2020年12月10日公開
2020年12月10日更新
駐車場経営に必要な保険を徹底紹介!種類/加入で回避できるリスクも
駐車場経営に必要な要素の1つに保険の加入があります。なぜなら駐車場経営は無人という性質上、想像以上にトラブルが多いためです。この記事では、駐車場経営を行う上での保険の必要性や、リスクを回避するために必要な保険の種類や内容を事例を交えてご紹介していきます。
目次
駐車場経営の保険とは
駐車場経営は想像している以上にトラブルが発生することが多いです。その内容は、設備や機器の盗難・破損から、自然災害による被害まで多岐に渡ります。このようなトラブルが発生した場合に、経営者は責任を取らなければならないのでしょうか。
責任の有無は状況により変わってくるので一概には言い切れませんが、経営者が補償しなければならないケースもでてきます。そこで必要になるのが「保険」です。ここでは、駐車場経営をする上で理解しておいた方がいい保険についてご案内していきます。
駐車場経営に関する保険の種類
駐車場経営に関する保険は、主に下記の3つです。
保険名称 | 対象の駐車場 | 保険の対象 | 内容 |
施設賠償責任保険 | 全て | 利用者や利用者の車・近隣住民など | 駐車場内の設備が原因で、利用者や車や設備に危害を加えてしまった場合に、損害金が補償される |
動産総合保険 | コインパーキング | 駐車場内にある機器・設備・現金 | 故障や盗難などにより駐車場内の機器に危害があった場合に、機器の修繕費や精算機内の現金が補償される |
火災保険 | 建物内に設置してある駐車場 | 駐車場内(機器以外) | 自然災害や火災・爆発などが原因で建物が破損倒壊した場合に保障される |
この他にも「機械保険」や「自動車管理者賠償責任保険」が関わってくるケースもあります。まずは、なぜ保険が必要なのか、加入するメリットを確認していきましょう。
駐車場経営で保険に加入するメリット
駐車場経営で保険に加入するメリットは、お金が発生するトラブルがあった時に被害額を補償してくれることです。その内容は、当て逃げなどの人的被害から、自然災害による被害など様々です。
加害者が特定できないと、被害額を請求することができません。そのため、経営者が補償せざるを得ない状況になります。もし保険に加入していないと、被害額を自分で負担しなければなりません。被害を受けた対象が機器や設備の場合はもちろん、利用者の車に被害があった場合は補償額が高額になることも予想されます。
保険に加入していれば、このようなリスクを回避することができます。「無人」という性質を考えると、保険に加入することは大きなメリットと言えるでしょう。しかも、保険料はそれほど高額ではありません。補償の内容にもよりますが、300万円までの補償金額であれば、年間15,000円ほどで加入できる保険もあるのです。
この他に知っておきたい駐車場経営のリスクに関してはこちらの記事で詳しくご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
駐車場経営に必要な保険①施設賠償責任保険
ここからは、駐車場経営に関わる保険の内容をより詳しくご紹介していきます。まずは「施設賠償責任保険」です。こちらは主に、人や物に対して補償される保険になります。
施設賠償責任保険の概要
施設賠償責任保険とは、駐車場経営者側が原因で利用者や車や近隣住民に損害を与えてしまった場合に、損害額が補償される保険です。
例えば「看板が落ちて利用者の車に傷をつけてしまった」場合や、「駐車場内のコンクリートが陥没していて利用者が転んで怪我をしてしまった」場合などが該当します。つまり、駐車場内の設備が原因となり損害を与えてしまった場合が該当するのです。
この場合の「駐車場内の設備」とは駐車場内全てを意味します。駐車場内の機器、照明、コンクリートなど、全てが対象になります。加入対象は全ての駐車場タイプなので、月極駐車場の場合もコインパーキングの場合も必要になってくるでしょう。
保険料も比較的安く、年間で数千円の保険会社が多いため、リスク回避のためには必要な保険になります。
施設賠償責任保険の加入で回避できるリスク
ここでは、実際に施設賠償責任保険の加入で回避できたリスクをご紹介していきます。
「看板が落ちて、利用者が怪我をしたケース」
利用者が精算機で精算している最中に、老朽化した看板が利用者の足元に落下。その結果、利用者は足を骨折し、全治1ヶ月の治療が必要になった。しかし、駐車場経営者は施設賠償責任保険に加入していたため、治療費を保険で補償してもらえた。
「入出庫ゲートのバーが破損し、車に損害を与えてしまったケース」
駐車場を利用しようとゲート式のコインパーキングに入った際、上に上がったバーが途中で折れ、車に落ちてきた。フロントガラスとバンパーに傷がつき、修理費用20万円を請求された。しかし、駐車場経営者は施設賠償責任保険に加入していたため、修理費用全額を保険で補償できた。
