2024年12月05日公開
2024年12月05日更新
建物は固定資産税がかかる?計算方法と免除・特例の条件を解説
家やビルなどの建物を建てると、所有者は固定資産税を納める必要があります。固定資産税は、建物を所有する人が基本的に毎年納めなければならない税金です。土地活用の目的でマンションやオフィスビルなどを建てた場合、固定資産税の負担に驚き後悔することもあります。そのため、建物を建てて土地を活用する際には注意が必要です。 この記事では、固定資産税の概要と計算方法を解説します。また、建物の固定資産税がかからない場合や、固定資産税の減額対象となる場合についても説明し、免除の仕組みや特例についても紹介します。
目次
建物の固定資産税とは
建物の固定資産税とは、住宅や店舗、工場などの家屋にかかる地方税です。固定資産税は、毎年1月1日(賦課期日)の時点で建物だけでなく、土地や償却資産を所有している人に課税されます。不動産登記法と同じ意味合いで登記されるべき建物は、固定資産税の対象となります。
建物の所有者は、固定資産課税台帳に固定資産税評価額や固定資産税額と共に登録されており、毎年4月から5月に市町村または都から送付される納税通知書を使用して、6月、9月、12月、翌年2月の4回に分けて支払うことが求められます。
参照:東京都主税局の固定資産税・都市計画税(土地・家屋)
参照:固定資産評価のしくみについて(家屋評価)|総務省
参照:総務省|地方税制度|固定資産税
建物の固定資産税の計算方法
建物の固定資産税は、課税標準額と標準税率を用いて以下のように計算されます。固定資産税の税率は一律で1.4%です。
建物の固定資産税=建物の課税標準額×1.4%(標準税率) |
例えば、自宅の建物の課税標準額が5,000万円の場合、固定資産税は以下のように算出されます。
建物の固定資産税=5,000万円×1.4%=70万円 |
ただし、建物の固定資産税は所有者が自分で計算する必要はありません。市町村または都が計算し、固定資産課税台帳に登録された金額を納める仕組みになっています。
建物の課税標準額について
建物の課税標準額を決める家屋調査とは
建物の固定資産税の課税標準額は、家屋調査によって決定されます。家屋調査の結果に基づいて、正常な条件の下で成立する取引価格を算出することを目的として、日本では再建築価格方式によって課税標準額を導き出しています。再建築価格方式とは、評価対象の建物と同じ建物を評価時点で建築する場合にかかる建築価格を求め、経年による減価を補正して評価額を決める方法です。
建物を新築または増改築した際には、市町村または都の家屋調査担当職員が資料と外観確認、または内外の確認によって再評価を行います。
家屋調査は、登記所からの通知や建物の所有者からの連絡を受けて実施されていました。しかし、現在では令和4年末の時点で89.1%の団体が固定資産の現況調査に航空写真を使用しています。さらに、AIの活用による実地調査の検証も進められており、調査員が現場に赴いて目視で家屋調査を行う方法からの変化が起きつつあります。
参照:さいたま市/再建築価格を基準とした評価について
参照:固定資産税・都市計画税(土地・家屋)|不動産と税金|東京都主税局
参照:固定資産の現況調査に係る実態調査の調査結果及び先進事例について|総務省
参照:固定資産税調査用空中写真撮影の実態に関する調査業務|国土交通省 国土地理院
参照:実地調査について|総務省自治税務局固定資産税課
建物の課税標準額の評価替えとは
建物の固定資産税の課税標準額は、3年に1回の評価替えによって見直されます。評価替えとは、建物の固定資産税評価額を再評価する制度です。令和に入ってからは、令和3年度、令和6年度などに固定資産税の評価替えが実施されました。
評価替えでは再度家屋調査を実施することはありません。これは、建物の築年数による劣化(経年減点補正率)や建築物価の変動(再建築費評点補正率)に基づき、再建築価格方式を用いて適正かつ均衡のとれた価格を算出するためです。
評価替えの際には、建物の経年劣化によって価値が下がると考えられますが、物価の変動などの影響により、固定資産税評価額が前年度の評価額を上回る場合もあります。ただし、評価替えによって評価額が上昇した場合でも、前年度の評価額に据え置きされるため、固定資産税評価額が上がることは原則としてありません。
