相続税対策には不動産が有効!節税効果の理由と注意点を解説

配偶者や子孫に多くの財産を遺すには相続税対策が必要です。相続税の節税には不動産を購入して運用する方法が有効です。不動産の相続税評価額の計算の仕組みや相続税評価額の特例を活用すると効率的に節税できます。この記事では不動産の活用によって相続税対策ができる理由と、節税に使うときの注意点をご紹介します。

相続税対策には不動産が有効!節税効果の理由と注意点を解説のイメージ

目次

  1. 1不動産の相続税評価額の評価方法
  2. 2相続税対策に不動産を活用できる理由
  3. 3ローンを組んで不動産を購入すると相続税対策になる?
  4. 4不動産で相続税対策をするときの注意点
  5. 5相続税対策の不動産投資には駐車場経営もおすすめ
  6. 6まとめ

不動産の相続税評価額の評価方法

不動産が相続税対策になる理由を理解するには、まず不動産の相続税評価額の評価方法を理解することが必要です。不動産の相続税評価額は土地と建物に分けて計算します。ここでは土地と建物のそれぞれの相続税評価額の評価方法を解説します。

 

土地の評価方法

土地の評価方法は通常は路線価方式です。しかし、路線価が設定されていない市街化調整区域などの一部の地域では、倍率方式が用いられています。路線価方式と倍率方式の計算方法を具体例と合わせて紹介します。
 

路線価方式

路線価方式は国税庁が定めている相続税の路線価に基づいて土地の評価額を算出する方法です。相続税の路線価は相続税路線価図に1㎡あたりの価格(路線価)が路線ごとに書かれています。土地が面している路線の価格から、以下のように土地の相続税評価額を計算可能です。
 

土地の相続税評価額=路線価×土地面積×補正率

路線価は一般的に市場価格の8割くらいに設定されています。補正率とは土地の形状や道路への面し方によってかけられる評価額の補正です。奥行が長いとき、間口が狭いとき、不整形地のときなどには補正率をかけて減額します。なお、最新の路線価図は「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」で確認できます。路線価図に書かれている数字は1,000円単位なので、200の場合には20万円の路線価です。

例えば、200Aと記載されている路線に面している300㎡の奥行のある土地で、奥行価格補正率が10%だった場合には以下のように評価額を計算できます。
 
土地の相続税評価額=200×1,000円/㎡×300㎡×(1-0.1)=5,400万円

参照:財産評価基準書|国税庁

倍率方式

倍率方式は土地の固定資産税評価額を補正して相続税評価額を計算する方法です。評価倍率は国税庁によって地域ごとに定められています。最新の評価倍率は「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」で確認可能です。倍率方式では以下のように評価額を計算します。
 

土地の相続税評価額=固定資産税評価額×倍率

固定資産税評価額は固定資産税の路線価図から計算されています。固定資産税の路線価図では鑑定評価書様式における標準価格の7割にされています。例えば、標準価格が6,000万円の土地の場合には固定資産税評価額は4,200万円です。評価倍率が1.1倍だったときには、土地の相続税評価額は以下のように計算できます。
 
土地の相続税評価額=4,200万円×1.1=4,620万円

参照:固定資産評価のしくみについて(土地評価)自治税務局 資産評価室
 

建物の評価方法

建物の相続税評価額には固定資産税評価額が使用されます。固定資産税評価額は建物の再建築にかかる費用を参考にして計算されているのが特徴です。建築費用の変動や建物の経年劣化を加味して3年に1度の頻度で評価替えがおこなわれています。比較的最近の建物の状態を反映した建物の評価額になっているため、相続税評価額では補正をせずに以下のようにそのまま固定資産税評価額を使用します。
 

建物の相続税評価額=固定資産税評価額

固定資産税評価額は一般的に市場価格よりも低く設定されます。新築住宅では建築費用の60%程度になる傾向があります。

相続税対策に不動産を活用できる理由

不動産が相続税対策に有効なのは相続税評価額を下げられるからです。ここでは不動産を購入して運用すると相続税評価額が下がる理由を詳しく解説します。

相続税評価額は市場価格よりも低いから

不動産の相続税評価額は、土地は購入価格の7割~8割、建物は新築住宅なら建築費用の6割程度になります。5,000万円を現金で持っていると、相続税評価額は5,000万円です。しかし、土地を購入すれば3.500万円~4,000万円くらいの評価額に下がるので節税になります。さらに4,000万円で家を建てたとしたら、2,400万円程度の評価額になります。合計すると9,000万円の資産を5,900万円~6,400万円に圧縮できています。