このように普段から点検を行っていても、損害を与えてしまう可能性はあるのです。加害者になってから「保険に加入しておけば・・・」と悔やむよりも、多少の出費でリスクを回避できる方が大きなメリットになるでしょう。
施設賠償責任保険に加入する際の注意ポイント
施設賠償責任保険に加入する際に理解しておくべき注意ポイントをご紹介します。内容をしっかり理解し、保険が適用されるケースを覚えておく必要があります。
施設賠償責任保険で支払われる補償金は、主に下記の部分に対してになります。
- 損害保険金
- 緊急措置費用
- 損害防止費用
- 訴訟費用
①全ての事故に対応はしていない
施設賠償責任保険は、基本的には経営者側(駐車場設備)が原因で利用者や車や近隣住民に損害を与えてしまった場合に、損害額が補償される保険です。しかし、駐車場設備に原因がある全ての事故に対応している訳ではありません。
具体的には下記のケースは補償対象には含まれないことになっています。
- 地震、噴火、洪水、津波または高潮が原因となる損害賠償責任
- 故意によって発生した事故
- 駐車場内施設の工事などによって生じた損害賠償責任
②施設を補償する保険ではない
施設賠償責任保険の補償対象は、損害を受けた利用者や車、近隣住民などです。補償金は補償対象に支払われます。損害の原因を作った機器の修繕に支払われる訳でなないので、勘違いしないように気を付けてください。
駐車場経営に必要な保険②動産総合保険
駐車場経営に必要な保険2つ目は、動産総合保険です。こちらは主に、駐車場内の機器に対して補償される保険になります。どのようなときに保障されるのか確認していきましょう。
動産総合保険の概要
動産総合保険とは駐車場内の不動産を除く財産を対象にした保険で、別名「財産保険」とも言います。駐車場内にある機器などが対象になるため、主にコインパーキングが加入の対象になります。
突発的な事故や故障によりコインパーキング内の精算機やロック板が壊れた場合や、精算機内の現金が盗難された場合などに保障されます。保険料は、保障限度額によって変わってくるので、駐車場内の機器の価格や、精算機内の現金の金額を参考に保障内容を決めていきます。
機械保険との相違点
動産総合保険と同様に、駐車場内の機器を補償する保険に「機械保険」があります。機械保険は「機械損害責任保険」や「機械賠償責任保険」と呼ぶこともあります。両者は似た性質を持つので、違いを理解することが大切です。それぞれの保険の補償対象は下記の通りです。
動産総合保険 | 機械保険 | ||
盗難 | 〇 | × | |
自然災害 | 地震・水災 | × | × |
落雷 | 〇 | 〇 | |
火災・風災・雪災など | 〇 | × | |
誤作動などによる人的ミス | × | 〇 | |
経年劣化 | × | × |
上記の内容を確認すると、駐車場経営には動産総合保険の方が適しているケースが多いでしょう。なぜなら、自然災害の対象範囲も広いですし、盗難による損害も補償対象のため、精算機内の現金を盗まれてしまった場合も補償されるからです。
機械保険は誤作動による人的ミスによる損害も補償対象ですが、駐車場内の機器には誤作動による損害は、ほとんどありません。どちらかというと、工場などたくさんの高価な機器が多いケースが、機械保険向きになります。
また保障限度額は、動産総合保険は機器の「時価」なのに対し、機械保険は「新価」になります。新価とは、同じ機器を新たに購入した際の価格のことで、もし同じ機器が購入できない場合は、同等以上の機器を購入した際の価格を意味します。そのため、機械保険の方が保険料は割高になります。
動産総合保険の加入で回避できるリスク
動産総合保険の加入で回避できるリスクについて、事例を見ていきましょう。
「精算機荒らしの被害を受けたケース」
利用者から精算機が壊れていて使えないとの電話があり、現場に出向くと、精算機がなにかでこじ開けられたような状態になっていた。精算機は使えない状態になっており、中の現金も盗まれていた。しかし、動産総合保険に加入していたため、保険会社が精算機の修繕費用と精算機内の現金を補償してくれた。
「ロック板を壊されたケース」
定期巡回中に壊されたロック板を発見。常にロックが下がっている状態に加工されていた。すぐに修理が必要だったが、動産総合保険に加入していたため、修理費用全額を補償してもらえた。
駐車場ならではのリスクも、保険に加入していることで回避することが可能です。
動産総合保険に加入する際の注意ポイント
動産総合保険に加入する際に、知っておきたい注意ポイントを確認していきましょう。1つ目は、保障対象となる機器の満額が支払われるとは限らないということです。