参照:固定資産税・都市計画税(土地・家屋)|不動産と税金|東京都主税局
参考:固定資産評価のしくみについて(家屋評価)|自治税務局 資産評価室
建物に固定資産税がかかる条件
固定資産税がかかる建物は、不動産登記法における建物の定義を満たしているものです。不動産登記規則第111条には、「建物は、屋根及び周壁又はこれらに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものでなければならない」と定義されています。
建物に固定資産税がかかるための主な条件は以下の3つです。
- 外気分断性がある
- 土地への定着性がある
- 用途性がある
さらに、固定資産税が算定される時期や賦課の条件を考慮すると、以下の2つも条件となります。
- 1月1日時点で存在していた
- 免税点以上の課税標準額になっている
ここでは、これら5つの条件の概要を解説します。
参照:固定資産評価のしくみについて(家屋評価)|自治税務局 資産評価室
参照:不動産登記規則 | e-Gov 法令検索
参照:課税対象になる家屋について|野木町公式ホームページ
参照:下仁田町ホームページ : 家屋に対する課税
外気分断性がある
外気分断性とは、周囲と上部に壁や天井があり、建造物の内部を風雨などから守る性質を指します。一般的には、三方以上が壁で囲まれ、屋根が存在している場合に、建物としての外気分断性があると判定されます。ただし、用途上二方を開けていた方が望ましい場合には、その構造物も建物として認められることがあります。一方で、外壁と柱2本で屋根を支えたテラスのような構造物は、外気分断性がないため建物としては認められません。
土地への定着性がある
土地への定着性とは、建造物が土地に固定されており、可動式ではなく、継続的にその場所で使用できることを指します。基礎工事をして建築された住宅や工場などは、土地への定着性があると判断されます。一方で、土地にコンクリートブロックを置いてその上に乗せただけの物置は、土地への定着性がないとみなされます。
用途性がある
用途性とは、建造物がその目的に適した一定の空間として機能する条件を満たしているかどうかを指します。例えば、戸建て住宅の場合、居住用の建築物として床があり、生活空間として使用できると用途性があると判断されます。しかし、商店街のアーケードのように公衆の目的で構築された構造物は、建物としての用途性があるとは認められず、一般的には建物とはみなされません。
1月1日時点で存在していた
建物の固定資産税は、賦課期日の1月1日に存在していなければ、その年は課税されません。翌年から固定資産税がかかります。賦課期日以降に購入や譲渡によって手に入れた建物は、その年の固定資産税の対象になりませんが、購入や譲渡の交渉の際には、固定資産税調整額として所有期間に応じた固定資産税相当額を相手に支払うのが一般的です。
なお、1月1日時点で建築されていた建物であれば、建築確認や登記が完了していない場合でも固定資産税が課税されることがあります。現在では、多くの自治体で航空写真を使用して現況調査を行っているため、建物が存在すると確認された場合には課税される可能性があります。
免税点以上の課税標準額になっている
固定資産税は、一定以上の課税標準額の固定資産を所有している場合に課されます。免税点と呼ばれる課税の可否を分ける基準未満の固定資産しか所有していない場合は免税となり、固定資産税を納める必要はありません。
建物の場合、課税標準額が20万円以上になると固定資産税の課税対象となります。例えば、課税評価額が1,000万円の建物と、課税評価額が15万円の建物を所有している場合、合計で20万円以上の課税標準額に達するため、両方の建物に対して固定資産税が課されます。
参照:固定資産税の免税点とは何ですか。|一宮市
固定資産税がかかる建物の例
一般的な住宅やオフィス、工場などの建物には固定資産税がかかります。固定資産税の納税義務がある建物として以下のような例があります。
- 戸建住宅
- マンション・アパート
