2020年08月04日公開
2020年08月20日更新
駐車場経営は土地なしで儲けることはできる?土地探しや成功のコツ、注意点
土地なしでも駐車場経営で儲けることができるのかどうか、気になるものです。この記事では、駐車場経営を土地なしで始めたいと考えている方に向けて、土地探しや成功するコツ、注意点について解説します。土地なしで儲ける駐車場経営のコツを知りたい方はぜひ参考にしてください。
目次
駐車場経営は土地なしでも成功する
駐車場経営はすでに土地をもっている場合にすることであって、土地なしだから無理と諦めているケースもあります。しかし、諦める必要はありません。土地なしでも駐車場を経営することはできます。
もともと土地を持っていなくても、土地を購入するか、借りるかのどちらかで駐車場経営を始めるというやり方です。実際に土地なしで駐車場経営を始めている方もたくさんいます。
問題は駐車場経営で儲けることができるか、失敗するかです。駐車場経営の成功とは、収益性を高めて儲けること。土地なしで駐車場経営を成功させるコツについて解説していきます。
駐車場経営は儲かる?収益性とは
収益とは増えた資産のことです。ただし、収益と利益は異なります。
- 収益=売上高
- 利益=収益-支出(経費・税金)
収益性とはどれだけ利益を上げているか、儲かっているかという意味です。駐車場経営の場合、アパート経営やマンション経営などの不動産投資ほど収益性は高くありません。
また、駐車場の管理運営を不動産会社やコインパーキング運営会社などに委託した場合、管理費を支払う必要があるなど、経費がかかります。さらに住宅用地ではないので、固定資産税に軽減措置はありません。
そもそも収益性が低い駐車場経営ですが、土地なしの場合はどのような土地を購入したり借りたりするかによって、収益性を高めることにもつながります。
土地なし駐車場経営の形態
大まかに駐車場経営には月極駐車場とコインパーキングという2つのタイプがあり、さらに経営形態によってそれぞれ下記のような種類に分かれています。
- 月極駐車場:自営・管理委託方式・一括借上げ方式
- コインパーキング:自己経営方式・土地賃貸方式
土地なしで駐車場を経営する場合に、どのような経営形態が考えられるのかについて解説していきます。
1. 企業や専門家に委任して駐車場経営
月極駐車場の自営以外は、すべて不動産会社やコインパーキング運営会社などの企業に管理運営を委託します。
さらに月極駐車場の一括借上げ方式とコインパーキングの土地賃貸方式の場合は、それぞれ企業に土地を貸して経営も行ってもらい、売上にかかわらず一定の地代を得るという方法です。
こうした経営形態の場合は、月極駐車場なら不動産会社、コインパーキングならコインパーキング運営会社に管理運営を任せるのが一般的です。
また、土地活用コンサルタントやファイナンシャルプランナーなど土地活用の専門家に駐車場経営を委任する方法もあります。
2. 土地なしからの個人駐車場経営
管理運営も経営もすべて自分で行うのが個人駐車場経営です。土地なしの場合は、土地の購入や賃貸、土地の整備、設備の設置などもすべて自分で行います。
月極駐車場の場合は精算機を設置せず、コインパーキングのような日常的な料金の回収などの作業がないため、自営も一般的です。
ただし、コインパーキングの場合は料金の回収などの管理運営が大変なため、自営は一般的ではありません。自己経営方式でも、管理運営はコインパーキング運営会社に委託するケースが一般的です。
3. 土地なし経営者は共同経営契約を結ぶことも
個人で経営するのは難しいけれども駐車場の売上に応じた収入を得たい場合は、不動産会社やコインパーキング運営会社と共同経営契約を結ぶことも可能です。
月極駐車場の一括借上げ方式やコインパーキングの土地賃貸方式の場合は、管理運営だけでなく経営までそれぞれ不動産会社やコインパーキング運営会社に任せます。
そのため毎月受け取るのは決まった地代のみで、駐車場の売上には左右されません。しかし、経営形態を共同経営方式にすると、経営のサポートを受けながら売上に応じた収入を得ることができます。
土地なし駐車場経営まずは購入・賃貸からスタート
駐車場を経営するためにはとにかく土地が必要です。土地なしの場合は、土地の購入または賃貸から駐車場経営が始まります。
土地の購入・賃貸の流れは、最初に土地を探し、続いて土地主を見つけ、最後に交渉するという順番です。それぞれの段階について解説していきます。
1. 駐車場経営できる賃貸または購入できる土地探し
まずは駐車場を経営できる土地を探します。希望する場所を実際に回ったり、インターネットで更地を検索したりして売地を見つけるという方法です。土地探しのポイントは下記の3点です。
