相続登記費用の内訳と計算方法を解説!司法書士に依頼すべき?

不動産を相続するときには登記費用がかかります。相続登記費用の相場はいくら程度なのでしょうか。この記事では相続登記費用の内訳と計算方法を詳しくまとめました。司法書士に相続登記の手続きを依頼した方が良いケースや費用を抑える方法もわかりやすく解説します。

相続登記費用の内訳と計算方法を解説!司法書士に依頼すべき?のイメージ

目次

  1. 1相続登記とは
  2. 2相続登記にかかる費用
  3. 3相続登記費用の計算例
  4. 4相続登記費用を安くするには
  5. 5司法書士など専門家への依頼がおすすめのケース
  6. 6相続登記費用は経費にできるか?
  7. 7相続登記は令和6年4月1日から義務化
  8. 8相続した土地・不動産の活用方法
  9. 9まとめ

相続登記とは

相続登記とは土地や建物の相続をしたときに、所有権を被相続人から相続人の名義に変更する手続きです。不動産の所有者は法務局の登記簿で管理されています。登記簿の内容を書き換えて、新しい所有者に所有権が移ったことを記録するための所有権移転登記をすることが必要です。相続登記が必要な不動産かどうかは登記簿で確認できます。

相続登記は不動産の所有者を法的に明確化するために必要な手続きです。相続した土地や建物を売りたいときには、相続人が所有権を持っていなければ取引ができません。不動産の譲渡のときに所有権移転登記が必要になるからです。登記簿は固定資産税や都市計画税の納税の根拠でもあり、地方自治体の財源確保にも必要な書類になっています。
 

相続登記にかかる費用

相続登記費用は3種類に分けられます。登記に必要な書類の取得費用、登記手続きにかかる登録免許税、司法書士に依頼したときに発生する報酬です。ここでは相続登記費用について、個々に詳しく解説します。
 

1. 必要書類の取得費用

相続登記では被相続人、相続人、相続不動産に関する必要書類を揃えて手続きをします。これらの書類は公的機関が発行する書類で、取得時に手数料がかかります。必要書類の種類と費用は以下の通りです。

必要書類 費用 対象
戸籍謄本(戸籍全部事項証明書) 450円 相続人・被相続人
除籍謄本(除籍全部事項証明書) 750円 被相続人
改製原戸籍謄本(原戸籍) 750円 被相続人
住民票の除票 300円 被相続人
住民票の写し 300~400円 相続人
印鑑証明書 200~300円 相続人
固定資産税評価証明書 200~400円 相続不動産
登記事項証明書 600円 相続不動産
名寄帳 200~400円 相続不動産




基本的に相続登記では戸籍関係の公的書類を通して、相続が発生したことと、法定相続人が誰かを証明することが求められます。被相続人が除籍されたことを除籍謄本で確認することで相続が発生した事実を確認します。
戸籍謄本によって婚姻関係も含めて何親等に相当する相続人なのかを明らかにすることが可能です。改製原戸籍謄本は古い戸籍を新しくしたときの古い方の戸籍謄本で、改製以前まで戸籍を遡るときに必要です。
また、固定資産税評価証明書は相続不動産の価値の根拠として取得します。後述の登録免許税の金額を計算するために固定資産税評価額の情報が必要なので提出を求められるのが一般的です。
登記事項証明書は相続不動産の名義や不動産の状況が一致しているかを確認します。相続登記をした後に、所有権移転が済んでいることを確認する目的で取得することもあります。
名寄帳は被相続人が所有している不動産の一覧台帳です。相続不動産が網羅的にわからないときには名寄帳を取得すると明確にできます。

参照:登記申請手続のご案内|法務省民事局

2. 登録免許税

登録免許税は相続登記をするときに納める税金です。不動産の登記をするときには登録免許税がかかります。相続で土地または建物の所有権の移転登記をするときには、不動産の固定資産税評価額に基づいて計算した登録免許税の納税が必要です。必要書類の中に固定資産税評価証明書が含まれているのは、固定資産課税台帳に記載されている金額に基づいて登録免許税を計算しなければならないからです。

登録免許税は固定資産税評価額の0.4%です。不動産の売買や贈与などの場合には2.0%が標準で、土地の売買については令和8年3月31日までは軽減税率で1.5%になっています。相続のときには所有権移転登記の登録免許税が低いのが特徴です。ただ、評価額が高い不動産の場合には金額が大きくなるため、相続登記費用の中でも負担が大きい場合がほとんどです。

相続で遺贈による登記をするときには注意が必要です。遺贈の場合には贈与としての扱いになるため、固定資産税評価額の2.0%の登録免許税になります。遺言書によって法定相続人以外が不動産を譲り受けたときには登録免許税が5倍になります。

例えば、2,500万円の土地を法定相続人が相続したときには登録免許税として0.4%の10万円がかかります。しかし、遺贈の場合には2.0%の割合になるので、50万円の登録免許税が必要です。

なお、登録免許税は非課税対象になる場合があります。固定資産税評価額が100万円以下の土地については令和7年3月31日までに相続した場合には登録免許税が免税になります。また、相続人が土地を相続した後、相続登記をする前に死亡した場合にも免税を受けることが可能です。

