2020年08月04日公開
2020年08月20日更新
駐車場経営の9つのリスク【失敗とトラブルの対策】
土地の運用方法として、比較的取り組みやすいといわれているのが駐車場経営です。しかし、安易な気持ちで取り組んでしまうと、思うような収入を得ることができず、失敗してしまう可能性も考えられます。この記事では、駐車場経営におけるリスクを分かりやすく解説します。
駐車場経営の9つのリスクとは
駐車場経営のリスクとして考えられるリスクは次の9点が挙げられます。
- 不正利用と滞納
- 駐車場内の事故
- 駐車場内のトラブル
- 競合との競争
- 近隣住民からのクレーム
- 環境整備
- 稼働率
- 税金や経費
- 台風や地震などの災害
一見すると非常にリスクが多いと感じるかもしれません。しかしどのリスクも、内容をしっかりと把握して前もって対処することにより、改善できます。
また、大きな費用をかけるまでもなく対応することも可能です。そもそも、不動産運用というものは、さまざまなリスクを想定した中で、いかに目標収益を上げるのかが大きなポイントとなるので駐車場経営も例外ではありません。
しかし、その中でも駐車場経営のリスクは、前もって把握しておくことで対応が可能なので、比較的不動産運用が浅い人でも、取り組みやすいといえるでしょう。
ここからは、一つ一つのリスクについて詳しく解説します。
駐車場経営リスク①不正利用と滞納
不動産経営においては不正利用や滞納といった問題が挙げられますが、駐車場経営も例外ではありません。駐車場の経営においては、コインパーキング方式と月極運用方式の2種類の方法があります。
コインパーキング方式は、不正利用のリスクを考えなければいけません。料金を精算せずに駐車場を利用するリスクです。コインパーキングの料金が発生しない、いわゆる駐車スペース以外の所へ駐車して料金の精算を避ける。車止めを無理やり下げる、料金ゲートを不正に上げて支払わないといった方法で料金精算をしないケースが考えられます。
月極駐車場で運用する場合考えられるのは、駐車場料金の滞納です。月極駐車場の賃料滞納は意外と多く、部屋の家賃に比べると金額が安いので、駐車料金の支払いを後回しにと考えます。滞納が起こってしまうと駐車場を貸していても駐車場収入が入らないという事態になるのです。
不正利用や滞納の対策は、駐車場経営にとっても欠かすことはできません。
駐車場経営リスク②駐車場内の事故
駐車場内での事故もリスクとして考えなければいけません。駐車場内での事故で起こりやすいのは以下のケースです。
- 塀やフェンス、精算機への自損事故
- 他に駐車されている車への接触事故
- 駐車場を出るときに自転車や歩行者との接触事故
- 同じときに駐車スペースへ駐車しようとする車同士の接触事故
基本的に駐車場内での事故に関して、所有者は責任を負わないといった契約になっていることが多いです。しかし、一旦事故を起こしてしまった当人たちの気持ちを考えると、責任を駐車場が止めにくい配置であるなど、駐車場自体に問題があると考えがちです。
また、駐車場内で事故が起こったとなると、他の契約者に話が伝わり、駐車場の安心感が低下してしまいます。結果的に、駐車場の稼働率が悪くなり、収益が下がってしまう恐れがありますので、駐車場内や駐車場近辺で起こる事故においては十分に気を付けなければいけないでしょう。
駐車場経営リスク③駐車場内のトラブル
駐車場で起こりがちなトラブルといえば、盗難や車上荒らしといったケースも想定する必要があるでしょう。特に月極駐車場経営において起こりやすいトラブルです。
月極駐車場の場合、同じ人が長期に渡り借りていることが多いので、車を使わない時間帯などが比較的読みやすく、車上荒らしなどにあいやすい可能性があります。また、他のトラブルとして月極駐車場でありがちなのがお客様同士のトラブルです。
例を挙げると、以下のケースが駐車場内のトラブルとして考えられます。
- 隣の駐車場使用者が、自分の駐車場近くに偏って駐車する。
- 隣の車のドアが自分の車にあたって傷がついたと思われる跡がある。
このようなケースにおいても、駐車場自体の信用低下に繋がってしまい、稼働率に影響が出ることが想定されるのです。駐車場内のトラブルは、駐車場経営リスクとしてあらかじめ想定しておきましょう。
駐車場経営リスク④競合との競争
不動産経営は、不動産収入をいかに安定して高い収入を得ていくのかという点が大きなポイントです。それは駐車場経営も例外ではありません。
駐車場収入を安定して上げていく上で注意する必要があるのは、近隣の競合している駐車場です。近隣に同じような駐車場ができた場合や、大手業者の参入などは、いかに安定していたとしても常に注意しておかなければいけません。
