2020年11月13日公開
2020年11月13日更新
駐車場経営を成功させるノウハウ大公開!始め方/失敗理由も【プロ直伝】
「駐車場経営」について、基本的なところから成功のノウハウまでを詳細に解説します。これから駐車場経営してみようとお考えの方にとっては、全体像が把握できる内容となっていますので、ぜひ最後までお読みください。特に今まで駐車場経営を躊躇していた方には最適な内容のはずです。
駐車場経営の基礎知識
駐車場経営とは、自己の所有土地を区画に分けて利用者が駐車するためのスペースとして区画を貸出し、その対価として賃料や利用料金を受け取ることを収益とする事業です。
駐車場経営の種類
駐車場経営には大きく分けて2つの形態があります。
まずは月極駐車場です。土地に砂利、アスファルト、またはコンクリートで舗装をし、区画線を引いて利用者に月極めで貸し出します。区画当たりの月賃料を定めて、利用者から毎月賃料を徴収します。機械設備等が不要のため、初期費用が安価に済みますし、開業までのスピードも速いです。
もう一つはコインパーキング事業です。舗装および区画線のほか、精算機やロックシステムを設置して、分単位あるいは時間単位で利用者に貸し出します。売上げは利用者の利用料金になります。設備費用は自己負担、駐車場運営会社が負担、運営会社がいったん負担してリースするなどいくつかの負担方法があります。
駐車場経営のメリット
住宅街や商業地、ロードサイド土地など、駐車場はどこの地域でも見つけることができます。これほど駐車場が多いのは、駐車場経営にメリットを感じている地主が多いためです。駐車場経営の最大のメリットは、初期費用が少ないために経営のリスクが少ない点にあります。
月極め駐車場でもコインパーキングでも、アパート・マンション建築のように大規模な借入を行う必要がありません。また、万が一経営がうまくいかなかった場合でも、機械設備や舗装部分撤去は容易に行うことができます。
また、他の活用方法が難しい土地でも、駐車場としての活用ができる場合があります。不整形地、狭小地、周りに高い建物があって住宅地には不向きな土地など、活用が難しい土地はたくさんあります。このような土地でも駐車場経営によって活路が見いだせる場合があります。
さらに、売却による換金が容易であるということも大きなメリットの一つです。不測の事態が起こって急に資金が必要になったとき、あるいは相続税の納税資金として活用したい場合など、土地上に建物があるとなかなか買い手が付きにくい場合があります。駐車場経営の場合には、原状回復をして更地にすることが容易であるために、換金しやすいことから住宅地でもとりあえず駐車場で活用してみる、という例が多くみられます。
駐車場経営のデメリット
一方デメリットとしては、経営リスクが少ない分、収益性の面では他の活用方法に劣る面があります。アパート・マンション経営の場合、多くは1階分の土地しか利用できませんが、アパート・マンション経営の場合には3階建て、5階建てなどの建物を建築することによって、空中も活用することができます。収益力としてはこちらの方が勝ります。
また、少し専門的になりますが、税制上の優遇が少ないということもデメリットの一つです。住宅地の場合、固定資産税の軽減措置(課税標準額が6分の1になる)ために、土地の固定資産税が意外に安くなったりします。また、相続税評価額についても、アパート・マンションなどを建築すると土地の評価額が下がります。駐車場経営の場合にはそのようなメリットが期待できません。
駐車場経営の始め方
駐車場経営の運営方法については3つの方法があります。
1つめは利用者募集、賃料の徴収、駐車場の管理、利用者からのクレーム対応、駐車場内でのトラブル対応などの運営事務をすべて自分で行う方法です。収益性は最も高くなりますが、不動産業に関する特別のノウハウがないと難しいでしょう。
2つめは土地を賃貸して月々一定の賃料を受け取り、駐車場運営会社が土地上に駐車場設備を設置して駐車場経営をする方法です。駐車場の稼働状況に関するリスクは駐車場運営会社が負いますので、運営ついてほとんどリスクがありませんが、収益性の面ではあまり多くは期待できません。
3つ目は駐車場経営について管理を不動産会社、もしくは駐車場運営会社に委託する方法です。不動産会社や駐車場運営会社は多くの駐車場を同時に運営しているために、独自のノウハウがあります。一定の管理手数料が発生しますが、それでも立地が良ければ十分な収益性が期待できます。
地主が駐車場経営をする場合、ほとんどは3つ目の方法、不動産屋や駐車場運営会社に委託する方法を採用して運営しています。この方法ですと、駐車場経営を始める際に、不動産屋や駐車場運営会社からのアドバイスを受けることができ、安心です。また駐車場系を始めるための準備や設備機器の仕入れ、設置工事なども一括して委託することができるために、煩わしい手間がありません。