動産総合保険の損害金は「時価」で支払われます。時価とはそのときの対象物の評価価格です。駐車場内の機器は減価償却の対象になるため、年々、時価は下がっていくということを忘れないようにしましょう。ただし、精算機内の現金に関しては最初に設定した上限から下がることはないので、安心してください。
2つ目は、全ての事故が補償の対象ではない、ということです。これは「機械保険との相違点」で説明した表に記載してある通りです。特に、経年劣化による機器の補償は対象外なので、勘違いをしないように気をつけましょう。また、加害者が特定できている場合は補償の対象とならない場合もあります。
駐車場経営に必要な保険③火災保険
駐車場経営に必要な保険3つ目は「火災保険」です。主に建物に対して補償される保険です。火災保険は建物内で駐車場経営をしている場合のみ加入対象になるので、建物内にない駐車場経営の方は加入不要です。
火災保険の概要
火災保険は、自然災害によって建物が倒壊してしまった場合などに、修繕費用が補償される保険です。そのため、マンションの1階部分や商業施設で駐車場経営をしている場合に必要になってきます。では、火災保険で補償の対象となるのはどのような原因の場合でしょうか。
- 火災
- 風災
- 落雷
- 雪災
また、駐車場経営の場合は「破損・汚損」が対象になっているプランをおすすめします。破損や汚損が対象になっていれば、建物内の壁が欠けてしまった場合や、悪質な落書きによる被害も補償の対象になります。
火災保険の加入で回避できるリスク
火災保険の加入で回避できるリスクについて、事例を確認していきましょう。
「火災により駐車場が使えなくなってしまったケース」
マンションの1階部分で駐車場経営をしていたが、ある日、2階の部屋で火災が起きた。被害は1階部分にもおよび、駐車場の一部が使用できない状態になってしまった。しかし、火災保険に加入していたため、修繕費用の半分が補償され、早々に駐車場を再開することができた。
「駐車場の壁に落書きをされたケース」
ある日、商業施設内の駐車場に大きくペンキで落書きをされてしまった。しかし、火災保険の汚損・破損プランに加入していたため、壁の修繕費用を保険で補償された。
近年、自然災害が多い日本では、火災保険は必須になってきています。
火災保険に加入する際の注意ポイント
火災保険に加入する際の注意ポイントは、補償内容をしっかり確認することです。火災保険は建物や建物内の家財に対して補償される保険のため、すでに建物が建っている場合には火災保険に加入している可能性が高いです。その場合は、加入している火災保険の内容を確認しましょう。
地震保険が付帯されているか、汚損・破損が補償の対象になるかを確認し、対象に入っていない場合は、不足している内容だけ新たに付けることができるかを保険会社に問い合わせすることをおすすめします。
駐車場経営に自動車管理者賠償責任保険は必要?
駐車場経営に関わる保険を調べていると「自動車管理者賠償責任保険」という名称を見る機会があるかもしれません。自動車管理者賠償責任保険とは、管理人が常駐している駐車場が対象になり、経営者側の過失で利用者や車に損害を与えてしまった場合に、損害額を補償する保険のことです。
そのため、月極駐車場やコインパーキングなどの無人の駐車場経営の場合は必要ありません。大型の駐車場で人が常駐している場合のみ、リスク回避のために加入することをおすすめします。駐車場を利用中に車が盗難にあってしまった場合や、駐車場設備により車に傷をつけてしまった場合など、幅広く補償されます。
施設所有者管理者賠償責任保険の加入は必要?
「施設所有者管理者賠償責任保険」も、管理人が常駐している駐車場を対象とした保険です。火災や盗難、管理人側の過失で損害を与えてしまった場合に、損害額が補償される保険です。管理人が常駐していて始めて「管理されている」とみなされるため、無人の駐車場経営の場合は加入の必要はありません。
ただし、利用者はこのような区別はわかりません。そのため、無人の駐車場は免責対策として、駐車場の入口に「無人の場合は管理責任が発生しないため、損害賠償の対象にはならない」ことを明記している場合が多いです。
このようにできるだけリスクを回避する方法を取ることも、駐車場経営では重要な要素になってきます。
駐車場経営の保険を選ぶ方法
最後に駐車場経営で必要な保険を選ぶ際のポイントをお伝えします。
- 補償範囲や適用範囲を絞り、必要な補償だけを選ぶ
- リスク回避の内容と保険料のバランスがうまくとれた保険を選ぶ
まとめ
今回は駐車場経営で必要な保険についてご紹介してきました。押さえて欲しいポイントはこちらです。
- 駐車場経営をしていると、損害賠償をしなくてはならない出来事が起こる可能性は大いにある
- 損害賠償は高額の場合が多いため、保険に加入しリスク回避をすることが重要
- 駐車場経営に関わる保険は主に「人や物に対する保険」と「駐車場内の機器に対する保険」がある
- 全ての事故には対応していない保険がほとんどなので、加入する前に保障内容をしっかり確認することが重要