2023年11月06日公開
2023年11月06日更新
土地の相続税の計算方法は?申告するケース・土地の活用方法を紹介
土地を相続した際は、面積や場所などから金銭的な価値に置き換え、他の遺産と一緒に相続税の金額を計算します。相続税の基礎控除額を下回った場合には、納税の必要はありません。また、税理士に依頼する方法のほか、自分で申告書の作成と納付を行うことも可能です。 本記事では、土地の相続税の計算方法や利用できる特例、押さえておきたいポイントなどをわかりやすく解説します。具体的なステップや計算式も紹介しますので、ぜひご覧ください。
目次
土地にかかる相続税とは
被相続人(亡くなった方)から遺産を受け取る際に、相続人(遺産を受け取る方)が支払う税金が「相続税」です。相続税の対象となる遺産には、土地をはじめ、現金や預貯金、家屋・宝石・著作権など、経済的な価値のあるさまざまなものがあります。
相続税は遺産の相続の全てのケースに発生するのではなく、遺産の金額が一定の金額を超過した場合、超過した部分に対してだけ課税されます。
参照:No.4105 相続税がかかる財産
相続税を申告しなくて良いケースがある
遺産を受け取る際、必ずしも相続税を申告して納税をしなくてはならないというわけではありません。申告が不要なケースについて紹介します。
基礎控除額の範囲内である場合
遺産の総額が基礎控除額の範囲内であれば、相続税の申告はせず、納税も必要ありません。ここで言う遺産の総額とは、実際の総額ではなく、借入金や葬儀にかかった費用を差し引いた正味の総額です。具体的な計算方法については、本記事で後述します。
参照:No.4155 相続税の税率
特例により相続税がゼロになった場合
相続税法では「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額軽減の特例」など、相続税を減額するためのさまざまな制度が設けられています。相続税の支払いによって生活が立ちいかなくなるといった状況を避けるため、被相続人の状況に応じて適用できる制度です。
これらの特例を利用することによって、相続税を大幅に減額もしくはゼロにできる可能性があります。これらの特例については、本記事の後半で詳しく解説します。
相続税の計算方法と流れ
相続税の計算方法について、以下の3つに分けて解説します。
- 遺産総額を計算する
- 基礎控除額を差し引き「課税遺産総額」を算出
- 相続税を計算する
1.遺産総額を計算する
被相続人の所有していた財産を洗い出し、その金額を計算します。相続税がかかるものとして、以下をはじめとするさまざまな財産が挙げられます。
- 土地
- 家屋
- 現金、預金
- 有価証券(株式、債券、手形、小切手など)
- 死亡保険金
- 宝石
- 貸付金
各財産の総額を計算したのち、葬儀にかかった費用や被相続人の残した借入金を差し引き、正味の金額を計算します。
参照:
No.4155 相続税の税率
No.4105 相続税がかかる財産
土地の評価方法
土地の相続がある場合、以下の方法を使って土地の評価額を決定します。
- 路線価方式
- 倍率方式
路線価方式とは、土地に面した道路ごとに定められた「路線価」によって土地の評価額を決める方法です。路線価は1㎡当たりの価格が定められており、国税庁の「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」のページから確認できます。
例えば、300㎡の敷地で路線価が10万円だった場合、以下のように土地の評価額が求められます。
10万円 × 300㎡ = 3000万円 |
それに対して倍率方式とは、路線価が定められていないために路線価方式を利用できない際に採用する方法です。公的に定められている「固定資産税評価額」に対して、地域や用途に応じて決定される倍率を乗じて土地の評価額を計算します。
固定資産税評価額は自治体から送付される明細によって、倍率は「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」のページによって確認できます。
参照:
財産評価基準書路線価図・評価倍率表
固定資産税・都市計画税 課税明細書 - 東京都主税局
2. 基礎控除額を差し引き「課税遺産総額」を算出
遺産の正味の金額から、さらに基礎控除額および死亡保険金・死亡退職金の非課税枠を差し引くことで、相続税が課税される遺産の総額を計算します。各項目の計算方法は以下の通りです。
<基礎控除額の計算式> 基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数 <死亡保険金・死亡退職金の非課税枠の計算式> 非課税枠 = それぞれ500万円 × 法定相続人の数 |
ここまでの計算をまとめると、以下のようになります。
【課税対象となる遺産の総額】 = 【課税対象になる財産】 - 【借入金・葬儀費用】-【 基礎控除額・保険金の非課税枠等】 |
3. 相続税を計算する
基礎控除額を差し引いたのち、課税遺産総額を各相続人ごとに分割します。その後、規定の税率を乗じることで相続税の金額を求めます。