駐車場経営の収入
駐車場経営の収入の源泉は、利用者が支払う月額賃料や駐車料金になります。
月極駐車場の場合、区画ごとに賃料を設定して貸し出すことから、一か月あたりの収入の計算方法はひと区画当たりの賃料に契約数をかけたものになります。収益が最大となるのは、すべての区画が契約済みとなった場合です。
一方、コインパーキングの場合、利用者は時間単位で利用料金を支払います。そのため、区画ごとの収益は一定ではありません。そのため1か月の収益の計算方法は以下のようになります。
区画数×1時間当たりの利用料金(円)×24(時間)×30(日)×稼働率(%)
中には夜間料金を設定している場合もあることから、その場合には収益予測に反映させる必要があります。すべての区画が24時間利用しっぱなしになれば収益は最大になりますが、そうはならないために、一定の稼働率を予測して収益を計算することになります。
駐車場経営の税金
駐車場経営をする際には、初期費用や運営会社に支払う管理料のほか、税金についても考慮に入れなければなりません。売上収入により一定の所得があるために、個人で行う際には個人所得税・住民税・事業税、法人の場合でも法人所得税・住民税・事業税が発生します。
このほか、忘れてはならないのが、固定資産税・都市計画税です。土地を利用しますので、固定資産税・都市計画税は収支予測のうえで考慮する必要があります。また、コインパーキングを行うときの精算機やロックシステムなどは、固定資産(償却資産)に該当しますので、償却資産税の申告を行わなければなりません。
最後に身近な税金である消費税です。1,000万円以上の売り上げがある消費税課税事業者の場合には、駐車場売上には消費税が課されます。したがって駐車料金のうち10%を仮受消費税として計上しなければなりません。
駐車場経営の税務については次の記事でも詳細に解説しておりますので、併せてご覧ください
駐車場経営はノウハウを知らないと失敗しやすい
駐車場経営は、土地を所有していれば誰でも始めることができます。また、駐車場を始めるための準備(舗装や機器設置、利用者募集など)について不動産屋や駐車場運営会社に委託すればすべてを代行してもらえるために、駐車場経営を始めるときには煩雑な手続きは必要ありません。初期費用もそれほど必要ないために、気軽に始める方も多くおられます。
それゆえに、ノウハウを知らなければ失敗しやすいビジネスでもあります。街を歩いていると、駐車場なのに車が止まっているのを見たことがない、もしくはいつもガラガラの駐車場を見たことがありませんか?このような駐車場経営は失敗に終わってしまいます。それでは、駐車場経営の失敗の理由について考えてみましょう。
理由①駐車場需要のリサーチが足りなかった
まずは、どんなビジネスにも当てはまることですが、需要があるのかということを事前に調べておく必要があります。月極め駐車場の場合、多くの契約者は周辺に住んでいる方です。一戸建てが多い地域ですと、自宅に駐車スペースがあるために月極め駐車場を利用する理由は半減します。
また、コインパーキングについても、駅前の商業地であれば一定程度の利用が見込めますが、ロードサイド土地など徒歩で歩くことがあまりない土地だと、あまり需要は見込めないでしょう。周りに駐車場は多いか少ないか、また駐車場の稼働状況はどうかについて、不動産屋に聞いてみるほか、実際に見に行ってリサーチしてみることも有益です。
理由②料金設定の考え方が甘かった
駐車料金の設定は様々です。月極駐車場の場合には周辺の賃料相場に合わせておくことが無難です。屋根付き、防犯カメラなどは利用者には喜ばれますが、月額賃料が劇的に上がるわけではありません。
コインパーキングの料金設定はもっと複雑です。都心の商業地だと、1時間2,500円というところも見かけますが、郊外の住宅街だと、1時間300円程度だったりします。コインパーキングを経営する場合でも、周辺の相場はしっかりチェックしておくことです。
理由③固定資産税を考慮せずに駐車場経営を始めた
駐車場経営は土地を事業用地として活用しますので、固定資産税、都市計画税の納税義務があります。その金額について、自宅の土地を参考にしたり、あるいは以前アパートが建っていた時の固定資産税を参考にしたりすると失敗します。
固定資産税評価額は、住宅地と事業用地では異なり、住宅地は評価額が6分の1になる特例があるのです。利用形態を変更するときには、市役所の固定資産税課に相談する必要があります。その際に固定資産税評価額がいくらぐらいになるのかについて担当者に問い合わせてみるのも一つの方法でしょう。
