2024年01月09日公開
2024年01月09日更新
底地とは何?借地との違いやメリット・デメリットをわかりやすく紹介
底地とは借地と何が違うのかご存知でしょうか。底地を保有していると活用できるのか、メリット・デメリットは何なのかを知りたい方は多いでしょう。この記事では底地の意味や特徴と活用方法について詳しく解説します。
目次
底地と借地の違い
底地と借地はどちらも土地の貸借をしている状況や権利を指します。ただ、底地と借地は区別して使用されるので注意が必要です。ここでは底地と借地のそれぞれの意味から違いをわかりやすく解説します。
底地とは
底地とは地上権と土地の賃貸権がある宅地の所有権を指します。土地の所有者が他の人に貸しているときに「底地を所有している」と表現するのが一般的です。底地を持っている人はその土地の所有者なので、毎年固定資産税や都市計画税を負担することになります。ただし、所有している土地が更地ではなく底地と呼ばれている時点で賃貸借契約をしているので、賃料収入を得ている土地でもあります。
参照:不動産鑑定評価基準
借地とは
借地とは広い意味では土地を借りることです。ただし、借地権の場合には、借地借家法に基づいて建物の所有を目的とする地上権と土地の貸借権を指します。土地を借りて土地を活用して建物を建てたり、看板を立てたりすることができるのが借地権です。借地権があると借りた土地を契約の範囲内で活用する権利が認められます。
底地と借地の違いは土地の賃貸借における視点です。土地の賃貸借のときに借地権を設定する貸主にとっては底地、土地を借りて利用する借主にとっては借地権になります。
参照:不動産鑑定評価基準
借地事業の種類【底地】
底地は借地事業の種類によって分類できます。大枠として普通借地権または旧借地権が設定された底地と、定期借地権が設定された底地に分けられます。さらに定期借地権のある底地の場合には一般定期借地権、建物譲渡特約付借地権、事業用定期借地権の3種類があります。ここでは借地事業の種類ごとに特徴を説明します。
普通借地権や旧借地権が設定された底地
普通借地権とは借主が現行の賃貸借契約が切れたときに契約期間を更新できる権利を持つ借地権です。土地の賃貸借契約の解除が認められる正当な理由がない限りは借主が契約を更新できます。現行の更新拒絶の要件は借地借家法の第6条に定められています。立退料を支払って契約の更新を断ることは可能ですが、貸主が土地の使用を必要とする事情がないと原則として更新を受け入れなければなりません。
旧借地権とは現行の1992年に施行された借地借家法ができる前の借地法に基づく契約によって借主に認められている権利です。旧借地権では現行の普通借地権よりも借地権が保護される期間が長く設定されています。底地の貸主としては普通借地権や旧借地権が設定されていると、自分の希望による更新の拒否が難しいので注意が必要です。
参照:
借地借家法 | e-Gov法令検索
旧借地法と新法の借地借家法の違い | 日本地主家主協会日本地主家主協会
定期借地権が設定された底地
定期借地権は1992年の借地借家法によって創設された権利です。定期借地権が設定されている底地は、契約期間が満了した時点で契約を解除できます。貸主と借主の両者の合意があれば再契約することは可能ですが、貸主が断れば再契約をせずに済むのが特徴です。土地活用をしている貸主を守るための制度になっています。定期借地権には3種類あり、以下のような特徴を持っています。
一般定期借地権
一般定期借地権は他の2種類に該当しない定期借地権です。更新がないこと、期間の満了によって終了することを契約書に記載し、別途書面を交付して説明することで契約期限を設定できます。一般定期借地権の存続期間は50年以上です。居住用のマンションなどを建てて継続的に借地をすることが想定されているため、借地権の期間が長く設定されています。
建物譲渡特約付借地権
建物譲渡特約付借地権は貸主が借主に借地権を与えた後、30年以上経過した時点で貸主が建物を適切な価格で買い取ると借主との契約を解除できる定期借地権です。底地を持っている貸主は建物を購入することを前提に契約を解除できます。50年以上という長い期間が設定されている一般定期借地権よりも短い期間で契約解除ができるのはメリットです。
しかし、現実的には建物譲渡特約付借地権はほとんど使用されていません。築30年の建物を買い取っても老朽化が進んでいるリスクが高いからです。貸主としては底地として運用できた方が土地活用を続けやすい面もあるため、建物譲渡特約付借地権はメリットがなくて使わないのが一般的になっています。買い取った建物に貸主が住みたいといったケースで、建築時点から借主と相談して建物譲渡特約付借地権を設定していることはあります。
事業用定期借地権
事業用定期借地権は事業目的で使用するときの定期借地権で、マンションなどの居住用の目的の場合には適用されません。借主がビルを建ててオフィスとして使用したり、ホールを用意してイベント会場として活用したり、事業目的でビル経営をしたりするときには事業用定期借地権を設定できます。事業用定期借地権では公正証書による契約が求められる点には注意が必要です。