登録免許税の免税を受けるためには申請書に法令の条項について記載が必要です。100万円以下の価額の土地を相続するときには「租税特別措置法第84条の2の3第2項により非課税」、相続人が死亡したときには「租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税」と申請書に記載して提出します。

参照:
No.7191 登録免許税の税額表|国税庁
相続登記の登録免許税の免税措置について:法務局
相続登記の登録免許税 - 東京都中央区 相続相談手続センター

 

3. 司法書士への報酬(依頼した場合)

相続登記は司法書士に依頼して申請することがあります。司法書士に依頼して登記してもらった場合には報酬の支払いが必要です。司法書士報酬は工数によって変わるため、複雑なケースになると報酬が高くなります。一般的には5万円~15万円が報酬の相場です。同じ内容でも司法書士によって単価が違うので、このくらいの費用の幅が生じます。

相続登記で司法書士報酬が高くなるケースとして典型的な例が2つあります。まず、登記以外に依頼する付帯業務が多いと報酬が高くなります。例えば、司法書士に戸籍謄本などの必要書類を取得することを依頼すると代行費用がかかるのが一般的です。相続不動産の調査を依頼した場合にも費用が大きくなります。

もう1つのケースとして挙げられるのが、不動産や相続人の数が多かったり、家系が複雑になっていたりする場合です。相続不動産が多いほど登記書類の作成数が多くなるので工数がかかります。また、相続人の数が多く、家系が複雑になっていると血縁関係の確認や代襲相続などの対応も必要になる場合があります。手続きが煩雑になるので高い報酬を請求されるのが一般的です。

この他にも不動産の評価額が高い場合や、税理士や弁護士への委託が必要な業務が発生したときなどにも報酬が高くなる場合があります。報酬体系は司法書士事務所がそれぞれ独自に決めているので、正確な金額を知るには個別に相談をして見積もりを取ることが必要です。
 

相続登記費用の計算例


相続登記費用は被相続人と家系の構成、不動産の価額によって違いがあります。ここではモデルケースとして以下のような場合の相続登記費用を計算してみましょう。
 

  • 被相続人、妻、長男、長女の4人の家族で被相続人の父母は存命していない
  • 被相続人が固定資産税評価額が1,500万円の建物と4,000万円の土地を所有していた
  • 被相続人と妻が同居、長男と長女は独立していた
  • 長男が土地と建物を相続することが遺産分割協議で決まった
  • 司法書士に相続登記の関連業務を依頼した
 
項目 費用
除籍謄本 750円×1通=750円(被相続人)
改製原戸籍謄本 750円×2通=1,500円(被相続人)
住民票の除票 300円×1通=300円(被相続人)
住民票の写し 300円×1通=300円(長男)
戸籍謄本 450円×3通=750円(被相続人、長男、長女)
印鑑証明書 300円×2通=600円(長男、長女)
固定資産税評価証明書 200円
登記事項証明書 600円
登録免許税 (1,500万円+4,000万円)×0.004=22万円
司法書士報酬 10万円×10%(消費税)=11万円
合計 335,000円

相続登記費用の総額から考えると必要書類の割合は小さいですが、全体で5,000円に上っています。1通の費用は小さくても積み重なると大きな金額になるので注意が必要です。

相続登記費用を安くするには

相続登記費用を安くする方法は内訳を見てみるとわかりやすいでしょう。相続登記をするためには提出書類を取得する費用も、登録免許税も必要不可欠です。免税対象になるかどうかを調べて、適用可能であれば活用しましょう。

相続登記費用で節約できるのは司法書士報酬です。司法書士に依頼をせずに自分で法務局で手続きをして相続登記をすることができます。上記の例でも司法書士報酬が約1/3を占めているので、司法書士に依頼しなければ大幅に安くすることが可能です。相続不動産の評価額が低い場合には司法書士報酬の割合が高くなるため、司法書士に依頼せずに自分で登記するメリットが大きくなります。

ただ、相続登記は正しくおこなわなければなりません。書類を正しく整えなければならず、誤りがあると受理されません。各種書類の取得をしたり、法務局での手続きをしたりするには手間もかかります。相続のときには不動産以外の相続の調整なども大変なので、司法書士に依頼して負担を減らすのが一般的になっています。
 

司法書士など専門家への依頼がおすすめのケース

相続登記は司法書士などの専門家に依頼すると費用はかかりますが、登記手続きを間違いなく済ませられるメリットもあります。ここでは司法書士に相続登記を依頼した方が良いケースを紹介します。
 

登記に手間をかけたくない

相続登記に手間をかけずに確実に済ませたいときには、司法書士に依頼するのがおすすめです。専門家として正しい登記手続きを進めてくれます。必要な書類の取得も任せられるので、手間を減らす目的に合っています。依頼する範囲も指定できるため、費用対効果の高い形で依頼することが可能です。
 

不動産や相続人が多い

相続不動産や相続人が多くて手続きが煩雑になりそうなときには司法書士に任せた方が安心です。不動産の数が多くても、相続人が多くて血縁関係を明確にするのが難しくても、司法書士に依頼すればプロとして対応してくれます。
 

相続人が近くに住んでいない

相続人のうち一人でも遠方に住んでいるのなら司法書士に相談した方が良いでしょう。相続登記のための書類を揃えるにも遠方の相続人から印鑑証明書などの書類を手配しなければなりません。相続人同士での納得が十分にできていないと、書類を送ってもらえなくてトラブルになることもあります。司法書士に依頼すれば責任を持って書類を整えて相続登記をしてくれるので安心です。

相続登記費用は経費にできるか?