理由④賃料減額条項を考慮せずに一括借り上げを選んだ
駐車場経営を不動産屋や駐車場運営会社に一括借り上げの形で委託する方法は、収入が一定のためにリスクを負わずに駐車場経営をすることができます。しかし、駐車場運営会社が、稼働率の悪い駐車場であるにもかかわらず一定額の賃料を永遠に支払わなければならないとするならば、いつしか運営会社は経営破綻してしまいます。
そのため、一括借り上げの場合、契約書に賃料の減額条項が入っていることが一般的です。つまり、一定期間(2年間など)は一定の借上賃料を支払いますが、その後について稼働状況が思わしくなければ賃料の減額をすることができるという条項です。一括借り上げの場合でも経営リスクを完全にゼロにすることはできないのです。
理由⑤サポートがずさんな管理会社に委託した
駐車場経営は運営管理を不動産屋や管理会社に委託することがほとんどです。委託した不動産屋や管理会社のサポート体制が充実しているかどうかは駐車場経営の成功に直結する重要なファクターです。
突発的な事項に対応できるような人員体制か、月極の場合には利用者募集を積極的に行ってくれるか、24時間のコインパーキングの場合には深夜でも連絡できる先が設定されているかなど、人員体制面、および管理ノウハウの面で十分信頼できる会社かを吟味する必要があるでしょう。駐車場経営の落とし穴については以下の記事でも詳しく紹介していますので、あわせてお読みください。
駐車場経営を成功させるノウハウ12選
このように、事前の準備なしに管理会社にまかせっきりでいると、駐車場経営に失敗してしまうことが多いのです。駐車場経営を始める前に、以下のようなポイントについて注意して準備することが成功の鍵になります。
ノウハウ①立地に応じて駐車場の種類を選ぶ
駐車場経営には、立地に適した駐車場の種類というものがあります。この立地だと、利用者はどのようなシチュエーションで、何をするためにここに車を止めるのだろうか、ということを想像しながら駐車場の種類を選択することが重要です。
例えば、近くにレストランや商業施設がある場合には、2時間程度の短時間のコインパーキングの利用が多いかもしれません。もしくは賃貸マンションやアパートが多いところは月極めの利用が多いか、もしくは友人の家でパーティーをするなど夜の長い時間のコインパーキングの需要も多いのです。
駐車場の稼働率は、立地によって左右される場合が多いのです。そのため、立地に適合した駐車場の形態を選ぶことが大切です。
ノウハウ②8割程度の稼働率で収益を予測する
いくら稼働率の高い駐車場でも、1日24時間いつでも満車のコインパーキングはありません。また月極めの場合であっても、契約終了後、次の利用者と契約するまでに少し間が空くことがあります。そのため、収益予測も保守的に見積もっておくことが必要となります。これは立地によっても異なりますが、大方8割程度を見込んでおくとよいでしょう。
ノウハウ③表面ではなく実質利回りで算出する
不動産の投資物件サイトを閲覧してみると、表面利回り、実質利回り(NOI)など、利回りの表示が複数ある場合があります。表面利回りとは、単純に年間収入を初期投資額で割ったパーセンテージをいいます。
これに対して、実質利回りとは、年間収入から月々の管理料等の経費、税金(固定資産税・都市計画税)などの支出を引いた実質的な収入を初期投資額で割ったパーセンテージをいいます。ネット利回り、もしくはNOIと表現される場合もあります。
投資物件の比較の際にはよく表面利回りが用いられますが、投資家にとって重要なのは、手残りがいくらかという点です。そのため、具体的な物件を検討する際には実質利回りを重視すべきです。以下の記事でも詳細を紹介しておりますので、興味のある方は是非お読みください。
ノウハウ④周辺環境から需要・相場の変化を常にチェックする
不動産活用を行うときは、必ず周辺環境を確認します。それも、初期投資の時点だけではなく、運用中も定期的にチェックすることが必要です。物件の周辺を徒歩で観察してみると、いろいろな状況の変化を察知することができます。
最近契約の解除が増えてきたと思ったら、周辺に駐車場付きの大型マンションの建設が進んでいたという場合もあります。また、利用者が増加した原因をリサーチしてみると、近くの商業施設の駐車場がいっぱいで、少々遠くてもコインパーキングを使う人が増えているのかもしれません。このような状況の変化にいち早く気づいて適切な対応をとることが求められます。
ノウハウ⑤刻み料金は高く・最大料金は安く設定する
