2020年08月04日公開
2020年08月04日更新
駐車場経営で重要な「利回り」とは?コインパーキング収益最大化のための知識
利回りについて学ぶことで収入と支出とのバランスがとれた無理のない駐車場経営ができます。この記事では、利回りに関する基礎知識と駐車場経営で利益を最大化するためのポイントをわかりやすく解説していきます。コインパーキングの経営を始める前にぜひ参考にしてください。
駐車場経営の利回りとは?
駐車場経営での利回りとは、土地や設備代など、かかった費用に対してどれくらい儲かるかを表す重要な指標です。利回りが高いほど、その駐車場経営は上手くいっていることになります。
また、利回りが毎年安定していれば、その駐車場は将来にわたって確実な収益が見積もれる「あてにできる」収入源であると言えるでしょう。
利回りには「表面利回り」と「実質利回り」があります。この2つの利回りの違いや特徴についてみていきましょう。
駐車場経営の表面利回りとは
「表面利回り(グロス利回り)」は、土地代に対してどのくらいの収入が見込めるかを示します。不動産の広告で表示されているのはこの表面利回りです。
駐車場経営の表面利回りの特徴
1年間すべての駐車スペースが満車という想定で表面利回りを計算します。(実際の収入は稼働率によってもっと低くなる可能性があります。)また、土地購入費用、年間にかかる費用(ランニングコスト)や税金など、費用は表面利回りの計算には入れません。
そのため、実際に駐車場経営の方針を立てる数字としてよりも、不動産物件を探すときの比較基準として使うのがいいでしょう。
駐車場経営のためにこれから購入しようとする物件に収益性が見込めるかどうか、簡単に素早く物件の価値を比較できるのが表面利回りの特徴です。
駐車場経営の表面利回りの計算方法
表面利回りは1年間すべての駐車スペースが満車の場合の年間収入、つまり最大収入を土地価格で割って百分率にしたものです。
表面利回り(%)=年間収入÷土地代×100
※駐車場を貸すことで得られる「収入」を「賃料」と呼びますが、ここでは自分で駐車場の経営の仕方によって収入の内容が変わるため、「収入」に統一しています。
駐車場経営の実質利回りとは
「実質利回り(ネット利回り)」は、表面利回りでは計算に入れなかった色々な費用も計算に入れた、より現実的な利回りといえます。
ある程度駐車場経営のイメージが固まり、具体的な物件や費用などの条件が決まってきたら費用と収入のバランスを見るためのシミュレーションとして何パターンか計算し、駐車場経営の方針を固めるのに用いるとよいでしょう。
駐車場経営の実質利回りの特徴
駐車場経営は、経営方針によって費用や収入の内訳がガラッと変わります。例えば、自分で直接経営して料金を決めるのか、業者へ土地を貸して一括借上してもらって固定賃料を得るのかによって、年間収入の計算方法も金額も異なります。
また、費用についても、月極駐車場を自分で運営するなら砂利でもいいかもしれませんが、コインパーキングではアスファルト舗装に加えて機械の設置も必要です。
駐車場経営を始めるにあたって必要となる主な費用の一例を下記にまとめましたので参考にしてください。
土地購入費用(土地を購入する場合)
- 土地代
- 土地購入にかかる税金:不動産取得税、登録免許税
- 設備費用(精算機、看板、車止めなど)
- 設置工事費用
- 管理委託料(不動産業者に管理委託する場合)
- 固定資産税、都市計画税など
- 設備メンテナンス費用(コインパーキングを自分で経営する場合)
- 電気代(コインパーキングを自分で経営する場合)
これらすべての費用を踏まえて実質利回りを算出します。そのため、表面利回りよりも実際の経営状態に近い数字が出せるのが実質利回りの特徴です。
駐車場経営の実質利回りの計算方法
実質利回りは、費用を考慮に入れたより現実的な利回りですが、収入についてはあくまで想定される条件で見積もった金額になります。
実質利回り(%)=年間収益÷最初にかかった全ての費用×100
=(年間収入―ランニングコスト)÷(土地購入費用+初期費用)×100
料金や稼働率をどう見積をするかで収益性の判断が変わってきます。
費用については駐車場経営の専門業者に相談してプランを出してもらい、それを元にランニングコストや初期費用を計算するのがよいでしょう。
駐車場経営の利回り計算事例
では実際に利回りを計算してみます。稼働率によって収益が変化することに注目してください。
駐車場経営の利回り計算例①
まず、土地を購入して月極駐車場を自分で経営するという想定で表面利回りを計算してみます。