駐車場経営は比較的取り組みやすい不動産経営のひとつですので、逆に競合が出やすいといった側面があるのです。競合が出ることは駐車場経営においてはどうしても避けられないリスクといえるでしょう。
傾向として、月極駐車場よりもコインパーキングにおいて新しいコインパーキングができると利用者が流れてしまうことが多いようです。
駐車場経営リスク⑤近隣住民からのクレーム
近隣住民からのクレームも対策を講じておかなければいけません。では、近隣住民からはどのようなクレームが起こりやすいのでしょうか?例として以下が挙げられます。
- 夜中に車の騒音がうるさい
- 排気ガスが家の中に入り込んでくる
- 車の出入りが多く、事故が怖い
月極駐車場においては、近隣の住民が駐車場を借りている場合が多く、あまりご近所の人たちとトラブルを起こしたくありません。駐車場を借りている人たちからすると、契約通りに駐車しているにも関わらずクレームの対象になるわけなので不愉快な気分を感じてしまうでしょう。
最悪の場合、近所仲が悪くなり、駐車場のオーナーに対して攻撃することも考えられます。駐車場経営を行う際は、近隣住民への対策や配慮をしっかりと把握した上で、対策を練っておきましょう。
駐車場経営リスク⑥環境整備
快適に車を駐車してもらうためにも、環境整備には十分に配慮しておく必要があります。では、ここでいう環境整備とは、どのようなものを指すのでしょうか?
例えば、月極駐車場がアスファルト舗装ではなく砂利敷きの場合、管理をおろそかにしてしまうと雑草が生えてしまい、乗降車の際に、迷惑をかけてしまう場合があります。また、木を植えている駐車場は、剪定を定期的に行わないと、枝が車にあたり、車を傷つけてしまう原因にもなりかねません。
更に、古い機器(ロック板)の機械的故障により車に傷をつけトラブルになる事もあるので、注意が必要です。(対策としては、ロックレスの導入やリスクに備えた保険加入)
木に関するトラブルでもうひとつ起こりやすいのが、樹液が車について車を汚すことも起こりがちです。このようなトラブルが起こってしまうと、駐車料どころか、逆に車の洗車代や修理代を請求される場合もあります。
いかに駐車場の契約者に、満足のできる駐車場を提供できるのかといった点は常に考えておかなければいけません。
駐車場経営リスク⑦稼働率
駐車場経営にとって大きなポイントは、いかに駐車料金収入を安定して得るかです。つまり稼働率をいかに高い状態に保つのかということには、常に目を向けておかなければいけません。
比較的取り組みやすい駐車場経営は、稼働率の予測を満足に行わないまま駐車場経営を行うケースも散見されます。すると稼働率が低く、想定していた収益を上げることができないといった事態にもなりかねません。
月極駐車場のケースにおいては、一旦契約になると年単位での契約になるので、比較的計算がしやすいのですが、コインパーキングになると、稼働率が低いと大きな収益減となってしまいます。稼働率は金額設定においても大きく影響します。
月極駐車場、コインパーキング双方ともあたりますが、近隣相場よりも過剰な差をつけてしまうと稼働率の低下に繋がり、収益が上がりません。稼働率には常に目を向けた経営が必要です。
駐車場経営リスク⑧税金や経費
駐車場経営は、マンション経営などに比べると、経費が掛からないことからも参入がしやすい不動産経営の一種なのですが、全くかからないというわけではありません。注意しておかなければいけないのが税金です。特に注意しなければいけないのが家を壊して駐車場にする場合などの固定資産税。
不動産を所有している場合にには固定資産税や都市計画税がかかります。固定資産税の場合は、固定資産税評価額の1.4%です。また、都市計画税の場合は、固定資産税評価額の0.3%が毎年発生します。
しかし以前、家が建っており宅地として固定資産税や都市計画税が発生していた場合、小規模宅地の特例などを使っていると、最大1/6まで減額されていることがあるのです。つまり、駐車場として利用する場合は雑種地として固定資産税が計算されるので、最大で今までの6倍程度の固定資産税や都市計画税がかります。
駐車場経営を行う場合は、あらかじめ把握しておきましょう。
また、コインパーキングとして経営している場合、機械のリース代などが毎月発生します。保守の面では清掃などや、草刈りの費用がかかる場合も考えられます。経費が大きすぎると赤字になってしまうケースもあるので事前の想定が非常に大切です。
駐車場経営リスク⑨台風や地震などの災害
台風や地震により、駐車場の車に損害を与えてしまうケースもリスクとして挙げられます。台風による被害として考えられるのは、飛来物が飛んできて車に損害を与える、駐車場のフェンスが倒れ、車に損害を与える、といったことです。