- オフィスビル・事務所・店舗
- 天井のない物置
- 土地に固定したプレハブ小屋
- 住宅にリフォームで取り付けたサンルーム
住居や事務所などとして使用する建築物の多くは外気分断性と用途性があり、土地に基礎工事をして固定化されているので固定資産税の対象になる建物です。プレハブ小屋やコンテナハウス、物置などを設置するときには、土地の基礎工事をして固定した場合には建物として固定資産税の対象になります。サンルームは四方が囲われていて外気分断性があり、住宅に固定されていれば定着性もある用途性の高いものなので建物として認められます。
固定資産税がかからない建物の例
以下のような場合には建物あるいは建物の一部のようにも見えますが、固定資産税の対象になる建物とは見なされないのが一般的です。
- リフォームで設置したルーフバルコニー(外気分断性がない)
- 庭に設置した地面に固定していない仮置きの物置(土地の定着性がない)
- 工事現場に仮設置したトイレボックス(土地の定着性がない)
- 25万円で設置して地面に固定した物置(免税点未満の建物)
- フィルムのビニールハウス(外気分断性・用途性の不足)
ルーフバルコニーはサンルームとは異なり、壁がなく開放されているため、一般的には建物とは見なされません。仮置きで一時的に使用する小さな物置やトイレボックスなどは、土地への定着性がないと判断されます。また、地面に固定されている物置でも、課税標準額が免税点に満たない場合には固定資産税の対象外です。ビニールハウスについては、その用途から外気分断性が必要ですが、フィルムの場合は耐久性が低く一時的にしか使用できないため、建物とは見なされません。
ただし、同じようなケースでも、建物として固定資産税の対象になる場合があります。最終的には総合的な評価によって判断されるため、注意が必要です。
参照:課税対象になる家屋について|野木町公式ホームページ
参照:下仁田町ホームページ : 家屋に対する課税
参照:家屋評価の対象範囲について|資産評価システム研究センター
駐車場内の設備が固定資産税の対象になるか否か
駐車場を設置する際には、固定資産税の考慮が必要です。駐車場が建物と見なされて固定資産税の対象になる場合があるためです。ここでは、代表的な駐車場について固定資産税の取り扱いの違いを紹介します。
屋根と柱だけのカーポート
屋根と柱だけでできているオープンなカーポートは、建物の要件を満たさないため固定資産税がかかりません。外気分断性がないため、構造物として取り扱われます。カーポートとして販売・提供されている製品は、四方を囲われていることが少ないため、一般的には建物の固定資産税はかかりません。
四方を囲まれたガレージ
四方が囲まれているガレージは、建物として認められます。三方が壁に囲まれていて、一方がシャッターで遮断できる場合も、建物として扱われ、固定資産税の対象となります。
立体駐車場
立体駐車場は、屋根があり外壁に囲まれている場合、外気分断性があるため、建物と判定されます。ただし、屋根があり周囲がフェンスなどで囲われているだけの立体駐車場も、用途性を考慮して建物と見なされるのが一般的です。これは、立体駐車場では排気ガスの排出のために外壁で完全に囲まれていない方が望ましいと考えられるからです。
参照:第1節 建物|国税庁
参照:下仁田町ホームページ : 家屋に対する課税
建物にかかる固定資産税の特例
建物を所有している場合、特定の条件下で固定資産税の特例を受けられることがあります。ここでは、建物の種類や築年数などにより適用される減税の特例について紹介します。
新築住宅の減額措置
居住用の建物を新築した場合、要件を満たす建物は新築住宅特例の対象になります。この特例が適用されると、一定期間における固定資産税が1/2に減額されます。対象となるのは居住部分の床面積で120㎡までの範囲です。住宅の種別によって特例の対象期間は以下のように異なります。
住宅の種別 | 特例の対象期間 | |
---|---|---|
一般住宅 |
3階建て以上で耐火構造 | 5年度 |
上記以外 | 3年度 | |
長期優良住宅 |
3階建て以上で耐火構造 | 7年度 |
上記以外 | 5年度 |