駐車台数:6台
月額:40,000円
年間収入(満額):40,000円×6台×12ヶ月=288万円
土地購入価格:5,000万円(評価額:4,000万円)
表面利回り(%)=年間収入÷土地代×100 なので、
288÷5,000×100=5.8%
よって表面利回りは5.8%になります。
駐車場経営の利回り計算例②
次に同じ条件で稼働率100%の場合の実質利回りを計算してみます。表面利回りを求めたときの条件に、費用についての条件を追加します。
- 管理委託料:収入の5.5%=15.8万円
- 初期費用:72万円(土地面積120㎡、6,000円/㎡で舗装したと仮定)
- ランニングコスト=固定資産税:56万円
実質利回り(%)=(年間収入―ランニングコスト)÷(土地購入費用+初期費用)×100
{288-(15.8+56)}÷(5,000+72)×100=4.3%
実質利回りは4.3%になりました。ただし、これは稼働率を100%とした場合です。
駐車場経営の利回り計算例③
そこで今度は、同じ条件で稼働率を80%に下げて計算してみます。
288×0.8=230.4万円
年間収入は230.4万円となりました。この収入で先ほどと同じ費用がかかるのですから、
{230.4-(15.8+56)}÷(5,000+72)×100=3.1%
稼働率80%での実質利回りは3.1%となりました。どうでしょう、表面利回りと実質利回りではかなり数字が違います。表面利回りを元に収益性を判断してしまうと、駐車場経営はおそらく上手くいかないでしょう。
- 現実的な稼働率で収入を見込むこと
- 費用をきちんと見積もって計算すること
この2点に気をつけて計算した実質利回りがあれば、堅実な駐車場経営に必ず役立ちます。なお、コインパーキングの場合、自分で経営すると初期費用はおおよそ200~300万円かかります。
一括借上の場合は、この初期費用はほとんどかかりません。そのかわりに土地を貸している地代相当の固定収入のみとなります。
利回りを見積もるときの注意点
自分で直接経営することを考える場合、費用はある程度正確に見積もれますが、収入については、駐車料金をいくらに設定したらいいのか、稼働率はどれくらいになるのか、わからないことが多すぎて、正確な実質利回りはとても計算できそうにないと思う方も多いのではないでしょうか。
月極なら空きが出た場合、コインパーキングなら稼働率の想定によって、予想利回りは全く違ってきます。また、費用についても、想定より早く設備の交換などが発生すれば数百万単位でコストがかかる場合もありえます。
そこで、利回りとは違う視点で収益最大化について考えてみましょう。
収益最大化のためのもう一つの考え方
そもそも駐車場経営における収入とは何だったでしょうか?ここでは利回りとは違う方法で収益最大化を考えてみます。
収入を増やし費用を小さくする
業者による一括借り上げの場合であれば、「収入=賃料」です。収益は収入から費用を差し引いたものですから、収入と費用の差額が収益です。
つまり、「賃料>すべての費用」の差額をどうやって大きくするかを考えることが収益最大化の近道となります。
自分で直接経営する、または管理委託の場合であれば、「収入=料金×駐車スペース数×稼働率」となります。
同じく、収益は収入から費用を差し引いたものですから、「料金×駐車スペース数×稼働率 >すべての費用」の左辺(収入)を最大化し、右辺(費用)を小さくすることが収益最大化の近道となります。
コインパーキング収益最大化のポイント
では、駐車場経営において、費用を抑えて収入を増やすためには、あるいは利回りを上げるためには、具体的に何をどうすればいいでしょうか。次項より詳しく解説します。
業者による一括借り上げの場合
業者の一括借上にすれば、収入は賃料のみとなりますが、稼働率に影響されない安定した収入が見込めます。賃料の目安は周辺の月極駐車場の相場と言われていますので、月極駐車場をフル稼働できている状態と同じと考えられます。一括借上はコインパーキングで多い形態です。
この場合、収入は契約で決められていますので、変えることはできません。費用を下げることで収益の最大化を図ります。
ここでは駐車場経営の費用を下げる方法を3つご紹介します。
駐車場経営の利回りを上げるために立地はよく考える
立地は料金、稼働率の両方に大きく影響しますので、収益に直結します。
一般にコインパーキングは市街地中心部に、月極はその他の立地に向いています。
<コインパーキングに向いた立地の例>
- 大型商業施設や病院などに近い
<月極駐車場に向いた立地の例>
