アパートローンとは?金利・審査のポイント・住宅ローンとの違い

アパートローンとは、主に投資で利用されるローン商品です。住宅ローンとは違って収益物件の購入・建築に利用できるので、土地活用や不動産投資に興味がある人の資金調達の役に立ちます。この記事ではアパートローンの審査対策のポイントや、近年の金利の状況、アパートローンの借り方などの基礎知識を解説します。

アパートローンとは?金利・審査のポイント・住宅ローンとの違いのイメージ

目次

  1. 1アパートローンとは
  2. 2アパート投資で住宅ローンは利用できない
  3. 3【住宅ローンと比較】アパートローンの特徴
  4. 4アパートローンの金利の目安
  5. 5アパートローンの審査で重要な8つのポイント
  6. 6アパートローンを借りる流れ
  7. 7アパートローンのよくある質問
  8. 8土地活用なら駐車場経営もおすすめ
  9. 9まとめ

アパートローンとは

アパートローンとは、賃貸経営による収益化を目的として、アパートやマンションなどの購入、建築、リフォームに使用できるローン商品です。銀行や信用金庫などの金融機関に加えて、ノンバンクのサービスも利用できます。また、不動産賃貸業を営むための収益物件の調達資金として、日本政策金融公庫の創業融資を利用する選択肢もあります。

アパートローンは住宅ローンと同様に、購入や建築をするアパートを担保とする有担保ローンが一般的です。長期の借り入れが可能で、金利もカードローンやフリーローンと比較すると低めに設定されています。アパート経営をして賃料収入を得ながら、ローンの完済を目指します。アパートローンを利用することで、自己資金でアパートの購入や建築ができなくても、早い時期にアパートを手に入れて経営を始められるのがメリットです。
 

アパート投資で住宅ローンは利用できない

住宅ローンは低金利で長期の借り入れができるローン商品として有名です。しかし、住宅ローンは自宅を購入・建築するための費用を工面するためのローン商品なので、不動産投資を目的とした収益物件の購入や建築には利用できません。アパートの購入や建築には住宅ローンではなく、アパートローンを使用する必要があります。

【住宅ローンと比較】アパートローンの特徴

アパートローンは銀行やノンバンクなどが独自に条件を設定して提供している融資サービスです。住宅ローンのフラット35のように共通のサービスがあるわけではなく、個々の会社が利用条件やサービス内容を定めています。ここでは住宅ローンと比較しながら、アパートローンの一般的な特徴を紹介します。

参照:アパートローン : 三井住友銀行
参照:とうぎんアパートローン|東北銀行
参照:ビル・アパートローン | かりる | 広島銀行

 

資金使途

アパートローンの資金使途は主にアパートやマンションなどの購入・建築・リフォームと、アパートローンの借り換えです。所有しているアパートの底地買い取り資金にも利用できます。住宅ローンとは異なり、ローンを組む本人がアパートに住む必要はありません。賃貸経営を目的とした事業目的の物件の調達に利用できるローンです。

個人の居住用のアパートやマンションだけでなく、テナントを入れられるマンションやオフィスビルなどの調達資金にも利用できる場合もあります。ただし、事業用の不動産の購入や建築などの利用できるかどうかは融資元によって違うので確認が必要です。
 

審査基準

アパートローンの審査基準は本人の属性だけでなく、調達予定の物件や事業計画も対象になります。住宅ローンでは個人が返済できるかが審査されますが、アパートローンの場合には個人の資金力だけでなく、賃貸経営による収益性の高さが審査対象になります。基本的には賃貸経営による賃料収入によってローンを返済する投資目的の利用者を対象としているからです。
 

借入金額

アパートローンで借入可能な金額は100万円から10億円が目安です。借入可能な金額の下限や上限は金融機関によって異なります。上限額は審査によって決まるため、個人の属性やアパートの収益性が低い場合には少額しか認められないこともあります。

住宅ローンでも審査結果により融資額が決まる点は同様です。ただし、住宅ローンでは個人の属性によって借入上限が決まるのに対し、アパートローンでは不動産賃貸業の経営による想定利益も加味される点が異なります。

また、住宅ローンの借り入れ可能金額はフラット35の場合、100万円以上8,000万円以下です。各金融機関の独自の住宅ローンでは上限が高いこともありますが、アパートローンはさらに高い上限を設定している場合が多いです。


参照:【フラット35】:長期固定金利住宅ローン 【フラット35】

 

金利

アパートローンの金利は住宅ローンと比較すると高めです。住宅ローンのフラット35では年率1.80%ですが、アパートローンでは後述のように年率2%~4%の商品が多くなっています。各金融機関の独自の住宅ローンはアパートローンと同程度の水準か、やや低めの設定になっているのが一般的です。