多くの戸建て住宅では3年度または5年度、マンションでは5年度または7年度の適用が可能です。この特例は令和8年3月31日までに新築された住宅に対して適用されるため、長期的な措置ではありません。
参照:住宅:新築住宅に係る税額の減額措置 - 国土交通省
参照:総務省|地方税制度|固定資産税
住宅用地の特例
住宅用地の特例は、建物の固定資産税ではなく、建物が建っている土地の固定資産税に関する減額措置です。専用住宅または併用住宅として利用されている戸建て住宅やアパート、テナント入りのマンションなどが建っている土地について、居住部分の床面積の割合に応じて住宅用地として認められます。
建物の種別 | 居住部分の割合 | 土地面積に対する比率 |
---|---|---|
5階建て以上の耐火建築物 | 25%以上50%未満 | 0.5 |
50%以上75%未満 | 0.75 | |
75%以上 | 1.0 | |
上記以外 | 25%以上50%未満 | 0.5 |
50%以上 | 1.0 |
住宅用地として認められる面積に応じて、以下のように固定資産税が減額されます。都市計画税についても減額対象になります。
住宅用地の面積 | 固定資産税の減額率 | 都市計画税の減額率 |
---|---|---|
200㎡までの部分 | 1/6 | 1/3 |
200㎡を超える部分 | 1/3 | 2/3 |
住宅用地の特例は、土地の一部を自宅として使用し、同じ敷地内に店舗や倉庫、コインパーキングや月極駐車場を設置した場合にも適用されます。広い土地を活用する際には、固定資産税の節税対策として有効な特例です。
参照:固定資産税・都市計画税(土地・家屋)|不動産と税金|東京都主税局
駐車場経営なら建物の固定資産税がかからない土地活用が可能
土地活用や不動産投資を考えるとき、昔からマンションやビルを建てて賃貸経営をする方法が一般的でした。しかし、現代ではさまざまな土地活用の方法があり、建物の固定資産税がかからない土地活用も可能です。その代表的な方法が駐車場経営です。
駐車場経営は、月極駐車場やコインパーキングとして土地を活用する方法です。立体駐車場にすると建物の固定資産税がかかりますが、平面駐車場なら建物の固定資産税はかかりません。更地をそのまま青空駐車場として月極駐車場にする、あるいは利用者の利便性を考慮してアスファルト舗装をして運営するなど、整備方法にも選択肢があります。初期費用を抑えて土地活用を始められるだけでなく、建物の固定資産税の負担も増やさずに済む方法です。
ただし、建物の固定資産税がかからない代わりに、土地の固定資産税が減額されない点には注意が必要です。建物を建てない場合、土地の固定資産税に対する減税措置を受けられないため、土地の固定資産税はそのまま課されます。
駐車場経営はすぐに始められる土地活用方法として注目されています。建物を建築する資金を用意できない場合でも土地を収益化できる方法なので、土地活用の選択肢として検討してみましょう。
まとめ
建物の固定資産税は、法律上の課税条件を満たしている場合に、所有者が毎年納めなければならない税金です。土地に固定されていない構造物や免税点に達していない安価な構造物には固定資産税がかかりませんが、アパートやビルなどを建築した場合には、固定資産税評価額に応じた金額を納める義務があります。
建物の固定資産税は、用途や仕様によって減額できる場合がありますが、適用できるケースは限られています。建物を建てて土地活用をする際には、固定資産税による支出も考慮して経営計画を立てることが重要です。
建物を建てずに土地を活用したり不動産投資を行うことも可能です。駐車場経営は始めやすい投資方法であり、建物の固定資産税の対応が不安な場合には、月極駐車場やコインパーキングの経営から始めるのがおすすめです。ただし、建物の固定資産税がかからない代わりに、土地の固定資産税が減額されない点には注意が必要です。
※本記事は可能な限り正確な情報を元に制作しておりますが、その内容の正確性や安全性を保証するものではありません。引用元・参照元によっては削除される可能性があることを予めご了承ください。また、実際の土地活用についてや、税金・相続等に関しては専門家にご相談されることをおすすめいたします。