- なじみのある土地で探す
- 更地・解体しやすい建物が残っている土地を狙う
- 駐車場向きとアピールされている土地は避ける
なじみのある土地のほうが探しやすく、駐車場の需要があるかどうかも判断しやすいためおすすめです。
更地が望ましいですが、解体しやすい建物が残っている土地でもかまいません。解体費用を考慮しても、全体的には価格が安い可能性が高いです。
駐車場向きとして売り出されている土地は価格が高騰している可能性が高いため、避けたほうが無難です。
2. 駐車場経営できる土地を見つけたら土地主を見つける
実際に駐車場として経営できる土地を探すことができたら、次に見つけるのは土地主です。法務局か市区町村の役場で「土地台帳」を閲覧し、土地主を探します。
ただし情報保護の観点から、市区町村の役場では「土地台帳」の閲覧が廃止される傾向にあります。その場合は法務局で閲覧しましょう。
市区町村の役場では「不動産登記簿」なら1件あたり300円程度の手数料を払ったうえで閲覧が可能です。「不動産登記簿」は「登記情報提供サービス」というサイトでも閲覧できます。その際の手数料と利用料はクレジットカード決済です。
3. 駐車場経営できる土地の賃貸や購入の交渉をする
駐車場経営できる土地を見つけ土地主がわかったら、実際に交渉を始めます。ただし、直接土地主と土地の購入や賃貸の交渉をするのではなく、間に不動産会社に入ってもらいます。
その際、土地の相場などの情報を自分自身でしっかり把握しておく必要があります。そのうえで不動産会社を介して、土地主と土地の購入や賃貸について交渉します。
土地の相場については、国土交通省の「土地総合情報システム」というサイトで調べることができます。
土地なし駐車場経営者が土地探しするコツ
土地なしで駐車場経営の収益性を高めるためには、ニーズがある土地を探すことが重要です。
月極駐車場なら住宅街やオフィス街、コインパーキングなら繁華街や駐車場が少ない駅や店舗・病院などの周辺がニーズは高いです。こうした土地探しのコツについて解説していきます。
人が集まる場所や繁華街の近くを狙う
とくにコインパーキングの場合は一時的な駐車なので、繁華街など人が集まる場所が狙い目です。人の数が多いほど、自家用車を運転する人の数も多くなります。
さらに店舗や駅、病院などの施設の周辺のうち、駐車場がないとか、あっても不足しているところもニーズが高いです。
ただし、狙い目の場所での駐車場経営は誰もが考えることです。目をつけた場所の近くに、すでにコインパーキングがある可能性もあります。
コインパーキングの場合、価格競争や利用者の奪い合いが起きやすいため、競合は避けたほうが無難です。
繁華街の近くでまだコインパーキングがないところ、コインパーキングとして活用されそうな土地がほかにはあまりないところがおすすめです。
郊外の中心市街地も狙い目である
郊外の中心市街地は住人の数が比較的多いという特徴があるため、月極駐車場もコインパーキングもおすすめです。
とくに月極駐車場の場合は住宅街やオフィス街が狙い目です。戸建て・マンション・アパート・オフィスのいずれの場合でも、敷地内に駐車場がないか不足しているところはニーズが高いです。
政令指定都市の中で中心市街地の土地を狙う
札幌市・仙台市・横浜市・静岡市・京都市・広島市・北九州市などの政令指定都市も狙い目です。そのなかでも中心市街地の場合、下記のようなメリットがあります。
- 住人や利用者の数が多く、駐車場不足でニーズが高い
- 駐車場の賃料・料金の相場が高い
- コインパーキングの稼働率が高い
月極駐車場の賃料の相場は地方だと約5,000円~1万円ですが、政令指定都市だと約1~3万円です。コインパーキングの場合、稼働率の一般的な目安は40~50%ですが、政令指定都市だと60~70%が目安です。
駐車場経営で儲けるためには需要・賃料・利用料・稼働率のすべてが高い、政令指定都市の中心市街地がおすすめです。
防火地域にある小さめの土地を狙う
立体駐車場以外なら、駐車場では建物を建てる必要がありません。そのため建物を建てにくいことが理由で敬遠されがちな狭い土地や形の悪い土地でも、駐車場にすることができます。
また、市街地の火事対策として設けられている「防火地域」の狭い土地も駐車場経営に向いています。防火地域では耐火建築物や準耐火建築物しか建てられません。耐火性能がない木造は建てられず、鉄筋コンクリートの建物を建てるのが一般的です。
ところが木造より鉄筋コンクリートのほうが建築費は高いので、防火地域の狭い土地は住宅にしてもオフィスにしても敬遠されがちです。
しかし、駐車場なら基本的に建物を建てる必要がないので、防火地域に取り残された狭い土地は狙い目です。
駐車禁止エリアの近くはニーズあり