参照:【フラット35】:長期固定金利住宅ローン 【フラット35】
参照:ローン金利 : 三井住友銀行

融資期間

アパートローンの融資期間は1年から35年です。金融機関によっては上限が30年に設定されている場合もあります。住宅ローンではフラット35のように35年を上限とするものが多いので、上限融資期間には大差がありません。

ただし、アパートローンでアパートやマンションを建築する場合、建物の構造によって融資期間の上限が異なることがあります。基本的に法定耐用年数を基準に、収益を得られる不動産として経営できる期間内に返済が終わるように上限が定められています。そのため、法定耐用年数が短い木造建築物では融資期間が短くなる可能性があるので注意が必要です。

アパートの構造 法定耐用年数 みずほ信託銀行の例
木造 22年 25年以内
軽量鉄骨造 27年 30年以内
鉄筋コンクリート造 47年 35年以内
※2024年12月時点


参照:主な減価償却資産の耐用年数表|国税庁
参照:賃貸マンション・アパートローン「プロデュース II」 | みずほ信託銀行
 

税制優遇措置

住宅ローンの場合には住宅ローン減税を受けられますが、アパートローンは適用外です。住宅ローン減税は条件を満たせば10年間から13年間にわたって、年間で最大控除額が設定された上で0.7%の控除率で所得税から控除できます。2024年の税制改正により、省エネ基準を満たす住宅のみが対象になり、借入限度額の引き下げが行われました。住宅ローンを利用して対象となる住宅を建てれば、住宅ローン減税で節税対策が可能ですが、アパートローンでは同様の節税対策はできません。

参照:住宅:住宅ローン減税 - 国土交通省

 

アパートローンの金利の目安

アパートローンの金利は年率2%~4%が目安です。個々の金融機関が決定するため、融資元の選び方によって変わります。マイナス金利政策から脱却した影響を受けて、今後は金利が変動するリスクが高くなっている点にも注意が必要です。

アパートローンの金利の例

アパートローンの金利の例を銀行、信用組合、ノンバンクなどのデータからピックアップしました。2024年11月時点での金利の目安を種類ごとにまとめると以下の通りです。
 

金融機関・サービス名 金利の種類 金利の目安
みずほ信託銀行「賃貸マンション・アパートローン「プロデュース II」」 変動金利 1.85%~3.025%
固定金利 1.50%~5.90%
固定金利選択型 3.30%~6.05%
三井住友信託銀行「アパートローン」 変動金利 2.725%
固定金利選択型 3.95%~5.21%
東北銀行「とうぎんアパートローン」 変動金利 2.125%~3.175%
固定金利選択型 2.078%~3.125%
広島銀行「ビル・アパートローン」 変動金利 3.125%
固定金利選択型 3.20%~3.70%
横浜幸銀信用組合「不動産購入ローン」 変動金利 1.80%~3.80%
セゾンファンデックス「不動産担保ローン」 変動金利 2.75%~4.55%
固定金利 4.5%~9.9%
日本政策金融公庫 固定金利 0.65%~2.25%


参照:賃貸マンション・アパートローン「プロデュース II」 | みずほ信託銀行
参照:ローン金利情報 | みずほ信託銀行
参照:金利一覧 | ローン | 三井住友信託銀行
参照:とうぎんアパートローン|東北銀行
参照:東北銀行 ローン金利のご案内
参照:ローン金利一覧 | 広島銀行
参照:不動産購入ローン|横浜幸銀信用組合
参照:事業者向け不動産担保ローン|ビジネスローンのセゾンファンデックス
参照:金利情報|中小企業事業(主要利率一覧表)|日本政策金融公庫
 

アパートローンの審査で重要な8つのポイント

アパートローンは、審査結果によって融資の可否、金利、融資期間、融資金額が決まります。そのため、審査に有利になる対策を講じることが重要です。ここでは、アパートローンの審査を受ける際に押さえておきたいポイントをご紹介します。

収益性の高い物件を選ぶ

アパートローンの審査ではアパートの収益性が重視されます。利回りが高いと期待される物件を選びましょう。賃貸物件の需要が高い地域を選び、競合のアパートの間取りや設備と比較して魅力のあるアパートにすることが大切です。空室リスクが低くて家賃も高めに設定できるアパートなら、収益性があるので審査で有利になるでしょう。

提携金融機関のある不動産会社・建築会社を探す

不動産会社や建築会社を選ぶときには、アパートローンに対応している提携金融機関がある会社にすると審査で優遇される可能性があります。大手の工務店やハウスメーカーでは複数の金融機関と提携していて、スムーズにローンの審査を受けられるのが一般的です。低金利での借り入れができる可能性もあるので重要なポイントです。
 

