2020年08月04日公開
2020年08月04日更新
駐車場経営(コインパーキング)の失敗理由と9つの対処法
せっかく駐車場経営を始めても失敗するケースもあります。この記事では、月極駐車場とコインパーキング(カーパーキング)それぞれを経営する場合の失敗理由と対処法について解説します。土地ありでも土地なしでも駐車場経営は可能です。失敗したくない方は参考にしてください。
駐車場経営の10の失敗理由
大きく分けると、月極駐車場とコインパーキング(カーパーキング)という2つのタイプがある駐車場。それぞれに需要がある場所は異なりますが、ニーズを考慮せずに経営すると失敗につながりやすくなります。
さらに経営と管理運営を自分で行うのか、業者などに委託するのかといった経営形態の違いもあります。こうした違いによって注意すべき点も変わってくるため、失敗しないための対処法を予め検討しておく必要があります。
また、すでに土地をもっている方はもちろん、土地なしの場合でも土地を購入したり賃貸したりといった方法で駐車場を経営することができます。結果として土地を所有するのか借りるのかの違いによっても、それぞれに成功と失敗に分かれるポイントがあります。
駐車場経営で失敗しないためには失敗しやすい理由を知り、対処法を把握することが重要です。まずは駐車場経営でありがちな10の失敗理由について解説してきます。
駐車場経営失敗1. 契約確認ミス
月極駐車場の場合はおもに不動産会社、コインパーキング(カーパーキング)の場合はおもにコインパーキング(カーパーキング)運営会社に経営や管理運営を委託する方法もあります。その場合の契約確認ミスが原因で、駐車場経営に失敗するケースがあるので注意が必要です。
月極駐車場を経営する場合は、利用者と賃貸契約をして賃料を得ます。自営の場合は管理運営まで自分で行います。管理運営の内容は利用者の募集・賃料の回収・清掃・トラブル対応など。自営の場合は経営も管理運営もすべて自己責任です。
ただし、管理運営のみを不動産会社などに委託する方法もあります。さらに土地を不動産会社などに借り上げてもらい、経営も管理運営も任せて一定の地代のみを得る経営形態もあります。
とくに時間に応じた利用料金を得るコインパーキング(カーパーキング)では、日常的な料金の回収などの管理運営が大変です。
そのためコインパーキング(カーパーキング)運営会社に管理運営のみを委託するか、土地を貸して経営まで任せて一定の地代のみを得るかのどちらかの方法が一般的です。
つまり月極駐車場の自営以外は業者と契約するということ。その契約内容をしっかり確認しておかないと、業者の管理運営や経営に問題が生じたときに失敗する確率が高まります。失敗しないために契約内容をしっかり確認するようにしましょう。
駐車場経営失敗2. 土地なしで購入
土地なしでも駐車場を経営することはできます。その場合、土地を購入するか、賃貸契約するかのどちらかです。
土地を購入・賃貸契約する費用は自己資金か融資でまかないます。自己資金が十分にある場合は、土地を購入するのもひとつの方法です。しかし、自己資金が不足している場合、融資を受けて土地を購入するかどうかは慎重に検討するべきです。
土地の価格は立地条件や面積などによって大きな幅があります。自己資金でも融資を受けた場合でも、高額の土地を購入すると土地の費用を回収するまでに年月がかかり、なかなか利益を生むことができません。
収益性を高めるためには、土地なしなら土地を借りたほうが無難です。それでも土地なしで土地を購入する場合は自己資金でまかない、安い価格で高いニーズが見込める土地を探すことがポイントです。
駐車場経営失敗3. カーパーキングの需要なし
コインパーキング(カーパーキング)は一時的に利用するタイプの駐車場なので、人が多く集まる繁華街などがニーズは高いです。駅・店舗などの商業施設・学校や病院などの施設の周辺のうち、駐車場が不足しているところが狙い目です。
逆に、人があまり集まらないところはコインパーキング(カーパーキング)の需要はほとんどありません。こうした需要があるかどうかについて十分考えずに土地を選んでしまうと、コインパーキング(カーパーキング)の経営に失敗しやすいです。
駐車場経営失敗4. 事故が起きた
駐車場内で事故が起きると利用者が敬遠する原因になり、駐車場経営の失敗につながります。車同士、車と人、車と看板などの設備といった様々な接触事故があります。
どれほど注意をしていても事故が起きてしまう可能性はあります。ただし、事故が起きにくいように対処することはできます。