実際に車を運転しているときに、駐車禁止エリアばかりでなかなか駐車できないと困った経験がある方も多いはずです。つまり駐車禁止エリアの近くは駐車場のニーズが高いということです。
駐停車禁止の標識や表示があるところや、幅3.5m以上の余地を残して駐停車できない狭い道路などは駐車禁止エリアです。その近くで経営するのに適しているのはコインパーキングです。
開発予定地域の近くも土地なしの狙い目
新しくショッピングモールや大型ビルができるなどの開発予定地域や再開発エリアも、土地なしで駐車場経営を始める方にとって狙い目です。人が多く集まり、駐車場のニーズが高まる可能性が高いからです。
とくに誰かが目をつけるより早くコインパーキングを始めることで、密集地となって価格競争が起きるリスクを減らすことができます。
土地なしで駐車場経営するときの注意点
土地なしからスタートして駐車場を経営する場合、土地選びや将来的な土地の扱いに注意する必要があります。こうした土地なしの場合の土地に関わる注意点について解説していきます。
道路付けを必ず確認しよう
「道路付け」(接道条件)とは「土地と道路の位置関係」のことです。「東4m」(土地が道路と接している方角・道路の幅)などと表記します。とくに土地と接している道路の幅によっては車が通れない可能性もあるため、土地選びの際に道路付けを確認する必要があります。
建物を建てるための土地は、4m以上の幅の道路に間口2m以上接していなければならないと建築基準法によって定められています(接道義務)。
特定行政庁による指定区域の場合は幅6m以上です。ただし、建築基準法(1950年施行)以前に建てられた既存不適格の建物もあります。
立体駐車場以外の駐車場の場合は建物を建てないので、こうした接道義務はありません。しかし、車が通れないほど狭い幅や間口の道路と接していると、駐車場として活用できないため注意が必要です。
ガードレールは駐車場経営時に撤去できる可能性あり
ガードレールが設けられている道路と接している土地で駐車場経営をしたい場合は、申請して承認されるとガードレールを撤去することができます。ただし、工事費は申請者の自己負担です。ガードレールの撤去工事の申請先は下記の道路管理者です。
- 国道:国土交通省・国道事務所
- 都道府県道:都道府県の土木事務所
- 市町村道:市町村の土木事務所
道路管理者がわからない場合はまず市町村の役場に相談します。撤去工事を申請してから承認されるまでに時間がかかるケースもあるので、余裕をもって申請する必要があります。
また、ガードレールを撤去することによって歩行者の安全が確保されないなどの支障がある場合は、撤去工事を申請しても承認されないこともあります。道路管理者による許可基準をしっかり確認するようにしましょう。
駐車しやすく入車しやすいかは駐車場経営に重要
駐車場経営で儲けるためには、需要が多いなど立地条件の良い土地を選ぶことが重要です。ただし、どれほど好立地でも入車や駐車がしにくい駐車場では敬遠されてしまいます。
せっかくの好立地を無駄にしないためには、駐車場のレイアウトをしっかり考えることが大切です。駐車場の出入り口付近も1台ごとのスペースも十分にとるようにしましょう。
どのようなルートで入車して駐車するのか、複数の車が行き交うことができるかどうかなど、利用者の目線でシミュレーションする方法がおすすめです。
また、ラインがわかりにくいことによって駐車位置がずれたり、コインパーキングの利用料金や利用方法がわからず混乱が起きたりする可能性もあります。ライン・表示・看板・設備も含めて利用しやすい駐車場を心がけましょう。
土地の大きさに対する駐車台数をよく検討する
儲けるためには駐車台数を多くしたいものです。しかし事故につながる可能性が高まるため、安全を考慮せずに詰め込みすぎるのは厳禁です。
車1台あたり幅2.5m・奥行5mくらいのスペースは必要です。さらにドアを開けたり閉めたり、人が通ったりするために左右70cm以上のゆとりも考慮します。
そのうえで車と人の動線を踏まえてレイアウトし、効率よく駐車台数を多くできる土地を選びましょう。面積が広くてもレイアウトの都合によって駐車台数が少なくなってしまうようでは儲けることができません。
狭かったり住宅用地としては形が悪かったりするわりに、駐車台数を多めにレイアウトできる土地もあります。土地選びの段階で、レイアウトや土地の面積に対する駐車台数についても検討することが大切です。
駐車場経営に適した土地は将来的に売却難があることも
土地選びの段階では、将来的に駐車場経営を辞める可能性については想像がつかない方もいるものです。しかし、駐車場経営に適した土地探しに重点を置くと、将来的に土地を手放すことになったとき売却難になる可能性があることも考慮しておくべきです。