相続登記費用は業務で用いていた不動産については経費にすることが可能です。国税庁では業務に使用されている資産について、登録免許税を必要経費として算入することを認めています。ただし、土地や建物であれば必要経費になりますが、特許権や鉱業権などの権利の譲渡については登録免許税が取得価額になるのが原則です。自動車や船舶などの業務で使用するために登録が求められる資産の場合には、必要経費と取得価額から自由に選択ができます。

不動産の相続による登記では、不動産経営をしているケースが典型的です。例えば、賃貸アパートを経営していた被相続人から、アパートと土地を妻が相続した場合には、登録免許税を不動産所得の必要経費として算入することができます。原則として相続が発生した年が必要経費に算入できる時期です。遺産相続で法定相続人として引き継いだ場合だけでなく、遺贈によって相続したときにも登録免許税を必要経費として算入することが認められています。

また、司法書士に相続登記を依頼したときにも、司法書士報酬を必要経費にすることができます。司法書士報酬は金額的に大きくなるため、必要経費にして節税する上で重要な点です。

参照:No.2215 固定資産税、登録免許税又は不動産取得税を支払った場合|国税庁
 

相続登記は令和6年4月1日から義務化

相続登記は令和6年3月31日までは手続きが任意対応です。しかし、令和6年4月1日からは相続登記は相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に実施することが義務になります。令和6年4月1日以前に相続した不動産についても対象です。つまり、令和5年4月1日に相続した場合には、令和8年3月31日までに登記手続きを済ませる必要があります。相続登記をいていない不動産があるときには早めに対応しましょう。

相続登記の義務化の背景には、登記をしなかったために所有者不明の土地や建物が多くなってきた経緯があります。相続登記費用がかかるので、あえて登記手続きをしない人もいます。しかし、所有者が不明になると管理されなくなり、空き家や荒れた土地が増える原因になっていました。この社会課題を是正するため、不動産登記法の改正によって登記の義務ができました。

正当な理由なく相続登記をしなかった場合には10万円以下の過料が科されます。ただ、遺産分割が難しい場合には、相続人申告登記によって過料を免れることが可能です。遺産分割協議が難航して誰が相続するかが決まらないときなどには、まずは相続人申告登記を済ませると安心です。

参照:
相続登記が義務化されます|法務省民事局
相続登記が義務化されます(令和6年4月1日制度開始)~なくそう所有者不明土地!~:東京法務局
 

相続した土地・不動産の活用方法

相続登記を済ませた不動産は相続人が所有者になるので自由に利用できます。取得した土地や建物を有効活用していくことが大切です。住宅を相続したときには自分で住むこともできますが、ハウスクリーニングやリノベーションをして賃貸経営をすることもできます。住宅では賃貸経営をするのが難しい場合でも、解体して更地にすればさまざまな方法で土地活用をすることが可能です。

更地にしたら土地をそのまま貸すこともできますが、付加価値を付けると利益率を上げやすくなります。例えば、コインパーキングにすると、近くに飲食店やショッピングセンターなどがある場合にはたくさんの人が使ってくれる可能性があります。コインパーキングは初期費用が100万円前後で済むので始めやすい土地活用方法です。他にもアパートやマンションを建てて経営する方法もあります。立地によって適切な経営方法は違うので、十分に検討して土地に合ったかたちで活用しましょう。

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駐車場経営はおすすめの1つ!

相続した土地の活用方法として駐車場経営はおすすめです。駐車場経営には月極駐車場にしたり、コインパーキングにしたりする方法があります。どちらの場合にも少額の資金で賃貸経営を始められるのが特徴です。土地が狭くて建物を建てるのが難しかったとしても、駐車場なら問題ありません。立地が良い土地ならコインパーキングにすると回転率が高く、大きな収益を上げられるチャンスもあります。相続した土地の活用で迷ったら駐車場経営を検討しましょう。
 

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まとめ

相続登記には登録免許税がかかるため、費用として数十万円程度が必要になります。司法書士に依頼すると報酬の支払いもあって大きな費用がかかるのが一般的です。相続登記は今後義務化されるため、土地や建物を相続するなら登記手続きは必須です。費用がかかることも考慮して、取得後の活用方法も考えて相続すべきかどうかを考えましょう。土地を持っていれば幅広い活用方法があります。駐車場経営は始めやすい方法なのでぜひ検討してみてください。

※専門家と相談し慎重に決めることをおすすめします
 

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