2024年11月01日公開
2024年11月01日更新
大家さんとは?仕事内容・年収・向いている人・成功のポイントを解説
多くの人が、相続した家や土地を有効活用して年収を上げたいと考えています。不動産の活用や投資で成功を収める人も少なくありません。しかし、大家さんになれば不労所得を得られると言われることもありますが、実際には仕事が多く、思ったほど稼げないのではないかと心配する人も多いでしょう。この記事では、大家さんの仕事内容と年収の実態についてまとめました。また、大家さんとして成功するためのポイントも解説します。
目次
大家さんとは
大家さんとは、マンションやアパートなどを経営している人のことです。一般的には、不動産賃貸経営と呼ばれます。投資として大家さんをしている場合には、不動産投資と呼ぶのが通例です。どちらの場合も、基本的に賃貸経営をして家賃収入を得るという点では同じです。本業として行っている場合は「大家」や「不動産賃貸業者」と呼ばれ、副業として行っている場合は「サラリーマン大家」や「兼業大家」と呼ばれます。
大家さんの所得は、税法上では不動産所得に分類されるため、不動産所得者と呼ばれることもあります。
大家さんの平均年収
大家さんの年収は賃貸経営の方法や規模によって違います。国税庁の令和四年度の「申告所得税標本調査」によると、不動産所得者の平均所得金額は542.5万円です。令和2年~令和4年では540万円少々になっています。
年収別に見ると以下のように300万円~1,000万円の大家さんが多いことがわかります。100万円以下の年収でコツコツと不動産投資をしている人もいますが、1億円以上の所得を得ている人もいるのが大家さんの収入事情です。
年収(所得) | 人数(千人) |
---|---|
100万円以下 | 56 |
100万円超、200万円以下 | 199 |
200万円超、300万円以下 | 180 |
300万円超、500万円以下 | 254 |
500万円超、1,000万円以下 | 246 |
1,000万円超、2,000万円以下 | 92 |
2,000万円超、5,000万円以下 | 26 |
5,000万円超、1億円以下 | 3 |
1億円超 | 1 |
参照:概要(第8表)所得階級別申告納税者数|国税庁
大家さんの主な収入
大家さんになって賃貸経営をするときには、収入と支出の内容を考えて利益を出すことが重要です。大家さんの主な収入は以下の通りです。
- 家賃・賃料
- 共益費・管理費
- 駐車場賃料
- 礼金
- 更新料
家賃・賃料
家賃・賃料は大家さんの基本的な収入源です。賃貸借契約で定めた金額を毎月徴収します。地域での相場に応じて適切な金額を設定して入居者を募集します。高すぎると入居者が集まらず、安すぎると利益が減るので、相場を考慮して決めることが重要です。
共益費・管理費
共益費や管理費はマンションやアパートの共有部分の維持管理のために入居者から請求する費用です。実費請求ではなく、概算して共益費や管理費を設定して賃貸借契約をします。エレベーターや監視カメラなどの点検費用や管理委託費用が大きい場合には高くするのが一般的です。家賃の5~10%を目安として設定している場合が多くなっています。
駐車場賃料
駐車場を設けて賃料を別途収入にする場合もあります。家賃に含めてセットにする場合もありますが、複数台の車を置きたい、車は使わないといったニーズにも応えられるように別途契約にすることもあります。敷地内に駐車場を用意して契約し、家賃と合わせて毎月定額で支払いを受けるのが一般的です。物件の近くに月極駐車場を用意して、オプションとして契約してもらって収入にすることも可能です。
礼金
礼金は賃貸物件を提供してもらえたことに対するお礼という位置付けの、賃貸契約における典型的な初期費用です。大家さんは家賃の1~3ヶ月程度を設定して収入にできます。地域によって礼金の相場が異なるので、調査して決めるのがおすすめです。敷金とは違い、預り金ではないため、礼金はそのまま収入になります。
更新料
賃貸契約の期日が来たときには更新料の支払いを求めることが可能です。賃貸借契約で定めていれば契約の更新ごとに更新料を受け取れます。家賃の1ヶ月程度が更新料の相場で、1〜2年ごとの更新にする契約が多くなっています。
大家さんの主な支出