駐車場を経営するには適していても、建物を建てるには向かない土地もあります。例えば防火地域の狭い土地や建物を建てるには形の悪い土地など。
駐車場にしか使えない土地の場合、駐車場用地として売り出すことになり、買い手が限定されるので購入するときは注意が必要です。
もし一括借り上げ方式で運営会社にまかせれば、契約期間はあるものの、契約に則り解約を申し出れば、機械・看板などすべてを撤去して更地で明け渡してくれるため、次の活用も転売もしやすくなります。その観点でも、方式を検討するとが重要です。
駐車場経営を土地なしで成功させた事例
駐車場経営は土地なしからスタートしても採算が合います。土地なしから始めた場合の成功事例を3つご紹介します。
駐車場経営土地なし成功事例1
駐車場経営の場合、実質利回りが40~50%以上だと成功です。実質利回りの計算式は下記の通りです。
- 実質利回り(%)=(年間収入-経費・税金)÷(土地費用+初期費用)×100
駐車台数3台のコインパーキングをコインパーキング会社に管理委託して、15坪(約50㎡)の駐車場を経営した場合の成功例は下記の通りです。
- 実質利回り53%:(207万3,600円-36万円) ÷(72万円+250万円)×100
- 月額売上:17万2,800円=料金200円/時間×24時間×30日×3台×稼働率40%
- 年間収入207万3,600円=17万2,800円/月×12か月
- 経費(管理費・電気代など):36万円/年=3万円/月×12か月
- 土地費用:72万円/年=6万円/月×12か月
- 初期費用(土地整備・設備の設置):250万円
土地を購入すると実質利回りが大幅に下がります。自己資金がない場合は融資を受けて土地を購入するより、土地を借りたほうが成功しやすいです。狭い土地でも十分な利益を上げることができます。
駐車場経営土地なし成功事例2
45坪(約150㎡)の土地を借りて、7台のコインパーキングを管理委託で経営している成功例です。
- 実質利回り:58%=(362万8,800円-60万円)÷(120万円+400万円)×100
- 月額売上:30万2,400円=料金200円/時間×24時間×30日×7台×稼働率30%
- 年間収入:362万8,800円
- 経費(管理費・電気代など):60万円/年
- 土地費用:120万円/年
- 初期費用(土地整備・設備の設置):400万円
3台の場合より支出が増えますが、収入も多くなっています。
駐車場経営土地なし成功事例3
60坪(約200㎡)の土地を借りて、8台の月極駐車場を個人経営している成功例です。
- 実質利回り:47%=(259万2,000円-3万円)÷(240万円+300万円)×100
- 月額売上:21万6,000円=賃料3万円/台×8台×契約率90%
- 年間収入:259万2,000円
- 経費(電気代など):3万円/年
- 土地費用:240万円/年
- 初期費用(土地整備・設備の設置):300万円
コインパーキングより収益性は低いものの、経費を抑え、安定した収入を得ることに成功しています。
まとめ
土地なしで始める駐車場経営のコツについて解説しました。駐車場経営は不動産投資に比べると収益性は低いものの、土地なしからでもスタートすることはできます。月極駐車場でもコインパーキングでも、駐車場の経営形態には大まかに次の3種類があります。
- 管理委託:不動産会社やコインパーキング運営会社などに管理運営を委託する
- 個人経営:個人で駐車場経営も管理運営も行う
- 共同経営:不動産会社やコインパーキング運営会社などと共同で経営する
月極駐車場の場合は個人経営も難易度は高くありませんが、コインパーキングの場合は管理運営の手間がかかるため管理委託が一般的です。
管理運営だけでなく駐車場経営まで業者に任せて、一定の地代のみを得る方法もあります。ただし業者と共同経営契約を結んだ場合は、売上に応じた収入を得ることができます。状況に応じて適した経営形態を選びましょう。
土地なしの場合は土地の購入または賃貸から駐車場経営を始めます。「土地探し→土地主探し→交渉」という流れです。土地探しのコツはニーズの高いところを選ぶこと。狙い目は下記の通りです。
- 繁華街
- 郊外や政令指定都市の中心市街地
- 防火地域の狭い土地
- 駐車禁止エリア・開発予定地域付近
こうした駐車場のニーズが高いところでも土地選びの際の道路付けなどの確認、売却難などの将来的な土地の扱いについて注意する必要があります。
とくに土地の面積に対する駐車台数は儲けるポイントになるので、土地を選ぶ段階から考えることが大切です。実際に成功した事例もあるので、土地なしだからと駐車場経営を諦める必要はありません。参考にして駐車場経営を始めましょう。