しかし、事業用定期借地権の場合には権利の存続期間が短いのが特徴です。10年以上、50年未満が事業用定期借地権の権利が続く期間で、10年に設定すれば比較的短期間で契約解除をしやすい状況を作ることができます。借主が事業用途で建物を建てるときに限られるので底地の取引先が限られますが、他の方法に比べると短期間での定期借地権の設定ができるのがメリットです。
参照:建設産業・不動産業:定期借地権の解説 - 国土交通省
底地のメリット
底地にはさまざまなメリットがあります。ここでは土地を底地として活用する魅力を解説します。
経営による収入を得られる
底地は土地の賃貸経営になるので収入を得られるのがメリットです。借地権者から毎月地代の支払いを受けられます。契約更新料や建物の建築・増改築などに関する承諾料なども受け取ることができるため、土地を収入源として活用できるのがメリットです。
初期投資額を抑えられる
底地の経営では初期投資額を抑えられます。戸建て住宅やマンションなどを建てる必要がないからです。土地をそのまま貸すのが難しいときでも、家を建てて住みたい、マンションを建設して経営したいという人が見つかれば契約できます。不動産投資では初期コストの大きさが悩みになることが多いですが、底地にするなら更地のまま貸せるので問題になりません。
管理コストが低い
管理コストを抑えられるのは底地のメリットです。底地の場合には土地を借りた借地権者が土地を利用します。更地のままにしておくと草刈りなどのメンテナンスが必要になる場合が多いですが、底地にすれば基本的な管理を任せることが可能です。底地はマンション経営に比べると空室対策のコストも賭けなくて良いのもメリットになります。
また、建物の管理についても責任やコストを負う必要がありません。大規模修繕費を積み立てたり、地震や台風などによって損害が発生したときの費用負担をしたりする必要もないのが底地のメリットです。
長期契約できる可能性が高い
底地は長期契約できる可能性が高いのが特徴です。借地権で土地を利用するときに建物を建てることが多いからです。建物を建ててすぐに解体したら大きなコストになるため、通常は数年~数十年の利用を想定して契約をしています。一戸建てを建てて土地活用をすると、退去者が出たときには新しい入居者を見つけてすぐに入ってもらわないと収入がゼロになります。長期契約できると募集をする手間もなく、不労所得を得られるのがメリットです。
更地よりも相続税対策になる
土地を底地にすると相続税対策になります。更地よりも底地は相続税評価額が低くなるからです。相続税における借地権の評価は定期借地権か、一時使用目的の借地権かによって異なります。定期借地権の場合には残存期間等、一時使用目的の借地権の場合には法定地上権割合または借地権割合に基づいて減額されます。
また、底地に住居が建築されると、小規模宅地等の特例を適用できます。200平米または400平米の部分について50%~80%の減額措置を受けられるので相続税対策として有効な方法です。
参照:
No.4611 借地権の評価|国税庁
No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁
底地のデメリット
土地は底地にするとデメリットも発生します。ここでは他の土地活用との違いも考慮して、底地にすることで生じるマイナス面を紹介します。
建物がないので賃料収入が低い
底地は土地活用の方法の中で賃料収入があまり高くはありません。マンションやアパートを建てて賃貸経営をした場合に比べると利回りが低くなるのがデメリットです。建物がないと借主を見つけることが難しいため、底地として運用を始めた後、解約を申し出られたときに次の契約者を探すのに苦労することもあります。
売却時の相場が低い
底地にすると土地を売りたいと思ったときに相場が低くなるのがデメリットです。借地権付きの土地として売ることになるからです。借地権者がいるので買主はその土地を自由に使うことはできません。不動産投資としての価値がないと買主が見つかりにくいため、価格を下げて販売しないと売れないことが多くなっています。
流動性が低い
底地は流動性が低いのがデメリットです。借地権付きの土地として販売しても売りにくいという場合でも、借地権を解除できればただの土地になります。ただ、借地借家法の影響によって普通借地権が設定されている場合には所有者の意志で契約を自由に破棄することはできません。解約できたとしても建物の解体に時間がかかるため、すぐには売却できないのもデメリットです。
地代交渉をする必要がある
底地にするときには契約期間を長く設定することが多く、実勢価格に合わない地代での契約が継続される場合があります。都市開発が進められている地域では地価が急速に上がり、現在の地代では周辺物件の価格に合わないという状況が生まれる可能性があります。値上げのために地代交渉をする必要があるのが大変な点です。
借入による相続税対策効果がない