事業計画書を綿密に作成する

事業計画書はアパートローンの審査で欠かせない参考資料です。今後の収益性を見込める計画が立てられていて、わかりやすく収支計画が示されていることが重要です。家賃を設定して入居率を仮定し、収益がどの程度になるかをシミュレーションした結果を載せると具体性があるので受け入れられやすくなります。融資期間の最後まで利益を得られるシミュレーションをして、根拠を添えて記述すると融資実行に至る可能性が高まります。

金利の種類や融資元を比較して検討する

アパートローンは固定金利、変動金利、固定金利選択型のいずれを選ぶかによって金利が異なります。固定金利選択型の場合、固定期間に応じて金利も変わります。融資元によって同じ種類の金利でも異なるため、しっかりと調査して比較した上で申し込み先を決めましょう。固定金利は金利変動リスクがない一方で、変動金利は一般的に低めの金利設定がメリットです。

 

個人の属性を向上させる

個人の属性はアパートローンの審査に影響を与えます。年収だけでなく、職業と勤続年数、資産状況と借入の有無といった要素も審査でよく見られているポイントです。アパートローンでは自己資産と事業収益による返済能力が審査されます。現金や証券などの金融資産が大きく、借り入れがない場合には審査が通りやすいと考えられます。
 

信用情報を整える

信用情報が優れていると審査が通りやすいのはアパートローンでも一般的なローンと同じです。カードローンやフリーローンなどを利用してきちんと返済してきたり、クレジットカードや携帯電話の月賦を支払い続けてきたりした履歴があると、信用できると見なされます。初めての借り入れでは、金融機関が返済する意志があるかを見極めるのが困難です。信用に基づく取引をしてきた利益が信用情報からわかると融資を受けられる可能性が上がります。
 

信頼性の高い融資元を選ぶ

融資元は信頼性を重視して選ぶことが重要です。不動産投資を勧誘する電話やポスティングなども頻繁にあります。ローンを組めば自己資金がなくても不動産投資を始められるといった話に乗せられて、つい契約したくなる場合もあります。

ただし、闇金などの悪徳業者も存在するため、注意が必要です。安易な気持ちで融資を受けるとトラブルに巻き込まれる可能性があります。違法な金利を請求されることもあります。融資を受ける際には、名の知れた信頼できる金融機関を選ぶのがおすすめです。
 

自己資金を十分に用意する

アパートローンの審査を受けるときには自己資金を十分に用意することが重要です。少ないローン割合でアパートを購入できる自己資金があれば、返済トラブルのリスクが低いと考えられるからです。

例えば、1億円のアパートを建てるときに2,000万円の自己資金の場合には融資額は8,000万円です。6,000万円の自己資金があれば4,000万円の融資額になります。利回りが5%のアパートなら年間500万円の利益になると想定されます。利益をすべて返済に使うと想定すると、8,000万円の返済をするには利子を除いて16年かかるのに対して、4,000万円の返済なら8年です。

自己資金が大きいほど想定利益に対する融資額が小さいため、返済できる可能性が高いと考えられるので融資を受けやすくなります。また、融資実行前に以下のような税金や手数料などが発生する点も考慮して、自己資金を十分に用意することが大切です。
 

  • 不動産取得税
  • 登記費用
  • 印紙税
  • アパートローンの事務手数料
  • 各種保険料


 

アパートローンを借りる流れ

アパートローンを借りるときには融資元を選んで申し込み、審査を受けて承認を得られたら契約するという流れが一般的です。ここではアパートローンを借りる手続きをステップごとに解説します。

 

アパート経営の事業計画書の作成

アパートローンに申し込む前に事業計画書を作成します。事業計画書は事業の収益性を説明するために欠かせない資料です。審査のときに提出を求められる必要書類です。事業計画書の作成はアパート経営が収益になるかを自己評価する機会にもなるので、最初に書き上げましょう。

 

融資元の選定と申し込み

次に、アパートローンの融資元を銀行やノンバンクなどから選びます。アパートローンの融資条件や期間、金利などを加味して申し込み先を決めます。アパートローンの申し込みをするときには、事前に融資元の担当者と相談することも可能です。申し込みでは購入や建築をする建物の情報や、借入希望期間、借入希望額などを記入して提出します。年収や借入状況などの個人情報も記載が必要です。

 

事前審査

申し込みをすると現地調査と事前審査を受けます。既存のアパートを購入する場合や、保有している土地にアパートを建設する場合には現地調査を通して立地環境や収益性などを評価されます。事前審査は調査結果と提出した書類の内容を受けて、融資の可能性や金利の目安などを見積もるのが目的です。事前審査で不可と判断され場合には、他の融資元を探す必要があります。

 

