2025年01月30日公開
2025年01月30日更新
アパート経営が儲からない7つの原因と14の対策を解説
アパート経営は不労所得を得られる不動産投資として注目を浴びています。しかし、アパート経営は儲からないという話も持ち上がっているのが現状です。この記事ではアパート経営が儲からない原因を詳しくまとめました。アパート経営で儲からない悩みを解決する方法や、苦労しないための対策も解説します。
アパート経営が儲からない理由
アパート経営が儲からないと言われるのは、大きな収益を上げるための投資ではないためです。さらに、時代の変化も影響し、大きな利益を出しにくくなっています。ここでは、アパート経営が儲からないと言われる理由を解説します。
黒字になるまでに長期投資が必要だから
アパート経営が儲からないと言われるのは、長期投資が前提となるからです。アパートの購入や建築には多額の費用がかかるため、初期投資を回収して黒字になるまでには時間がかかります。
一般社団法人日本不動産研究所の「第49回 不動産投資家調査(2023年10月現在)」によれば、賃貸住宅一棟の期待利回りは「東京・城南」で3.8%、全国の主要都市では3.8%~5.2%でした。仮に利回りが4%だとすると、初期投資を回収するには約25年かかります。黒字になるまでには長期的な視野でアパート経営を続ける必要があるため、辛抱強さが求められる投資なのです。
参照: 第49回「不動産投資家調査」(2023年10月現在)の調査結果
家賃相場が変動するから
アパート経営の主な収入源は家賃です。経営を始める際には、周辺の家賃相場を調査し、適切な家賃設定を行います。しかし、家賃相場は常に変動するため、同じ家賃で経営を続けられるとは限りません。家賃相場が下がると、予想していた利益を得ることが難しくなります。このため、アパート経営が儲からないというイメージを持たれることがあります。
家賃相場の変動状況は全国賃貸管理ビジネス協会の全国家賃動向が参考になります。
年・月 | 1部屋 | 2部屋 | 3部屋 | 総平均 |
---|---|---|---|---|
2024年9月 | 53,328円 | 59,673円 | 67,342円 | 57,384円 |
2023年9月 | 50,984円 | 58,876円 | 66,766円 | 55,356円 |
2022年9月 | 51,280円 | 58,551円 | 66,233円 | 55,444円 |
2021年9月 | 51,011円 | 58,260円 | 66,540円 | 55,361円 |
2020年9月 | 51,363円 | 58,053円 | 65,928円 | 55,460円 |
2015年9月 | 49,529円 | 58,089円 | 66,604円 | 55,247円 |
近年、全国の家賃相場は比較的安定しており、2024年には若干の上昇傾向が見られます。しかし、地域によっては家賃が上がらない場合もあります。賃貸アパートの需要が下がると、家賃相場が下がることが一般的です。10年後、20年後の需要を予測するのは難しく、黒字を維持できるかどうかを見極めるのは困難です。
参照:全国賃貸管理ビジネス協会| 全国家賃動向
建築資材が高騰しているから
アパートを建築して経営する場合には、利回りは建築費用によって変わります。近年では建設資材の費用が高騰しているため、新築アパート経営をしようとすると儲からない状況に陥るリスクがあります。
一般社団法人建設物価調査会による「建設物価 建設資材物価指数」によると、2015年を基準として建設資材の東京における物価は約1.4倍になりました。最近の建設資材物価氏指数の動向は以下の通りです。
年・月 | 建設資材物価指数(建設総合・東京) |
---|---|
2024年10月 | 139.1 |
2024年10月 | 134.3 |
2023年平均 | 132.8 |
2022年平均 | 124.7 |
2021年平均 | 110.3 |
2015年平均 | 100 |
建設資材物価指数が2015年から1.4倍近くなっているのに対して、家賃相場は1.04倍程度にしかなっていません。アパートを新築して利益を上げるのが難しい状況になってきています。
参照:建設物価 建設資材物価指数®【2024年10月分】|建設物価調査会 総合研究所
満室を長期的に維持するのが難しいから
国立社会保障・人口問題研究所の推計では、出生率の低下や平均寿命の延伸などによる少子高齢化が今後も進む一方、長期的には人口減少が進むと示されています。日本の総人口は2020年には1億2,615万人でしたが、2056年には1億人を下回り、2070年には8,700万人になると推計されています。