- 入車や出車がしやすいように看板などの設備を配置する
- 車がスムーズに通行・駐車できるように、余裕のあるレイアウトにする
- 区画のラインをはっきりさせる
- 利用料金や利用方法の看板表示をわかりやすくする
コインパーキング(カーパーキング)の場合、初めての利用者にもわかりやすい表示にすることで混乱が起きにくくなります。入車から出車まで、スムーズな利用は事故の軽減につながりやすくなります。
駐車場経営失敗5. コインパーキングの料金設定
コインパーキング(カーパーキング)の料金は立地条件などによって相場が変わります。全国的な平均は1時間300円程度ですが、東京都心・政令指定都市・地方都市・郊外といった立地条件のほか、昼と夜・平日と休日といった時間帯や曜日による違いもあります。
相場より高い料金に設定すると、コインパーキング(カーパーキング)の経営は失敗しやすいです。利用者はできるだけ料金が安いところを選びます。
最大料金も含め、相場より少しだけ安い料金にすると利用者が増えやすい、価格競争が起きにくいといったメリットがあります。
駐車場経営失敗6. 土地選びミス
コインパーキング(カーパーキング)の需要があるのは繁華街や商業施設の周辺などです。ただし、すでにコインパーキング(カーパーキング)がたくさんある激戦区では、なるべく安い料金を設定するという価格競争が起きやすいため、新規の経営は難しいです。
逆に、月極駐車場の場合はすでに月極駐車場がある住宅街やオフィス街のほうが需要はあります。コインパーキング(カーパーキング)は時間ごとの利用なので回転率が良く、利用者の人数も多いです。
しかし、月極駐車場の場合は同じ契約者が長く利用しやすいため回転率が悪く、空きが出るのを待っている方がいるケースが多いです。
コインパーキング(カーパーキング)の場合は競合しない繁華街、月極駐車場の場合は競合がある住宅街・オフィス街が狙い目です。こうした狙い目を外すという土地選びのミスをすると、失敗する確率が高まります。
駐車場経営失敗7. 空車リスク
駐車場は常に満車状態とは限りません。稼働率は月極駐車場の場合8~9割、コインパーキング(カーパーキング)の場合4~5割が平均です。ただし、コインパーキング(カーパーキング)では立地条件が良ければ稼働率6~7割を見込めるところもあります。
こうした稼働率の平均的な目標値を下回るほど空車が多くなると、利益はなかなか上がりません。また、空車リスクを踏まえたうえで利益を予測しておくと、思ったほど利益が上がらないという失敗は起きにくくなります。
駐車場経営失敗8. 月極での賃料滞納
月極駐車場の場合、稼働率が8~9割と順調でも、賃料を滞納されてしまうケースがあります。最終的にすべての賃料を回収できればまだいいのですが、滞納されたままの状態が続くとその分の収入が減ります。
契約台数×契約月分の賃料すべてを回収できないことで、月極駐車場としての経営が失敗に終わるケースもあります。
不動産会社などの業者に管理運営を委託している場合は、滞納された賃料の回収作業も行ってもらえます。不動産会社などに駐車場の土地を借り上げてもらい、経営まで任せている場合は賃料滞納の有無にかかわらず、一定の地代を得られます。
しかし月極駐車場を自営している場合は、滞納された賃料の回収も自分で行う必要があります。
駐車場経営失敗9. 賃料が下落
月極駐車場の賃料もコインパーキング(カーパーキング)の料金も、相場は常に一定とは限りません。土地の価格や需要の有無に応じた賃料や料金に設定するのが一般的ですが、土地の価格も需要の有無も流動的で変化します。
月極駐車場の場合、経済不況のあおりを受けるなど何らかの理由で契約者が減った場合、賃料を下げることによって契約者の数を増やす必要が出てきます。
減った分の契約者数を取り戻すことができたとしても、賃料は下落しているので全体的な売上は減り、最終的に経営が立ち行かなくなるケースもあります。
コインパーキング(カーパーキング)の場合は、競合が多い場所で料金を下げ合う価格競争が起きやすいです。競合のなかで料金が最も安いときは利用者が集まりますが、競合がさらに料金を下げると利用者はそちらに移ります。
料金の下落と利用者数の減少が重なっても、電気代などの経費は変わらずかかります。そのためコインパーキング(カーパーキング)の料金の下落も、経営の失敗につながりがちです。
駐車場経営失敗10. 固定資産税などの税金
売上から経費や税金などの支出を差し引いた金額が、実際の利益です。電気代などの経費だけでなく、税金も支出に含まれます。