大家さんになって年収を上げるためには、支出を減らすことが重要です。物件の取得方法や管理方式によって、大家さんが自分で負担する費用項目や金額には違いがありますが、主な支出項目は以下の通りです。
<定期的に発生する支出>
・ローンの返済・手数料
・管理委託費
・保険料(火災保険料、地震保険料、団体信用生命保険料など)
・水道光熱費(共用部)
<必要に応じて発生する支出>
・修繕費・修繕積立金
・仲介手数料
・広告費(入居者募集)
・立ち退き料
・解体費用
大家さんは、これらの支出を経費として扱うことができるため、節税対策が可能です。しかし、さまざまな支出があることを考慮し、十分な現金を用意して対応できるようにする必要があります。
大家さんの仕事内容
大家さんになると不労所得を得られると言われる場合もありますが、実際には賃貸経営をするために仕事をしなければなりません。大家さんの主な仕事内容をまとめると以下のようになります。
・入居者募集
・入居者対応
・建物管理
・経営管理
・会計業務
ここでは大家さんの基本的な仕事内容を解説します。
入居者募集
入居者募集は大家さんとして部屋に入居する人を見つけて収益化するために必須の仕事です。自分で募集をすることも可能ですが、一般的には不動産仲介会社に依頼します。どの不動産会社に依頼するか、媒介契約の種類をどうするかといった検討が必要です。また、入居者募集をして契約する前に、申し込みをした人の受け入れ可否も判断することが求められます。家賃滞納や近隣トラブルなどを起こす人もいるので、慎重に判断する必要があります。
入居者対応
入居者対応は物件に入居した借主に対して必要な対応です。入居者対応は大家さんが自分でおこなうこともできますが、業務内容が多岐にわたっているので管理会社に任せるのが一般的です。家賃徴収、設備の不具合の修繕、入居者同士のトラブルへの対応などが代表的な入居者対応です。退居の立ち合い、クリーニングや修繕などの退居に伴う対応も求められます。
建物管理
建物管理はマンションやアパートなどの大家さんが持っている建物のメンテナンスです。駐車場やゴミ捨て場などの共用部分の清掃、エレベーターや照明などの点検と管理などの日常的な業務がたくさんあります。また、マンションやアパートなどの建物は劣化するので、大規模修繕工事の計画を立てて必要な資金を工面することも必要です。外壁塗装などの大きな工事は金額が大きくなるため、計画的に積み立てておくことが求められます。
経営管理
経営管理は賃貸経営を総合的に把握して、利益を生み出すために必要な全体管理の仕事です。大家さんが責任を負う業務で、経営判断によって今後の収益に大きな影響が生じます。空室率や利回りなどの計算結果、競合状況や需要の変化に関する調査などに基づいて、経営判断をすることが大家さんの重要な業務です。客観的に状況を把握して、利益を生み出すための経営戦略を考えることが欠かせません。
場合によっては今後も経営を継続するのは難しいと判断して撤退を決断し、他の方法で資産を活用する方向性を検討することも求められます。経営管理は大家さんの中心業務なので、不動産投資や土地活用を考えているときには念頭に置いておきましょう。
会計業務
会計業務は収支を管理し、年末には確定申告をして適切な納税をするために重要な仕事です。大家さんとして家賃や賃料による収入を得ると、それは不動産所得となります。不動産所得がある場合、原則として確定申告が必要です。そのため、収入と支出を明確にするための会計業務も行う必要があります。
不安がある場合には、公認会計士や税理士に委託することもできます。専門家に相談することで、安心して適切な会計業務を行うことができるでしょう。
出典:No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)|国税庁
大家さんが選べる管理方式
大家さんは賃貸経営に必要な仕事をすべて自分でおこなわなければならないわけではありません。以下のような管理方式から選んで賃貸経営をおこなえます。
・自主管理
・管理委託
・一括借り上げ
ここでは3つの管理方式の特徴を解説します。
自主管理
自主管理は入居者募集や建物管理などのすべての仕事を大家さん自身がおこなう管理方式です。管理委託費用がかからないので収益率を上げやすく、自分で管理しているので必要なノウハウを学びやすいのがメリットです。しかし、大家さんとしての仕事を本業にして取り組まなければ状況の把握やクレーム対応、日常的な清掃などにすべて対応するのは容易ではありません。大家さんになって本業として働きたいと思っている人に適している管理方式です。