本審査

事前審査を受けて融資を受けられる可能性があると判断されたら、本審査の必要書類を揃えて申し込みます。本審査では信用情報も詳しく確認されるため、金融事故を起こした履歴があると審査が通りにくくなります。事前審査で申告した内容と齟齬がなく、物件の詳細も一致していれば本審査も通るでしょう。本審査は詳細な調査をするため、2週間~4週間程度かかるのが一般的です。
 

契約・融資実行

本審査が通ったら契約をして融資を受けます。契約の事務手数料や抵当権の設定などの手続きが必要ですが、融資元と不動産会社や建築会社が詳細を理解しているので、案内に従って手続きを進めれば問題ありません。アパートローンの融資実行は物件の引き渡しを確認したタイミングの場合が多いので、引き渡し前に資金が必要な場合には別途つなぎ融資を契約するなどの対策が必要です。

 

アパートローンのよくある質問

初めてアパートローンに申し込む際にはさまざまな疑問が生じます。ここではアパートローンを利用するときのよくある質問と回答を紹介します。
 

アパートローンの審査ではどのような資料が必要ですか?

アパートローンの審査では、申し込みの時点で以下のような書類の提出を求められます。

・事業計画書
・賃貸契約書または見込み賃料
・登記簿謄本
・公図、実測図、住宅地図など
・固定資産評価証明書、工事請負契約書、建築確認通知書、売買契約書など
・本人確認書類
・源泉徴収票や確定申告書など
・金融資産の確認書類(預金通帳や生命保険など)
・賃貸借契約書やレントコントロール(アパート購入時)
・他のローンの関係書類

事前審査、本審査のタイミングで必要書類に違いがあります。融資元によって提出する必要がある書類も異なるので、アパートローンの相談をする時点で確認しておきましょう。


参照:必要な書類|オリックス銀行
参照:アパートローン : 三井住友銀行
 

住宅ローンがあってもアパートローンを利用できますか?

住宅ローンを組んでいても、アパートローンを利用できます。アパートローンはアパート経営による利益で返済することを想定しているローンなので、給与などの収入から返済をする住宅ローンとは原資が違います。住宅ローンを組んでいると本人の収入によって支払う能力は低いと判断されますが、収益性が期待されるアパートを調達すれば大きな金額のアパートローンを組むことも可能です。
 

住宅ローンからアパートローンに借り換えられますか?

アパートローンの返済比率は50%までが目安です。年間の返済額を賃料収入の半分以下にすれば返済を続けられるでしょう。賃貸経営にはランニングコストがかかるだけでなく、空室リスクもあるので資金的に余力があるように計画を立てることが大切です。可能な限り返済比率を小さくした方がトラブルが発生した場合でもアパートローンの返済を続けられる可能性が高くなります。
 

土地活用なら駐車場経営もおすすめ

アパートローンを組んでアパート経営をすると大きな収入源になる可能性があります。しかし、初期投資が大きく、ローンの返済に追われる不安もあります。不動産投資をするなら初期投資を抑えられる方法もおすすめです。駐車場経営は土地活用なら初期費用があまりかからないので始めやすい方法です。

更地に駐車ますを用意するだけでも青空駐車場として月極駐車場の経営ができます。利用者を集めやすくするにはアスファルト舗装などの最低限の初期投資が必要ですが、数千万円といった費用はかかりません。コインパーキングの経営では一括借り上げ方式で初期費用がほぼゼロの契約も可能です。土地活用ならまずは駐車場経営から検討してみましょう。
 

駐車場経営を始めてみよう
駐車場経営を始めるべきか迷っている方に対して、駐車場経営のメリットや注意点、運営会社の選び方...

まとめ

アパートローンは、アパートやマンションなどの不動産を手に入れて賃貸経営を始めたい人にとって有用な資金調達方法です。住宅ローンより金利が高い場合もありますが、2%から4%程度の金利で借りられる可能性があります。長期融資が可能なので、長期投資による資産形成を目指す人は借入を検討してみてください。

ただし、アパートローンを利用する場合、賃貸経営で利益を上げ続けなければ返済に苦労するリスクがあります。低金利の変動金利を選ぶと、金利変動リスクによって返済が難しくなることもあります。ローンのリスクを避けるため、最初は無リスクの不動産投資から始めることもおすすめです。例えば、土地があればすぐに始められる少額投資の駐車場経営はメリットがありますので、検討してみてください。
 

※本記事は可能な限り正確な情報を元に制作しておりますが、その内容の正確性や安全性を保証するものではありません。引用元・参照元によっては削除される可能性があることを予めご了承ください。また、実際の土地活用についてや、税金・相続等に関しては専門家にご相談されることをおすすめいたします。

関連するまとめ

Banner pc

人気の記事

人気のあるまとめランキング

新着一覧

最近公開されたまとめ
Banner pc