相続税評価額と市場価格の関係について国税庁が調査した資料があります。国税庁によるサンプル調査では、平成30年の不動産取引での相続税評価と市場価格の乖離率は一戸建てでは平均1.66倍、マンションの場合は平均2.34倍でした。乖離率は以下の計算式で算出されています。
 

乖離率=市場価格÷相続税評価額

つまり、一戸建ての相続税評価額は市場価格の60.2%、マンションの相続税評価額は市場価格の42.7%です。建物の種類によって節税効果の大きさは異なりますが、居住用の不動産を購入すれば大きく相続税評価額を下げられます。

賃貸経営をすると不動産の相続税評価額が下がるから

土地や建物の賃貸経営をすると相続税対策になります。賃貸している場合には借地権割合、借家権割合、貸付割合によって相続税評価額が下がるからです。不動産の賃貸経営では土地を賃貸する貸地と、土地と建物をまとめて賃貸する貸家が一般的です。それぞれについて相続税評価額の計算方法をまとめました。

貸地の相続税評価額

貸地の相続税評価額=土地の相続税評価額×(1-借地権割合)

貸地の場合には土地の評価額から賃貸部分を借地権割合によって控除します。借地権割合は土地ごとに決められていて、路線価図から確認可能です。路線価図には「200A」といった「数字+アルファベット」記号が振られています。アルファベットで記載されているのが借地権割合です。Aは90%、Bは80%、Cは70%という形で10%刻みになっていて、G(30%)まであります。

200Aの路線価が適用される土地で、もともとの相続税評価額が2,000万円の土地の賃貸経営をした場合には、以下のように相続税評価額が変わります。
 
貸地の相続税評価額=2,000万円×(1-0.9)=200万円

参照:財産評価基準書|国税庁

貸家の土地の相続税評価額

貸家の土地の相続税評価額=土地の相続税評価額×(1-借地権割合×借家権割合×貸付割合)

貸家の場合には土地の評価額が借地権割合、借家権割合、貸家割合によって控除されます。借家権割合は全国で一律30%です。貸付割合は貸家全体のうちで貸付用に使用している比率です。

建物全体を賃貸物件として運用している場合には100%ですが、マンションの1室に被相続人が住んでいた場合や空室があった場合には100%ではありません。一般的には床面積で貸付割合を算出します。同じ床面積の部屋が4つあるアパートで1部屋を居住用として使用していた場合には、貸付割合は75%です。この場合に借地権割合が80%だったとすると、5,000万円の評価額の土地は以下のように減額を受けます。
 
貸家の土地の相続税評価額=5,000万円×(1-0.8×0.3×0.75)=4,100万円

参照:財産評価基準書|国税庁

貸家の建物の相続税評価額

貸家の建物の相続税評価額=建物の相続税評価額×(1-借家権割合×貸付割合)

貸家の場合には、建物は借家権割合と貸付割合に応じた相続税評価額の控除を受けられます。借家権割合は30%で、貸付割合は貸付用に使用されていた床面積の割合として計算するのが一般的です。例えば、10部屋のマンションを賃貸経営していて、2部屋が空室だった場合には80%の貸付割合になります。この場合にマンションの相続税評価額が5,000万円だったとすると、相続税評価額は以下のように変わります。
 
貸家の建物の相続税評価額=5,000万円×(1-0.3×0.8)=3,800万円

 

小規模宅地等の特例を適用できるから

土地に建物を建てると、条件を満たせば小規模宅地等の特例で土地の相続税評価額を50%または80%減額できます。被相続人や生計を一にしている親族の居住用または事業用の建物があった宅地は一定の面積まで減額対象になります。小規模宅地等の特例による減額内容を以下にまとめました。

 

利用区分 事業内容 貸付先の用途 居住者・事業者 限度面積 減額割合
居住用   被相続人・生計を一にしている親族 330㎡ 80%
事業用 貸付事業以外   被相続人・生計を一にしている親族 400㎡ 80%
貸付事業 貸付事業以外の事業用 特定同族会社 400㎡  80%
貸付事業以外の事業用 貸付事業を営む法人 200㎡ 50%
貸付事業用 貸付事業を営む法人 200㎡ 50%
居住用 被相続人・生計を一にしている親族  200㎡  50%

例えば、被相続人や親族がアパートを自己経営していた場合やサブリースをしていた場合には限度面積が200㎡、減額割合が50%です。被相続人が事務所物件の賃貸経営していた場合には、入居している事業者が貸付事業者ではないときには限度面積が400㎡、減額割合が80%になります。

被相続人が土地にアスファルトを敷いて駐車場経営をしていた場合には小規模宅地等の特例が適用されます。自営の駐車場経営をしていた場合でも、コインパーキング事業者とサブリース契約をして経営していた場合でも限度面積が200㎡、減額割合が50%です。

参照:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
 

ローンを組んで不動産を購入すると相続税対策になる?