相続する財産が多いほど高額な相続税を支払う必要があるため、特例の適用などによって評価額を下げることが効果的です。
相続税の速算表
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | ー |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
参照:No.4155 相続税の税率
相続税の計算の例
相続税の計算方法を、具体的な遺産総額や相続人の人数に基づいて解説します。なお、ここでは相続人の借入金や葬儀費用、保険金の非課税枠などは考慮しないものとして計算しています。
例1|遺産総額が4,000万円/相続人数は2人
前述した通り、相続税の基礎控除額は以下の計算式で求めます。
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数 |
この計算によると、基礎控除額は相続人が1人のケースでは3,600万円、2人のケースは4,200万円であるとわかります。
今回の例では、遺産総額の4,000万円が基礎控除額の4,200万円を下回っており、かつ相続人数が2人のため、相続税の申告は不要です。
例2|遺産総額が8,000万円/相続人数は3人
相続人数が3人の場合、基礎控除額は4,800万円です。今回の例では遺産総額が8,000万円のため、基礎控除額を上回り相続税の申告が必要とわかります。課税対象となる遺産の総額は、以下のように求めます。
8,000万円(遺産総額)- 4,800万円(基礎控除額)= 3,200万円(課税遺産総額) |
相続人が配偶者と子ども2人と仮定すると、それぞれの相続分は以下の通りです。
- 配偶者:1,600万円
- 子ども①:800万円
- 子ども②:800万円
参照:No.4132 相続人の範囲と法定相続分
土地の相続税が抑えられる制度
前述した通り、相続税は相続する財産が多いほど高額な金額を納税する必要があります。
しかし、相続税法で定められた特例を利用することで、支払うべき相続税を減額もしくはゼロにできる可能性があります。本項で紹介する制度を利用して、土地の相続税を抑えることを検討しましょう。
小規模宅地等の特例
利用できる特例の1つとして「小規模宅地等の特例」があります。被相続人が住んでいた住居の土地であるなどの要件を満たせば、その評価額を最大80%減額できる特例です。評価額が1億円の土地の場合、最大2,000万円まで減額できます。被相続人の自宅だけでなく、事業を営んでいた土地などに対しても適用が可能です。
特例を適用するためには、遺産分割協議書の写しを申告書に添付する必要があります。
参照:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
配偶者の税額軽減の特例
配偶者の税額軽減の特例も、相続税を減額もしくはゼロにできる可能性のある制度です。この制度を利用することで、以下のいずれかのうち、大きいほうの金額までは相続税がかかりません。
- 正味の遺産総額が1億6,000万円
- 配偶者の法定相続分相当額(正味の遺産総額の1/2)
この制度に関しても、遺言書の写しや遺産分割協議書の写しを申告書に添付するなど、細かい要件に基づいて申告を行う必要があります。
参照:No.4158 配偶者の税額の軽減
未成年者控除
相続人が未成年者の場合に相続税を減額できる制度です。相続人が満18歳になるまでの年数に対し、10万円を乗じることで控除額を計算します。例えば、15歳5ヶ月の相続人であれば、1年未満の端数を切り捨てて以下のように控除額を求められます。
10万円 × 3年 = 30万円 |
この計算の結果が未成年の相続人の相続税額を超える時、控除額を使い切れません。この場合は、使い切れない部分の金額を扶養義務者の相続税額から差し引くことが可能です。
参照:No.4164 未成年者の税額控除
障害者控除
相続人が85歳未満の障害者であれば、相続税の金額を控除できます。控除できる金額は、障害者の相続人が満85歳になるまでの年数に10万円を乗じた額です。身体障害者で等級が一級もしくは二級など、特定の条件に該当する特別障害者は、乗じる額が20万円になります。
- 特別障害者:満85歳になるまでの年数 × 20万円
- その他の障害者:満85歳になるまでの年数 × 10万円
未成年者控除と同じく、控除額を使い切れない場合には、使い切れない部分の金額を障害者の扶養義務者の所得税額から差し引くことができます。
参照:
No.4167 障害者の税額控除
特別障害者|国税庁
相次相続控除
相次(そうじ)相続控除とは、例えば祖父が亡くなって10年以内に父が亡くなった場合などに、2回目の相続に対して一定の金額を控除する制度です。立て続けに相続が発生すると、同じ財産に対して二重に相続税が発生することになることから、負担軽減のために用いられます。
相次相続控除は、1回目の相続から数えて、1年につき10%の割合の金額を控除できます。なお、1回目の相続で相続を放棄したり相続権を失ったりしていれば、この制度は適用されません。
参照:No.4168 相次相続控除
土地の相続税の申告は税理士に依頼した方が良い?
