
日本全国の車の保有台数は、右肩上がりで増えています。特に乗用車の台数は、ずっと増え続けていることから、駐車場経営はこれからも十分見込める土地活用になります。したがって、駐車需要を上手に取り込むことができれば、成功する公算は高いのです。
これまで解説してきた、駐車場経営の失敗には必ず原因がありました。よって、その失敗を繰り返さず、また儲からないリスクを回避する方法を実践すれば、駐車場経営で失敗する可能性は低くなります。駐車場経営は誰でも手を出しやすい土地活用ではありますが、事前の需要調査や経営・管理ノウハウは必須です。
安易に手を出すことはせず、まずは専門家等に相談することからはじめましょう。また、経営方式は最初は無理せずに土地一括借り上げ方式を選択し、まずは堅実な土地活用を目指しましょう。
※本記事は可能な限り正確な情報を元に制作しておりますが、その内容の正確性や安全性を保証するものではありません。引用元・参照元によっては削除される可能性があることを予めご了承ください。また、実際の土地活用についてや、税金・相続等に関しては専門家にご相談されることをおすすめいたします。