不動産投資ではローンを組むことができます。マンションやアパートの経営では不動産投資ローンなどを利用して始めるのが一般的です。ローンで借金をすると債務控除ができるため、不動産をローンで買うと相続税対策になると言われています。

例えば、1億円の財産を持っている人が、5,000万円の不動産を4,000万円のローンと1,000万円の現金で購入したとします。不動産の相続税評価額が60%の2,400万円だったとしたら、相続財産は以下のように減らせます。
 

相続財産=(1億円-1,000万円)+2,400万円-4,000万円=7,400万円


ローンを組むときには事務手数料などの諸費用がかかり、ローンの利息の支払いもあるので相続財産が減る可能性があります。黒字経営をして財産を増やすことが重要です。ローンを組んだ場合には金利上昇リスクも考慮して、経営戦略を考える必要があります。

ローンを組まなかったときでも空室リスクや家賃下落リスク、地価変動リスクなども起こる可能性があります。しかし、ローンを組むとリスクが増えるので、相続税対策として必要かどうかを慎重に考えた方が良いでしょう。

ローンを組むことが必ずしも最善の相続税対策であるとは限りません。個々の状況に応じて慎重に判断し、専門家の意見を求めることも一つの方法です。
 

不動産で相続税対策をするときの注意点

不動産を活用すれば相続税対策ができますが、トラブルも起こっています。ここでは不動産投資で相続税対策をするときの注意点を解説します。
 

土地を購入するだけでは税金負担がある

土地を購入すれば相続財産を減らせるので節税効果があります。しかし、不動産を所有していると固定資産税と都市計画税が毎年かかります。固定資産税の標準税率は1.4%です。都市計画税の税率は0.3%を上限として各自治体が定めています。毎年固定資産税評価額に対してかかるので、財産が減る原因になります。

地価が上昇すれば価値が上がる可能性もありますが、地価も下落したら財産が大幅に減ることもあり得るでしょう。土地を購入したら土地活用を進めて収益源にすることが大切です。

参照:総務省|地方税制度|固定資産税

立地条件の良い不動産を選ぶ

不動産を選ぶときには立地条件に着目することが重要です。相続税対策で成功するには黒字経営にする必要があります。立地が悪いと収入が増えず、管理費用や修繕費用などがかかってしまって赤字経営になるリスクが高くなります。

例えば、地方の郊外にある土地を購入しても、人里から離れていると使い道があまりないでしょう。都市開発が進められれば資材置き場として使われる可能性がありますが、マンションやオフィスビルを建築しても入居者が集まりにくい立地です。

また、都心の土地でも繁華街の中で居住用にするには環境が良くない場合があります。店舗物件ではニーズがある地域かもしれませんが、競合が多くて新規参入障壁が大きい場合もあるので注意が必要です。借主が見つかりやすいかどうかを十分に吟味してから不動産を購入しましょう。
 

相続税の納税資金を確保する

不動産投資で相続税対策をするときには現金がなくならないように注意しましょう。不動産の購入には少なくとも数百万円、通常は数千万円~1億円以上の資金が必要です。不動産ローンを少なくするために現金を使い過ぎると、相続のときに現金がなくて納税できないトラブルが起こる可能性があります。

現金が足りないから不動産を売却して納税することになる場合もあります。しかし、土地や建物は売るのに時間がかかることが多い資産です。相続税の納税期限までに間に合わず、相続人が現金の工面に困ることがあります。相続税の税金分の現金が不動産の相続人の手に渡るように計画的に現金を残しましょう。
 

ローンを完済する計画を立てる

不動産のローンは完済した状態にして相続すると遺族が安心します。負債があると毎月返済をするプレッシャーがあるからです。ローンの返済に慣れていないとストレスになるでしょう。負債を持ちたくないという理由で相続放棄をする可能性もあります。