コインパーキングの料金設定の方法ですが、時間ごとの刻み料金が高く、最大料金については少し割引になっている駐車場が多いことに気づくと思います。刻み料金を高めに設定しているのは、ビジネス利用のコインパーキング利用を想定したものです。
ビジネス利用の場合、駐車料金を経費で落とすことが多いことから、細かい料金設定よりも、目的地に近いかどうかが重視されます、そのため、細かい料金設定に気を払わないことも多いのです。
一方長時間利用はそれなりに駐車料金がかかってくるために料金も選択理由になってきます。稼働率を上げるためにも長時間の利用客は大切にしたいものです。そのために、最大料金については少々安めに設定します。
ノウハウ⑥刻み料金は大ざっぱに設定する
刻み料金を設定する際には、時間ごとの単位をどの程度にするかについて考えます。例えば、15分ごとの料金にするのか、60分ごとの料金にするのかということです。この場合、60分ごとの料金にしたほうが、収益率が高い場合が多いようです。
コインパーキングを利用する場合は、1時間の予定でもついつい長居してしまい、しばしば時間設定の境目を超えてしまうことがあります。この時に、刻み料金をおおざっぱに、例えば30分や1時間にしておくと少しの時間超えただけでも30分、あるいは1時間分の料金が課金されるために収益性が高くなるというわけです。
ノウハウ⑦できる限り大型の駐車場を経営する
駐車場が大型ならば、月極めとコインパーキングの併用にするなどいろいろな経営手法が可能となるために、リスクを減らすことができます。また、駐車場経営のメリットとして狭小地の活用もありますが、数台しか駐車できない駐車場であれば、一台分稼働していないことの収益へのインパクトが大きくなります。そのため、大型の駐車場のほうが、経営リスクという面では小さいのです。
ノウハウ⑧駐車場の存在を目立たせる
現在では駐車場を探すときにはカーナビやスマートフォンのアプリなどいろいろな方法がありますが、それでも目立つ駐車場であるということは稼働率を上げる重要なポイントです。「視認性」といわれていますが、大きな看板やのぼりで目立たせるのは、駐車場の存在を利用者に気づかせるためです。
いつもは使わない人でも、あそこに駐車場があったな、という記憶に残ればいつか利用してもらえる可能性が出てきます。視認性は店舗や居酒屋のみならず、駐車場でも重要なファクターです。
ノウハウ⑨近隣住民に迷惑をかけないよう配慮する
特に駐車場経営を住宅街で行う際には、近隣住民への配慮は必須です。車が頻繁に出入りすると騒音トラブルが起きやすくなりますし、コインパーキングの場合には、ロック板が稼働するときにも騒音が出ます。駐車場は24時間稼働ですので、深夜になると音も響きやすいのです。
最近では、ロック板のないロックシステムも出てきています。このようなシステムは適宜チェックして、自分の経営する駐車場にも利用できないか検討してみるとよいでしょう。
ノウハウ⑩デッドスペースは有効活用を心がける
駐車場は、区画ごとに分けて利用者に利用してもらうので、土地の形状によってはデッドスペースが生じる場合があります。このようなデッドスペースを有効活用することも収益アップの秘訣になります。看板を立てて広告を表示する、自動販売機を設置する、トランクルームを設置するなど、貪欲に土地を活用して収益アップに結び付けましょう。
ノウハウ⑪賃料減額を考慮しながら契約内容を注視する
駐車場経営における賃貸借契約書や運営委託契約書はどこも同じというわけではありません。各運営会社が独自のノウハウを活用して契約書を作成しています。一括貸しの場合ですと、稼働率が悪い場合には、賃料を減額する条項が含まれています。
そのような場合には、一定の賃料が受け取れる期間とその総額をチェックして、初期費用と見比べてみることです。そうすることにより、自身の駐車場経営が失敗した場合、最大どの程度損失が生じるのかをつかむことができます。そのような事態も想定のうえで、契約内容を確認することが重要です。
ノウハウ⑫駐車場を見学し管理会社のサポート力を判断する
駐車場管理会社のサポート体制が充実しているかどうかは、駐車場経営を行う上で肝となる部分です。それを確かめるためには、担当者に不安な点を質問するほか、他の管理物件について実際に見学してみるのもよい方法です。
設備が古いままほったらかしにしていないか、周囲に雑草がのびていないかなど、現地に行ってみれば気づくことはたくさんあります。
まとめ
駐車場経営は気軽に始められる事業であり、他の土地活用に比べてリスクが低い活用方法です。しかし、それゆえにしっかりと事前準備をして事業を開始しないと、当初の思惑通りの経営はできません。本コラムで紹介したようなポイントについて、管理会社の担当者と相談しながら駐車場経営を始めれば、成功に一歩近づくことができるでしょう。