人口が減少するとアパートの借り手が少なくなるため、アパートを満室にするのが難しくなるのは明らかです。空室リスクが今後高くなる可能性が懸念されるため、アパート経営は儲からないと言われています。
参照:日本の将来推計人口(令和5年推計)結果の概要 令和 3(2021)年~令和 52(2070)年|国立社会保障・人口問題研究所
参照:日本の将来推計人口(令和5年推計)推計結果の概要||国立社会保障・人口問題研究所
賃貸物件の取引が低迷傾向にあるから
賃貸物件の取引が低迷しているのもアパート経営が儲からないと言われている理由です。ニッセイ基礎研究所による不動産投資市場の調査では、賃貸住宅の市場はやや拡大する傾向があります。都道府県による違いはありますが、多くの地域では賃貸住宅の資産規模が4%以上8%未満の増加率になっています。
しかし、不動産取引額で見ると賃貸マンションの取引額は2023年以降減少してきています。アパート経営では家賃収入を得ながらローンを返済した後、アパートを売却できると大きな資産形成が可能です。不動産の流動性が低迷する傾向があるため、出口戦略が難しくなり、アパート経営が儲からないという不安が生じています。
参照:わが国の不動産投資市場規模(2023年)~「収益不動産」の資産規模は約289.5兆円(前回比+13.9兆円)。前回調査から「賃貸住宅」・「商業施設」・「物流施設」・「ホテル」が拡大する一方、「オフィス」は縮小 |ニッセイ基礎研究所
参照:不動産投資市場動向(2024年上半期)~外資の取得額が減少するも、全体では高水準を維持 |ニッセイ基礎研究所
ローンの負担があるから
アパート経営ではアパートローンを組んで初期費用を工面するのが一般的です。ローンは早期の資金調達による投資ができるのがメリットですが、利子があるので返済負担が大きくなります。アパート経営では数千万円の借入をすることが多いため、長期ローンを組んで返済可能なスケジュールを立てます。利子の負担が大きくなるので経営による収益を減らしてしまうのが、アパート経営が儲からない原因です。
知識不足による失敗が起こり得るから
アパート経営は、十分な知識がなければ成功しません。計画的に資金を積み立て、経費や減価償却を上手に活用して節税対策を行うためには、アパート経営の全貌を理解し、ノウハウを身につけることが求められます。アパート経営の大きなリスクである空室率の増加に対処するためには、何が原因で空室が増えているのかを突き止めることが必要です。知識不足から失敗するケースも多いため、アパート経営が儲からない投資だという認識が広まっています。
アパート経営で儲からない悩みを解消する14の対策
アパート経営は儲からないと言われているものの、経営に成功して大きな収益を得ているケースもあります。アパート経営のやり方によっては大きな資産形成をすることが可能です。ここではアパート経営で儲からないトラブルの対策方法を紹介します。
好立地でアパート経営をする
アパート経営は需要のある立地で始めることが必須です。空室を最小限にして経営すると計画通りに黒字化できます。長期的な視点で需要が絶えない立地でアパート経営を始めましょう。駅や商業施設の周辺は需要が高い立地なので長期的な集客を見込めます。学生向けのワンルームなら、大学や短大の近くの立地を選ぶのが効果的です。基本的には都市部の人口が多い地域で利便性の高い立地を選ぶと空室リスクに対策できます。
需要に合う間取り設計をする
アパートの間取りは需要に合わせて設計することが重要です。賃貸アパートの需要が高い立地でも、間取りによっては需要がない場合もあります。
例えば、大学周辺の立地では一人暮らしの学生がターゲットなので、ワンルームや1K、1LDKの間取りの需要があります。ファミリー向けの3LDKや4LDKの間取りにしても需要が低くて空室になる可能性が高いでしょう。立地によって需要が違うので、周辺で必要とされる間取りを選んでアパートを設計するのが成功のコツです。
戸数を需要に合わせて調整する
アパートの戸数は多いほど、満室時の家賃収入が大きくなります。大きな利益を得ようとして戸数を増やす場合がありますが、需要に見合わない戸数にすると空室が増えてしまいます。アパートの建設費用も増加するため、戸数を需要に合わせて調整することが重要です。
目安としては、10戸以上を好立地で経営するのが理想的です。空室による利益の減少率が小さくて済むからです。
さらに、10戸以上になると事業的規模のアパートとして認められ、青色事業専従者給与を使用して節税対策ができます。青色事業専従者給与は、配偶者や親族に給与を支払って経費にできる制度で、家族経営を行う際に効果的な節税方法です。
参照:No.1373 事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分|国税庁