地震の場合は、隣の家屋の瓦が落ちてきて車に損害を与える、駐車場内に止めている車が動いて他の車とぶつかってしまう、といったケースが考えられます。災害による損害は、複数台に渡ることも多く、損害費用も大きな金額が発生するのです。
一般的に、駐車場での災害における損害を駐車場オーナーが負担することはありません。しかし、災害が原因で月極駐車場の解約が増える場合や、コインパーキングの利用者が減ってしまうことも想定されます。災害においては、予測が非常に難しく、対策が難しい部分があるのですが、予測できる部分までの対応は行っておいたほうが良いでしょう。
駐車場経営のリスク対策とは
ここまでは、駐車場経営に関するリスクについて9つの観点から詳しく解説しました。しかし、リスクだけを知っていてもリスク対策も同時に知り、実行しなければ意味がありません。9つのリスクへの対策として以下が挙げられます。
- 賃料の回収手段や不正利用の相談先を知っておく
- 駐車場内のブランクスペースをなくす
- 防犯カメラや夜間の灯りを設置する
- ライバル競合の価格や相場をよく調査する
- 現状の稼働率をふまえて税金や経費の計画を立てる
- 経営している駐車場を実際に見て回る
- 駐車場経営では他駐車場のレイアウトも参考にする
これらのリスク対策や、どのリスクに対して効果があるのかといった点も含めて、次の項目から詳しく解説します。
賃料の回収手段や不正利用の相談先を知っておく
リスク①の不正利用と滞納について効果がある対策です。
月極駐車場の場合は、賃貸借契約書を交わす際に連帯保証人を一緒に付けることで滞納リスクを下げることができます。近年では、家賃保証会社を付保する契約も増えています。家賃保証会社とは、万が一、駐車料金の滞納があった場合に家賃保証会社が契約者に代わって駐車料金を支払います。
駐車場オーナーは、家賃滞納の心配がほとんどなくなりますので住居の賃貸借契約書では、当たり前のように利用されています。
コインパーキングの不正利用においては相談先をしっかりと知っておかなければいけません。管理会社と管理契約を交わし、不正利用があった場合の回収までを管理会社の責任において行ってもらう、一括借り上げで契約する、といった手法で、不正利用での料金未回収のリスクを避けることができます。
駐車場内のブランクスペースをなくす
これもリスク①における不正利用を防ぐ対策として有効です。
不正利用における駐車スペース以外の所に駐車するのは、ブランクスペースがあり、不正利用しやすいことが原因の場合があります。ブランクスペースをなくし、不正利用しにくい駐車場の配置にすることもリスク対策として効果的です。
しかし、あまりにも詰め込みすぎる配置にしてしまうと、「リスク②駐車場内の事故やリスク」「③駐車場内のトラブル」を引き起こす原因にもなってしまいます。ブランクスペースがなくなるように、それぞれの駐車場のスペースを広げることでこれらのリスク対策も兼ねることが可能です。
不動産経営の視点から見るといかに敷地を有効活用して、レンタブル比を上げていくかといった点も大きなポイントといえます。
防犯カメラや夜間の灯りを設置する
防犯カメラや夜間の灯りを設置することで以下のトラブルを防ぐことができます。
- リスク②駐車場内の事故
- リスク➂駐車場内のトラブル
防犯カメラは、車上荒らしや盗難といった犯罪の抑止に繋がるのです。当然ながら犯罪者は、なるべくリスクを避けて車上荒らしを成功させようとします。つまり、防犯カメラがあるような駐車場でわざわざリスクを犯してまで車上荒らしをしようとする人を大幅に減らすことができるのです。
万が一犯罪被害にあったとしても防犯カメラが犯人逮捕に役立ちます。また前述した駐車場内のトラブルについて、隣の車のドアで自分の車に傷がついたといったトラブルにおいても防犯カメラで確認することが可能です。
夜間の灯りについても夜間の駐車場内の事故を防ぐ役割を果たします。灯りによって犯罪の抑止に繋がりますので、駐車場経営において防犯カメラと夜間の灯りはいくつかのリスク対策に効果的です。
ライバル競合の価格や相場をよく調査する
リスク④競合との競争や、リスク⑦稼働率などにおいて効果があるのが、競合の価格や相場をよく調査するといった対策です。
競合と競争し、稼働率を上げるためには、やはり近隣ライバルの価格や相場の調査は欠かせません。競合の状況をよく把握して相場にあった価格設定をすることで、稼働率の上昇や近隣競合との競争に勝つことができます。駐車場経営を行う前には近隣の調査を行いましょう。
実態に沿った具体的な調査を行うことで期待通りの駐車場経営ができる可能性が高まります。事前の準備をやりすぎることはありません。しっかりと準備して駐車場経営に備えましょう。