管理委託
管理委託は自主管理では対応しきれない業務を専門会社に委託して対応してもらう方法です。住宅の管理委託では包括的に対応できるパッケージやプランを用意している専門の管理会社が多数あります。管理の負担を減らせるだけでなく、品質や効率も上げられる方法です。ただ、委託先によって品質に違いが生じる点には注意が必要です。委託費もかかるので総合的に考えて管理委託をすべきかを判断することが求められます。
一括借り上げ
一括借り上げはサブリース契約をする仕組みの管理方式です。大家さんは基本的に賃貸経営や建物管理の仕事に関与する必要がありません。契約先の専門会社が入居者の募集や対応、建物の管理などをすべておこないます。賃貸経営の方針の策定も任せられるので、知識や経験があまりなくても始めやすい方法です。経営状況にかかわらずに定額の支払いを受けられるのが一般的で、収支計画も立てやすいのが一括借り上げの特徴です。
大家さんに向いている人
大家さんになるには資格やスキルは必要ありません。しかし、大家さんになって失敗している人もいます。大家さんとして成功するには適性があるので注意しましょう。以下のような人は大家さんに向いています。
- 計画を立てて行動する習慣がある人
- 地道な努力を続けられる人
- 長期的な視野で物事を考えられる人
- 人付き合いが得意な人
- リスクを予測するのが得意な人
計画を立てて行動する習慣がある人
大家さんになって不動産経営をするには計画性が必要です。計画を立てて行動する習慣がある人は、経営計画や収支計画を立てられるので大家さんに向いています。目標に向けてどのような計画が適しているかを検討できるスキルがあると、さらに大家さんに向いているでしょう。
地道な努力を続けられる人
地道に努力を続けていける人は大家さんに向いています。アパートやマンションの経営は一攫千金の仕事ではありません。毎月家賃を少しずつ受け取りながら、サービスの向上を目指して取り組んでいく仕事です。継続的に努力を続けられる人は最終的には大家さんとして成功できるでしょう。
長期的な視野で物事を考えられる人
大家さんは長期的な視野を持てる人におすすめです。大家さんは建物の老朽化を考慮して修繕費の積み立てをしたり、アパートやマンションの建築にかかったローンの返済をしたりする必要があるからです。初期費用や維持費用を加味して長期的に見れば利益を得られると考えて事業を始められる人が大家さんに適しています。
人付き合いが得意な人
人付き合いが好きな人や得意な人は大家さんに向いています。大家さんは入居者や管理会社の担当者などとの日常的なコミュニケーションが重要だからです。挨拶や会話などのやり取りによって印象が大きく変わるので、入居率や空室率に影響します。
リスクを予測するのが得意な人
不動産経営にはリスクが付きものです。リスクを予測して対処できる人は大家さんに向いています。
大家さんが成功するために重要なポイント
大家さんになって成功するには、事前に十分に検討してビジネスで利益を出すという意識が必要です。ここでは大家さんが成功するために重要なポイントを解説します。
事前に知識を付ける
大家さんになるには知識が必要です。不動産の取引や賃貸、不動産投資などについて十分に学んでから始めるのが成功のポイントです。不動産経営の管理方式や不動産の種類による特徴、立地による物件の需要の違いなどのさまざまな知識を持っていると、利回りを上げる戦略を立てられます。
不動産経営では法律による影響も受けるので、関連法令についての理解も深めておくことが大切です。また、会計業務もしなければならないため税制を理解してから大家さんになった方が良いでしょう。ただ、会計や税務などは税理士や公認会計士に依頼して対処できるので、まずは不動産にかかわる知識を付けることがおすすめです。
空室リスクに常に注意する
大家さんになったときに大きなリスクとして知られているのが空室リスクです。アパートやマンションの経営をするときに、満室になるのを前提にして収益を考えてしまう場合があります。実際には満室にできなくて空室ができることも多く、退去時には次の入居者が見つかるまでは空室になります。空室率が高くなると収益性が低下するので、早めに手を打って安定して高い入居率を保てるようにすることが重要です。