参照:No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除|国税庁
周辺調査をして差別化する
アパート経営では競合が多いことを考慮して差別化戦略を立てて集客する必要があります。周辺調査をして付加価値のあるアパートにすると利用者から選ばれるようになります。部屋のレイアウトや設備、付帯サービスなどをターゲットに合わせて検討しましょう。
例えば、単身者の社会人をターゲットにする場合にはインターネットを無料で利用できるサービスを提供すると契約不要なので喜ばれます。ファミリー層がターゲットの場合には収納を広く取ったり、動線設計をしてリビングで家族がよく顔を合わせられるようにしたりすると好まれます。
周辺調査では空室になっている物件を確認し、同じ間取りや設備にしないことが重要です。満室のアパートを参考にしつつ、差別化を意識して付加価値の高いアパートにすると集客力が高まります。
1階の空室対策を徹底する
アパートの1階は空室対策が特に重要です。1階は防犯性が低いため、空き巣被害を懸念して避ける人が多いです。上層階に比べると、風通しや日当たりが悪いことからも敬遠される傾向があります。また、プライバシーを重視する人も1階を避けるのが一般的です。
そこで、1階に付加価値や特典を付けることが空室対策となります。専用庭や物置を提供するのが典型的な方法です。また、ホームセキュリティーを設置し、道路から見えないように植栽をすることで安心感を高めることもできます。
さらに、1階を駐車場にして2階以上をアパートにする方法も効果的です。駐車場はアパートの入居者にとって付加価値となり、月極駐車場やコインパーキングとして経営することも可能です。
自己資金を十分に用意する
アパート経営はローンの負担が大きく、儲けが出にくいことがあります。そのため、できるだけ自己資金の比率を高めることが重要です。自己資金が不足していると、そもそもローンを組むことが難しくなる場合もあります。アパートの調達資金の1割から2割を自己資金として用意しないと、ローンの審査が通りにくいことに注意が必要です。自己資金が3割程度あれば、ローンの負担が軽減されます。基本的には、ローンの額が少ない方が収益が大きくなるので、無理のない範囲で自己資金比率を上げることをおすすめします。
収支計画を立てる
アパート経営は収支計画を綿密に立てて、計画通りに収益を上げられるようにすることが大切です。アパート経営では空室リスクや家賃変動リスクなどのさまざまなリスクを伴います。収支計画を立てる際には理想的なケースだけでなく、想定よりも悪かったときのシミュレーションをしましょう。想定よりも高い空室率になり、家賃の低下が起きたとしても黒字化できるかを確認してから始めると大きな失敗にはならないでしょう。
運用期間と出口戦略を考える
アパートは運用期間を考えて出口戦略を立てて経営すると、儲からない問題が起こりにくくなります。アパートは新築や築浅のうちは集客力がありますが、築古になると入居者が集まりにくくなります。20年後や30年後まで満室に近い経営を続けることは困難です。入居者がほとんどいないアパートは売れなくて困るため、早めに売ることが重要です。
収益性があるうちにアパートを売却して、新しいアパートの経営を始めるのは効果的な出口戦略です。10年くらいアパートを経営した時点で外壁塗装などの修繕による費用がかさむようになります。この時期にアパートを売却して利益を獲得し、次のアパート経営に移ると長期的に収益を得られる不動産投資ができます。
アパートの建築ではハウスメーカーを比較する
アパートを建築する場合には複数のハウスメーカーから見積もりを取って比較するのがおすすめです。ハウスメーカーによって同じ間取りのアパートでも建設費用が異なるからです。複数のハウスメーカーと打ち合わせをする中でアイデアが生まれて、より良い設計のアパートにできる可能性もあります。ハウスメーカーは建築後も修繕対応で付き合う場合が多いので、コミュニケーションを取りやすい業者を選ぶことも重要です。
自主管理にせずに管理委託や一括借り上げを選ぶ
アパート経営が儲からない原因の一つに、自主管理が挙げられます。自主管理ではクレーム対応や修繕対応などの入居者管理が行き届かず、退居者が多くなることが典型的な問題です。また、建物の管理が不十分で劣化が進み、予定よりも早くリフォームが必要になる場合もあります。
このような問題を避けるためには、管理委託や一括借り上げを選ぶことが有効です。プロに任せることで、入居者管理や建物管理が適切に行われ、安心して経営を続けることができます。管理費用はかかりますが、管理不足によるトラブルを防止し、経営負担を軽減することができます。これにより、長期的にアパート経営をしやすくなるメリットもあります。