マンションや一戸建て住宅などを建てて賃貸経営をするのに比べると、底地の経営は相続税対策の効果があまり大きくありません。借入をして不動産投資をしている状況で相続すると、負債金を使って相続財産の総額を減らせます。相続税は相続した財産の総額に対してかかる税金なので、借入をせずに済む底地のデメリットです。
底地の固定資産税と都市計画税
底地による土地活用をしている貸主は固定資産税と都市計画税を土地については負担することになります。土地の所有者として1月1日の時点で認められた人が税金を納めることが求められているからです。土地の借主は所有者ではないので、土地の固定資産税や都市計画税を納める必要がありません。
しかし、底地を貸しているときに、土地に一戸建て住宅やビルなどの建物を建てる場合があります。建物の所有権を持っているのは土地の貸主ではなく借主です。そのため、借主が建物の固定資産税と都市計画税を納めることになります。土地を貸したときに高い評価額の建物を借主が建てたとしても、貸主は固定資産税も都市計画税も負担する必要がありません。
参照:総務省|地方税制度|固定資産税の概要
建物付きの土地だと軽減措置を受けれる
底地の固定資産税と都市計画税について押さえておきたいのが小規模宅地等の特例による軽減措置です。建物が建っている土地では税金の軽減措置があります。底地に居住用の物件が建てられたときには、土地の固定資産税と都市計画税が軽減されます。200㎡以下の部分は固定資産税は1/6、都市計画税は1/3です。200㎡を超えている部分については固定資産税が1/3、都市計画税が2/3に軽減されます。
例えば、固定資産税評価額が3,000万円の土地の場合には固定資産税は標準税率の1.4%を適用すると42万円です。しかし、200㎡以下の土地で住宅が建てられたら固定資産税評価額が1/6になり、固定資産税は7万円で済みます。
底地の相続税
底地の相続税は相続税評価額を基準にして、借地権割合を用いて金額を算出します。借地権割合は借地権者が土地に対して持つ権利の割合です。借地権割合が70%の場合には、土地の評価額の30%が所有者の持つ権利の割合になるため、相続税評価額は30%に減額されます。
底地の相続税評価額と借地権割合は原則として路線価を用いますが、路線価が設定されていない場合には固定資産税評価額に基づく倍率方式を使用します。路線価で相続性を計算するときには国税庁が公表している路線価図を用いて算出します。
土地の面している道路に記載されている数字が1㎡あたりの単価で、数字の末尾についているアルファベットが借地権割合です。借地権割合はABCDEFGの7段階で、Aが90%、Bが80%といった形で10%刻みになっています。この情報から以下のように相続税評価額を計算できます。
底地の相続税評価額=路線価×土地面積×(100%-借地権割合) |
底地の買取相場
底地を手放したいときには買取に出すことができます。底地の買取相場は底地に設定されている借地権が普通借地権か定期借地権かによって異なります。買主にとってのメリット・デメリットを考慮した価格設定になるからです。
普通借地権の場合には一般的な収益物件としての買取になります。所有者の意向によって賃貸借契約を破棄することが難しいため、継続的な賃貸経営をするのが基本になるからです。普通借地権が設定されている底地では以下のように買取相場が決まります。
底地の買取価格=(年間地代-土地の固定資産税)/運用利回り |
運用利回りは2%前後が相場ですが、地域による違いがあります。更地の土地価格に換算して10%~20%の買取価格になるのが一般的です。
定期借地権が設定されている更地の場合には契約の残存期間によって買取相場が変わります。残存期間が長い場合には収益物件として買い取るケースが多いですが、残存期間が短くなると自由に運用可能な土地と捉えられるからです。目安としては契約期間が5年残っているかどうかで以下のように買取相場が変わります。
残存期間が5年以下:土地価格の95%以上 残存期間が5年以上:土地価格の70%~80%程度 |
底地を処分する方法
底地を処分したいときには3つの売却方法があります。ここでは底地を売るときに検討した方が良い順に具体的な方法を紹介します。
借地権者に売却する
底地の処分方法としてスムーズなのは借地権者への売却です。住宅を建てて住んでいたり、オフィスを建てて事業を営んでいたりする状況で、土地を買って欲しいと伝えると承諾してくれる可能性があります。借地権者が購入すれば土地も建物も自由に使える状況になるので理想的です。借りた当初はお金がなかったからずっと借りていたけれど、今は資金の余裕ができたから買えるなら買いたいと言ってくれる場合もあります。
借地権者のままでいたいと希望された場合には強要できません。しかし、底地の処分を思い立った時点で借地権者に伝えておくとスムーズに手続きを進められます。協力的になってくれる可能性もあるので、底地を処分したいと思ったときにはまず借地権者に話をした方が良いでしょう。
建物と一緒に第三者に売却する