現状の稼働率をふまえて税金や経費の計画を立てる
稼働率をしっかりと理解した上で、現状の稼働率から収益を想定し、かかる経費や税金が支払い可能かどうかの運用計画を立てましょう。これにより、リスク⑧税金や経費に対する対策が可能です。
固定資産税は家を建てていた場合と、駐車場にした場合では最大6倍の差が出てしまいます。また、コインパーキングにする場合は、機械の経費、月極駐車場の場合でも、清掃や木の剪定が必要な場合があります。
かかる経費や税金をあらかじめ把握することで、損益の分岐点や、設定した家賃に対する稼働率がどの程度ならば収益が上がるかどうかなどの判断が可能です。予め想定できる支出は駐車場経営の前には必ず算出しておきましょう。
経営している駐車場を実際に見て回る
経営している不動産を実際に見ることでいろいろな気付きがあります。近隣からのクレームになりそうな原因になりそうなものや、環境整備についてなど、直接見てみないと分からないことが多いのです。
実際に見て回ることで、クレーム⑤近隣住民からのクレームやクレーム⑥環境整備の対策に役立ちます。また、実際に見ることで災害が起こったときの備えにも着手できますので、クレーム⑨台風や地震などの災害にも効果があります。
駐車場経営では他駐車場のレイアウトも参考にする
駐車場経営では、いかに土地を有効に活用して、多くの駐車場台数を確保できるかという点が収益を上げるポイントのひとつです。収益を上げるためには、他駐車場のレイアウトを参考にすることで、高い収益を上げることができる配置の参考になります。
クレームが起きにくく安定した収益を上げる参考となりますので、いくつかの駐車場のレイアウトを参考にしてみるのもいいでしょう。
駐車場経営のコツは?
ここまではさまざまなリスクとリスク対策を述べてきました。更に駐車場経営において満足ができる収益を上げるコツなどはあるのでしょうか?ここからは、駐車場経営におけるリスク対策以外のポイントについて詳しく解説します。
不動産経営にもっとも大切なのは立地
駐車場経営を含む不動産経営において、もっとも大切なポイントは立地です。マンション経営などにおいては、交通の便がいい立地。月極駐車場の場合は、戸建て住宅やマンションが多い場所。コインパーキングは人が多く出入りする施設などが近くにある場所など、立地のポイントもそれぞれで異なります。
駐車場経営も立地のいい場所において運用することにより、高稼働率や時間の単価設定を高い金額で設定して、駐車場経営ができるといった多くのメリットを受けることができます。逆に、人通りが少ない、交通の便が悪いといった立地の悪いところで駐車場経営してしまうとなかなか思うような収益を上げることができません。
まずは、駐車場経営を行おうと考えている土地が、駐車場経営にふさわしいような場所なのか?ニーズはあるのかといった点を分析して判断する必要があります。
優秀な管理会社を見つけよう
駐車場経営を含む不動産経営は、不労所得を得ることができるビジネスといわれています。不労所得とは、自分では直接動くことなく、収益を上げることができるビジネスのことを指すのですが、不動産経営は、不労所得の代表的なビジネスといわれているのです。
しかし自分の代わりに、駐車場をしっかりと管理していく存在が必要でもあります。そこで大きな存在となるのが管理会社です。優秀な管理会社は、オーナーの意向に沿った管理を行い、さまざまなアドバイスや提案で高稼働率を維持するために管理業に力を入れてくれます。
ときには、新たなビジネスを提案してくれることもあり、駐車場経営にとっては欠かせないパートナーです。逆に、頼りない管理会社が管理してしまうと、期待通りの稼働率が維持できず、収益も低い状態になってしまいます。
また、クレーム対応も満足にできず、所有者自身にクレームが飛び込んでくる場合もあるのです。駐車場経営にとって、しっかりと管理してくれる管理会社に依頼するかどうかで成功の可能性は大きく異なります。
まとめ
駐車場経営は、比較的取り組みやすい不動産経営といわれていますが、当然ながらいくつかのリスクがあります。今回の記事では9つのリスクを解説しましたが、これらのリスクを理解した上でしっかりと対策を行った上で取り組む姿勢が必要です。
また、駐車場経営にとって大きなポイントは、駐車場経営を行う立地や、優秀なパートナーとなる管理会社に依頼できているかどうかなども、成功と失敗の大きな分岐点となります。
【駐車場経営のリスク】
- 不正利用と滞納
- 駐車場内の事故
- 駐車場内のトラブル
- 競合との競争
- 近隣住民からのクレーム
- 環境整備
- 稼働率
- 税金や経費
- 台風や地震などの災害