- 入居者数に比べて駐車場数の少ない集合住宅がある
- 倉庫や工場に近く、通勤する人の利用やトラックの駐車ニーズが見込める
駐車場経営の利回りを上げるためにはニーズ調査も重要
周辺の料金相場チェックは定期的に行います。実際に訪れて、駐車場の稼働率や料金設定、駐車場の設備や立地も確認しておきます。
同じ料金なら利用者はどんなところに停めたいと思うか、何をすれば競合との差別化ができるか、を考えます。
賃料を上げれば利回りアップというわけではない
一括借上契約の物件で賃料をあげることはなかなか難しいようですが、自分で経営している物件については近隣の料金相場をチェックして定期的に料金を見直すことが利回りアップのためにはとても重要です。
コインパーキングの利用者は料金の安いところを選びますから、近所の駐車場の相場より料金を上げれば簡単に売上が落ちてしまいます。
料金を上げたい場合は、相場を調べた上で深夜料金や一日貸切料金、時間単位の見直しなど、料金設定を細かく変更して対応します。
自己経営または管理委託の場合
この場合、業者による一括借上とはちがい、経営努力次第で収入を増やすことも費用を下げることもできます。
駐車場経営の費用を下げる4つの方法
業者による一括借上で紹介した方法以外に、駐車場経営での費用を下げる主な方法を4つご紹介します。
土地の購入にかかる費用を抑える
土地を借入金で購入し駐車場経営を始める場合、住宅購入と違い、元本返済額は経費になりません。ランニングコストに借入金の金利が加わるだけでなく、借入金の元本返済は収益から支払うことになります。
一方で自己資金での購入であれば、相続税の節税を行いながら収益も上げることが可能になります。
最低限の設備投資で開始する
実際に経営してみたら想定していたよりも稼働率が低かったので収益が出ない、となっても投資してしまった設備代は支払わないわけにはいきません。投資する費用に見合うほど収益が上がるのか、慎重に検討しましょう。
借入金は繰り上げ返済する
特に土地取得のために借り入れを行っている場合、上がった収益から繰り上げ返済を行うことで将来的に支払う利息の総額が減らせます。利息額は借入期間が長いほど上がるため、早期には払うほど効果が高まります。
税金相当額は支払時まで取ってておく
税金の支払いは翌年度になります。収入から税額相当を計画的に取リ分けておくようにしないと、翌年度に思わぬ出費となります。
駐車場経営の収入を増やす3つの方法
月極駐車場に多い自営(管理委託を含む)の場合、収入=料金×駐車スペース数×稼働率となり、料金、駐車スペース数、稼働率のうち1つ以上を上げることで収入の増加が見込めます。ここではそれぞれ料金、稼働率、駐車スペース数の工夫で収入を増やす方法をご紹介します。
料金を上げる
料金を上げるときに注意すべき点は、多少高くても利用したいとリピーター(繰り返し利用してくれるお客様)に思ってもらえるかどうかということです。日中と深夜の料金を変えるだけでなく、低稼働率の時間帯はあえて料金を下げるなど細かく対応します。特に一日駐車の場合の料金については上限設定すると、利用者にとってお得感が出ますので、ぜひ設定することをおすすめします。
稼働率を上げる
駐車スペースを一台でも多く取ろうとして逆に利用しにくくなると、かえって稼働率が下がります。
- 駐車場の入り口は入りやすいか
- 切り返ししやすいか
- 駐車スペースは狭すぎず止めやすいか
- 看板の設置場所は適切か
- 一目で料金がわかるようになっているか
- 近くの商業施設と提携をする
駐車スペース数の見直し
止めづらいせいで稼働率が落ちているなら、レイアウトを変更して止めやすくする、あるいはバイク用の駐車スペースにすることも検討します。
このように、自力で行う駐車場経営は努力の余地が大いにある一方、周りの環境がひとたび変化すると収入が大きく減ることもあり、良くも悪くもリスクを取って本格的な経営を行う必要があります。
まとめ
駐車場経営の利回りを上げて収益を最大化するためのポイントは、以下2点です。
- 表面利回りではなく実質利回りで収益性を考える
- 収益を増やすには費用を減らすか、駐車料金あるいは稼働率を上げる
収益を上げるためにはそれなりの手間もかかりますし、なによりやるべきことがたくさんありすぎて、自分で判断するのは大変ですし、危険でもあります。
駐車場経営で収益を最大化するには、利回りに影響するいろいろな条件をベストな選択で決定していく複雑な判断が求められます。収益最大化のためには、駐車場経営のプロに相談することも検討してみてください。