入居者トラブルリスクの対応を検討する
入居者対応は大家さんにとって重要な仕事です。入居者のマナーが悪い、ルールを守らないといった問題によって他の人が退居してしまうことがあります。賃貸借契約で入居者が負う義務を明確化しましょう。クレーム対応を受けられるように窓口を設けて、もし違反によって他の入居者が迷惑を被ったときにも速やかに対応できるようにすることが大切です。入居審査でもトラブルを起こすリスクが低い人を慎重に選定しましょう。
建物の維持管理を怠らない
大家さんにとって建物は貴重な資産です。建物はメンテナンスをしていないと老朽化が進みやすくなります。維持管理をして良好な状態を保つことで賃貸経営を続けやすくなります。建物劣化リスクの対策には日常的な点検や修繕と、長期的な視野での大規模修繕工事の資金の準備が大切です。建物が劣化すると建て替えが必要になる可能性もあります。建物は劣化していくという意識を持ってメンテナンスを続けましょう。
家賃滞納の対策を立てる
大家さんの収入源は入居者による家賃や共益費・管理費などの支払いです。入居者が家賃を支払わなかったら収入になりません。家賃滞納リスクへの対策は重要なポイントです。入居審査で支払能力がある人を選ぶことがまず大切です。また、口座振替やクレジットカードなどに対応すると、現金払いや振込に比べると未払いが起こりにくくなります。家賃回収のシステムやサービスを利用することも可能です。
経費で節税対策をする
大家さんは不動産の経営者です。経営では税金を考慮して利益を増やすことも重要な視点です。大家さんは不動産経営にかかった費用は経費にできます。収入から経費を差し引いた金額が所得になり、所得税の対象になります。ボールペン1本でも経営のために購入したなら経費として計上可能です。
また、アパートやマンションの建物自体や高額の設備は償却資産になります。購入時点でまとめて経費にするのではなく、耐用年数に応じて減価償却費として毎年経費に計上します。減価償却は継続的に会計上の経費を大きくして節税に使えるので賢く活用しましょう。
参照:所得税のしくみ|国税庁
管理会社を慎重に選定する
大家さんの仕事の負担を軽減するには管理会社に委託するか、一括借り上げの契約をすることが重要です。自主管理できる範囲は限られているので、管理会社を積極的に活用しましょう。ただ、管理会社によって対応力に違いがあるため、慎重に選定することが大切です。実績があって信頼できる管理会社を選んで契約するのが安全策です。
資金を準備する
大家さんになるには資金が必要です。資金力があればより利益を上げやすいアパートやマンションで不動産投資をおこなえます。不動産を持っていない場合には土地を購入して建物を建てるか、中古のアパートやマンションを購入する必要があります。土地を持っている場合でもアパートやマンションを建築しなければなりません。予算によってどのような不動産を用意できるかが変わります。資金を十分に準備して納得できる物件の大家さんになりましょう。
駐車場経営もおすすめ
大家さんになるには不動産に関連する知識を付けて、経営や会計などについて学ばなければ失敗する可能性があります。マンションやアパートを建設して大家さんになるには、初期投資が大きいので不安になるでしょう。一方、駐車場経営ならアパートやマンションの建設費用がかからないため、比較的少額投資で始められます。
駐車場にはコインパーキングと月極駐車場があり、立地に応じた経営ができます。自主管理だけでなく、管理委託をしたり一括借り上げをしたりして経営することも可能です。初期費用の負担が心配な方は駐車場経営も視野に入れると良いかもしれません。
まとめ
大家さんになればマンションやアパートなどの賃料によって収入を得られます。ただ、不動産所得者の平均年収は540万円程度で、100万円以下の人も、1,000万円以上の人もいます。大家さんになるときには収益を得やすいか、十分な資金があるか、管理を続けられるかをよく考えて決めましょう。
不動産投資では初期投資が少なくて転用もしやすい駐車場経営から始めるのもおすすめです。自分にあった方法で土地を活用していきましょう。
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