基本的にローンは繰り上げ返済ができるので、資金が十分にできた時点で完済しましょう。老後になってから高額の不動産を購入して長期ローンを組んだ場合には、存命中にローンを完済するのは難しい可能性があります。今後の生活費も考慮して、できるだけ無理のない金額の不動産を購入するのが賢明な判断です。駐車場経営や資材置き場のように少額投資で始められる方法もあるので検討してみましょう。
 

遺産分割協議の対策を立てる

遺産分割協議で遺族がもめないようにする対策をしておかないと、家族仲が悪くなる可能性があります。不動産は遺産の中でも価値が高く、経営をしていれば収益性もあるので魅力的です。相続人全員が欲しいと言っても分割するのが難しい遺産です。不動産を相続する人が引き継ぐ財産割合が大きくなってしまって協議が難航することもあります。

土地を分筆して分けることは可能ですが、土地が狭くなると用途が限られてしまいます。建物は切り分けられない場合が多いでしょう。共同名義にして所有することも可能ですが、不動産の経営方法でトラブルが発生する可能性があります。

遺産分割は生前に家族で話をして決めておきましょう。不動産は配偶者が相続し、残りの財産を均等に分配するといった遺言書を作成しておくのも良い方法です。遺言書がない場合には原則として法定相続になります。不動産が相続遺産の中で大きな割合を占めるなら、遺言書を書いておくと遺産分割協議のトラブル対策になります。
 

相続人の負担にならない経営方法にする

不動産経営は相続人の負担にならないように配慮すると喜ばれます。経営のノウハウがない状況で事業承継をしてしまうと、何をしたら良いかがわからずに苦労します。不動産経営に興味を持っている親族がいたら、一緒に経営をしてノウハウを伝授するのが効果的です。

また、不動産の経営負担がかからない方法を選ぶと安心です。サブリース契約をして不動産を一括借り上げしてもらうと経営しやすくなります。賃貸などの不動産経営はサブリース先の会社に任せられるので、相続した人も事業承継に踏み切れるでしょう。
 

出口戦略を立てて残す

不動産を相続した親族のために、不動産投資の出口戦略を立てることが重要です。相続人にあまり不動産投資に知識がないと、経営を続けるべきか、撤退すべきかを判断できないでしょう。出口戦略を立てて、いつまで経営するか、どのような条件でやめるかといったことをまとめておくと役に立ちます。

経営がうまくいかなくて撤退したときには、次に何に使ったら良いかも書き残しておくと良いでしょう。自分がなぜこの不動産を選んだのかもエンディングノートのようにして書き留めておくと参考になります。出口戦略と合わせて生前整理の間に準備するのがおすすめです。
 

相続税対策の不動産投資には駐車場経営もおすすめ

相続税対策を目的として不動産投資を始めるなら駐車場経営を考えてみましょう。駐車場経営とは土地を購入してコインパーキングや月極駐車場を経営し、利用料金や賃料を収入にする方法です。土地を購入すれば数十万円~100万円くらいの初期投資で始めることが可能で、一括借り上げにすれば初期費用無料で始められる場合もあります。少額資金を使って相続税対策をするのに適しています。

駐車場経営は狭い土地や変形地でも駐車場にできるので、相続人の数だけ土地を買い揃えて遺産分割協議の対悪にすることも可能です。駐車場経営の面積あたり収益性はマンションやアパートの経営などに比べると低めです。しかし、立地が悪くなければ、固定資産税を支払ってお釣りが出るくらいの収益性があります。小規模宅地等の特例なども適用できるので、相続税対策には駐車場経営がおすすめです。
 

駐車場経営を始めてみよう
駐車場経営を始めるべきか迷っている方に対して、駐車場経営のメリットや注意点、運営会社の選び方...

まとめ

現金の資産が十分にあるときには不動産で相続税対策をしましょう。不動産を購入すれば相続税評価額が下がるので節税効果があります。現金が少なくてもローンを組んで不動産を購入できますが、返済の負担があって相続のときにもトラブルの原因になるので注意が必要です。

不動産で相続税対策をするときには少額で始められて節税効果が大きく、経営しやすい方法を選びましょう。コインパーキングや月極駐車場の経営は少額でも始められて、節税しやすい不動産投資です。相続税対策の候補として検討してみてください。

 

※本記事は可能な限り正確な情報を元に制作しておりますが、その内容の正確性や安全性を保証するものではありません。引用元・参照元によっては削除される可能性があることを予めご了承ください。また、実際の土地活用についてや、税金・相続等に関しては専門家にご相談されることをおすすめいたします。
 

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