定期的に管理会社を見直す
管理委託をする場合には管理会社の見直しが必要な場合があります。空室が目立ったり、退居が多くなったりしたときには管理会社の対応に問題がある可能性があるためです。特に家賃収入が減ったときや修繕費用が高くなったときには管理会社の見直しを検討しましょう。管理会社とのやり取りでストレスを感じている場合にも他社に変更して経営を続けやすい状況を作ることが大切です。
管理委託をするときに毎月支払う管理費用は会社によって違います。管理会社が管理費用の値上げをしたときや、新しい管理会社を利用できるようになったときには、費用面の見直しをしましょう。安さだけでなく品質も考慮して、総合的にアパート経営の収益を増やせる会社に管理を任せることが重要です。
地域に強い不動産仲介会社を探す
アパート経営では不動産仲介会社と媒介契約をして入居者募集をします。不動産仲介会社を選ぶときには、アパートのある地域で集客力がある会社を探すことが大切です。会社によってどの地域に詳しく、地元とのつながりがあるかが違います。大手の不動産仲介会社だけでなく、地域密着型の会社も含めて媒介契約をする会社を比較して決めましょう。不動産仲介会社が入居者を集められないときには、契約を解除して他社に乗り換えることも重要です。
経営意識と主体性を持つ
経営意識を持って勉強してからアパート経営を始めることは大切です。アパート経営には集客戦略や出口戦略を考えるだけでなく、経理や税務を理解して正しく必要経費の計上や減価償却をする必要があります。アパート経営が赤字だったときには給与所得との損益通算をして節税することも可能です。主体的に収益を増やす努力を続けることが儲かるアパート経営をするための基本です。
アパート経営では一括借り上げによって安定収入を得る方法もあります。アパートの入居者募集や入居者管理、建物管理などをすべて任せられるため、経営の知識がなくても問題ないと誤解しがちです。しかし、一括借り上げをした業者が安定経営をできていないと経営を破棄される場合もあります。一括借り上げの場合でもアパートの需要や市場動向を確認し、業者と相談しながら経営者として立ち振る舞うことが成功につながります。
アパート経営に向かない土地は他の用途で活用する
相続などによって手に入れた土地の活用ではアパート経営に向かない場合があります。無理にアパート経営をしようとすると儲からない原因になるので、立地が悪い場合にはあえてアパート経営にこだわらずに他の方法を検討しましょう。
住宅街や商店街から離れた土地でも、資材置き場や倉庫としての需要がある場合があります。また、繁華街の中にアパートを建てても、住む人が少ない立地であれば、駐車場やテナントビルとして利用することで利益を出せる可能性があります。アパート経営は土地活用方法の一つに過ぎないため、他の方法と十分に比較検討した上で投資を始めることをおすすめします。
アパート経営が不安なら駐車場経営も選択肢のひとつに
アパート経営は、計画的な物件調達と徹底した経営努力をしなければ儲からないリスクが伴う不動産投資です。失敗して大損するリスクもあるため、不安を感じる方もいるでしょう。こうしたリスクを避けるために、ローリスク・ローリターンの不動産投資を選ぶことをおすすめします。
駐車場経営は、リスクが低い不動産投資の一つです。土地をコインパーキングや月極駐車場にして利用料金や賃料を得る仕組みで、駅や商店街、住宅街などの土地では安定した収益を見込めます。アパート経営に比べると初期投資は小さいですが、満室時の収入は劣ることがあります。しかし、需要がある場所であれば安定した収益を得やすい不動産投資であり、着実に稼ぐというスタンスで駐車場経営を検討する価値があります。
まとめ
アパート経営が儲からないと言われるのは、もともと収益性が極めて高い方法ではないためです。また、空室リスクや金利変動リスクなどの要因も影響します。成功すれば大きな資産形成が可能ですが、空室が増えると損失が発生する可能性があるため、ハイリスク・ハイリターンの投資です。しかし、収益化を目指して徹底した対策を講じれば、アパート経営で成功する可能性もあります。経営負担を軽減する方法もあるため、不動産投資としての魅力は依然として高いです。
もしアパート経営に不安を感じるなら、ローリスク・ローリターンの投資を検討するのも良いでしょう。駐車場経営は、アパート経営ほど大きな利益は望めませんが、安定して利益を上げられる可能性が高い方法です。土地があれば少額の投資で始めることができるので、ご検討ください。
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