底地を処分したいと借地権者に相談するときには、土地だけでなく建物も一緒に売却する可能性についても話題にしましょう。借地権者は今の建物から引っ越したいと思っているときには建物を売るのが難しいのが悩みになりがちです。しかし、土地の所有者と協力して土地と建物をセットにして販売できます。お互いにとって土地や建物を単独で売却するよりも価格を上げやすく、買い手が見つかりにくいデメリットを解消できる方法です。
ただし、底地と建物を一緒に第三者に売却するときには借地権者との交渉が必要になります。販売価格の設定や仲介業者の選定などで合意を得る必要があるからです。売れたときの取り分についても明確にしておかないとトラブルになります。不可分一体の契約をしてリスク対策をすることも重要なので、底地と建物の同時売却の経験があって詳細を理解している不動産会社に仲介を依頼した方が良いでしょう。
底地だけ第三者に売却する
底地は借地権が設定されている土地として売却できます。底地は第三者が購入しても建物を解体して自分の家を建てるようなことはできません。しかし、底地を購入すれば契約を引き継いで地代を得ることができます。不動産投資という視点では最初から収入を得られる形が整っているので魅力的です。
ただ、底地では土地の価格に比べて収益性が低いのが懸念点になります。不動産投資をしている人が利回りが高くない底地をあえて選ぶことはあまりありません。媒介契約をして販売してもなかなか処分できない場合もあるので、不動産買取業者に相談して買い取ってもらうのも処分方法の一つです。買取価格は仲介に比べると低くなりますが、短期間で底地を処分できるのがメリットです。
借地に建てた家を処分する方法
借地に建てた家は処分のときにトラブルになるリスクがあります。ここでは借地権者が家を処分する方法を注意点と合わせて解説します。
解体して返却する
借地に建てた家は解体して処分するのが単純で確実な方法です。解体費用がかかりますが、更地にすれば地主に返却できます。建物を解体せずに済ませられる可能性もあるので、あくまで最終手段として考えましょう。
地主にとっては更地が返ってくると自由に運用できるメリットがあります。駐車場経営は気軽に始められる土地活用なので、土地が戻って来て自由に使えるようになったら検討してみましょう。
地主に買い取ってもらう
借地に建てた家は地主に相談して買い取ってもらって処分する方法があります。転居が必要になったといった説明をして受け入れてもらえれば、取引もスムーズで費用も抑えられる方法です。地主に買い取ってもらうと、第三者に売却するときにかかる譲渡承諾料の負担がありません。地主が借地権を取り戻して自由に底地を使いたいと思っているならすぐに交渉に応じてくれます。詳細の交渉は必要ですが、早く高く売れる可能性が高い方法です。
地主に相談して土地と一緒に売却する
地主が底地を処分したいと思っているときなら、協力して家と土地を同時に販売する方法があります。同時売却をすれば土地を単独で売却するよりも売れやすく、売却価格も上がるので地主にもメリットがあります。ただし、売れたときの按分などについて地主との交渉が必要になります。契約内容についても意見が合わずに苦労することがある点には注意が必要です。
建物のみを借地権付き建物として売却する
借地権付き建物として建物だけ売りに出して処分する方法もあります。不動産仲介業者に相談して媒介契約をすれば、第三者への販売を進めてもらえます。不動産買取業者に相談して買い取ってもらう選択肢もあります。
ただ、借地権付き建物として売却して第三者に譲渡するときには、地主に事前に相談することが必要です。譲渡の承諾を得るための交渉をして、譲渡承諾料を支払うことになります。売却益があっても地主への支払いが大きくて相殺されてしまう場合もあります。
また、買主が住宅ローンの利用を希望する場合には、抵当権設定についても地主から承諾を得なければなりません。トラブルを避けるには不動産会社を介して交渉することも考えた方が良いでしょう。
賃貸経営をする
家を処分する代わりに賃貸経営をする選択肢もあります。借地に建てた家は所有権があるので賃貸経営が可能です。借地権があっても問題はなく、地主の承諾を受ける必要なく賃貸経営ができます。処分が難しかったときや、まだ新しい家を建てたばかりのときには賃貸経営も候補として考えてみましょう。
まとめ
底地とは借地権を設定して他の人に貸してる土地です。土地を持っているときに貸地にして借地権を付与すると簡単に賃貸経営ができます。ただ、底地は借地権者がいる影響で流動性が低くなるデメリットもあります。土地を底地として運用する他にも土地活用の方法はあります。流動性を重視するなら駐車場経営がおすすめです。すぐに始めて、すぐにやめられるコインパーキングは特に流動性が高いので土地活用方法として検討してみましょう。
※本記事は可能な限り正確な情報を元に制作しておりますが、その内容の正確性や安全性を保証するものではありません。引用元・参照元によっては削除される可能性があることを予めご了承ください。また、実際の土地活用についてや、税金・相続に関しては専門家にご相談されることをおすすめいたします。