駐車場を経営する際、税金のことを考えていなかったために支出が利益を上回るという失敗もあります。駐車場経営に関わる税金は次の通りです。
- 固定資産税・都市計画税
- 償却資産税
- 所得税・住民税・消費税
- 個人事業税
もともと土地がある場合、土地なしでも駐車場を経営するために土地を購入した場合は、土地に対して固定資産税や都市計画税(市街化区域のみ)がかかります。立体駐車場以外では建物を建てないので、特例の軽減措置はありません。
門扉や塀、看板や精算機といった構築物や設備に対してかかるのは、償却資産税という固定資産税の一種です。
所得に対しては所得税・住民税・個人事業税(駐車台数が10台以上の場合)、売上に対しては1,000万円を超える場合は消費税がかかります。こうした税金についてもしっかり考えておきましょう。
駐車場経営失敗への対処法
駐車場を経営する際によくある失敗を踏まえて、このように対処するのがおすすめという9つの方法を紹介します。
1. 土地なしの場合は立地をしっかりチェック
余っている土地を有効活用して駐車場を経営する場合、土地を選ぶことはできません。土地なしの場合は駐車場に適した土地を選ぶことができます。
しかし、立地条件によっては駐車場経営に失敗する可能性もあります。土地なしだからこそ、立地条件をしっかり確認して土地を選ぶようにしましょう。
東京都心、政令指定都市、地方都市などの中心市街地といった人が集まるところが狙い目です。そのなかでもなじみのある土地だと、立地条件について細かい点まで判断しやすいです。
立体駐車場以外なら建物を建てる必要がないため、狭い土地や形の悪い土地でも駐車場を経営することができます。利用者目線で利用しやすいレイアウトを考慮しつつ、効率よく駐車でき、稼働率を増やせる土地を選びましょう。
2. 駐車場の需要があるか確認する
土地なしで駐車場を経営する際、土地選びの段階で重視したいのはニーズです。駐車場の需要があるかどうか、しっかり確認することが大切です。一般的に駐車場の需要があるのは下記の通りです。
- コインパーキング(カーパーキング):繁華街・駅や商業施設などの周辺
- 月極駐車場:住宅街・オフィス街
さらにコインパーキング(カーパーキング)の場合は競合なし、月極駐車場の場合は競合ありのほうが需要はあります。
また、駅・商業施設・住宅・オフィスなどの近くでも、それぞれの敷地内に駐車台数が十分な駐車場がすでにある場合は需要がありません。駐車場がないか不足している施設などをチェックするようにしましょう。
さらに駐車場の需要がある施設などからの距離も確認したいポイントです。徒歩3分なのか、徒歩10分なのかなどの細かい違いでも、利用者の数や稼働率が大きく変わってきます。駐車場の需要については細かい点まで調べましょう。
3. 駐車場経営のメリットを知っておく
土地活用は駐車場経営だけでなく、アパート・マンション・戸建てを経営して賃料を得るといった不動産投資もあります。
こうした不動産投資との違い、駐車場経営ならではのメリットを把握しておくことも大切です。おもな駐車場経営のメリットは次の通りです。
- 初期費用が安い
- 狭い土地・形が悪い土地でも可能
- 自然災害の影響を受けにくい
駐車場経営では基本的に建物を建てないので、不動産投資より初期費用が安いです。さらに建物を建てない分、経営を始めるまでにかかる準備期間も短いです。
また立地条件がいい土地でも、狭かったり形が悪かったりすると建物を建てにくいため敬遠されているケースがあります。
一般的に駐車台数が多いほうが売上も増えますが、狭い土地や形が悪い土地を効率よくレイアウトして、限られた駐車台数で稼働率を高めることもできます。
さらに建物がない駐車場は、台風や地震といった自然災害によるダメージが少ないというメリットもあります。
4. 駐車場経営のデメリットも知っておく
駐車場を経営する際、メリットだけでなくデメリットも事前に把握しておくことで、ありがちな失敗を回避しやすくなります。駐車場経営のおもなデメリットは下記の通りです。
- 利益が少ない
- 税金が高い
駐車場経営は、マンション経営やアパート経営よりも利益は少ないです。駐車場の賃料や利用料より家賃の相場のほうが高いうえに、建物を建てない分、縦に階数を増やすことができないからです。
また、建物を建てないことで固定資産税の軽減措置はありません。初期費用が高くても利益が多いほうがいい方、税金対策をしたい方は不動産投資が向いています。駐車場経営は堅実に土地活用したい方に適しています。
5. 道路幅や駐車場の面積を把握する