相続税の申告の際は、税理士に依頼するか、自分で手続きを行うか、いずれかの方法を選択します。それぞれの方法について詳しく解説します。
税理士に依頼するメリット
相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内に行う必要があります。葬儀や遺品の整理などを行っていて、あっという間に期限の日が近づいてしまったということもあるでしょう。時間的・精神的な余裕がないという方は、税理士に依頼することで申告書を作成する手間を省くことが可能です。
また、税理士によって相続する財産の評価額を正しく計算してもらえることもメリットと言えます。本記事でも紹介したような特例を使うことで、想定よりも相続税の金額を抑えられるケースもあるでしょう。
このほかにも、遺産の分割の方法について相談したり、土地や建物を相続した際の相続登記について相談できる司法書士を紹介してもらったりなどのメリットがあります。
参照:No.4205 相続税の申告と納税
自分で手続きすることも可能
申告書の作成を税理士に依頼せず、自力で行うことも可能です。相続する財産が多くなければ自分でも手続きしやすいでしょう。
遺産に土地や建物が含まれる時や、相続人の人数が多い時は、申告書の作成が複雑に感じられることがあります。そのような場合にも、まずは自分で申告書を作成してみて、難しければその段階で税理士への依頼を検討しても問題ありません。
なお、実際の財産の金額よりも少ない額で申告した場合には、加算税や延滞税を取られる可能性があります。財産の金額が少なければこれらの税金も少ないはずですが、状況を鑑みて総合的に判断するようにしましょう。
参照:No.4205 相続税の申告と納税
相続した土地の活用方法
相続した土地は、以下をはじめとするさまざまな方法で活用できます。
- 自分や家族が住居として住む
- アパートや駐車場などを経営する
- 土地を期限付きで貸し出す(定期借地)
- 土地の権利を手放す代わりに、建物を建ててもらう(等価交換)
- 売却する
それぞれの方法にメリット・デメリットがあるため、現行の制度などをよく確認した上で検討することが大切です。
選択する方法によって相続税を軽減するための特例が使えたり、評価額を下げることによる節税効果を得られたりすることもあります。例えば、アパートが建設された状態で土地を相続すると、通常よりも評価額が低くなり、節税効果が得られます。
土地の管理が難しい場合や、固定資産税を支払いたくないという場合には、売却や寄付・譲渡といった方法によって土地を手放すことも可能です。一度手放すと土地は返ってこないので、慎重に検討することをおすすめします。
参照:アパートやその敷地の相続税評価について教えて下さい。
▼土地の活用方法については、以下の記事でも詳しく解説しています 25種類の土地活用方法を一覧で紹介!目的/特徴/メリット・デメリットの比較も |
駐車場経営はおすすめの1つ!
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駐車場経営を始める際は、土地の整地をはじめ、必要に応じて精算機やロック板などの機器を設置します。また、事故やトラブル発生時の対応も必要です。効率的に駐車場経営をしたいという方は、運営会社に委託することも可能です。
まとめ
土地を相続した際は、場所や面積に応じて評価額が決定され、そのほかの財産と一緒に遺産総額を計算することになります。遺産の総額が基礎控除額を超える場合には相続税が課税されます。評価額や相続税の金額を減額できる特例もあるため、利用できるものがないかチェックしましょう。
相続税の申告にあたって、自分で申告する方法と、税理士に依頼して申告する方法があります。相続後は土地に対して固定資産税が課税されることになるため、土地の活用方法について考えておくことも大切です。