土地なしで駐車場を経営する場合、土地選びのときに立地条件と併せて考えておきたいのが道路幅と面積です。
「南4」(前面道路の方角・道路幅)などと表記される「道路付け」を調べることによって、道路幅がわかります。
前面道路の幅や間口にゆとりがあると入車・出車がスムーズで、利用しやすい駐車場になります。利用しやすいかどうかは稼働率に大きく関わるため、道路幅はしっかり把握しておきましょう。
また、面積によって配置できる駐車台数が決まります。駐車台数は利益に直結するので、土地選びの時点で面積も確実に考慮しましょう。さらに利用しやすいように適度な余裕をもたせつつ、効率よくレイアウトできる土地が望ましいです。
6. 固定資資産税や税金、賃料、返済の計画を立てる
土地なしで土地を購入した場合は、土地に対して固定資産税や都市計画税がかかります。固定資産税の税率は1.4%、市街化区域のみが対象となる都市計画税の税率は最高0.3%です。
こうした税金や、土地を借りた場合の賃料はランニングコストとなるため、売上から差し引いて利益を計算する必要があります。
また、自己資金ではなく融資を受けて土地を購入・賃貸した場合、返済計画を立てることも大切です。土地費用の返済にかかる年月がどれくらいかによって、利益が出始める時期がわかります。
土地を購入・賃貸する前に税金・賃料・返済計画を考慮しておくことによって、どれくらいの利益を上げるべきか、そのために適した土地かどうかも判断しやすくなります。
7. 月極駐車場経営では賃料を口座振替にする
月極駐車場を自営している場合、賃料を現金払いにしていると滞納が起きやすくなります。賃料の滞納を防ぐためには、口座振替にする方法が有効です。
利用者にとっても毎月決まった日に自動で賃料が引き落とされるので、現金払いより手間が省けて便利です。
8. コインパーキングや月極は周辺相場を調査する
コインパーキング(カーパーキング)の料金の平均は1時間300円程度、月極駐車場の賃料の平均は1万円程度です。しかし料金や賃料の相場は立地条件によって幅があり、常に変動しています。そのため周辺相場は常に調査するようにしましょう。
コインパーキング(カーパーキング)でも月極駐車場でも、料金や賃料は相場より少し安いくらいが適しています。相場より高いと利用者に敬遠されやすく、相場より極端に安いと価格競争が起きて失敗につながりやすいため注意する必要があります。
9. 駐車場稼働率が6割や7割も想定して計画を立てる
大まかに月極駐車場の場合は稼働率8~9割、コインパーキング(カーパーキング)の場合は稼働率4~5割を達成できると駐車場経営としては成功といえます。
ただし立地条件が非常に良いコインパーキング(カーパーキング)だと稼働率6~7割のところもあります。こうした成功例から参考にしたいのは駐車場のレイアウトなどであって、稼働率そのものではありません。
むしろ稼働率は低めに見積もって計画を立てたほうが無難です。月極駐車場なら稼働率6~7割、コインパーキング(カーパーキング)なら稼働率3~4割も想定しておきましょう。
まとめ
駐車場経営の10の失敗理由と9つの対処法について解説しました。まず駐車場経営でよくある失敗理由は次の通りです。
- 業者との契約内容をしっかり確認しておらず、業者の管理運営などに問題が生じた
- 土地なしで高額な土地を購入し、なかなか利益を生み出せなかった
- 需要がない場所でコインパーキング(カーパーキング)を経営し、売上が伸びなかった
- レイアウトが悪く、駐車場内で事故が起き、利用者が激減した
- コインパーキング(カーパーキング)の料金を高く設定し、稼働率が上がらなかった
- 土地選びにミスがあり、経営に失敗した
- 空車リスクを考慮していなかったため、思ったほど利益が上がらなかった
- 月極駐車場で賃料を滞納され、なかなか回収できずに困った
- 賃料が下落し、利益が下がった
- 固定資産税などの税金を考慮していなかったため、思ったより利益が少なかった
さらに駐車場経営でよくある失敗理由を踏まえた、おすすめの対処法は次の通りです。
- 駐車場の需要・土地なしの場合は立地条件を確認する
- 駐車場経営のメリット・デメリットを把握する
- 道路幅や面積を確認して、利用しやすいレイアウト・効率が良い駐車台数にする
- 税金・賃料・返済計画についてしっかり考える
- 月極駐車場の賃料を口座振替にして滞納を防ぐ
- 周辺相場を常に調査して、賃料・料金を設定する
- 稼働率を低めに見積もって利益を予測する
こうしたよくある失敗理由とおすすめの対処法をしっかり確認したうえで、駐車場を経営するようにしましょう。